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「生まれ得ざる者への鎮魂歌―第三話『我が過去の残骸を持つ者たち』―(天上天下+オリジナル)」

ホワイトウルフ (2005-02-15 21:53)
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過去なんていらない・・・そう思っていた。だが、いざ目の前に取り戻す『鍵』が現れたら・・・まあ、なんとも滑稽に気にしてしまうものだと己は自覚した。


生まれ得ざる者への鎮魂歌
第三話『我が過去の残骸を持つ者たち』


「そうか」

『とん』

「な!」

俺は、目の前の女の胸の谷間に右の人差し指を突き立て、そのまま指を『つつつ』と首筋までなぞり上げていく。

『『『『あーー!』』』』
『てめえ!! 俺らでさえ触れてねえ。姉(あね)さんの素肌に!!』
『何て、うらやましいんだ!!』

何やら野次のようなものが、いろいろ飛んでくるが気にはしない。

「な、なななな、何をするのじゃ!? あ、ああ、兄様」

顔を真っ赤にさせて、訪ねてくる着物姿の女。何やら初々しく感じるな。かなり動揺しているようだし・・・。

「ふぅー。ようやく頭痛も治まった。どうやら、あんたは俺の記憶の鍵を握る者のようだな」
「・・・兄様。本当にわしのことを覚えてないのだな?」

俺の台詞を聞き、さきほどの真っ赤に染めた女の顔が悲壮に歪む。

「ああ・・・しかし」
「!」

俺は、落ち込んだ女の頭を先程まで、首筋に触れていた手で撫でる。

「思い出してみる気には・・・なった」
「・・・・・・兄様は、かわらんのう。うむ! 記憶を失(うしの)うても、兄様は兄様じゃ!!」

頭を撫でていたら、女は元気になったようだ。おそらく台詞から聞いて、俺の過去の身内だったのだろう。

ん?・・・ちょっと待て!? 何で俺より学年が上の女が、俺を兄様と呼ぶ!?

・・・! いや、その疑問は後回しのようだな。

「先輩、どうでも良いが、先程の不良が落ちた所は、何やらまずいのではないか?」
「む、兄様。先輩呼ばわりは気に食わぬぞ。・・・して、何がまずいのだ?」

俺は、撫でていた手をどかし、先程落ちていった奴を見るため窓側に歩いていく。

「水音が・・・聞こえる。考えすぎかもしれないが・・・あそこはシャワー室か何かではないか? こういった場合、男の使用中のシャワー室に飛び込めば・・・飛び込んだ奴の精神的ダメージにもなるが・・・何やら、お約束として女のシャワー室・・・しかも、使用中だったりすると・・・・・・いろいろと問題がだな」
げ! ま、まずい!! え、えと兄様。こ、ここにいてくれんか!?」

俺の冷静な言葉は、女をうろたえ始めた。
・・・お約束どおりだったのだな。

「ふぅ、後から追うさ。もう図書室に行く気よりも先輩と論じているほうが・・・有益な時間を過ごせそうだ」
「わ、分かった。だが、わしを先輩と言うな兄様!!」

そう言って女は、窓から飛び降りていった。

「亜夜!!」

着物姿の女は、知らない名の女の名前を叫ぶ。

「ぶ、部長!!」

其れを見て、慌てて外を見る男が、あの女に叫んだ。
ん? 女の知り合いか、この男? どうも、学年は同じようだし・・・。

「お主は、来るな高柳!! 後ろの異人を片付けて、その後、兄様をここまで連れてこい!!」

着物姿の・・・確か、『棗 真夜』とかいったか。・・・ん? 身内だとおもったが、よくよく考えたら苗字が違う。・・・身内じゃないのか? はたまた、俺の名前自体が実は違うのか?

・・・いや、名前が違うことなんてありえないな。まあ、其れも含めて聞いてみるか?

「あんた、何年だ?」

俺は先程、女に叫びかけていた男に学年を問う。

「へ? ああと、2、2年です!!」
「何だ、ご同輩か? なら、敬語は要らないのではないか?」
「へ、同輩? 2、2年生なんですか勇士さん!?」

俺のことを知っているのか? それとも、先程名乗った名を聞いて、さっそく呼んでくれているのか?

