Revenge For The Destiny
〜序章〜
第3話「追ってきた妹」
アキトがつっ走ってユーチャリスのブリッジに入ったと同時に、ボソンジャンプは完了した。そしてそこにいたのは……
「イ、イネスさん…?」
そう、彼の主治医であり、数少ないA級ジャンパーの1人、イネス=フレサンジュであった。しかし、ジャンプに体力を使い過ぎたのか気を失っている。そしてアキトが彼女を抱き上げようとした時にルリとガルムが追いついた。
「ハァ…ハァ…ハァ…アキトさん、どうしたんですか……って、イネスさん!!?」
「えーと、お知り合いですか?」
「はい、アキトさんの主治医だった人です。取りあえず、気を失っているようですから、どこか横になれる所を貸して欲しいのですが…」
「ええ、よろしいですよ。すぐに準備させましょう」
ルリとガルムがそんな会話を交わした時、少し身じろぎしたイネスが何か呟いた。
「んん……お兄ちゃん…どこなの……お兄ちゃん………」
それを聞いて苦笑するアキト。ルリは『やっぱり』といった表情をしている。ガルムはどういう事か気になったが、後で聞けばいいかとベルに連絡して部屋を用意させた。
そしてそれから数分後、彼らははじめにいた部屋に戻っていた。
「それじゃ、あなた方の世界の事を少しお教えして頂けますか?」
そうガルムに問われて、自分たちの事を話すアキトとルリ。一通り話し終わった時、ガルムの目には炎(涙にあらず)が浮かんでいた(ちなみにベルはイネスの所に行っている)
「…………という訳です」
「…なんと……身勝手な理想のために他人を平然と犠牲にするとは……」
ガルムがそう唸るように呟いた瞬間、部屋のドアが開いて、1人の男性が部屋に入ってきた。彼もガルムたちと同じように銀髪で紅い瞳をしている。
「話は聞かせてもらったぜ。艦長、こんな話を聞いて黙っている訳にはいかねぇ、何とかしてこの2人を…いや、その世界で虐げられた奴等を助けてやろうぜ!!」
「フェン、また立ち聞きしてましたね?心配せずとも私もそのつもりですよ。もっとも、そうするかどうかは彼らに決定してもらわねばなりませんが……その前に自己紹介くらいしたらどうです?」
詰め寄ってまくし立てるフェンと呼ばれた男性に、またかといった表情で話すガルム。そう聞いて思い出したようにフェンリルはアキトとルリに自己紹介を始めた。
「へ?あ、そういやそうだな。えーっと、俺の名前はフェンリル。フェンリル=ハルトマン。愛称はフェン。この船の火気管制員兼参謀をやってる。よろしくな」
「あ、ああ。よろしく……」
「よ、よろしくおねがいします…でも、そんな歴史を変えるなんて事が出来るんですか?」
フェンの剣幕に少し引きながら問うルリ。それも仕方が無い。何せコイツは見た目からして怖い。銀色のロンゲを首の後ろで縛って纏め、さらに元から強面の上にあごには無精髭をはやし、おまけに身長は190を楽に越える長身である。初対面の女性に怖がるなと言う方が無理というものだ。
「無理ではありませんよ。もっとも、あなた方が今までいた世界の歴史が変わるのではなく、私達が介入した時点でそこからまた別の平行世界が生まれる、となりますが……」
「つまり、俺たちが今まで過ごしていた世界は、変わる事は無い、という訳か……」
フェンの行った事を補足するように説め…解説するガルム。そしてそれを聞いて少し表情を曇らせて答えるアキト。しばし沈黙が続いた後、ガルムが思い出したようにポン、と手を叩いて話し出した。
「まぁ、どうするにせよテンカワさんの体を治す事が先決ですね。危うく失念する所でした、すいません。という訳でテンカワさん、ホシノさん、こちらに来てもらえますか?」
そう言ってアキトたちを別質に案内するガルム。フェンとそこで別れ、目的の部屋に入ると、そこにはCTスキャナーのような機械がデデン!!と置いてあった。
「これは『N・A・O・D(ノード)…ナノマシン・アナライズ・オペレーション・デバイス』ま、解りやすく言えばナノマシンの解析・操作装置です。これを使ってテンカワさんの体内に入れられたナノマシンを解析、不要な物はアポトーシスプログラムを送って除去します。それではテンカワさん、マントとボディーアーマーをとってここに横になって貰えますか?」
その言葉に従って横になるアキト。ちなみにボディーアーマーの下は黒のアンダーウェア(結構ぴっちりしてます)だけなのでルリが顔を真っ赤にして目をそらしていた。
「それでは、手術を開始します……あ、ホシノさんは部屋の外で待ってて頂けますか?何せ量が尋常ではないそうですからかなり時間がかかると思いますので」
「あ、はい。解りました」
そう答えて部屋を出るルリ。これからどうしようかと悩んでいると、廊下の向こうからベルと目を覚ましたらしいイネスさんが歩いてきた。それに気付いたルリがイネスに話しかける。
「イネスさん…目、覚めたんですね」
「ええ、彼女に今までの事を聞いたけど…私達、物凄い所に来ちゃったようね。で、お兄…アキト君は?」
心配そうに尋ねるイネス。まぁ、慕って追ってきた男が現在手術中ともあれば無理はあるまい。
「今、手術を開始したところです。大丈夫ですよ、きっと……」
イネスを元気付けようとそう言うルリ。しかし、そう言う彼女も体が幾分震えている。すると、不意にベルがルリを抱きしめた。
「大丈夫よ。彼は一度言ったら絶対に実行する人だから…もしここの施設でダメなら全世界を探し回ってでも治す方法を見つけてくるわ。だから、大丈夫……」
そう言ってルリの頭を撫でるベル。しばらくそうしていると、安心したのか緊張の糸が切れたのか、ルリは眠ってしまった。その無垢な寝顔に微笑むイネスとベル。
「ベルさん……艦長…信用していいのね?」
「ええ、さっきも言いましたけど一度言ったら是が非でもそうする人ですから。それでは、手術が終わるまでこちらで休憩します?」
そう言って隣にある『待合室』と書かれた部屋を指差すベル。それにイネスも同意し、その部屋にあったソファーにルリを寝かせ、手術が終わるのを待つ2人。そして手術開始から18時間後……手術が終わった。
To Be Continued……
後書き
今回から後書きは次回の題名予告のみとさせて頂きます。という訳で、次回『新たなる力(仮)』お楽しみに!!
PS.取りあえずこれからはレス返しは次の話の最初のレスにさせて頂きます。これについてはころころ変わるかもしれませんが、初心者ゆえの試行錯誤と思って下されば幸いです。どうか、ご理解よろしくお願いします。
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