黒い種 キラ君奮闘?物語
第9話 最悪最強の新勢力
キラが本格的に戦うことを決意した翌日。
アークエンジェルに連合軍第8艦隊から通信が入った。
「先遣隊との合流は2日後か?」
「ええ。幸いザフトの追撃もないみたいですから無事合流できるでしょうね」
「楽観的に考えるのはよくありません。合流できるまでは気を引き締めていなければ」
ブリッジにやってきたフラガを交え、マリュー、ナタルが話していた。
勿論話題は先ほどの通信内容。
その内容とは、第8艦隊との合流についてのものだった。
「しかしよ、合流するとなると色々面倒なことになるよな」
「ええ・・・キラ君とあの子たちの処遇について、ですね」
合流するにあたっての唯一にして最大の問題。
キラ・ヤマトとザフトの少女達の存在。
「下手なことをすると命に関わるからな」
「・・・そうですね」
これまでの彼の行動、言動を思い出す3人。
「「「・・・・・・」」」
見る見るうちに顔が真っ青になっていく。
「「「・・・うっ!」」」
胃に強烈な痛みを覚える3人。
すかさずポケットに忍ばせている特性(特製ではない)胃薬を服用する。
「と、とにかく、坊主と嬢ちゃんたちについては何とかしよう」
「そ、そうね」
「い、いざとなれば武力行使も・・・」
胃の痛みに耐えつつ、必死に対策を練る3人。
「ふ~ん、まだそんなふざけた事考えてるんだ・・・」
すべては彼の手の平の上であることを知らずに・・・
自室にあるパソコンのモニターを覗き込んでいるキラ。
勿論モニターに映し出されているのはブリッジの3人だ。
「コイツらへの制裁は確定として、まずは・・・」
仕入れた情報から今後の行動のシュミレーションを行う。
本格的に戦いに関わることを決めたキラ。
その彼が最初に行おうとしている事。それは、
「・・・本拠地の確保だな」
そう、今後の活動において必要となってくる拠点。
彼の場合、そのハッキング能力をフルに生かせる環境が必要となってくる。
「僕1人ならどうにでもなるんだけど・・・」
その点においてキラが危惧している要因。
それは彼を慕う4人の少女。
「みんなには出来るだけ不自由な思いをして欲しくないしな・・・」
彼女たちのことを考えれば、下手な場所に拠点を構えるわけにはいかない。
そうなると拠点に出来る場所は限られてくる。
一から作るのではなくもともと存在する拠点を利用するしかない。
「う~ん・・・・・・・・・・・・・・」
モニターに表示されている画像を送りながら、最適な場所を考えるキラ。次々表示されているのはザフト、連合の軍事拠点から各地に存在するレジスタンスの秘密基地まで様々。
・・・レジスタンスの秘密基地ってどうやって調べたんだ? ハッキングとかでどうにかできるのか?
「・・・・・・・・・・・・お、ここ」
一つの画像が表示され、キラの動きが止まった。
その場所の詳細なデータを表示させる。
「・・・・・・・・・・」
考え込むキラ。
自分の計画とあわせ、メリットとデメリットを予測する。
そして考えること1分。
「・・・ここにしよう」
そう言うとキーボードに何やら打ち始めるキラ。
相変わらずの高速ブラインドタッチで、入力は10秒ほどで終了した。
「よし・・・それじゃあ行動開始だ」
入力を終えたキラは席を立ち、部屋を後にする。
あとに残されたのは電源の入ったままのパソコン。
そのモニターに表示されているのは、連合軍の一つの拠点だった。
「キ、キラ君・・・今、何て?」
「聞こえなかったんですか? やっぱり更年期障害みたいですね」
アークエンジェルのブリッジ。
ここは今、異様な雰囲気に包まれていた。
「もう一度言ってあげますからよく聞いてくださいね?
このアークエンジェルは僕が掌握しました。
無意味な抵抗は止めて大人しやがれこの能無しども♪」
その雰囲気の根源でもあるキラ・ヤマト。
久しぶりに見せるブラックオーラを身に纏い、一切の邪気の無い明るい口調で言い放つ。
「坊主・・・本気で言ってるのか?」
「こんなこと冗談で言うわけないじゃないですか♪」
「そ、そうか・・・」
全身に冷や汗を浮かべるフラガ。
それほどまでに今のキラは恐ろしい。
「貴様! ついに本性を現したな!!」
「・・・そんなに騒がないでくださいよナタルさん。
うるさいですね」
「黙れ! この状況で何を言うか!!」
この中で唯一キラに対して向かっていくナタル。
下手なセリフは即命取りになると本能が告げているのはずなのだが、
根っからの軍人である彼女はそれに屈することは出来ないらしい。
「やはりコーディネーターなど早々に始末するべきだった!」
「お、オイ!」
「バジルール少尉!?」
そう叫び、腰の銃に手をかけるナタル。
それを抜き放ちキラに銃口を向ける。
その行動にマリューたちでさえ驚きを見せる。
と、それまでの笑顔が氷のような無表情へと変わるキラ。
「・・・・・・自分の行動の意味、わかってるよな?」
「な、なんだと・・・」
表情と同じくその声からも明るさが消え、
何の感情も宿していないものになっている。
ただ、そこから感じられる威圧感が桁違いなものになっている。
あまりの迫力に怯むナタル。
「テメェらが生きてこれたのは、この俺が生かしておいてやったからだぜ?
