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「まぶらほ そして伝説に・・・第1話(まぶらほ+オリジナル)」

くまっち (2005-03-04 17:08/2005-03-06 01:35)
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注意:第0話では和樹君主観で話が展開しましたが、基本的に本編は第三者の立場で展開していきます。

まぶらほ そして伝説に・・・


第1話 


私立葵学園。
全国から優秀な生徒たちが集まる名門校である。
この場合の優秀というのはズバリ魔力の高さ。
世界中の人間が最低数回の魔法を使え、
魔力の強さが人の価値といっても過言ではないこの時代。
高い魔力を持つ物たちを集め、正しく育成する場所。
とどのつまりは魔法使い養成学校である。
だが、この葵学園にも落ちこぼれのレッテルを貼られた者がいる。
その名を式森和樹。
平均魔法回数数千回の葵学園において、総魔法回数8回。
しかも、昔一度使ったため今は7回しか使えない。
容姿は普通、成績は下の中、運動も苦手。
何故葵学園に入学できたのかと言える人物である。
もっとも、それは表向きなものでしかないのだが・・・


「7時半か・・・いつもどおりだな」

腕時計を見ながら歩く和樹。
彼はいつもこの時間に部屋を出る。
彼の住んでいるのは葵学園の男子寮。
学校からの距離としては徒歩10分もない。
ちなみに学校の始業時間は8:30である。
どう考えても早すぎるのだが、彼はほとんど始業時間に間に合ったことがない。

「ん・・・」

学校まであともう少しと言う地点で不意に立ち止まる和樹。
目を閉じ、まるで何かを探っているような感じである。

「・・・ちょっと遠いな」

そう言って目を閉じたまま、何か呪文のようなものを呟いた。
瞬間、眩い光が彼の姿を覆い隠した。

「今日も遅刻かな・・・」

誰に聞こえることもないその呟きを残して、彼は光の中にその姿を消した。
黒髪を金色に変化させて・・・


ヨーロッパのとある山中。
そこに、今この世にいるはずのない者達がいた。
その名を魔族。
かつてこの世に現れた魔王ルシファーが己の魔力によって生み出した存在。
人間をはるかに凌ぐ魔力を持ち、また非常に好戦的な性格。
ルシファーの封印と共に消滅したはずの彼らが、再び甦ったのだ。

「・・・近くに人間どもの町があるな」
「我らの復活を知らしめるいい機会だ」
「さっさと行って、皆殺しにしようぜ」

漆黒の翼を広げて町に向かって飛び立とうとする魔族たち。と、

「グギャァァァァァァ!!!」

突如一人の魔族が不気味な悲鳴を上げ崩れ落ちた。
見ると、右肩から左脇腹にかけてザックリ切られている。

「な、なんだ!!!」

突然仲間が切られた事に驚く魔族たち。
飛び立つのを止め、周囲を見回す。


彼らは一端の魔族とは違う。
S、A、B、C、D、Eのランクで分けるとするならば、
おそらくBランクに位置される実力を持っている者たちだ。
(今の世界で最強クラスに位置される召喚獣『ベヒーモス』はDランク)
当然魔力も知能も高い。
その彼らを一撃で倒せる者などそうはいない。
まして、魔力が衰えているこの時代になど・・・


「ギャァァァァァァァ!!!」

再び悲鳴。
今度の奴は腰から上下に切断されている。

「クソッ、一体何なんだ!!!」

信じられないようなことに動揺する魔族達。
彼らの心に、恐怖というものが浮かび始めた。


人間と魔族の戦いが終わって1000年。
技術の発展と同様に、戦いが無ければ魔術は発展しない。
ルシファーが封印されて以降、大きな戦いが一度も起こらなかったために
人間の魔術は衰退してしまった。
結果回数制限などというものが付き、魔力自体もかなり低下してしまった。
Dクラスに位置されるベヒーモスが、現代で最強クラスと呼ばれているほどだ。
つまり、今の世界には魔族と戦える人間などいないのである。


