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「闇を継ぐ者第三話の2(まぶらほ)」

sara (2005-03-10 16:27)
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闇を継ぐ者 第三話 報復2


東京都 風椿邸


第二の駆除の執行舞台、ここではどんな惨劇が起こるのか、どんな愚かな劇が演じられるのか、それとも愚かな劇ではなくそれなりに見応えのある何かを演じてくれるのだろうか。

例えば駆除を回避する術を、駆除を逃れる術を駆除対象は見つけ愚かな劇ではなくそれなりの立ち回りを見せてくれる劇を演じてくれることが出来るのであろうか、どちらに転んでも愉快な劇であればそれはそれで重畳で済ますことが出来るだろうが。

その如何に関してはこれから語られる物語、ここから語られる物語、それでは拙い戯言にお付き合い願おう、拙い語り部の物語にお付き合い願おう。

拙い戯言に弄され語られる異端なる一族、絶大なる一族、巨大な力の関係図、そのお話も加えよう、そろそろ話の筋道の一端を垣間見せても構うまい。


前述したが式森に逆らうものは刃向かうものは害意を向けるものは須らく制裁し調教し、必要と在らば攻撃し、殺戮し、殲滅する、この世から、式森の前から排除する、徹頭徹尾完璧に有象無象の区別無く、物理的に、経済的に、政治的に、ありとあらゆる面で、ありとあらゆる手段で殺戮殲滅抹消させ、二度とが、二度と全てが全て戦いなど、抵抗など、恨みなど、報復など、思いも浮かばないほどに徹底的に容赦なく果断無く式森は牙を向く、式森の牙は攻撃性を発露する、恐ろしいまでの攻撃性を相手に差し向ける。

一度敵と認識した相手に、一度敵と認識されてしまった相手に暴力をもって、策謀をもって、権力をもって、全て使い抵抗の意を殺戮する。

暴力をもって人間を殺戮し。

策謀をもって意志を殺戮し。

権力をもって傲慢を殺戮する。

全てを殺戮する、生物も、感情も、誇りも全て殺戮し、二度と関わらないという絶対前文を敵に植え付け、育み、華をつけさせる、そして華は種を生み、種はまた新たな華をつける、そして式森の恐怖は蔓延し拡大し増強される。

それでこそ駆除というものだ、完全無欠徹底的に害獣害虫病原菌それら蔓延る全てを抹消してこその駆除、そうでなければ派手にやる意味が無い、派手に制裁を加える意味が無い。

駆除は未来的な害をも消し去り予防する意味を孕んでいるのだから。

よって二番煎じも退屈極まりない、二度同じことをするようではつまらない、やはり趣向を変えることが愉快で喜悦を生み出すだろう、愉快な恐怖の種を醸成し、新たな華を育て咲かせてくれることだ、潜在的な害も殺戮してくれる綺麗な食肉華を咲かせてくれるはず。

毒々しくも美しい食肉華を。

故に。

暴力は用いた、次の見せしめに暴力ではまるで式森が力しか保持しない、力のみを心酔する集団と誤解されるのも甚だ愉快ではない、本意ではない、それに力しか保持しかない集団は同じ力を持つ組織に蹂躙され、敗北する、もしくは力の通用しない存在には対抗できないということになる。

実際はどうあれそう認識されるのは甚だ面白くは無い。

それにその面白くないことに加えてともかくとして、力のみの集団ならば、力しか信じられない連中ならば、それより上の力には屈する。

定理、殺戮を受けた神城のように、力を受け継ぎ続けた集団は力のみしか価値を置かなかった連中は、それ以上の力を持つものを傲慢により踏み躙ろうとして踏み躙られた。

風椿は強欲を持って式森に近寄ろうとした、それに力で返すのは芸が無いし、あらぬ誤解を招くならば、招かぬようにそれに相応しい対応をしてやろう、それに相応しい対応がいい見せしめと為るだろう、見せしめは何も死体である必要など欠片も無い、恐れを与えるのが血である必要など微塵も無い、見せしめに必要なのは、己達に関わるのにどれほどの危険と覚悟を持って挑まなければ為らないかを世間に知らしめること。