じゃなきゃ今頃、宇宙の藻屑になっていたんだ」
「・・・・・・」
一人称も僕から俺へと変わっている。
あまりのことに言葉を失くす一同。
「いわば俺は命の恩人。
その恩人に向かって銃を向けるとは、恩を仇で返すとはこの事だ」
「ちょ、調子に乗るな! 貴様のような・・・」
「黙れ!!!」
ドゴンッ!!!!!!
「・・・・・・!!!」
なおも反論するナタルの言葉を怒声で遮り、後方の壁に裏拳を叩き込むキラ。
あまりの威力に拳が壁にめり込んでいる。
今度こそ言葉を失くすナタル。
「いい加減にしろカスども!!。
テメェらみたいに生きてる価値の無いカスは黙って俺の言うことに従ってればいいんだよ。
それがイヤなら今すぐこの艦を降りな。この俺が直々に宇宙へ叩き出してやるぜ?」
圧倒的な威圧感。
今のキラは16歳の少年ではない。
この世の全てを自由に出来るような、まさに皇帝のような存在に感じられる。
「最後のチャンスだ。俺に従うか否か・・・選びな、艦長」
「・・・・・・」
口をつむぐマリュー。
それはそうだろう。
いくら相手が恐ろしいからといってすんなりと従うわけにはいかない。
ナタルほどではないにしろ、彼女にも軍人としての意地があるのだ。
「・・・セキュリティを解除しようとしてるなら無駄ですよ? ノイマンさん」
「!?」
3人の後ろでコンソールを操作していたノイマンに声をかけるキラ。
その顔は無表情から笑顔に変わっていた。
ただし、見るものを震え上がらせるほどの冷たい笑みだが。
「テメェらみたいな能無しどもに俺のプログラムが解析できるとでも思ってるのか?
だとしたらとんだ茶番だな。
いくら知能レベルの低いテメェらでもそれくらいわかると思ってたんだが、
そこまで馬鹿だったとはな、ハッハッハッ・・・」
「・・・・・・」
立ち尽くすノイマン。
他の者たちも同様だ。
が、そんな中でマリューが口を開いた。
「・・・・・こんなことをしても無駄よ。
もうすぐ第8艦隊の先遣隊と合流するわ。そうなったら・・・」
「そんな事知ってるさ。俺が何もしていないと思ってるのか?」
キラがそう言うと、モニターに緑色のロボット鳥が表示される。
「リアルタイムじゃないとはいえ、通信が届く距離にいるんだ。
当然ウィルスも送れる筈だよな?」
「ま、まさか・・・」
「ふっ、先遣隊の艦はとっくに俺のウィルスに感染済みだ。
どう足掻いてもあんたらが逆転できる術は無いんだよ。
さあ、今度こそ返事をしてもらおうか?」
「・・・・・・」
もはや八方塞り。
マリューたちに残された選択肢は、たった一つしかなかった。
しかしキラ、キレてしまうほどストレス溜まってたのか?
やっぱり原因はあの料理(と呼んでいいのか不明な物)なんだろうなぁ~。
・・・少しは周囲の人間の辛さ(少女達以外)がわかっただろう。
「これで第一段階終了だな」
ブリッジの艦長シートに座り、モニターに映っている小型艦を眺めているキラ。
この小型艦に乗っているのはマリューたち連合軍の兵士たち。
そう、今アークエンジェルに乗っているのはキラと4人の少女のみ。
その他全員を追い出したのだ。
「ま、ほとんどオート操作でよくなったからな」
プログラムを書き換えたことにより、キラ1人で戦艦を運用することが可能になったのだ。
「さてと、それじゃあ行き先を入力して・・・・・・よし、じゃあ行こう」
コンソールに行き先を入力してブリッジを後にするキラ。
『トリィ! トリィ!』
モニターに映ったロボット鳥が元気に飛び回っていた。
おまけ
キラは一つ失念していた。
連合兵を全員追い出したということは、当然コックさんも追い出したというわけで・・・
「キラ~、ご飯出来たわよ~」
「今日もみんなで作ったの」
「いっぱい食べてね?」
「私が食べさせてあげますわ♪」
「あ、ああ・・・ありがとう」
昨日に続き、次々に変色する湯気が立ち上る何かを食べる羽目になった。
(早急に料理用ロボットを作ろう!!!)
そう心に誓い、意識が遠のいていくキラであった。
あとがき&レス返し
この話を書き上げての感想ですが・・・
これって黒と言えるのか?
黒っ!!というよりは恐っ!!て感じです。
まあ、ここ最近発散できなかったストレスが一気に出たということでご勘弁を。しかし、魔乳さん完全にフレームアウトしちゃったな・・・
いよいよキラ君が本格的に動き出しました。
アークエンジェルを手に入れたキラは一体どこに向かうのか?
それは次回で
余談ではありますが、キラの率いる(キラ1人のような気もするが)レジスタンスの名前を決めたいと思います。
以前私自身が『黒き帝王』と軽く表記したのですが、
やはりちゃんと決めておこうと思います。
そこで、皆様のお知恵を拝借しようと思います。
いい名前が浮かばれた方は、どんどんご意見してください。
皇 翠輝様・suimin 様・D,様
レスありがとうございました。