「ああ」
「そ、そうなんですか!? あ!!・・・ぶ、部長が!」

そう言うなり、失踪していくご同輩。・・・女の『言付け』『無視』して行ったな。

「・・・・・・う〜む、ご同輩の仕事だが、そこの異人さん。俺とやっていくかな?」

俺は、黒人の男に問いかける。

「・・・・・・」
「そうか。とりあえず、今日はここら辺にしといたほうがよいぞ」

俺は、無言で睨んでくる黒人を、やらないと答えたように判断した。

「さて・・・・・・ひどいな。修復不可能なほど壊れている」

俺は、さきほど落としたグラサンが、バキバキに壊れていることを見て、少し泣きが入った。

・・・おそらく、あの女が近寄ったときに踏んづけて、『粉砕』したのだろう。

「はぁ〜。とりあえず、あの女に用事が増えた。弁償してもらわねばな」

そう言って、俺は道もわからないからと言う理由で、女がいるだろうと思う場所に向かって・・・窓から飛び下りた。


「ふん・・・・・・さっきの女といい、あのタカヤナギという男といい・・・『統道』『シメる』のは、かなりホネがおれそうだぜ。・・・何より、あの銀髪野郎。・・・・・・普通じゃねえ。全く、あんな化け物みたいな奴がいるとはな」

そう其処にいた、一人の黒人の男は呟いた。



何と言うか。・・・居てはいけない場所に居合わせたか? いきなり、穴から入ったのは大きな間違いだったな。・・・とは言え、勢いがつきすぎたのだから・・・まあ仕方ない。

「はじめまして・・・私、棗 亜夜と申します。・・・私に力をかしてください」

俺の真横で、素っ裸で先程のここに落ちた不良チビを押し倒した姿勢で黒髪の長髪の女が、不良チビに口付けし・・・わけの分からない自己紹介をしている。

・・・・・・なんか、真横に居れば居るほど、虚しいな。
完全に、2人の世界に入っているようだし。

・・・ふむ、ここから少し離れた所で、先程のご同輩がこの光景を見て、固まっている。

とりあえず、あの姿で居られるのはいろいろと・・・問題だ。

俺はそう思って、腰に巻いていたレザージャケットを女に羽織らせる。

「?」
「!・・・な・・『カサカサカサカサ!!!!』

それで、ようやく俺に気付いたのか。不良チビは、座ったままゴキブリのようにすさまじい速度で、後ろに後退していく。

裸だったの女はと言うと、俺のほうを見て固まる。

・・・嫌な予感がする。裸を見られていたことに絶叫されるとか・・そういう事じゃなく・・・何か俺の想像をはるかに越えた何かが・・・。

『ガシ!!』

『ガシ!!』って、両頬を持って頭を押さえつけられ、まじまじと見つめられています。
お、俺の本能が『まずい!!』と叫んでます。べ、別に目の前の女に威圧感があるわけじゃない。だ、だが、俺の本能が・・・。

「!!」

こ、こうくるか!?

「「!!」」
「あ、亜夜!! お、お主、なな、何をしておる!?」

こともあろうか、今さっき不良とキスしていた女は、今度は俺に口付けてきた。
・・・こ、これは、俗に言う『キス魔』と言う奴なのか?

「お待ちしていましたお兄様。ようやく、逢えました」

そう言うなり、目の前の女は涙ぐみ、その後、俺の胸で号泣し始めた。

「ふえ〜〜〜ん!!」
「・・・・・・じ、事態が読めん」

「兄様!! 何で、その穴から侵入してきたのじゃ!?」

俺が、ほとほと困り果てていると先程の着物姿の女が・・・今は少女の体型だが怒ったように、と言うか実際、怒っているのだろうが・・・怒鳴って、問いかけてくる。

「いや・・・ご同輩の案内を受けるはずだったのだが、いきなり置いてけぼりをくらってな。・・・俺は転校生だから、道もよく分からん。・・・だから、手っ取り早く、飛び降りたら、ちょうど穴に下りてしまった。・・・とっくに終わっているとも思っていたしな」
「・・・ご同輩とは誰のことじゃ?」
「ほら、其処にいる。先輩を部長と呼んでいた者だ」
「だから、先輩と言うでない兄様!!・・・って、事態の黒幕はお主か、高柳!?
「え?」

いきなり、矛先がご同輩に向いた。
許せ、ご同輩。俺は面倒ごとが嫌いだ。・・・誰でも嫌いだと思うがな。

「お主には、兄様の案内とあの異人の始末を頼んだはずじゃぞ!! お主、わしの言付けを無視するとは・・・いい度胸じゃな!!