それ以上に見せしめの価値は無い。

それならば血など必要ない、風椿を血で滅ぼしても意味が無い、本当に二番煎じでは意味が無い、同じ趣向では、同じやり方では更なる見せしめとしての価値は下落する。

見せしめの価値は高騰させなければならない、それに風椿にはそれ程血の制裁でもって対しても溜飲の下がる相手でもないときている。

よって、こういう趣向はどうだろう。


調度のいい応接室、人をもてなすにはそれほどの間違いは無いであろう部屋、風椿邸の客間であり、この度の混沌の舞台となる場所、血ではなく血以外の何かでもってこの館の人間が辛酸を舐め、誇りを殺戮され、全てを蹂躙される場所。

其処に座す面々。

応接用の柔らかいソファに腰を下ろした一人は渋面を、一人は恐怖を貼り付け、その後ろに数人の人間が控えている、座っているのは女性が二人で、後ろに控えているのは男女混合といった感じではある、そしてその向かい応対される客人の身分で座っているのが三名。

一人は三十を超えているだろう北欧人、白人、しかも北方に生まれ育った特徴として白人にしても肌が白く、そして髪は薄い金髪、長身で顔の造作も悪くないそれに年齢も感じさせない美女。

だが彼女のその造作に魅かれる男性がいるだろうか、少なくとも町を着飾って歩いても誰も声を掛けないだろうし、それが夜の歓楽街でも同じだろう、彼女の造作は“絶世”とつけていいほど美しいが、右目をかけて奔る大きな火傷、そしてスーツの胸元や首に走る大きな傷、そして何より彼女が湛える雰囲気、それらが全てが全て常人から、常識から彼女を隔絶し、彼女を際立たせ、彼女を形成している、そんな彼女にナンパでも仕掛けられる男がいたらそれは勇者だろう、いろいろな意味において。

だが、もしその勇者がいても直ぐに自分が蛮勇を持った愚者だと悟らされるだろう、彼女がその言葉に反応し目を向けた時に。

彼女の目に射抜かれて自分の蛮勇を自覚させられる、絶対に確実に自分が何の為に彼女に声をかけたのも忘れて自覚させられるだろう、自分が声をかけて何か出来るような存在ではないと。

それを判らせるだけ彼女は嫌な目なのだ、どうしたらこういう目を出来るのかというほど深く、暗い瞳、濁り、澄み、混ざり、昇華され、黒という形容が似合う瞳、地獄を見てきて、煉獄を味わい地獄から這い上がってきたような、そんな人間の目、世界の汚物という汚物を目に焼きつけ、醜悪という醜悪を目に捉えなお生きていく。

世界の闇を理解し、世界の外道さを精通し、己自身の汚れも自覚しきり、そしてその汚物に塗れても、なおその地獄に身を堕とし生きている人間の目。

“悪党”の目。

それも飛びっきりの“悪党”の目。

彼女は“ミス・バラライカ”、ロシアンマフィア“ホテル・モスクワ”を指揮する女頭領。


何故、彼女がこの場にいるか、この場に式森の報復の舞台に部外者である彼女が報復の制裁執行を直接行う立場の位置に属しているか。

それは式森一族に従ってのことではない、式森には従属を宣言する一族が数多といる。

例えば、“守前”然り“射庭”然り“明意”然り“沫拿”然り、他に従属を宣言する一族はいるが、彼女は、いや出夢や崩子はその限りではない、彼女達は式森一族には仕えてはいない、“式森一族”には従っていない。