「落ち着け!何者かわからんが、反応できない速さではない!!」

リ−ダーと思われる魔族の号令に落ち着きを取り戻す。
すぐさま魔力を高めて周囲を探る。
するとリーダーの言葉どおり、何者かが高速で移動しているのが感じられるようだ。

「・・・・・・」
「人間のようだが、この速さは・・・ん!?」

魔族達の変化を悟ったのか、その何者かの気配が消える。
と、1人の魔族が木々の間に佇む男を発見する。
その男は輝かんばかりの金髪で、右手に自身の背丈ほどの大剣を持っていた。

「貴様!!!」

瞬時にその男が仲間を殺したのだと理解した魔族。
凄まじいスピードで男に飛び掛る。
見ると、右手に魔力を集中させて黒い刃を作り出している。
そのまま男の首目掛けて刃を振り下ろす。
あと1秒もせぬうちにその刃は男の首を跳ね飛ばすだろう。
しかし男はさして慌てた様子もなく、そして、

 ザシュッッッ!!!

自身の首めがけて振るわれた刃を紙一重、しかし完璧に避け、
すれ違い際に斬撃を叩き込む。
いつ剣を動かしたのかも判らないほどの超神速。
確実に決まると確信していた魔族は男の行動に反応することが出来ず、
自身がやられたことに気付いたと同時に消滅した。

「・・・・・・」

その光景を見た魔族達。
先ほどの奴のように飛び掛かる事はせず、無言のまま構える。

「・・・・・・」

男も無言で近づいていく。
剣を下ろし、見るからに隙だらけのまま。
だが魔族達は攻撃を仕掛けない。
既に男の実力を把握している。
不用意に飛び掛れば即殺されると。

「ちっ!」

それは魔族に屈辱的なものだった。
基本的な能力では自分たちに全く及ばないはずの人間に恐怖という感情を抱かされているのだ。
自分の力に自信のある者ならばなおさらである。
やがて男は魔族達のいる場所までやってきた。
距離にして2メートル。

「貴様・・・何者だ」

リ−ダーの魔族が問う。
しかし男は答えない。
無言のまま剣を構える。
と、男が一言だけ喋った。

「・・・俺は魔を狩る者だ」

そのセリフを合図に、男の姿が再び消える。
その直後、

 ザシュッッッ!!!

「ギャァァァァ!!!」

 ザシュッッッ!!!

「グワァァァァ!!!!」

 ザシュッッッ!!!

「ガァァァァ!!!!」

先ほどまでとは比べ物にならないスピードで魔族を切り殺していく。
それは、もはや彼らでも反応することさえ出来ない。

「ば、ばかな・・・」

リーダーの魔族が愕然とした様子で呟く。
このとき、彼は己の間違いを悟った。
自分たちが対峙した男が一体誰だったのか。
それに最初に気付かなければならなかったことに。
もっとも、最初に気付いていたとしても結果は変わらなかっただろうが・・・

「・・・終わりだ」

その言葉を最後に聞き、彼の視界は闇に落ちた。
もう二度と抜け出せない、底なしの闇へと。


すべてが終わった山中。
男は立っていた。
先ほどまで目の前にいた魔族達のことを考えながら。
いつの間にか右手に持っていた剣が消えている。

「さてと、帰るか。時間は・・・」

腕時計を覗き込む男。

「あーあ・・・もう二時間目始まっちまうよ」

男はぼやきながら歩き出す。
金色の、いや、先ほどまで金色だった黒髪をなびかせて。


あとがき

飽き飽きされているまぶらほのプロローグ第0話から一変、
いきなり話が飛んでしまって申し訳ありません。
基本的に趣味に走っているので・・・
これ以降はまた本筋?に戻ります。


レス返しです


ていん様

 大丈夫です。和樹君は後悔なんてしません。
 人間諦めが肝心ですからね。

皇 翠輝様

 それで刈り取れるんならそうしておきたかったですよ(泣)

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