おお、ご同輩の顔色がどんどん青くなっていく。
まあ、がんばることだ。俺は、俺でこの事態の把握せねばならないしな。

「・・・気は済んだか?」
「ぐすぐす、う、うん。お兄様」

俺の胸で泣いていた女は、落ち着いたようだ。

「ところで」
「はい、なんでしょうお兄様?」
「・・・名前は?」
「は?・・・お兄様、何を言っているの?」
「・・・ええと、先輩」
「だから、先輩と呼ぶでない兄様!!」
「分かった。では、なんと呼べばいい?」
「昔通り、真夜でよい。そもそも、兄様のほうが我々より、ずっと年上なのじゃぞ」

『ビシ!!』

な、何か心にヒビの入る音が聞こえる気がした。

「あ、あのつかぬ事を聞くが・・・俺の歳は幾つなのだ?」
「変なことを聞くお兄様・・・えと、今年で21歳だよ」

『ビシ!!!!』

さ、さらに、ひどい音を聞いたような気がするぞ。

「そ、そうか。ふふ・・ふふふふふふ
「え、えと、お、お兄様?」
「あ、兄様・・ど、如何したんじゃ?」

急に不気味に笑い出した俺に、黒髪の女はと着物姿の女は俺から『すすす』と離れる。

「『あの女』!! この事を知りながら、俺を平然とここに入れたな!! 何で、二十歳過ぎなのに高校などに通わねば、ならんのだ!?」

「・・・何やら、兄様は謀略に、嵌められてここに来たようじゃな」
「あ、あのお姉ちゃん。お兄様の様子変じゃない?」
「うむ、実は悲しいことに・・・兄様は記憶喪失なのじゃ」
「え?・・・それ、本当なのお姉ちゃん!?」
「うむ・・・残念ながら、原因は分からぬが・・・半年より前の記憶がないと兄様はそう語っておった」

「な、何なんだ・・あの銀髪野郎?」
「た、助かったのかな俺?」

不気味に笑い続ける青年を中心に、それをちらちら見続けて話す姉妹と、その蚊帳の外で呆然とする男二人と言う真に奇妙な光景ができあがった瞬間だった。



「真夜と・・・亜夜か。俺の・・妹」

あの後、俺はとりあえず、簡単な自己紹介をした後、俺の簡単な過去を教えてもらい解散した。・・・解散するときは、大変だったな。

『お兄様の家はこちらです!!』
『そうじゃ、兄様の家はこっちじゃ!!』

あやうく、あの姉妹の家に引きずりこまれそうになったな。別に、家まで行った訳ではないが・・・俺は学校にまだ残りたいと言ったし・・・気は進まないが『あの女』に対しても、いろいろと聞きたいことができた。その旨を言うと今回はしぶしぶ諦めてくれたようだ。

今は・・・夕暮れの廊下を俺は歩いている。
ふと気が付いたが・・・実際、何故ここに残ろうと思ったのだろうな、俺は?

分からない。・・・何が分からない?
全てだ。俺には、分からないことが多すぎる。何故、俺には記憶がない?

何故だ?