では何故協力し、力を貸し、力を執行し、狂えるほどの忠誠心を露にするものがいるのか。

彼女達は“式森和樹”に協力を表明しているから、“組織”ではなく“個人”に協力する人間、もしくは個人に忠義を示す人間や組織。

無論“協力”といっても崩子のような絶対の主従出夢のような金銭契約、組織対個人の協力等様々だ。

確かなのはm彼女達は式森当代“式森和樹”に“協力”を露にしている、“一族”の忠誠とは違い“協力”を、無論、“協力”と言っても一族と大して変わらないのではないかという立場を表明しているものはいるにはいるがそれはそれぞれの異種模様といったところ。

そんな異種異様で多種多様な彼等を“十三階段”と呼称する。

誰が呼び出したのかは知らないが誰かが決めたその協力者達の総称。

一段目ミス・バラライカ“ホテル・モスクワ”“戦争の女神”

二段目闇口崩子“殺人奴隷闇口一族”“殺戮狂戦士”

三段目結城美沙“FTI”“DIRTY FACE”

四段目匂宮理澄“殺戮奇術集団匂宮雑技団”“カーニバル”

五段目匂宮出夢“殺戮奇術集団匂宮雑技団”“マンイーター”

六段目遠野秋葉“遠野グループ”“赤い悪魔”

七段目ネロ・カオス“死徒二十七祖”“666の混沌”

八段目黒桐幹也“伽藍の堂”“ガランドウの鞘”

九段目両儀式“祓い名四家筆頭両儀家”“ガランドウの刃”

十段目インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング“王立国教騎士団”“指揮者”

十一段目零崎人識“殺人鬼一賊零崎一賊”“人間失格”

十二段目赤屍蔵人“運び屋”“キリング・ドクター”

十三段目風椿葉流華“風椿財閥”“仕掛け人”


ちぐはぐにて異種異様、多種多様にて魑魅魍魎の巣窟具合、がない混ぜで混沌と混乱を招く面子が揃い踏み、一人とて普遍を踏みしめる人間はおらず、普遍に拘る人間もいない。

正しく十三階段、十三の魑魅魍魎、十三の位を冠する化け物具合。

経済人、殺し屋、暗殺者、盗掘者、騎士、運び屋、殺人鬼、調べ屋、吸血鬼、祓い屋、マフィア。

誰も彼もが、そして誰をさしても化け物、誰を指しても超越者、誰を刺しても一筋縄ではいきはしない化け物具合、それぞれがそれぞれで化け物、人として一つ上の段階に立つ魑魅魍魎。

そしてそれぞれ“十三階段”に存在する理由もちぐはぐだ。

打算で階位に座す者。

忠義により階位に座す者。

愉悦により階位に座す者。

それぞれがそれぞれの思惑を孕んでの十三階段、協力関係を築き上げている十三人。

曲がり、歪んで、螺旋を描き、幾何的に形成される地獄の鬼の協力関係図。


だが、十三階段とされるが、その実はそれぞれ個々人にとり協力表明の理由が異なるのと同様に其々が取る立場のおき方も其々が違う、純粋に階位というものは一位であろうと十三位であろうとどうでもいい、これは余りの意味が無い欠番が出れば空位になり位に過剰が出ると位階を増やす、語呂がいいから十三階段と呼んでいるに過ぎない、十二人でも十四人でも座している数がどうであろうかはどうでもいい。

違うのはそれぞれの協力者が其々に背負うものが違うということ。

ミス・バラライカ、結城美沙、遠野秋葉、風椿葉流華、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング、彼女達の協力は個人が表明するものだが、その実個人では済まされない、組織を率いる彼女達は組織の長としての協力表明、故に厄介だよ、組織というものは個人の動きが酷く制限される。

無論それは式森を率いる和樹にも言えたことだが、彼はそれをそれほど厭う座についてはいない、彼を支える忠誠が彼を維持している、彼を支える一族が異端に過ぎる。

それはさておき組織を率いる人間、それに課せられる責と義務。

彼女達の指示一つで動く人間、魑魅魍魎、資金、権力、暴力、その様々模様に違いはあれど組織を率いる彼女たちに式森が率いる組織との敵対は考えられない、組織を守り率いる義務を背負った彼女達は“十三階段”と言え、いや“十三階段”だからこそ式森に叛意を見せることの恐ろしさを熟知している。

