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「両儀なる瞳〜第6章〜(まぶらほ×いろいろ)」

鬼神 (2005-02-22 19:56/2005-02-22 20:02)
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さて、何とかキシャーを気絶させたものの、すでに葵学園は多大な被害を被っていた。
そりゃまぁ、学園の半分が壊滅状態なのだから当然と言えば当然の光景だ。
それにしても、キシャーはこれだけのことをやらかして責任が取れるのだろうか?

「あ〜、青空教室だなぁ」

本来ならば2階であるはずの2年B組の教室の天井は、なぜかなく変わりに晴天ともいえる青空が見える。
簡単に言えば、上の階は全て木っ端微塵に吹き飛んだと言うことだ。

「こりゃしばらく葵学園は休みだな」

「そうね、それにしてもこの子も結構すごいことやってくれるわね」

と沙弓はキシャーを見ながら言う。
そこには、眼を回して気絶しているキシャーの姿があった。
なお、外傷らしき外傷は存在していない。

「いっそのこと、この場で殺しますか?」

思いきったことを言い切る凛。
確かに、この場で殺せばあとあと楽なのは違いない。
もっとも、それが出来ないのだから悲しいものだ。

「残念だが、こんな状態でもここは学校だ。
一般人の目が多すぎる。それに、殺してしまってはそれをネタに宮間家が何か言ってくるかもしれない」

「そう? ここまでのことをしたんだから、文句なんて言えないと思うけど」

「そうかな? 宮間の男の方は結構まともだが、女の方はかなり頭が逝っていると噂で聞いたことがある」

「つまり、この子みたいに?」

「ああ」

そう言いながら和樹は天鎖斬月を鞘に納めた。
同様に、凛も千本桜を元の状態に戻して鞘に納める。

「じゃ、この子の性格も母親の遺伝?」

「ほぼ間違いなくな。まったく、迷惑極まりない」

そう言って溜息を吐く和樹。
同様に、凛と沙弓も溜息を吐いた。

「いやいや、結構な状態になったものだな」

と、ここで現れるマッドドクターこと紅尉。

「なんだ、このマッド」

「私は決してマッドではないぞ、式森君」

そう言って温和な笑みを浮かべる紅尉。
だが、騙されてはいけない。
この笑みこそ、まさしく悪魔の笑みに間違いないのだから。

「で、なんだマッド」

「ふむ、実は宮間の父方から娘が暴走するかもと言う忠告を先ほど受けてな。
そこで様子を見に着たんだが、どうやら遅かったようだ」

と言ってやれやれと肩を竦める紅尉。
そんな紅尉を見ながら、和樹は猛烈な殺意とあることに確信した。
こいつは、わざと報告しなかったと。

「で、本当のところはいつ報告を受けたんだ?」

「言わなかったかね? つい先ほどと」

「本当のことを言え」

「だからだね」

そこで和樹は天鎖斬月を鞘から引き抜くと躊躇なく紅尉の首筋に刀身を当てた。
紅尉の首筋から微かに赤い血が流れ始める。

本当のことを言えと言ってるんだ

「本当ハ昨日ノ朝デス」

なにやら語感がおかしいが気にしてはいけない。

「そうか、なら死ね

そう言って和樹は何の躊躇もなく天鎖斬月を横に薙ぎ払った。


◆ ◆ ◆


で、現在は和樹の下宿先の部屋。
次に現れたのが玖里子。
作者はこのSSを書いていて改めて実感した。
彼女は影が薄いと!!(ぇ
これから気をつけて書かねば彼女の存在を忘れてしまうかもしれない。
だって、彼女にはこれと言ったインパクトがないしね。