・・・・・・やめよう。柄にもなく、考えすぎた。

うそ・・・・・・ゆ、勇士様?」
「ん?」

いきなり、声を掛けられて、振り向いた先には女が一人いた。
・・・参ったな。いくら考え事していたからといって、こんな人気のないところでこんな接近を許したなんて・・・迂闊にもほどがある。『通常なら殺されている』ぞ。

・・・・・・『殺される』? 何故そんなことを思った? くそ、また記憶がぐちゃぐちゃに反芻してくる。

「あ!・・・だ、大丈夫ですか勇士様!?」
「あ、ああ」

よほど、俺の顔色が悪かったのか。慌てて、俺に女は近づいてきた。

「ほ、本当に大丈夫ですか? 顔色が真っ青ですわ」
「ああ、平気だ」
「・・・良かった」
「ずいぶんと、気遣ってくれるのだな。見たところ先輩のようだし」
「え? あの、勇士様ですよね?」

俺の言葉に、疑問におもったのか。先輩らしい女は問いかけてきた。

「ああ、俺は『白観 勇士』だ」
「あの私の事、覚えていますか?」
「・・・・・・・・・」
「忘れてしまっているんですか?」

女の顔が、真夜と同じだったように悲壮に歪む。
・・・変だ。この顔も、どこかで見た。『どこだ?』『どこでだ?』

「ゆ、勇士様!!」
「ん?・・・ああ」

俺は、無意識に己の右の手を血が出るほど握り締めていたようだ。

「・・・如何したんですか? 二年もいなくなって、急に現れて驚きました・・・正直、もう逢えないとも思ってましたのに」

そう言いながら、彼女は、俺の手に『彼女のモノ』であろうハンカチを俺の手のひらに巻きつけて血止めしてくれる。

「・・・五・・十鈴?」
「覚えていてくれたんですか?」

彼女の名らしき単語を口にした瞬間、彼女は喜びを顔に表す。
俺の手に、ハンカチを巻いて血止めしてくる彼女を俺は『知っている』

「・・・ふぅ、今日は様付けで呼ばれることが多い」
「それは、『棗 真夜』のことですか?」
「彼女を知っているのか?」
「・・・ええ、ここでは有名ですし、何より・・・どうしたんですか? まるで2年前のことが『記憶から抜け落ちた』ような言い方ばかりですね」
「・・・・・・」
「・・・え?・・まさか」

俺の沈黙に彼女は驚いた表情でこっちを見る。

「え? 本当ですか!? 記憶がないって、じょ、冗談でしたのに」
「・・・ああ、悪いが半年前からの記憶がない」
「え、でも・・私の名前・・覚えててくれたじゃないですか?」

まだ冗談か、何かと彼女は思っているらしいが・・・。

「悪いが事実だ。今日、真夜にあって・・・いろいろ聞いた。とは言え、家族構成とか俺の歳とかぐらいだったがな」
「歳・・ですか?」
『ある女』のせいで、俺は二十歳過ぎなのに、この学校に2年生で入学する羽目になった。俺自体、こんな容姿なので・・・間抜けにもあっさり信じてしまった」
「・・・・・・あの、復学って事じゃないですか?」
「ん? どういう意味だ?」
「当時、二年前にあなたがここに在籍だったころ、あなたは二年生でしたから。今まで、休学扱いだったのでは?」
「―――当時から、留年していたのか?」

何やら、痛い話になっているような気がする。
自分で言って、自分の墓穴を掘ったような気がしてならないのは・・・やはり痛いことだ。

「いえ・・・その私が聞いていたのは、元から入学する時期が遅かったと聞いています。勇士様の場合。お若い容姿だったので・・・さして問題はないなと」
「俺は・・・昔から年齢不詳だったのか?」
「あの―――若い姿を維持できるのは羨ましいかと」

・・・限度があるだろう。

「それで・・・あの・・・記憶喪失って本当ですか?」
「まあな。昨日まで、過去など気にしてなかったのだが・・・俺の記憶の鍵を握る者に逢えば・・・どうも、気にしてしまう」
「あの・・・その話は・・・信じます。・・・けど、何で私の名前を知っているんですか?」
「・・・それだけ、俺の中での印象が・・・強かったのだろう。俺が、そういった反応を示したのは、あんたで2人目だ」
「2人目?・・・一人目は?」
「今日逢った『棗 真夜』と言う女・・・俺の妹らしいな」
「ええ・・・その情報は、あっています。でも、私のことを覚えていてくれたのは・・・あの・・・とてもうれしいです

最後のほうは、顔を赤らめながら言う五十鈴。

「これから、又俺の過去に関することをいろいろ聞くかもしれない。よろしく頼む、先輩」
「む・・・私の名前は『五十鈴 絵美』です。昔みたいに絵美って呼んでくれないんですね?」

ふてくされたような顔で、五十鈴。やはり『この顔』もどこかで見たな。

「・・・待て、俺はそう呼んでいたのか?」
「ええ、大抵、仲のいい女の人とは下の名前で呼んでいましたよ。勇士様は」
「・・・・・・俺は、タラシだったのか?」

嫌な過去が・・・又明らかになるのか?