無論その恐ろしさを熟知した上での協力表明なのであるから。

十三階段の其々がその覚悟は持っている、それがどのような覚悟は其々が其々で理解の及ぶ所ではないのだが。

それでも“十三階段”は飽くまで協力関係、裏切り、謀り、それらが渦巻くことなど考えられないとは言い切れない、実に十三階段に座すものでも三名ほどは和樹自身が信を置くなど到底出来そうに無い魑魅魍魎が混ざっている、彼らが裏切りを、それ以前に協力関係の破棄を求めてきてもなんら不思議も無い、敵に回ることも、殺しあうことも。

実際、明日にでも“十三階段”を脱会しても驚きどころか“ああ、そうか”の一言で済ませられるような面子もいる。

だがその面子である彼等は個人に過ぎない、個人で動く彼等にはその判断が出来る。

だが組織を率いる人間の“十三階段”は裏切りを考えにくい、“式森”に容赦は無い。

彼女達が叛意を表明すれば、敵対を表明すれば“式森”は容赦なく果断なく敵に回る。

無論協力関係の破棄だけならばそれほどの制裁も報復も無いだろうが、“式森”という異端の存在の力から離れるのも組織の人間としては考えにくい。

協力関係といった間柄で双方共に利益を共益する、それが“式森和樹”と“組織人の十三階段”との関係のあり方、勿論、個人的な感情の有無が無く協力を表明しているわけでもないが。

前提として利益、そしてその利益が価値のある、逃すには惜しすぎるものの場合、そして利益を除いても関係を持つことが有益である場合、組織は組織の人間は個人の判断は赦されない、特に上にいる人間は組織そのものだ。

故に彼女達は忠義を表明している。

協力ではない忠義を。

ミス・バラライカはマフィアの仁義をもって。

結城美沙は経済人としての契約をもって。

遠野秋葉は従えるべき数多の人の未来を背負って。

インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングは騎士の誓いをもって。

協力を表明する。

そして協力というのは互いに互いを補い合うことだ、其々がそれなりの見返りをえるのは当たり前、そして式森和樹もその見返りを怠ることは無い。

従属、奴隷宣言をしている闇口崩子に関してはその限りではないが、彼女は奴隷として存在することのみに価値を置いているのだから、見返りの一切を要求しない奴隷、その限りにおいて彼女は例外。


では話を戻そう、物語を元の流れに戻そう、だが異なことだ、十三階段の一つの階位に“風椿”の名はある、それなのにこの度の暴挙、この度の失態、どうなることやら。


ミス・バラライカ以外のこの場に客人という立場で存在しているのは前述したが二名。

伊庭かおりと紅尉紫乃、“猟師”と“参謀”の約分を式森一族により任ぜられている二人。

かおりが存在しているのは“射庭”の最強の駒として力が必要になった場合。

容赦なく屍山血河を形成し、喰らい、新たなつまらない二番煎じではある種を蒔く為。

彼女の戦闘能力は死徒二十七祖に匹敵する戦闘能力、そして人外の力、存在してからの年数こそ短いから脆弱さはあるが紛れも無く真祖の吸血鬼、黒の姫君とくらぶれば脆弱の一言に尽きるが“空想具現化能力”も保有している(どちらかというと英雄王のマスターの“投影”の能力に近いのだが)。

故に一人で十全、彼女を止められる存在となると“十三階段”では両儀式、ネロ・カオス、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング、結城美沙の四名のみ。

