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「生まれ得ざる者への鎮魂歌―第四話『敗因』―(天上天下+オリジナル)」

ホワイトウルフ (2005-02-17 22:11/2005-02-17 23:35)
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記憶が無くとも・・・過去が無くても・・・俺には残っている事実がある。
俺の『誇り高き名』と―――どうしようもないくらい『堕ちた魂』があることを・・・。


生まれ得ざる者への鎮魂歌
第四話『敗因』


闇がある。・・・それこそ永遠を思わせるような闇が・・・。
それを見て、再認識する。

俺は、なんて『空(から)』なんだと。
俺には、闇しかないのだと。

俺は、奪うことしか能のない『死神(デスハンター)』だ。

しかし、何故闇しかないのだ? 
誰が、俺にこんな下らないものを押し付ける?

やはり、お前なのか?・・・『生まれ得ざる者』よ。



「・・・今朝は、又くだらぬ夢を見たが、それを忘れさせてくれるくらい騒がしいな、ここは・・・。いつも、こんなに騒がしいのかご同輩?」

俺は昼時の食堂で、真下にうどんをぶちまけているご同輩に声を掛ける。
ちなみに、不服だが学生服をきちんと着こなして、着ている。全く、堅苦しい格好はごめんだ。まあ、グラサンをつけているだけマシというものか―――。

「いや、そ、そんなことないですよ。きょ、今日は偶々です」

ご同輩が食べるべき、昼飯のうどんをぶちまけてしまった理由は・・・。

「宗一郎様ー!! 今日こそ、私の力作のお弁当を食べて頂ます!! 例え、腕ずくでも!!」
「やかましい!! 毎日毎日毎日毎日毎日毎日!! 俺は死んでも食わねえってんだろ、そんなもん!! 食わせたきゃあ、てめえの兄貴にでも食ってもらえ!!」
「お兄様の分は、すでに用意しています!!」

・・・まあ、あれだ。
俺の妹とか言っていた女・・・『亜夜』『チビ不良』が迷惑も考えず、食堂の中で疾走しているからだ。

・・・まあ、うどんをぶちまけた本当の理由はご同輩の精神的なモノだったが・・・。

突き飛ばされて、ぎりぎりこぼれそうなうどんを、床に滑り込みでキャッチしたまでは良かったのだが。・・・その姿勢で真上を見たのは失敗だったな。
まさか、スカートをひるがえした亜夜に『跨いで通られる』なんて思いもよらなかったのだろう。

「精神的に・・・まだまだ未熟だな」
「・・・あの、『アレ』を見慣れろとか言いませんよね?」
「そんな馬鹿なことは抜かさない。俺が言いたいのは、常に心頭を滅却した状態を保て・・・その隙、やがては命取りになるぞ」

潜在能力が非常に高そうだからな、ご同輩は・・・。よくよくは、良い兵(つわもの)になるだろう。

「とまあ、ご同輩にえらそうに言ってすまんな。聞き流してくれればいい」
「え?・・・でも、勇士さんて今年で2『ジャキ!』・・・!!・・・!?□#@!

「忘れろ。その事実を脳内から破棄しろ」

俺は、どこからとも無くナイフを出し、ご同輩の首筋に突きつける。

その間、わずか0,01秒。まさに神業であっただろうが、今の俺やご同輩には、関係ないことだ。

『コクコク』

冷や汗を流し、真っ青な顔で頷いているな。いかん、やり過ぎたか?
俺は、そのナイフをもと在った『所』にもどしてご同輩に手を差し伸べて立ち上がらせる。

「すまん。ちとやりすぎた。ただ、口外しないでくれると助かる」
「・・・あ、はい」
「というわけで・・・一応、俺の妹らしいからな。侘びと同じクラスのヨシミとして奢ろう。というわけで、先程と同じ、うどんを一つ頼む」

