さて、いきなりだが和樹の目の前に何やらよからぬ光景が飛び込んできた。
そりゃもう、かなりよからぬ光景だ。
少し後ろ向きだが、その光景はもう、そりゃもう誰だって理解できる光景だ。
一言で言えば、下着姿以外のなんでもないだろう。
もちろん、この時に、
ザ・○ールド!!
時よ止まれ!!
なんて叫ぶ変な立ち方をした金色の兄ちゃんがいたのは、錯覚なんかじゃない。
たぶん。
「き・・・」
その下着姿の少女が何かを叫ぼうとする。
だがその前に和樹は、
ドゴォォォ!!
下着姿の少女の無防備な腹に全力の一撃を叩き込んだ。(おい!
そりゃもう、欠片の躊躇もなく、である。
「ふぅ、ミッションコンプリート♪」
非常に爽やかな笑みを浮かべながらガッツポーズを決める和樹。
それでいいのかよ?
「んで、誰だこいつ?」
と、和樹は気絶している下着姿の少女を見下ろしながら呟く。
なお、和樹の先ほどの一撃は凡人ならば腑をぶちまけほど強力なものだったということを記しておこう。
この世界の和樹は犯罪者に対して一切の躊躇を持たないと言うことも記しておく。
さらに付け加えておくが、この下着少女の犯罪は住居不法侵入であるため、犯罪を犯しているのは間違いないのでご了承いただきたい。
「う〜ん、もしかして血の事がばれたか?」
そんな事を考えながら、和樹はズボンのポケットから携帯を取り出すとどこかに電話を始めた。
「あ〜、もしもし?」
『あら、どうしたの和樹君?』
相手から穏和な女性の声が聞こえてくる。
「実は、俺の部屋に住居不法侵入の人が現れまして」
『あらあら、それは物騒ですね』
「もしかしたら、血の事がばれたのかもしれません」
『ほう、それは大変な事になったな』
突然、電話の相手の口調が180度変化する。
そりゃもう、太陽から北極のど真ん中に突き落とされたと錯覚するくらいの変化だ。
「なんで、おそらく探魔士が関わっていると思うんです。
大至急、コクトーさんに調べてもらえませんか?」
『かまわんがただでは駄目だな』
「じゃ、報酬として一千万ほど」
『ふむ、妥当か。よかろう今日中に調べさせる』
「きょ、今日中って」
『なぁに、報酬として300万ほどやると言ったら、あいつはやる気を出すさ』
「と言いながら払う気はないんですよね?」
『当然だ』
電話の主がさも当然と言わんばかりに言い切る。
(さようなら、橙子さん)
和樹は心の中で、電話の主の末路に十字を切った。
ついでに、下着少女はどうなったかというとすでに窓から外に放られていたりする。
下着姿のままで!!(爆
ガンガンガン!
突然、ドアを叩く音が響き渡る。
気配から察するに、先ほどの少女ではないようだ。
「誰かが来たみたいなので、俺はこれで」
『ああ、偶には遊びに来いよ。式がイラついていたからな』
「・・・・・・・・・・・・・・・善処します」
もちろん、和樹は遊びに行くつもりなどさらさらない。
逝けば(誤字あらず)間違いなく殺し合いに発展するであろう少女の姿が和樹の脳裏に浮かび上がる。
前回行った時は、トータル時間約3時間もぶっ続けで殺し合ったのだ。
全くもって彼女はある意味において『殺人鬼』である。
いや、正確に言えば彼女が『殺人鬼』ではなく「彼女」が『殺人鬼』なのだが。
「では」
そう言って和樹は電話を切ると、とりあえずドアを開けた。
そこには、長身の金髪がよく似合う10人中10人が美人と答えるほどの美女が立っていた。
「えっと、確か風椿玖里子さんだっけ?」
「あんたが式森和樹?」
「はぁ、確かに俺が和樹ですが」
「そう、じゃしましょ」
そう言って玖里子は和樹を押し倒そうとする。
もちろん、その動きは和樹にとって見れば異常なほど遅い。
だからこそ、和樹は軽く体を半歩だけ左へずらし、迫りくる玖里子に対して足払いをした。
で、当然勢いと重力により、玖里子は部屋の床に倒れ込んだ。
顔面から!!(ぇ
ズシャァァァァ!!
はっきり言って、めちゃくちゃ痛そうだ。
「な、何すんのよ!?」
「少なくとも、強姦魔に言われたくない」
そりゃそうだ。
少なくとも、玖里子がやろうとしているのは強姦以外のなんでもない。
「ん?」
で、そこへもう1つの気配。
どうやらこの気配を察するに。
そこへ、その気配の主が現れた。
小柄で今時珍しい日本の着物を羽織った少女。
その右手には日本刀が握られている。
「やぁ凛。どうしたんだ、俺の部屋なんて滅多にこないだろ?」
「お久しぶりです、式森先輩。じ、実は・・・その・・・」
そう言って顔を真っ赤にしながら凛は恥ずかしがっている。
何やら照れるような事があったらしい。
そりゃもう、かなり可愛い。
これが世に言う、『萌え』と言うやつなのだろうか?