「で、改めて自己紹介させてもらうわ。私の名前は風椿玖里子よ」

「知っています、今現在、上昇家系にある人たちですよね?
その地位を確実にしたものにしたいが故に、俺の血を入れたい、ってとこですか?」

「ええ、概ねその通りね。凛のところの家は理由が逆だと思うけど」

「私の家のところは現在没落の一途を辿っていますから、式森家の血を入れて家系の地位を元に戻そうというのが狙いです」

「そうか・・・・・・凛は俺の家のことを知ってるよね?」

「はい」

「まぁ、言わせてもらうけど、正気?」

とだけ、和樹は聞いた。
もちろん、凛自身はこのような形を望んでいるとは思えない。

「いえ、おそらくこれは神城家の上層部が決めたのでしょう」

「そう、となると俺の行動、凛はわかってるよね?」

「はい・・・・残念ですが」

そう言って凛は微かに顔を伏せた。
そんな凛の表情に不思議そうな顔をする玖里子。

「どうしたのよ? 凛らしくないわよ?」

「いえ・・・玖里子さんは『退魔組織』を知っていますか?」

「ええ。『魔』や『混血』から人々を守るために結成された組織よね」

「そうです。その中でとりわけ強い力と発言力を持つ家系が俗に『四大退魔』と呼ばれています。
『両儀』、『浅神』、『巫浄』、『七夜』がその『四大退魔』です」

「それと和樹とどう関係があるのよ?」

「先輩の家系である『式森』もまた『退魔組織』の末席に名を連ねる一族です。
私たち『神城』は『退魔組織』の中ごろくらいの地位ですね」

「で、まさか末席を守るために『四大退魔』が出張ってくるというの?
それはないわ。末席なんて、所詮使い捨ての駒と同じなんだから」

そう、組織というものはいつだってそうだ。
どうしても運営できない状況に追い込まれると、手初めて手足から切り捨てられていく。
故に、この場合において通常では末席である『式森』を『四大退魔』が庇う事は考えられない。
そう、あくまで通常ならだ。

「いえ、最悪の場合、『退魔組織』そのものを敵に回すことになりかねません」

「・・・・・・・・・・は?」

一瞬、何を言っているのかわからないと言わんばかりの表情を作り上げる玖里子。
そりゃそうだ。
末席を守るために、『退魔組織』に属する全ての家系が出張ってくる。
正直考えられない。

「『式森』は非常に特殊なんです。
玖里子さんの知るとおり、数多の有名な魔法使いの血が流れています。
それだけではなく、数多の有名な『退魔家系』の血も流れているんです。
先ほど話した『四大退魔』の血の発祥は『式森』と伝えられています」

「言うなれば、『退魔組織』の宗家は『式森』だと言いたいの?」

「その通りです。それ故、『式森』は『退魔組織』の末席に名を連ねながら、その実『退魔組織』においては実質的に頂点に君臨します」

それを聞き玖里子は何処となく納得した。
それならば、先ほど凛が話した理解の出来ない展開も理解できる。
組織の長が理不尽なことに言われてきたのだ。
それも、本人の意思を確認せずの、自らの家系の地位を引き上げるための政略的で一方的な結婚の話。
当然、『式森』は怒るに違いない。
そして、それに伴い、『退魔組織』の全てが全力で『神城』を潰しにかかるだろう。
想像しただけでゾッとする。

「まぁ、そう言うわけだ。ま、殺すのは『神城』の上層部の連中だけだけどな」

と、今まで黙っていた和樹が口を開いた。
何の躊躇もなく和樹は殺すと発言する。
その、まるで明日の天気でも話すような軽い口調に、玖里子は戦慄した。
自分より年下の目の前の少年が、何の躊躇もなく殺すと言ってのけたのだから。