俺はそう食堂の人に頼み、金を払おうと手を食堂の受け取り口に手を伸ばしたが途中で、後ろから訪問者が来たため、訪問者に向き直りながら払った。

「え、いいで「その必要はねえよ、先輩方。俺が立て替えとくよ」・・!!・・」

背後から、チビ不良の相方の黒人がうどん代をちゃらちゃらと手の中で見せる。
俺の代わりに奢ってくれるらしい。

(背後に立たれたのに気付かなかった)
「そう言うなら、言葉に甘えよう」

そう言って、ご同輩はうどんを受け取り、席に着こうとしたが・・・後ろからひたひたと黒人が着いてくる。俺は、俺で話があったのでご同輩の横の席に着く。

・・・何より、うどんの代金をまだ受け取ってない。

「おまえ、勇士さんが居るのはいいが、話があるならさっさと話せ。そもそも、そんなことするくらいなら、亜夜ちゃんの弁当一回くらい喰ってやれと言っとけ」
「純情な野郎でね。テレてやがるのさ。自分じゃ硬派のつもりらしいんだが・・・大目に見てやってくれ」
「・・・・・・」

まあ、今の所、被害はご同輩のうどん一杯か?・・・新たな被害が出ないよう祈っておこう。

「で? 本題に入れ。俺は、お前らと話しているより、飯を食うのと勇士さんと話してる方が有意義な時間を過ごせる」
質問(クエスチョン)だ。この学園でアンタより強い奴は何人ぐらい居る? そいつは誰と誰だ?」

黒人は、俺たちと反対側の席に座り、先程の『うどん代』である幾枚かの硬貨を手の中でいじりながら話す。

『あのチビ』とそこの『銀髪の先輩』もそうだろうが、トップはあんたらだとは思えねえ」
「俺は、新参者だから知らん」
「・・・そう言えば、そうだったな。まあいい、これは俺のカンだが・・・この学園にはもっととんでもねえ化け物がうじゃうじゃいる気がするのさ」

そう言って、黒人は俺の代わりに立て替えてくれるはずだった拳で硬貨を『ぐにゃぐにゃ』に握り曲げ、そのまま真下の机におとした。

『チャリン!』

・・・なんてこった。もうアレは、金としては使えない。

「ちがうか?」
「それを聞いて「ちと待て」・・・?」

ご同輩が、返事しようとしたのを俺はさえぎる。

「貴様、立て替えてくれると言うのは、口から出任せだったか? このように曲がっていては金としては使えんぞ」
「あ?・・・わりい、ついな」

黒人が、少々シリアス風味だった顔が毒気の抜かれたような顔になり、謝ってきたが、もう元の木阿弥・・・いや、元に戻せばいいか。

「ご同輩、あれは俺の奢りだ。・・・と言いたくなったが、面倒だがこれをもらって置こう」
「はい? そんなひしゃげた硬貨、如何するんです?」
「こうする」

俺は、ひしゃげた幾枚かの硬貨を一箇所に集めて上から右手を軽く押し付けた。
そうして手をどけると硬貨は・・・全部、元と全く同じ状態だった使用できる硬貨にと戻っていた。

「「!!」」
「もう、いちいち戻すのは面倒だから、このようなことはしないでくれ。まあ、こういう台詞を吐くのは、いささかセコイ気もするが・・・」
「あ、ああ」

俺は、黒人にそう言ったが黒人のほうは生返事しか、帰ってこなかった。

「何より、奢ってもらっている故、あまり文句は言えないがな。・・・ん? ああ、すまん。話を曲げたな。気にせず、続きを話してくれ」

(野郎、味なことしやがって)
(う〜ん? 軽く押し当ててたから、氣でも使ったのかな?)