「あ! いえ、そんなことないですよ。本当に、親しい人しかそういう呼び方はしませんでしたし・・・何より、ここでのあなたは・・・」

きちんと否定してくれたのは、とてもうれしいことだな。
そこで、言葉を止める五十鈴。

「ここでの俺は?」
『孤高』で、『気高い』人でしたから」
「・・・・・・今一、雰囲気がつかめないな」
「いいんですよ。ふふ、あなたはそのままで」

眉をひそめていると、ニコニコした顔で五十鈴にさとされた。

「五十鈴!! 探したぜ、こんな所にいたのか!?」
「何用ですの?」

急に現れた体格のいい髭面の男に、五十鈴は返答していたのだが・・・どことなく、不機嫌そうだ。どこからともなく『よくも、邪魔しましたわね』なんて台詞が聞こえたり聞こえなかったり・・・。

「ああ!! それが校舎裏にバイクが!!・・・それもありゃ、大将のヴォルフ・・ガン・・グ・・・・・・た・・・た・・たたたた」

大声で男が話すが・・・何だ俺のバイクである『ヴォルフガング(荒くれ者)』のことについて、話しているのか?
ん?・・・いきなり、俺のほうを見て、固まったなこの髭面の男。

「た?・・・何だ? 俺の顔に何かついているのか?」
「大将!!!!」
「む!・・・『ドガ!!』・・・あ」

急に大声で叫ばれた瞬間・・・何やら条件反射というか、何故か男の頬を右手で、思い切り殴ってしまった。

―――何故だ?

「あ・・・すまん。わざとではない。何故か、急に手が条件反射というか・・・何というか。・・・とりあえず、非礼をわびる」
「痛つつつ・・・かぁー、久々の大将の黄金の右だ。でも、威力は少し落ちたか大将?」

・・・何か、思い切り殴ってしまった割には・・・平気だなこいつ。

「・・・その大将と言うのは俺のことか?」
「あん?・・・何言ってんだ大将。でもよ2年ぶりだな。今までどこに行ってたんだ? 大変だったんだぜ。あんたがいなくなって」

俺は対応に困り、五十鈴に助けを求めた眼を向ける。

「はぁ・・・しかも、五十鈴と逢引? 何だ大将も隅に置けないな」
「た、俵さん!!」
「あん? 何だ違うのか、五十鈴? でも、案外まんざらじゃなさそうだぞお前」
「そ、その・・・そういう事だったら、それはそうでうれしいのですが・・・って違います!!」

顔を真っ赤にして五十鈴は言う。

「でも、大将が居なくなったのって慎が原因だろ? 光臣の奴はあんなのになっちまって、俺に執行部に入れなんて言うし・・・おまけに慎は、慎で妹ほっぽって、『自分を見つめ直す』とか、訳の分かんねえ事をぬかして旅に出ちまうし・・まあ、時々手紙やら、電話やらは、家にしているようだったけど・・・それより、何でいまさら戻ってきたんだ失踪中の大将が?」

まずい。少しずつマシンガントークのように問いかけられている。俺には、意味不明な単語が多すぎる。

「ちょっと、待ってください。今事情を説明します!!」
「・・・頼む。絵美」
「え?・・・あ・・・はい、分かりました勇士様

俺が名前で呼んだのが、絵美は恥ずかしかったらしい。俺自体、それくらいのことなら、たいしたこともないので赤面はしないし、別に恥ずかしいとも思わない。名前で呼んで欲しいなら・・・そうしたことに越したこともない。

「えと・・・俵さん」
「おう。何だ? 俺には大将がここに居る理由がさっぱりだ?」
「その、私も今さっき勇士様とお話して・・・分かったのですけど。・・・勇士様は今日ここに転校してきたようです。正確にはおそらく、復学と言う形なのですが・・・」
「てことは、大将まだ2年のままか?・・・にしても、髪と眼の色が何か違うが、それ以外は全然、姿が変わってないな大将。昔から年齢不詳だったが・・・輪を掛けてひどくなってないか?」

