黒い種 キラ君奮闘?物語
第4話 黒く染まった大天使
「ええっと、確かこの辺りのはずなんだけど・・・」
持ち前の能力をいかんなく発揮してザフトを追い払ったキラ・ヤマト。
フレイ、ミリィを乗せたまま、ストライクをある場所へと移動させていた。
「さっきのアスランたちとの会話も聴いていた筈だし、よし」
外部マイクをONにするキラ。
そして、前方の斜面目掛けてアグニを構える。
って、いつの間にランチャーパック装備したんだ!?
「え〜、連合軍の皆さん。こちらヘリオポリスの善良な一般市民のキラ・ヤマトです。
今すぐアークエンジェルを発進させてください。
さもないと、せっかくの最新鋭戦艦がいきなり傷モノになっちゃいますよ♪」
世の中の穢れなど何も知らないかのような純真無垢な笑顔で告げるキラ。
表情とセリフ、そして行動が完全に一致していない。
勿論黒オーラも絶好調だ。
そんなキラの言葉に反応したのか、ストライクに通信が入ってきた。
『こちらは地球軍第8艦隊所属、アークエンジェルの艦長のマリュー・ラミアスです』
通信を入れてきたのは地球軍の制服を着た士官。
年のころ25,6と言ったぐらいの女性だった。
なぜか顔が引きつっているような気がする。
(綺麗な人だな〜、スタイルも良さそう)
女性の顔が引きつっていることに気がつかず、思わず見惚れてしまうキラ。
しかし、
(でも年増だな)
表情を戻しそう切り捨てた。
キラ・ヤマト。
自分の守備範囲外なら女性でも容赦の無い正直な16歳であった。
「あなたが責任者の方ですか?」
そんな考えを悟られることの無い表情を見せるキラ。
『ええ。現時点では、ですけど』
「それはよかった。早速ですけど僕達を保護していただけませんか?」
『保護・・・ですって?』
キラの言葉に困惑するマリュー。
「はい。じつは僕以外にあと2人女の子が乗ってるんですよ。
でももうシェルター閉じてしまったし。
だったらいっその事保護してもらおうかと思ったんです」
『ああ、そういうことなの・・・わかったわ、保護しましょう』
キラの言葉に納得したのか、申し出を受け入れるマリュー。
勿論そこには彼女の思惑もあったわけなのだが、
「あ、そうそう。さっきの会話聴いてましたよね?
お分かりかと思いますけど、僕コーディネーターなんですよ。
だからって僕をどうこうしようなんて思わないでくださいね」
『え?』
「僕って基本的に人から指図されるのが苦手なんですよね。
特に自分よりも能力の劣る役立たずのクズども に 。
ナチュラルなんかもってぬほかですよ。
あんな馬鹿でグズで要領悪くて無神経で、そのくせ張り合えるわけもないコーディネーターに敵対心抱いちゃって、
ほんとに見てて滑稽ですよ。そう思いません?」
『・・・・・・そ、そうね』
明らかに侮辱されているのだが、先ほどの会話を聞いているために同意するしかないマリュー。
しかし、そこまで言われて黙っていられない人間がいた。
『貴様! 我々を侮辱するのもいい加減にしろ!!』
マリューの横から出てきた女、副長のナタル・バジルールである。
根っからの軍人である彼女には、今のキラのセリフを黙って聞き入れることなどできる訳が無い。
「侮辱なんてしてないですよ、僕は。ただ純然たる事実を述べただけです。
それよりもアナタは?
(この人も年増だな。マリューさんと違って胸もないし・・・価値無しだな)」
『貴様のような奴に名乗る必要はない! 直ちに投降しろ!!』
よほど頭に血が上っているのか、かなりヒステリックに怒鳴るナタル。
そんな彼女にやれやれといった感じで両手を挙げるキラ。
黒い思考は止めましょうね、キラ君。
「あのですね、どうして僕がそこまで言われないといけないんですか?