そして柴乃がいるのは“参謀”故に、知恵をまわして他者を弄するのは“明意”の生業。

まぁ、バラライカの補佐だが、彼女はただの予備、式森としても風椿を物理的に駆除する気は、色々とあるので最後の手段としたいので、その最後の最後の判断を下す予備。

かおりに武力制裁権を行使する為のトリガーとしての役割でこの場に存在している。

基本的に“十三階段”の面子は式森に仕える一族に対しての如何なる命令権も保持していない、逆に一族は和樹の委託により十三階段に対する依頼権のようなものは持っている。

理不尽だが、従者一族が仕えるのは式森である以上は色々とあるわけだが。

いい加減に駆除を対象とした会談を始めよう、この度は死者の山を築かず、血の河を形作らず、ただただ陰湿な会話を繰り広げるようにと重畳しよう。

世にも剣呑な話し合いの舞台、話し合いという名の脅迫舞台、介入者が来るその時まで、存分に。


介入者が誰なのかは既に十全に承知のはずだろうが、判り切った物語ではあるがお付き合い願おう、所詮始まりも終わりも見えた物語なのだから。


バラライカは暗い瞳を気だるそうに目の前にいる女、風椿麻衣香に向け、頭の中で彼女が何を考えたのかは知らないが嘲る様に唇を歪めてから、口を開いた。

「既にそこの娘から聞いているだろうが、禄でもないことをしてくれた。態々私が日本にいたからといって引っ張り出されたのだから迷惑極まりないが、これも仕事だ、仕事とも呼べん仕事なのだが。私は任された仕事はこなすのが信条だ。それにあの方の怒りを、“あの連中”の怒りを買うとは些かばかり、愚かだ。ヤポンスキ(日本人)、命が惜しくはないのか」

流暢な日本語を話し出すバラライカ、その言葉を受けて渋面を更に引きつらせる麻衣香、彼女は玖理子からの報告を受けて(つまりは玖理子は手荷物よろしくここに連行されたわけではない)、自分達がくだらない事をしたことを半ば理解していた、その理解が愚かなことをする前に下せていれば問題ないのだろうが、ことの後では何の価値も無いだろう。

それでも神城に比べれば天と地の差がある程、知恵、この社会を生きていく知恵は身につけていると判断するべきだろうか。

「禄でもない事。確かにこちらのしたことは褒められた事ではありませんが、何故貴女がこの場にいるのですか。貴女はロシアの新興勢力“ホテル・モスクワ”。貴女に何らかの危害を加えた覚えはこちらには御座いませんが」

どうやら彼女、バラライカの存在とその力を知っているようだ、まぁ、それほど秘匿されている事項でもない、裏の世界の人間ならば最近になって力をつけているマフィアの存在くらいは感知しているだろう、それくらいは承知のはずだが。

「ほう、私を知っているか。それでも私を知って式森を知らないというのは勉強不足だな。確かにそれほど有名な話ではないが“式森”の話は探せばいくらかは出てきそうなものだろう。なぁ“ヴァンパイア”」

バラライカは目を逸らさずに隣に座って、能面のような無表情を持ってこの場にいる、殆ど臨戦態勢といった状態のかおりに声を掛ける。

「そうだな」

陽気ないつもの様子を持たないかおり、本日の午後を過ぎたころからずっと続いている冷徹なテンションを維持してこの場にいる。

「ふん。話に乗る余裕は私の同志にはないようだが。話を進めよう、何も茶会を開きに参じたわけでも、懇親会を開きにきたのでもない、無論何らかの交渉をしにきたのでもない。我々の意思を示し立場を明確にするためにきたのだからな」

そこで視線を僅かに紫乃のほうにバラライカは寄せ、彼女の僅か会釈を確認したのか、言葉を続ける。

「“ホテル・モスクワ”はこの度、式森の意志により。この件に介入する」


まぁ、これからは喧々囂々だ、風椿にしてみれば、式森の片鱗が見えてきているとはいえ、全体を理解などはしていない、全体を理解するものなど裏でも少数なのだから、数日単位でしか調べていない風椿に理解しろというほうが無茶なのかもしれないが。

新興とはいえマフィアが完全介入されるなど彼女、風椿麻衣香の考えていた今回の最悪のシナリオにも予見されてはいなかっただろう、まぁ、この数日後に彼女は神城の末路を知った彼女は自分達が生きていることで十分に幸運だったのだと理解するのだろうが、この時点で幸運だったと理解しろというのは無茶。

