Revenge For The Destiny
〜序章〜
外伝「After a fairy and a prince disappened」
アキト達がランダムジャンプで消えて早一ヶ月、ナデシコに関わっていた人達はいまだ悲しみの中にいた。そしてこの日、正式にルリは戦死扱いとなり、地球連合軍本部でルリの告別式が行われていた………。
「うううっ…艦長……」
「泣くな、ハーリー…泣くんじゃねぇ…お前がそんなんじゃ、艦長が安心して天国に行けねぇだろうが…」
泣き崩れるハーリーと涙を流しながら彼を慰めるサブロウタ。
「どうして…どうして……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ユキナ……」
ルリの遺品が入れられた棺桶に泣きつくユキナと、かける言葉が思い浮かばずただ立ち尽くすミナトさん。
そして告別式が終わった後、ナデシコAのクルー(+2人)は日々平穏に集まっていた……。一番奥の席には、ルリとアキトの遺影が置いてある。
「まさか、ルリ坊とテンカワがこんな事になっちまうとはねぇ……ナデシコクルーの中じゃ一番若かったってのにさ…」
「まったくだ…やり切れねぇぜ、マジで……テンカワも、ルリルリも……悪い事なんざひとっつもしてねぇってのによぉ…」
「理不尽にもほどがあるわよ…大体何なのよあの発表は!!原因はユリカなのに、まるでアキト君が原因みたいじゃない!!」
酒を飲みながら話すホウメイさんとウリバタケさんとミナトさん。ミナトの言う発表とは、ルリの死因についての連合宇宙軍の公式発表の事である。概要はこうだ。
『ホシノ大佐(2階級特進したため)は、火星の後継者の乱の時のコロニー襲撃犯であるテンカワ=アキトと交戦、彼の船に直接取り付いてハッキングをしようとし、テンカワ=アキトの行ったジャンプに巻き込まれた』
と言うものである。ジャンプの原因がミスマル=ユリカの撃ったグラビティブラストである事は厳重な緘口令が敷かれ、口外される事は無かった。ナデシコAのクルー達は真実を公表しようとしたが、軍上層部(ミスマル提督よりさらに上)からの圧力がかけられ、やむなく黙る事となった。
「何でよ!!何でルリルリが死ななきゃなんないのよぉ!!!」
「ユ、ユキナ……落ち着いて…って言っても無理だよね…それにしても…ユリカにアキト君の事を黙っていた事がこんな形で裏目に出るなんて…」
ジュンの胸に顔をうずめて泣き続けるユキナとなんとかなだめようとその頭を撫でるジュン。
「なぁ、ユリカの野郎は…まだ病院か?」
「うん、いまだに錯乱状態が続いてるらしいよ…」
「(コクコク)………………」
あおるように飲み続けるリョーコと、酒の入ったコップを抱えるようにしたまま話すヒカル。イズミさんは告別式の時から一言も喋っていない。相槌はうっているが。メグミとホウメイガールズとネルガル組は抜けれない仕事があったため告別式には出たが、ここには居ない。そして、こうなった原因とも言えるユリカは、事件以来錯乱状態にあり、今も病院に入院している。そしてその夜は、日々平穏から光が消える事は無かった……。
そして事件から1ヵ月後、イネス=フレサンジュ博士、行方不明。以後ボソンジャンプ研究が事実上ストップ。そしてさらに5年後……。
「アキトを貶めた奴ら……許さない…絶対に!!」
「ラピスが戦うというのなら…僕も協力するよ……」
「これ以上…腐敗した軍を許す訳には……!!」