「どうした。話は終わったかご同輩?」
「あ、いや・・・おほん!」

仕切りなおしに、咳払いをするご同輩。

「それを聞いてどうする気だ?」
『戦(や)る』のさ。決まってんだろ」

急に、話しに入ってくる不良チビ。
・・・出待ちしていたのは、彼の公然の秘密だろう。

「凪!!」

黒人が、相方の出現に驚く。

・・・何か反応がわざとらしい気もするが、気にしないで置こう。
たぶん、『出待ち』させたのは、不本意ながら・・・『俺のせい』なのだろうから。

・・・黙っておこう。
これ以上、何か言ってると、話の本筋をぶち壊しそうな気がする。

「彼女は、まいたのか」
「いや、実はまだ後ろに・・・」

不良チビの後ろに『ふふふふふ』と怪しげな笑い方をする亜夜が居る。

・・・アレが、本当に『俺の妹』かと思うと少し泣きが入る。
やっていることはストーカーと変わらんぞ。

「あ、お兄様。これ、今日の分の弁当です」

俺を、見るなり駆け寄ってくる亜夜。

「亜夜。・・・もう少し、彼の後を追いかけるのを自重しろ」
「はい?」

『何のことでしょう?』って顔でこっちを見るのではない。
考えれば、考えるほど馬鹿らしくなってくるから。

「・・・・・・もう、二の句も告げぬわ」
「・・・話が反れたが、みんなシメるとかそういう事には何の興味もない人たちばかりだ。不良(おまえら)がケンカを売る理由なんて無いだろ?」

強引だが、話を戻すご同輩が、俺には輝いて見えた。

「大ありだよタコ。ワクワクするだろーが『強ェ奴』『戦る』とよ。アンタはしねーのか?」

不良チビが、ご同輩に指をさして挑発する。

「相手がどんな奴だか知りゃしねぇ。強ければ、それだけで戦る理由になる。それで十分だろ?・・・そーいえば、いつぞやのカリもあるしな・・・あんたには」
!! そりゃあ、俺じゃなくて真夜さんの方だろ?」

・・・乗るのか、こんな益もない武に? まだまだ、精神的に甘いな。この程度の挑発は、流すべきだ。

「カンケーねーって、言ってんだろタコォ・・・。それと、これが終わったらてめえとだ銀髪野郎!!

忙しい奴だ。いろんなやつに吠えるなど。

「・・・貴様の勝利で、終わればな」
「宗一郎。負けそーになっても俺は加勢しねーからな」

俺と黒人が、返事し終わった瞬間。ご同輩とチビ不良の益のない武が始まった。



「やれやれ、素人同然の男に本気だしおって、修行が足らんわ」
「同感だ。安い挑発に乗ったのが、そもそもの間違いだ」
「そうじゃの」

俺は、亜夜にもらった弁当を食べるべく、埃のかからないよう隅っこで観戦していた真夜の座っている机の席に座る。ちなみに、今の真夜は着物姿で小さい体型だ。

「お姉ちゃん・・・いたの?」
「まあ、見せてもらおうではないか? お主が見込んだ男の器量のほどをたっぷりとな」

真夜が、亜夜に言う。

「どうでもいいが・・・飯の食うところで暴れられるのは、非常に迷惑だ」

俺はそう言いながら、少し遅れた昼食を取る。

「まあ、そう言うでない兄様。気にならんのか・・・あの男が?」
「俺は、あの小僧が・・・一矢報いて勝ったとしても。それにご同輩が納得するかどうかが心配だ。・・・如何あがいても、完全勝利などできないからな、あの小僧には」
「・・・・・・それは、ちと考慮しておらんかったな」
「制約に一発入れたら、小僧の勝ちだなんて、ご同輩は言っているが・・・納得いかなかったらその場で『ぶちぎれる』のではないか? あんな挑発に乗るくらいだからな」
「・・・・・・それも、そのような」

真夜の顔色が、曇っていく。

「その時は、兄様が「却下」・・・良いではないか。同輩なのじゃろ?」
「ふぅ・・・此間、お前さんが粉砕した俺のグラサンを新しく買い直してくれるならいいぞ。・・・ちとせこい気もするが、今つけているスペアしかもう無いからな」
「それなら、兄様が二年前置いていったサングラスが、あるからそれでいいかの?」
「了承。しかし、保存状態はいいのだろうな?」
「うむ、あれは兄様の形見じゃからのう」

・・・ん? 今不穏当な発言が聞こえたような気がするぞ。

「待て、今おかしなことを言わなかったか?」
「え!? いや、そんなこと言ってないぞ!! だ、大丈夫じゃ、アレはわしがしっかり綺麗に磨きながら保存していたモノじゃからな!!」