『ビシ!!!!』

俺は・・・おそらくこの髭面の男でさえ年下なのだろう。
そう思うと・・・又も、心にヒビが入るような音が聞こえたのは、気のせいではないのだろう。

「言うな。俺は、その容姿のせいでこんなとこまで来たのだ」
「?」

俺の言ったことが、分からないといった顔でこっちを見る男。・・・なんか、現実を把握するに当たって・・・現実を逃避したくなったのは・・・気のせいでないだろう。

「・・・で話しを続けます」
「あ、ワリイ。続けてくれ」

絵美が、話を進める。

「で・・・勇士様は、その・・・ここ半年より前の記憶がないようです」
「は?・・・何言ってんだ五十鈴。んな漫画みたいな話」
「私だって・・・半信半疑でした。でも、あの時の事を照らし合わせると・・・勇士様がここに戻ってくるのはそうでもない限り・・・考えがつかないのに気付きました。あの絶対的な別れの台詞を・・・言った勇士様が・・こうして・・戻ってくるなんて

何やら、昔のことを思い出しているみたいで絵美の表情がどんどん暗くなっていく。

「・・・・・・ああと、大将。とりあえず、今の話。マジか?」

場の空気が悪くなったと感じ、髭面の男は話題を変えたようだ。

「昔のことは知らないが・・・説明したとおり、俺には半年から前の過去の記憶がすっぽり抜け落ちている。それも、対人関係は勿論全部で、己の名前以外の・・・さまざまな勉学的知識や・・・戦闘知識にまで一部、欠損を感じる。・・・まあ、勉学的なものといったが、ここでのような通常の学業に対しては一切の欠落はないが・・・雑学的なものになると・・・例えば、お前がさっき言った『ヴォルフガング』・・・あれは俺が造ったらしいが・・・今は如何いう仕組みで如何いった技術で造り上げたのか、さっぱり分からない。覚えているのは・・・アレの操作方法だけだ。しかし・・・昔の俺はどうやってあんなオーバーテクノロジーの塊ようなバイクを造ったんだ?」
「・・・ああ、それについては、俺も知りたいけど・・・当時、造っているのを横から見さしてもらったことがあるが・・・何か、やたら怪しい部品使っていたのは、よく覚えてるな」

なるほど・・・しかし、ますます昔の俺が分からなくなっていくな。

「・・・するってーと。大将、俺のことは覚えているか?」
「誰だ?」
「・・・マジ?

何やら、頬を引きつらせて言う男。

「分からんが、あんた、相当俺に殴られてなかったか?」
「お、よく分かったな。大将の突っ込みは、いつもきつくてな」
「―――やはり俺の体が・・・条件反射で動いたのはそのせいか?」

・・・嫌な条件反射だな、おい。

「俵さん、いつも馬鹿なことして勇士様を困らしてましたから・・・」
「うるせえな五十鈴。まあ、いい俺の名前は『俵 文七』、通称 『ダブりインパクトの俵』だ。自慢じゃねえが今年で3年は3度目よ!! と言うことで歳は大将より一つ下の二十歳だ」

なるほど、2回留年したから、ダブルとダブりをかけたのか。
・・・本当に、自慢じゃねえ。

―――と言うか。

「なら、俺は『トリプルインパクト』と名乗らなきゃならないのか?」

俺は、哀愁の篭った様子で話す。
・・・それと同時にありもいない木枯らしが吹いた気がする。

「え!? あ、いや、た、大将は俺と違って・・・な、なあ、五十鈴!!」
「へ?・・え、えと、そ、そうですよ!! た、ただの休学ですし・・勇士様、学業のほうじゃ当時からとても優秀でしたし!!」

相当、俺がやばい顔していたのだろうな。必死で慰めてくるし。

「はぁ、もういい。今日は帰ることにする。ではな。・・・あ」

俺は、そのまま帰ろうとして、あることに気付く。

「どうかしましたか勇士様?」
「如何した大将?」
「グラサン、壊されたのに、弁償請求するの忘れた」
「は?」

俺の台詞に、『何のことだ』と言わんばかりの顔を向ける俵。

「いやな、今日・・・ええと、そうそう真夜とか言う『俺の妹』が、俺のグラサン踏んづけて粉砕したんでな。それを請求するのを忘れた」
「何だ。グラサンの一つくらい、いいじゃねえか?」
「まあ、そう言えばそうなのだが、俺はこの眼を、あまり人に見せるのは・・・何故か、抵抗を感じるんだ」


「この眼だけは、半年前から好きになれない」
俺は・・・一体、『何者』なんだ?