「確かに私たち『神城』の上層部は腐っていますが・・・それでも」

やはり自分の家の者を目の前で殺すといわれればいい気はしない。
当然、それに凛は該当する。
だが、和樹に慈悲なんて言葉は存在しない。

「悪いけど、こっちの意思を確認せずの一方的な宣言。
はっきり言って、胸糞悪い。
凛には悪いけど、『神城家』の上層部の連中は皆殺しにさせてもらうよ」

「どうしても、ですか?」

「どうしてもさ。これでも、俺の意思を確認してくるくらいの誠意を見せてくれれば、また話は別だったけどな」

そう言って殺気を振りまく和樹。
そんな和樹を見て、凛は諦めた。
和樹は怒っている。
そりゃ、こんな理不尽なことを言い渡されれば誰だって怒るに違いない。
自分だって、和樹のような立場に立たされれば怒るだろう。
だが、その怒りの対象が自分の家というだけに思いは複雑だ。
凛は『神城』の宗家の人間ではない。
どんなに強いとは言え、凛は所詮『分家』の人間なのだ。
当然、『宗家』の人間との発言力に違いが出てくる。
故に、凛はわかっていた。
おそらく自分が『宗家』に進言しても、『宗家』の人間は聞き入ってはくれまい。
ここ数年、『神城家』には傲慢な考えを持つものが増えつつあった。
自分たちは『四大退魔』より強いだの、『式森』を打倒して自分たちが『退魔組織』の頂点に君臨するだの、だ。
そんなことは不可能だ。
例え本気の凛でも、和樹にはかなわないというのに。
凛よりも戦闘能力が低い者たちが、どうやって和樹を率いる『式森』に勝てるというのか。
和樹の力は『式森』でも最上位に位置する。
だが、和樹のほぼ互角の力を持つ者が『式森』には存在するのだ。
それ故に、誰も『式森』には喧嘩を売らない。
売ることは死ぬということに他ならないことを、知っていて理解しているからだ。
本当に、自分の家系の事だが涙が出そうである。

「まぁ、『神城』の上層部の人間以外は半殺しで終わらせておくから」

そう言う和樹。
どうやらやる気は満々らしい。
もう、止めても無駄ということを凛は理解した。
そして、墓の下に逝くことになる『神城』の上層部の老人たちも。

「とりあえず、連絡でもすればいいさ凛。さすがに、俺も不意打ちという形で奴らを殺したくないからな」

そう言い切る和樹。
その眼には、自身とか自惚れとかはない。
ただただ、淡淡と事実を語っているだけ。

「―――わかりました、それでは少しだけ席を外しますね」

そう言って凛は和樹の部屋から出て行った。

「ねぇ、本気?」

そこで玖里子が口を開く。
確かに、和樹と凛の話の内容は一般人からすれば到底理解の出来ないものだ。
が、それでも和樹が人を殺しに行くのがよくわかる。

「本気さ。『式森』は基本的に敵対行動をとる事は少ないが、ひとたび敵に回れば敵を完膚なきまでに殺す」

まるで石を拾い上げるように軽い口調で言い切る和樹に、玖里子は再び戦慄した。
自分たちは、こんな家系の血を手に入れようとしていたのか、と。
そして、もしかしたら自分たちも滅ぼされるのではないかと。

「まぁ、『風椿』はその辺の部分を知っていなかったようですからね。今回は見逃してあげます」

と、和樹が言うので、とりあえず玖里子は安心した。
そこで、不意にあることが頭に浮かんだ。

「そう言えば、あんたの家の秘密を暴いた探魔士が最近行方不明になってるんだけど、知らない?」

「ああ、あの探魔士ですか」

どうやら和樹は知っているようだ。

「知ってるの?」

「ええ、殺しました

一瞬、玖里子は和樹が何を言ったのかわからなかった。
目の前の少年は、なんと言った?

「・ぇ・・・殺した・・・?」

「はい、殺しました。たとえ全てではないにしろ『式森』の秘密を暴いたのですから。
ブラックマーケットに情報が流出する前に出来る限りの隠蔽をしたあと、死んでもらいました」

なんでもないように言い切る和樹。
それを聞き、玖里子は純粋に怖いと感じた。
その目の前の少年の姿をした、得体の知れない存在に対して。

「むっ、失礼な方ですね。俺は別に殺人快楽者でもなければ、殺人鬼でもありませんよ」

本当に心外だといわんばかりの顔をする和樹。
だが、その表情の裏には、これ以上ないほどの激情が渦巻いている。
不意に、玖里子はそう考えた。

「さて、凛の方はどうしたかな?」


◆ ◆ ◆


「何を考えているんですか!?」

凛は携帯で『神城』の宗家に電話をかけた。
今ならまだ、和樹に大して誠意に謝れば和樹は許してくれると凛は考えていた。
なんだかんだ言っても、和樹は知り合いや友人には優しいのだから。
だが、その凛の考えを『神城』の上層部は木っ端微塵に砕いた。