何やら、ごまかされた気もするがまあいいだろう。

「そういえば、お姉ちゃんの宝物だったよね。あのサングラス」
「そうじゃが、せっかく持ち主が帰って来てくれたんじゃ。持ち主に戻すべきじゃ」

そう言いながら、真夜は懐かしそうな顔をする。
・・・う〜む、俺のグラサンだったようだが、何やら思い入れが深いようにも見えるな。

「・・・やめた」
「ん? 何をやめるんじゃ兄様?」
「そのサングラスは、真夜にやるとする。今回のは、又、別の貸しにしとく」
「良いのか兄様?」
「・・・そんな顔できるようなモノを取るのは、いささか野暮と言うものだ」
「うむ、礼を言うぞ兄様」

そう言って、真夜は屈託の無い笑顔を見せた。
・・・そろそろ、決着がつきそうだな。

お、倒れたか。まあ、長くは持ったな。

やはり、あの小僧にご同輩は荷が重過ぎるな。
意気込み『だけ』は、認めてやるから、今後の名称は小僧でいいな。

「喝!!」

・・・耳がキーンって。
予想もしないことしてくれるな亜夜は・・・。

おそらく、いま倒れた小僧に文字通り活を入れるためだろう。

「立ちなさい!! この棗 亜夜が認めた男が、この程度の拳法使いに、いいようにあしらわれるとは何たる醜態!!」

・・・ご同輩に大ダメージだ。
如何見ても、ご同輩は亜夜に惚れているようだからな。

しかし、この程度の拳法使いと言ったが、精神面以外はいい筋なんだがな。ご同輩は・・・。

「・・・ったく。てめえ何ぞに、認められても、別にうれしくもねえんだよ。・・っほ!!

そう言って、小僧は立ち上がる。
・・・ほう、まだやる気か? やはり、根性だけは一人前だな。

「もう一度、言ってやる。俺は今まで、負けると思って戦ったケンカなんざ、一度もねえ。テメエはそこで黙って見てろ」
「はい」

・・・また、2人だけの世界に浸っているな。

「どうにかならないか、この甘ったるい雰囲気は?」
「・・・亜夜じゃからな。しかし、亜夜は兄様はもういいのかの?(それなら、それで恋敵が減って良いのじゃが・・・)」
「・・・・・・俺に聞くな。そもそも、俺はその手の話は無用なものだ」
「何故じゃ?」
「今の俺に、そんな余裕は無い」
「―――記憶がもどったら如何なのじゃ?」
「ふ・・・まあその時は、考えなくも無い」

俺は、微笑して話す。

「本当じゃな、兄様?」
「・・・まあな」

(・・・・・・どうでもいいが、てめえらも十分『甘々』じゃねえか?)

ひそやかに、ボブはそう心の中で思った。



確かに、小僧は良くやったがここまでだ。
方法はともかく、ご同輩に一撃見舞ったのは上出来だ。

・・・しかし、方法が方法だったため、案の定、ご同輩は『ぶちぎれた』

まあ、惚れた女が作った弁当を盾にされ、それでひるんだ隙に攻撃されてはな。
―――やはり、己が未熟だったとしても納得が行かないだろう。

「ち! やはり、こうなったか!!」
「兄様!」

「分かっている」

完全にぶちぎれたご同輩が、小僧に向かって足を払った後、急速に殺気が膨れ上がる。

『ゴス!!』

真夜が、空中で回し蹴りをご同輩の米神に当てるが・・・止まらない。

『ガシ!!』

続いて、亜夜が腕を掴んで止めるが・・・それでも止まらない。

・・・やはり、俺が出るべきか。

『ドス!』
俺は、そのまま瞬間的に、小僧とご同輩の間に現れ、ご同輩の放った左拳を捌いた後、背でご同輩の突進をその場にぴたりと止める。

『ドン!!!!』
最後に、捌いたとは言え、威力の残った拳を左の手のひらで受け止めた。

「・・・まあ、こんなモノだろう」
「全く、わしの蹴りで止まらなかった時は冷や汗をかいたわ」

その様子に、座り込んだまま呆然と見る小僧。

「今日はここまで。貴様の負けだ小僧。・・・退け」

俺は、ご同輩から離れて小僧に言い放つ。

「な!!・・・てめえ、横からでしゃばって、ふざけたこと、ぬかしてんじゃねえ!!」
「お主、助けてもらった分際で兄様に無礼じゃろうが!!」
「うるせえ!! 勝手に、其処の銀髪野郎がしたことじゃねえか!! そもそも、居たのかチビ女!?」