―後書き―
というわけで、第三話。如何でしたでしょうか?

何やら、ハーレムくさいもの感じますが・・・そういう路線もいいかなと思いつつも、実は勇士の女性関係で、シナリオではある問題があり、いろいろと簡単にいかないんだよと言う物が合ったのをすっかり忘れていましたw 

まあ、それはおいおい話すとして、今回は亜夜、雅孝、五十鈴、文七を新たに、出しました。さて、ここで気になるのは何故、執行部である2人が転校生の名前に勇士の名があるというのに気付かなかったのか? と言うのは別に、シナリオ上にはきちんと理由があるのであしからずです。

さて、それではレスの返事に移りたいと思います。

ユピテルさんへ
はい。毎度のレスありがとうございますw 通常の展開を常に考えてるとイレギュラーな展開が思いつくんで、それが面白かったら、採用ですw 
CPは今の所決めてませんがとりあえず、女性キャラが大半でたらゆったり決めようかとw 今の所、ハーレム路線一直線な気もしますが・・・まあ、それもよしかなw
と言うわけで次回もよろしくです。


隆行さんへ
はい、感想のレスありがとうございます。今回シナリオで重要なのは、真夜たちとの記憶とそれ以前の記憶がなくなってしまったということです。
真夜達との記憶はおいおい明かしていますが・・・物語の味噌は勇士の養子になる前の過去ですw そこいらを考慮して見ると又違った面白みが・・・w
と言うわけで次回もよろしくお願いいたします。


D,さんへ
残念ながら、慎は旅立ってますw といっても原作のボーリング場のシーン辺りで出そうかと思案中です。それと残念なことに、光臣は歪んだままです。・・・原作どおりにある程度しないとストーリーが成り立ちませんので・・・まあ、光臣の行動の理念は原作とは異なるんで・・・そこいら辺に注目すると面白いかもしれませんw
というわけで、レスありがとうございます。次回もよろしくですw


秋雅さんへ
レスありがとうです。さて、文七とのやり取りは、ある程度、書きましたんでそのうち失踪する前の学園での出来事を詳細に書くときに、文七との仲がより鮮明に分かるのでそれまでお待ちをw
ということで次回もよろしくですw


ロックさんへ
初レス感謝です。これから以後よろしくお願いいたします。それでは次回もよろしくです。


たけのこさんへ
亜夜との仲は今の所微妙ですね。兄妹としての感情か? 男女としての感情か? は今の所不明です。一応、原作どおりに宗一郎もいろいろと活躍する予定なので亜夜との仲は今の所、不明かな。
まあ一応在る程度、お兄様LOVEっていうブラコン的なところもありますんで・・・そこらはおいおい。と言うわけで次回もよろしく〜w


Gさんへ
ハーレムかもですw 男のロマンかもですw
というわけで、初レスに感謝です。次回からもよろしくお願いします。


春風さんへ
勇士の強さは・・・今の所、決まっていますがどのように、変化したかはしばらくお待ちください。・・・っていうか。力や速さなどの肉体のポテンシャルは置いといて、戦闘知識が一部欠損していると書いてあるので・・・攻撃的方法をいくつか忘れています。
というわけで、初レスありがとう。そして、次回もよろしくですw


混沌さんへ
あの・・・さすがに忍術まではリンクしていません。リンクしているのは世界観がある程度リンクしているだけです。まあ、それも些細なものですが・・・。
というわけでレスに感謝です。次回もよろしくお願いです。


というわけで、以上ホワイトウルフでした。
それでは、皆さん。又次回で合いましょうw

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