『何を考えておるかじゃと? 何度も言わせるでない、これを気に我らは『式森』を打倒する』

「正気ですか!? 最悪の場合『退魔組織』そのものを相手にすることになるんですよ!?』

『そんなこと、我ら最強の剣術退魔師である『神城』にかかれば、容易いことじゃろう?』

それを聞き、凛は眩暈を覚えた。
ここまで上層部は腐っていたのか?
いかに剣術面で秀でた『神城』とは言え、『式森』に比べればその力は児戯にも等しい。
『式森』は『退魔組織』の頂点に君臨するに相応しい力を持っている。
そもそも、存在規模自体に差がありすぎる。
『式森』は圧倒的だ。
圧倒的過ぎる。
あの炎術師として最強と謳われた『神凪』の術者30人を、和樹はたった1人、しかも無傷で返り討ちにしたのだから。
故に『式森』は『最強』なのだ。
その『最強』に『そこそこ力がある』程度の『神城』が、どうやって勝てると言えよう。
そもそも『神城』の力は『神凪』よりも下なのだ。
だからこそ、『神城』が『式森』に勝てないのは当たり前のこと。
鳥が空を飛ぶのは当たり前。
魚が水を泳ぐのは当たり前。
人が大地を歩くのは当たり前。
全てが当たり前だ。
疑問に思う方がおかしい。
そう、当たり前なのだ。
だからこそ、当たり前なのだ。
『神城』が『式森』に勝てないのは、まったくもって『当たり前』のことなのだ。
だが、今凛が話している相手は、それを理解しようとしない。
『当たり前』の事を、理解しようとしない。

『とにかく、分家程度の貴様に話すことなどない。もう切るぞ』

「お、お待ちください!」

だが、凛の叫びとは裏腹に電話の相手は無情にも電話を切ってしまった。
これで、事実上『神城』の上層部が死亡するのは確定した。

「くそ!」

忌々しげに凛は携帯電話を握りつぶした。
なんてことだ。
これでは、最悪の場合『神城』は滅亡してしまうかもしれない。

「まぁ、その最悪の展開にはならないから安心しろ」

不意に声。
そこには、黒いコートを羽織りその右手に愛刀である天鎖斬月を握る和樹の姿があった。

「せ、先輩」

「玖里子さんとの話し合いはすんだ。早速で悪いが、今から『神城』の上層部を殺しに行って来る」

「・・・・・・・・・・・・」

「反対はしないんだな」

「はい・・・『神城』の上層部が、あそこまで腐っているとは思いませんでしたから」

「大方、『式森』を打倒して自分たちが『退魔組織』の頂点に君臨しようとか考えているんじゃないか?」

「・・・・その通りです」

「だろうな。ここ最近、『退魔組織』の者たちから『神城』を粛清するようにとの直訴があった。
まぁ、今回はそれのいい機会、とも言えなくもない」

それを聞き、凛は驚愕した。
まさか、そんな事があるほど『神城』は腐っていたのか?

「ああ、凛は評判は悪くないから安心しろ」

とだけ、和樹は言っておく。

「先輩」

「なんだ?」

「―――お願いします」

もはや、凛は『神城』を見捨てた。
そこまで腐っているというのなら、いっそうのこと滅亡してしまった方が後味は悪くない。
と、凛は考えていた。

「まぁ、それでも『神城』に属するもの全てがそういうわけじゃないみたいだな。
コクトーさんの調べによると、上層部は全て腐っているが、とりわけ実力派の下層部では良識派が多いらしい」