亜夜は・・・このやり取りについていけず、おろおろと見ている。

ずいぶん前からおったわ!! 身の程を「真夜・・・いい」・・む、分かったのじゃ」
「・・・貴様の負けた理由を教えてやる」
「あん!?」

小僧は、立ち上がり俺に食って掛かってくるが・・俺は無視して、移動する。

次に現れたのは・・・食堂の外である目の前の校庭だ。
まあテレポートしたわけではなく、普通に窓から移動しただけだ。

とはいえ、そこいらの猛者でさえ、そうやすやすと視認できない速さでだが・・・。

「どこを見ている? こっちだ」
「「!!」」

その様子に、黒人と小僧は驚く。

「・・・相変わらず、化け物じみた速さをしておるのう兄様は」
「は、速いなんてものじゃないよお姉ちゃん。私全然見えなかった」
「兄様の誇るべきモノの一つじゃ。安心せい、わしにもぶれたくらいにしか見えん」

『おい。あの銀髪、すげえじゃん』
『まじかよ。
テレポートでもしたんじゃねえの?』
『あんなの、見たこと無いわ』
『いいぞ、兄ちゃん!! 今度は、スプーン曲げでもしてくれ!!』

野次馬が増えてきたな。早急に何とかするべきだ。
何やら、俺はサイキッカーと間違われているようだ。はなはだ勘違いだ。

「小僧」
「なんだ銀髪野郎!!」
「お前が、さっきご同輩の拳を受けていたらお前の顔はこうなった」

そう言って、さきほどのご同輩の『拳の威力の全て』を左手のひらのそこに止めておいた『モノ』を、そのまま軽く校庭の地面に、左手で軽く触れて・・・解放した。

『ドゴン!!!!』
『ビシ!!』

次の瞬間、俺の触れた地面を中心に、地面が豪快に粉砕し、蜘蛛の巣状に地面がひび割れた。

「・・・・・・これが理由だ」
あ、ああああ

それを見た小僧は、その場に溜め息と共にもれ出るような声を出しながら、ガクリと足の力が抜けたように・・・膝立ちした。



「ご同輩、貸し一だぞ」
「あ、あのすいませんでした」

只今、俺はご同輩の治療中だ。

どうも俺は治療の術や、記憶の残っている中の技術には、少々変わった術に長けているのがわかったのだが、他の戦闘術については、おいおい話すとして・・・ヒーリングとも呼ばれる氣を手から送り込んで患部を治療する『氣功治療』に勤しんでいる最中だ。

もっとも、俺の『氣功治療』は通常のプロセスと少々違うようだ。

話はそれたが、俺は今、とりあえず同輩の真夜からの蹴りによる頭の傷と小僧からの一撃によるわき腹の骨折を・・・確か『柔剣部』とやらの道場で治している。

「全く、お主は精神的に修行が足らな過ぎる。しかし、良かったのう。治療のスペシャリストである兄様が居て・・・わしのヒーリングより、よっぽど治りが早いぞ」
「部長のお手まで、わずらわせてすいません」
「そもそも、お主・・・あのまま止めなかったら」
「小僧に当てはしないだろうが・・・食堂に多大な被害が出ただろうな」
「う!」

今ここには、俺と真夜とご同輩の三人しか居ない。とりあえず、あの後応急処置だけして午後の授業に出たのだが・・・授業中のご同輩の顔色は青くなったり白くなったりと、非常に面白いものだった。そのうち、七色変化できるのではないかと思ったぐらいだ。

まあ、そうなった理由はおそらく真夜からの処置を想像してそうなったのだろうと推測する。まあ、そんなわけがあって今は放課後だ。

「これでいい。怪我自体は完治したが、軽い痛覚の概念がしばらく残るから・・・一応、無理するな。無茶に、それを無視したように動けば自己催眠と同じ状況になる。とはいえ、通常の怪我の直りよりは早く概念も消えるだろう。しかし、覚えていて助かった。もっと良い治療の仕方があるのかもしれないが・・・そればかりは記憶が戻らないとな」

『自己催眠』と同じ状況とは、思い込みによる自己被害と言うやつだ。例をあげれば、『これは焼けた鉄棒だ』と言われながら、何でもない普通の鉄棒を肌に押し付けられると、皮膚が赤くなって本当に火傷を負ってしまうという奴だ。精神のフィードバックオーバーとでも言うのだろうか?