麻衣香がバラライカに対して何らかの反論を返しても、バラライカはあざけるような口調でのらりくらりと言葉を続かせる、バラライカはまるで何かを待つように、何かを待ち望んでいるように。


そして待ち望んでいるのは間違いではなく、待ち望んでいるものはきた。

なんとも形容し難い状態の風椿側が陥っている時にその部屋に入室してきた女によって。

「葉、葉流華。貴女、今日本にいないはずじゃあ」

入ってきた女に対して、余裕というものを失っていた麻衣香が声を掛けるが。

葉流華はまるでそちらのほうに見向きもせずバラライカに目をやり。

「“フライフェイス”、和樹に伝えておけ。家の風椿系列の銀行、証券会社、保険会社の風椿が保持している証券の全てを譲渡する、譲渡手続きも終了した。お前には恐らくは風椿証券の利権をやることになるだろうが。これでいいだろうかおり、これで今回は手打ちにしておいてくれないか。これは殆ど風椿の隷従を誓わせたようなものだが」

そう告げた。

経済的な風椿の死となるような言葉を。


後書き。

“十三階段”完全に某小説の設定なんですが流用しました。

それぞれの役割は。

一段目ミス・バラライカ“ホテル・モスクワ”“戦争の女神”

マフィアとしての裏からの力、裏の経済力、利益協力関係。

二段目闇口崩子“殺人奴隷闇口一族”“殺戮狂戦士”

奴隷。

三段目結城美沙“FTI”“DIRTY FACE”

利益協力関係、及び情報提供、技術供与の相互関係、主にオーパーツ関連。

四段目匂宮理澄“殺戮奇術集団匂宮雑技団”“カーニバル”
五段目匂宮出夢“殺戮奇術集団匂宮雑技団”“マンイーター”

金銭契約関係、主は殺戮実行。

六段目遠野秋葉“遠野グループ”“赤い悪魔”

利益協力、また祓いの仕事の協力関係。

七段目ネロ・カオス“死徒二十七祖”“666の混沌”

和樹の個人的知己。

八段目黒桐幹也“伽藍の堂”“ガランドウの鞘”
九段目両儀式“祓い名四家筆頭両儀家”“ガランドウの刃”

伽藍の洞つながり、式森の魔術がらみで知り合い、詳細不明。

十段目インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング“王立国教騎士団”“指揮者”

祓い関係の協力関係。

十一段目零崎人識“殺人鬼一賊零崎一賊”“人間失格”
十二段目赤屍蔵人“運び屋”“キリング・ドクター”

和樹の個人的知己。

十三段目風椿葉流華“風椿財閥”“仕掛け人”

謎、というか次回。

という関係図が出ました。

>D,様
狼のお兄さんは、描写すらされずに出夢によって殺されています、故にこれ囲碁出番なしです。風椿は経済的に滅んでもらいましょう。
リーラの扱いですが、彼女は忠臣という立場でしょうが武力行使も出来るタイプなので“猟犬”となってもらいました。

>メノン様
まぁ、本当に滅ぼしたのは見たことありませんねぇ、でも見たこと無いのを書くのが目的ですから、それを言われるとうれしかったりして。

>皇 翠輝様
闇口も匂宮も終盤から活躍するキャラですからねぇ、特に最新刊ではいい役回りをしていますし、伽羅はわかりづらいかも知れませんねぇ。

>ttt様
風椿には謝罪を求めるようなまねはせず行き成りの最後通牒でした。

>ブルガ様
次で宮間を滅ぼしたら報復編は終了ですかね、前のほうで風椿はまだチラッと入れる予定ですが。

>福庵様
今度は経済を使ってですが、完全に今のご時世の買収と絡めて見ましたが、その辺はどうでもいいですが、行き成り経営権奪われたらかなり経済的には殺されるんじゃないでしょうか。

>晴れときどき涙
賢人会議・・・・・・・・・・・・・・出るのかなぁ

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