大体投降しろってどういうことですか?別に戦っているわけでもないのに」
『黙れ! 貴様が乗っているのは地球軍の最新鋭機、民間人だろうが軍の最高機密に触れた。
しかも貴様はコーディネーター、敵とみなす理由は十分だ!!!』
「はぁ〜、ここまで融通の利かない脳みそ化石野郎はアスランだけだと思ってたのに。
大体最高機密とかほざいてるくせにすでに4機も取られてる間抜けのくせによく言うよな。
せっかく僕がストライクを持って来てあげたのに、感謝の言葉もないなんて。
ほんと、これだから礼儀知らずのヒステリーな年増女は困るよな」
ハッキリと聞こえるように言っているキラだが、これはただの独り言。
別に相手に聞かせようなどと意図的にやっているものではない。
『き、貴様・・・』
肩をワナワナと震わせ、今にも爆発しそうなナタル。
先ほどの暴言(得に年増女のあたり)がよほど堪えたのであろう。
と、そんなナタルをなだめる人物が登場する。
『まあまあ、そう怒りなさんなって、バジルール少尉』
画面に現れたのは金髪の男。
ナタルやマリューよりも年上のようだ。
「あなたは誰ですか?」
『俺か? 俺はムウ・ラ・フラガ。一応パイロットだ』
「ムウ・ラ・フラガ? どこかで聞いたような・・・」
聞き覚えのある名前に思案にくれるキラ。
そして、ハッとした顔になる。
どうやら思い出したようだ。
「もしかして、ガンバレル装備のメビウス・ゼロに乗り、何とかって戦いで
ジンを5機落とした凄腕のパイロットと言われているフラガさんですか?」
『多分そのフラガだ。しかしオマエさん、よく知ってるな』
何だかちょっと気分がよくなっているフラガ。
もしかして自分のファンか? などと思っているようだ。
が、
「ええ、連合のマザーコンピューターにハッキングをかけたときに見ましたから」
『・・・・・・』
アークエンジェルブリッジに静寂が訪れる。
不穏な言葉は無視しましょう♪
「別名で確か・・・そうだ! エンデュミオンの馬鹿!」
『・・・・・・』
よろめくフラガ。
む、無視しましょう。
「いや〜、こんなところでエンデュミオンの馬鹿に会えるなんて思ってもみませんでしたよ。
感激だな〜、うわ〜、本物の馬鹿だ〜」
ミーハーなファンのように素直に喜ぶキラ。
・・・いくら天然でもこれは酷いぞ。
『坊主・・・鷹だよ、鷹』
余りにも強烈な言葉にかなりの精神的ダメージを受けた様子のフラガ。
今にも崩れ落ちそうだ。
普段自分では言わない二つ名だが、キラの間違いに訂正を入れる。
しかし、
「え、そうなんですか? ごめんなさい。
でも、別にどっちでもいいじゃないですか。
所詮ナチュラルなんて存在価値の無い低俗な人種なんですから♪」
『・・・・・・』
一切の邪気の無いキラの言葉にフラガ撃沈。
マリュー、ナタルを含めて言葉が出ない連合兵たち。
惨め過ぎるぞ、フラガ。
「髄分話がそれちゃいましたけど、結局保護してもらえるんですか?」
先ほどのアスランのようなノリで本題に入るキラ。
だがマリューたちからの反応は無い。
「まあ、保護していただけるんなら僕も出来る範囲で協力しますよ。
ストライクでザフトの害虫どもを駆除してもいいですし、
なんなら僕特製の『トリィウィルス』を使ってプラントに経済テロを仕掛けてもいいですし。
あ、何なら連合のほうにもハッキングかけて色々と情報を暴露して上層部の連中を一斉解雇に追い込むとか。
あ、お金が欲しいとかなら銀行のコンピューターに侵入して預金残高の書き換えなんてことも・・・」
『・・・・・・キラ君。今からアークエンジェルを発進させるから着艦してもらえるかしら?』
これ以上聞いていられないと判断し、キラの保護を決めるマリュー。
他の者たちに異論は無い。
「保護してもらえるんですね?」
『・・・・・ええ、一緒に乗っている女の子たちもね』
「ありがとうございます。それじゃあ花火を解除しないと・・・」
『・・・・・・花火、って』
再び不穏な発言をするキラ。
瞬間的にそれが何であるかを理解してしまったマリューたち。
だが、ついうっかり尋ねてしまった。
「さっき皆さんと会話しているとき、暇だったんでトリィウィルスをアークエンジェルに感染させたんですよ。
キーを一回押すだけで特大花火が揚げられたんですよ♪
さっきも見れなかったから今度は是非見たかったんだけど、仕方ないな」
『・・・・・・』
モニターに映し出される巨大なロボット鳥。
それを無言で眺めながらマリューは、いや、ブリッジにいた全員が思った。
銃撃戦で死んだほうがマシだった!と。
ちなみに、コックピット後ろのサブシートに座っている2人の少女は、
「・・・さすがキラだわ」
「・・・素敵」
キラ以上にやばいかもしれなかった。
あとがき
連合の皆さん登場です。
もはや本編の流れが無くなりつつありますね。
ヘリオポリス壊れてないし。
どうなることやら。
レス返し
suimin 様:今悩んでいるところなんです。
大半のSSでは黒ラクスですからね。
あえてそれに逆らってみようかと思っています。
D, 様:フェロモンと言うよりはオーラ?でしょうかね。
勿論男性に関してですけど(笑)
ガパソン 様:とりあえず登場はこんな感じです。
キラ君、年増好みではないので。
でも自分は好きなんで、扱いも変わるかも!?