まあ、くだらないウンチクは、ここらでよしとしておこう。

「ありがとうございます、勇士さん」

俺の、治療に満足したのか。いろいろと軽く体を動かすご同輩。

「・・・兄様は今年も、治療班としてしか『天覧武会』には、出ないのじゃな?」

それを、横から見ていて、しばらく黙っていた真夜が、唐突に声を掛けてくる。
・・・何のことだ?

「何のことだ? 俺の知らない単語だな、それは」
「ん?―――ああ、そうじゃったな。兄様は、記憶を失っていたことをすっかり忘れておったわ」

・・・忘れるな。俺としては、お前らが俺を兄とは呼んでくれるが、俺にとっては未だ『未知』の人であることに変わりは無いのだぞ。

俺はあきれた顔で、真夜を見て口を開く。

「一応、お前らのことは信用しているが、俺は未だ『兄妹』と言われても今一しっくりこないのだぞ」
「そのようには、見えなんだから、すっかり其の事に失念しておったわ」
「頼むぞ先輩。俺の記憶を握ってる一人なのだからな」
「むぅ〜。またわしを先輩と呼んだな兄様」
「―――再確認してもらっただけだ。俺にとっては、ここは未だ『未知の空間』であり、ここの人たちも、又『未知の者』たちなのだ。なるべく、馴染むよう努力はしているがそれは前提条件としてあることを失念されては、困る」

そうだ。俺が・・・俺の歳が『??歳』(思考にすら出したくない)であることを知っても、尚、この学園に来る理由はそれだけなのだから。

「・・・そうじゃの。確かに、わしも兄様には早くわし達のことを思い出して欲しい」

真夜は、少し俯いてに話す。

「・・・で、その『天覧武会』とは何のことだ?」
「うむ、高柳。説明を頼む」
「あ、はい。えと天覧武会とは、この学校の由緒ある行事で、所謂、部活対抗武術大会のことです。これは、学校での序列を決めると共に、執行部会長と幹部・・・つまり実質、この学校のトップを選出する大会でもあります」
「・・・個人でのエントリーはできるのか?」

俺は、少し考えた後、ご同輩に聞いてみる。

「えと、生憎そういう制度は無いみたいです」
「ふむ、個人なら出ても良かったがな」
「・・・めずらしいの。兄様が出てみたいとは」
「何分、『病弱な体』なので・・・それに活を入れたくてな」
「何を言っておる、兄様らしい冗談じゃ」

俺の言った言葉を冗談と受け取り、微笑する真夜。
・・・まあ、真実は如何なのかは、秘密だ。

「―――で、お前らの部は・・・何と言ったかな」
『柔剣部』じゃ、兄様。ちなみに、兄様も、入部しておるぞ」
「・・・ほう」
「何じゃ、其の信用の無い眼は? 仕方ないの、高柳。証拠に書いてある柔剣部の看板を持って来るのじゃ」
「あ、はい。部長」

そう言うとご同輩は『とてとて』とどこかに行く。

「しかし、昔の俺の人物像が、掴めないな。・・・聞けば、親しい女ならば大抵下の名でよんでいるとか言われていたから、『タラシか?』と聞いたら違うと言うし」
「確かに、客観的な聞けばそう思えるかも知れんが・・・何も、それは女に限ったことでは、無いしの・・・そもそも、兄様は自分から進んで、知り合いを増やすような真似は、せなんだ。わしらの知り合いにはそうでもなかったようじゃが・・・ふむ、兄様はいつも、一人でぼんやりしている節もあったしのー」
「・・・苗字ってのは、個人ではなく、所謂、集団を表す名だからな。名で呼びたいと思うのが、今も変わらないのは昔から変わらないと言うことか」
「うむ、確かに昔聞いたときに兄様はそう答えておったな」