だからこそ、和樹が殺すのは上層部のみ。
今こそ、『神城』には改革が必要なのだ。
その改革の理由を、和樹は自ら作ろうとしている。
『殺す』ということによって。

「本当にすいません」

そう言って和樹に頭を下げる凛。

「気にするな、これも『退魔組織』の長としての勤めだ」

そう言って、フッと和樹の姿が消えた。
誰もいなくなった空間で、凛は1人、ポツリと呟く。

「本当に、申し訳ありません、先輩」

彼女の眼から、一筋の涙が零れ落ちた。


◆ ◆ ◆


さて、式森家にある特殊な装置によって和樹はここ、『神城』の宗家に到着した。
現在は、物陰に隠れて中の様子を眺めている。

「ったく、凛から報告があったって言うのに門番とかもいないなんて、どんだけ無用心なんだよ」

呆れたように呟く和樹。

「ああ、だからこそ今回の仕事も楽というものだ」

その隣に立つ少年はそう答えた。
まるで和樹の生き写しのような顔を持つ少年。
身長や体格も同じで、違うのはこちらの少年は髪を全て立てている。

「そう言うなよ和哉。これも『退魔組織』の長としての勤めだ」

「そうだな」

少年の名は式森和哉。
和樹の双子の兄。
青いコートを羽織り、その手に握られている天鎖斬月とほぼ同じ程度の長さの日本刀。
名を閻魔刀と言う。

「では、乗り込むとすっか」

「ああ」

そう言って、何でもないように和樹と和哉は門に近づくと同時に門を蹴り飛ばした。
門はグルングルンと回り轟音と轟かせて家の壁に激突する。

「く、曲者!!」

そう言って凄まじい数の『神城』の術者が現れる。
その数、300人。

「ノルマは140人な」

「ああ、では始めよう」

そう言って、和樹と和哉は同時に神城の術者の中に突っ込んだ。

「この神城を襲ったこと、後悔させてくれる!」

神城の術者たちが一斉に刀を引き抜く。
同時に、刀の刀身が淡く炎のように光始めた。
『神城』は刀の刀身に鬼を憑依させるこちによって、その刀そのものの破壊力を向上させる。
これはとても斬新的な方法であり、この方法を使うものたちの中で『神城』はトップクラスの戦闘能力が保有している。
だが、それは『式森』に比べれば、塵にも等しい。

「ふっ!」

和樹も和哉も、圧倒的な速度で神城の術者たちをなぎ倒していく。
大抵は峰打ちなので、殺しているわけではない。

「おぉぉぉ!!」

また1人、また1人と倒れていく神城の術者たち。
まるで踊っているかのような二人。
だがその実、刀が1度振られるたびに、同時に4人か5人は吹き飛んでいく。
本当に、圧倒的だ。

「無様だな」

そう言って、和哉は閻魔刀を振るう。
『式森』に伝わる秘宝の1つ。
同時に、和樹と和哉の父から受け継いだ大事にな刀だ。

「よっと」

和樹もまた、天鎖斬月で敵を気絶させる。
あっという間に、神城の術者は全滅した。

「さて、あとは上層部だけだな」

「ああ」

そう言って和哉は閻魔刀を鞘に納める。
そこへ、不意打ちと言わんばかりに衝撃波が2人に襲い掛かった。
2人は何なく、その衝撃波を避ける。

「不意打ちとは、やってくれるな」

そう言いながら和哉は閻魔刀を納めた鞘を強く握り、和樹もまた天鎖斬月の柄を強く握る。

「ふん、『式森』において最強と歌われる双子が直々にか。
ご苦労なことじゃな」

そう言う白髪の老人が4人。
それぞれ、その眼は欲望に濁っていた。

「どうでもいいが、さっさと来い」

そう言って中指を立てる和哉。
それを見て、老人たちの額に青い筋が浮かび上がった。

「後悔するなよ、小僧が!!」

そう叫び、老人たちは一斉に刀を鞘から引き抜く。
そして引き抜くと、何の躊躇もなく鞘を捨てた。

「ああ、それは駄目だな」

そう言って、和哉は後ろへ下がると腰の重心を落とし抜刀術の構えを取った。
だが、その老人との距離はありすぎる。
明らかに射程距離外だ。
そう、普通なら。

「鞘を捨てている時点で、貴様らの実力は知れている」

そう言ってスッと和哉は刀を振った。
明らかな射程距離外で。
だが、その途端に和哉から放射線状に空間が歪み、そこから凄まじい斬撃が放射線状をなぞるように走り始めた。

「なにっ!?」

これには流石に驚く老人たち。
慌てて横に飛ぶ。
途端に、老人たちが立っていた場所を凄まじい斬撃が走り抜けた。
老人たちの背後にあった壁は、跡形もなく木っ端微塵と化している。