記憶を取り戻したラピスと、彼女と付き合うようになっていたハーリー、それに以前にも増して酷くなった軍上層部の腐敗に耐え切れなくなったジュンの3人を首魁とし、ジュンに同調した兵を主力とした武力組織『ミルヒシュトラーゼ(ドイツ語で天の川の意味)』による、通称『マシンチャイルドの乱』が勃発。まず、統合軍上層部、そして連合政府がハッキングで落とされた軍事衛星により全滅。そしてこの乱の最初で最後の艦隊戦となった月軌道会戦。この戦いでミスマル=コウイチロウ大将率いる第1艦隊(トビウメ改級超ド級戦艦『スサノオ』、ナデシコD級戦艦×50、巡洋艦多数)とアオイ=ジュン率いるナデシコ艦隊(ナデシコB×1、ナデシコD級×20、巡洋艦×30)が激突。はじめは互角に戦っていたが、突如横から乱入してきた所属不明艦(後に、宇宙軍とネルガルの台頭を快く思っていなかった統合軍とクリムゾンに作られた物と判明)から放たれた相転移砲により、両艦隊は壊滅(所属不明艦はその直後自爆)アオイ=ジュン、ミスマル=コウイチロウ、そして、コウイチロウと共にスサノオに乗っていたミスマル=ユリカの3人をはじめとし、多くの兵が戦死。そしてその混乱に乗じて統合軍の残存艦隊が『ミルヒシュトラーゼ』の本拠地を急襲、これを壊滅させた。しかし、ラピス、ハーリー両名は地球、月、火星、木星の全てのメディアに統合軍上層部がやっていた汚職やクリムゾンや火星の後継者が行っていた非人道的な人体実験、それに蜥蜴戦争時のクリムゾンの木連との内通などが証拠付きで書かれたメールを送付した後ナデシコCにて脱出。以後、この船と彼らを見た者は居ない………。
こうして、蜥蜴戦争に始まった10年の長きにわたる戦争が幕を閉じた。後にこの10年間は『ボソン戦争』と呼ばれる事となる。そして、生き残った人達は……
アカツキ=ナガレ
マシンチャイルドの乱の2年後、秘書であったエリナ=キンジョウ=ウォンと結婚。しかし、その3年後に彼女と共に謎の失踪を遂げる。以後の行方は不明。
ハルカ=ミナト
戦争後は教職に復帰。その容姿と人柄ゆえに縁談が多数来るが今は亡きシラトリ=ツクモに操を立てて生涯独身を貫く。
シラトリ=ユキナ
高校卒業後は大学を経てミナトと同じく教職につく……はずだったが、マシンチャイルドの乱の半年前にジュンと結婚。たった半年間の結婚生活ではあったが、幸せだったようだ。そして乱の7ヵ月後に男の子を出産(勿論ジュンの子供です)その後教職につく。ジュンに操を立て、再婚する事は無かった。
ウリバタケ=セイヤ
戦争後はネルガル開発部に勤務。名物部長として部下から慕われるようになるが、アカツキ失踪と共に退職。元の違法改造屋を再開する。
リュウ=ホウメイ
戦争後も日々平穏を切り盛りする日々を送る。
スバル=リョーコ
戦争後は宇宙軍にてエステバリス隊の教官となる。その後、順調に昇格していき、上層部の腐敗防止に尽力し、後に『高潔な雌獅子』の二つ名で呼ばれる事となる。最終階級は少将。
アマノ=ヒカル
戦争後は漫画家に戻り、売れっ子漫画家として多数の名作を世に出す。
マキ=イズミ
戦争後はバー『花目子』のママに復帰。しかし、4年後に『旅に出ます』という置手紙を残し失踪、以後行方不明。
メグミ=レイナード
戦争後はアイドル声優に復帰。後にとある資産家と結婚し、退職。その後はホウメイガールズと共に平和活動に余生を費やす。
プロスペクター
戦争後もネルガルに勤務。アカツキの腹心として活躍するも、アカツキ失踪と同時に辞表を提出、以後消息不明。
ゴート=ホーリー
戦争後もネルガルに勤務。プロスさん失踪後はネルガルSSの長となる。
ホウメイガールズ
戦争後の経歴はメグミとほぼ同じ。引退後はメグミと共に平和活動を行う。
なお、マシンチャイルドの乱の直後、連合裁判所はテンカワ=アキトにたいし『情状酌量の余地が多分にあり』として彼がかけられていた全ての罪状を免罪する旨を発表。彼は理不尽な暴力への対抗者として尊敬されていく事となる。そして、彼の墓はホシノ=ルリの墓の隣に立てられた。2人の話は、今世紀最大の悲恋話として後々まで語り継がれていく。以上が、妖精と皇子が消えた後の世界の顛末である。
To Be Continued……
後書き
えー、先日友人にこれを読んでもらったところ『次回予告で次の話の大筋をばらしてるから面白くないと思われるんじゃないか?』という言葉を頂きまして、確かに言われて見ればその通りだった訳でして……真に勝手ではありますが、今回からは次回予告は廃止させて頂きます。
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