俺の言うことに、うんうん頷く真夜。
なるほど、さして昔の俺との性格に差は無いのだろう。

「・・・しかし、こうも言われたぞ」
「何じゃ?」
「俺は『孤高』にして、『気高い』人だとな」
「・・・・・・しばし待て、兄様。今、気になったが・・・誰にそのようなことを言われたのじゃ?」
「ん?・・・たしか・・・そう、『五十鈴 絵美』と言う女だ」
「な!!」

俺の言葉を聞き、驚いた顔をする真夜。

「どうかしたのか?」
「・・・・・・いや、何でもない兄様」

何やら、沈んだ顔で言う真夜を見て、俺は『何でもない』などとはとても思えなかった。

「あ、これです。部長、持ってきましたよ」

ご同輩が、戻って来たが真夜は先程変わらない沈んだ面持ちで、上の空だった。

俺は、この時、知らなかった。

五十鈴絵美と言う女が、この柔剣部にとって敵対する『執行部』の幹部だったことを・・・そして、俺は執行部には、過去への鍵の要とも言えるべき男がいると言うことを・・・。

物語は、俺の知らないところで急速に唸りを上げて加速していることを俺には知る由も無い。そして、それはただの学園物語では終わらない大きな戦いと己の因縁を賭けた始まりと終わりの・・・末端のでき事としてすでに、姿を現していた。


俺の過去の重要性を知っていたのは・・・この時は『あの女』だけだったのだろう。


―後書き―
はいというわけで、第四話。如何でしたでしょうか?
今回は、原作沿いに話をいろいろと進めていましたが、ようやく、次回で原作の1巻が終了します。・・・いや、ここまで書くのにかなりの労力を裂いた気がしますw

というわけで、恒例のレスの返答になります。

たけのこさんへ
うっす、毎度のレスありがとうっすw というわけで次回で原作の一巻終了です。これからもがんばっていくんでよろしくですw それでは、次回もよろしくです。


隆行さんへ
いちおう、シリアスとギャグを交互に入れていきますんで、そこらへんの所は、よろしくですw 毎回のレスありがとうございます。それでは、次回もよろしくです。


カイさんへ
初レスに感謝です。始めましてカイさんw 自分は『ほそぼそ』と投稿しているSS書きなのでマイナーだと思いますが、これからもよろしくです。というわけで、次回もよろしくです。


Gさんへ
毎度のレスありがとうっすw というわけで、ハーレムにしろという要望が非常に高い今。其の路線を突っ走っていいのかどうか? まあ、よしんばハーレムになってもべたべたなハーレムは書かないつもりなんでよろしくですw と言うわけで次回にこう期待w


ユピテルさんへ
はい、タラシはタラシでも、天然の女磁石なんでよろしくw というわけでレスありがとうですw 次回もよろしくお願いいたします。


秋雅さんへ
ええと、基本的に原作どおりにを辿ると宗一郎たちの扱いは始めは悪いですが、徐々に強くなっていくと共にかっこよく書いていくつもりなんでよろしくです。宗一郎の父親との関係ですか? 大丈夫です。もうそこいら辺の構想まで練っていますから。其の時には、明らかになるでしょうw というわけで、レスありがとうです。では、次回もよろしくです。


D,さんへ
脇役宣言? いえいえ。それは、ちょっと気が早いですw あの女ですか? そうですね。いろいろと考えれば、おのずと分かってきます。彼女の登場は原作で言う4巻辺りかな。と言うわけで、今後もレスをよろしくお願いしますです。では、次回もよろしくっすw


ロックさんへ
柔剣部? そうですね。すでに登録済みになっていますが、だからといって『はいはい』といって入りはしないと思います。そこら辺も、物語の展開としての見所だと思います。
というわけで、レスありがとうございます。次回もよろしくお願いします。


春風さんへ
扱い? う〜ん、あくまで主人公は勇士ですけど、一応、宗一郎は勇士との関係において非常に重要な関係があるので、扱い事態は悪くないと思います。と言うわけで、レスありがとうです。次回もよろしくお願いします。


というわけで、今回はここいらで、閉幕です。
以上、ホワイトウルフでした。それでは、皆さん、又次回で会いましょうw

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