「お、おのれ!! !? や、奴は何処じゃ!?」

老人たちが和哉の姿を探す。
右、左。
だが和哉の姿は見えない。

「い、いったいど・・・・」

全てを言い終わる前に、頭上から現れた和哉が老人を1人、真っ二つにして殺した。
和哉は和樹同様に4つの特殊能力を持つ。
その一つがこれ。
魔力を空間に浸透させ、瞬時に相手の頭上に移動する能力。
名を『エアトリック』という。

「なっ!? き、貴様〜〜!!」

明らかに怒る老人。
だが、それはどうでもいいこと。

「死ね」

そう言って和哉は一瞬にして老人の隣を走り抜けた。
銀色の閃光が数多に走り、一瞬にして老人をバラバラに解体した。

「ふん」

つまらなそうに和哉は閻魔刀を鞘に納める。
一方、和樹の方も圧倒的な展開を作り上げていた。
老人たちがいくら斬りかかっても、全て和樹の天鎖斬月に前に止められる。

「無駄だ、お前たちのような欠伸が出るくらいの遅さで、俺を殺せると思ってるのか?」

呆れたように和樹が呟く。
その言葉を聞き、老人たちはさらに青筋を浮かべた。

「だ、黙れ!!」

そう言って再び斬りかかる老人たち。
だがやはり、その動きは和樹にとって見れば遅すぎる。

「もう飽きたぜ、死にな」

手始めに左側の老人の首を跳ね飛ばす。
そう、刀を振り下ろすより遥かに早く。

「なにっ!?」

最後に残った老人の言葉は、それが最後と化した。
一瞬の隙をついて、和樹は脳天から股間にかけて天鎖斬月の黒い閃光が走り抜ける。
それは、本当に呆気ない幕切れであった。

「くだらないな」

そう言って死んでしまった老人たちを見る和哉。
他の無事な術者たちが眠りから覚めるまで、まだ時間がありそうだ。

「ああ、まったくだぜ」

そう言いながら和樹は天鎖斬月を鞘に納める。

「それじゃ、帰るか」

「ああ、またそのうち、殺しあうか?」

「ま、それも悪くないかもな」

そう言うと、和樹と和哉の姿はその場から消えた。


あとがき
名家って奴の上層部は腐っている。
これは私のイメージを反映させています。
原作版がそうか、と言われるとなんとも言えません。


suiminさんへ
今回はキシャーはなしです。
まぁ、おそらく宮間家は崩壊するんじゃないでしょうか?
ネタばれになりますので、詳しくは言えませんが。

foolさんへ
>キシャー化する原作の時点でもう人間じゃないって思ってしまうのは私だけでしょうか?
いえ、私もそう思っていますよ。
>だとしたらデビルキシャーですね。
はい、デビルキシャーです。
>その和樹に常識があったら、まずこんな怪異にだけは、まちがっても愛なんて語らないと思いますが。
このSS内の和樹は決して愛をキシャーに語りません。
ってか、誰がこんな女に愛を語りますか?
>もう十分すぎるほどに強いと思うんですが・・・この電波怪異に勝てる人間って世界に何人いるんでしょう?
1人くらいかなぁ〜、おそらくダーク・シュナ○ダーくらいじゃないですか?
>じゃあ、母親は?・・・って娘の成長に喜ぶんでしょうね、きっと。
で、家は没落しましたと。

D,さんへ
キシャーが魔法使用回数を使っても消滅しないような感じがするんですが・・・・
それって、私だけでしょうか?

皇 翠輝さんへ
最終奥義を喰らっても無傷でしたキシャーさん。
一応、気絶させましたが・・・・
もはや、キシャーは神レベル。

tttさんへ
はい、確かにキシャーは生物には見えません。
どうみても、地球外生命体か魔王ですね。

良介さんへ
上と同文になります。
まぁ、キシャーに勝てる人物なんてそういませんよ。

紫苑さんへ
キシャーは確かに邪神ですね、亡者を召喚してますし。
なんか、警察に捕まることが永遠にないような気がする今日この頃です。

奈菜さんへ
当然生きていたキシャーさんです。
少なくとも、日本を壊滅させるほどの力がないとダメージを与えられないようなきがしてしまいます。
なんか、本当に強いなぁキシャーって。

ってことですね。
今回は以外にも、和樹の双子の兄が出てきました。
閻魔刀の元ネタは・・・まぁ、わかると思いますが(汗
では

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