ちなみに、作者は「もえを漢字で書きなさい」と言われると手始めに『燃え』と書いてしまう人物である。
まぁ、どうでもいい話だが。
「風椿に神城・・・となると、さっきの不法侵入者は宮間の可能性が高い、か」
などと考える和樹。
「へぇ、じゃ私たちの目的は知ってるわよね?」
「おおかた、俺の遺伝子だろう・・・少なくとも、凛はそれだけとは思えないが」
「えっと・・・その・・・わ、私は・・それで・・かまわないというか・・・なんというか・・・で、でも・・・やっぱり正式な形で・・・・」
などと恥ずかしがりながら言う凛。
そりゃもう、どこかの可愛い小動物のようだ。
こういうのを『萌え』なのだろうか?
少なくとも、そっち刑のお姉さんなら100%お持ち帰りされそうな雰囲気である。
なお、この時の玖里子の思考は、
(か、かわいい・・・・お持ち帰りしようかしら)
などとかなり不純的な事を考えていた。
ま、些細なことだろうが。
と、その時、
「キシャァァァァァァァ!!!」
どこかで決して聞いてはいけない叫び声が聞こえた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その叫び声に、3人は無言になる。
そりゃもう、先ほどから首筋に感じる殺気は気のせいなんかではない。
気のせいであって欲しいだろうが。
作者がそれを許さないので問題ない!
「なぁ、なんかやばい気がするんだが」
「奇遇ね、私も同じ事を考えてたのよ」
「・・・・・・・・」
多大な汗を流す3人。
凛に関しては、すでにその手に握られた刀を抜かんほどに切羽詰まっている。
で、その殺気の元凶が現れるのは当然の成り行き。
偽名「宮間夕菜」。
本名「デビルキシャー」(悪魔の嫉妬)
「和樹さん!! どうして私を殴るんですか!? 妻ですよ!! 私は和樹さんの妻なんですよ!! どうして妻である私を差し置いて他の異物共と話してるんですか!!?」
はっきり言って、言ってることが支離滅裂である。
ってか、おまえはどこから現れたよ?
玄関からも窓からも現れなかったし、転移魔法すら使っていなかった。
マジでどこから現れたのよ?
「いや、ってかアンタ誰?」
なお、この和樹の返答は当然と言えば当然の返答である。
そもそも、あったのが約10年前。
しかも会ったのがわずか10分程度。
はっきり言って覚えていたら、それはそれで怪物君よろしくである。
そんなもの、覚えているはずがない。
ましてや和樹は、かなり破天荒な人生を送っている。
故に、10年前のわずか10分間の思い出。
覚えているはずもない。
で、そんな和樹の訴えを聞かないのがデビルキシャーのすごいところ。
「なんでですか!? 私が覚えているんですよ!? 和樹さんも私のことを覚えていて当然じゃないですか!!」
デビルキシャーよ、そりゃストーカーの論理だよ。
少なくとも、一般の論理じゃないよそれ。
ってか、自分が覚えているから相手も覚えているって・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もはや、何を言っても無駄と悟ったか和樹は頭を抱え込んだ。
もしかして、自分は呪われているのではないだろうかと和樹は本気で考える。
まぁ、安心しろ和樹。
お前は間違いなく呪われているから!
まぁ、それでも『呪○』っていうホラー映画出てくる幽霊以上に怖いだろうから。
「死んでください・・・浮気者」
そう言って夕菜の右手に超高温の火球が発生する。
宮間家は衰退し始めているとはいえ精霊魔法の実力はいまだにトップクラスである。
故に、上位精霊を召還することぐらい造作もない。
ただし、今回夕菜が使ったのは詠唱なしの強制召還。
しかもかなり強引である。
無理矢理召還された炎の魔人ことイフリートが申し訳なさそうな顔をしているのは見間違いじゃないだろう。
「あ〜しゃないな」
そう言うと、和樹の両目が両儀に変化する。
と同時に、和樹は軽く指をパチンと鳴らした。
瞬間、世界は変質した。
全ての世界の色がモノクロと化す。
同時に、全ての世界の時間が異常なほどスローと化した。
これこそが、両儀なる瞳の最大にして最高の技。
自分以外の全ての時間を数十倍に引き延ばしてスローにする。
その名を「クイックシルバー」
「じゃ、やりますか」
そう言って和樹はスローと化した世界で普通に夕菜と距離を詰めた。
不意に和樹は夕菜の顔を見る。
「・・・・・・・・・」
かなりまずい顔だったのであえて何も言わない。
作者自身も言いたくないからだ!!
「はぁぁ!!」
和樹は素手で自分が知る限りの全ての急所に殴る蹴るの暴行を加え続ける。
そもそも、殺人を犯そうとする奴に手加減をするほど和樹は優しくない。
最後に水月につま先の蹴りを叩き込む。
で、
「そして、時の流れは元に戻る」
ポツリと和樹が呟くと、世界は色を取り戻した。
瞬間、夕菜は吹き飛び再び窓から外に飛んで出ていった。
その光景は、「ばい○いきー○」と言う某ばい菌男に似ているかもしれない。
ちなみに、夕菜の姿は今だに下着なのだが、その辺は割り勘にさしてもらおう。
「えっと・・・・」
突然の光景に玖里子は大きな汗を流しながら呆然としている。
凛の方は知っているのかそれほど慌てている様子はない。
「あ〜、とりあえず明日改めてこの部屋に来てくれねぇか?」
とりあえず、話し合いは明日に持ち越されたらしい。
「そうね、こんな状況じゃね。じゃ、明日の今の時間でいい?」
「俺はかまわないが、凛はどうする?」
「私もそれでかまいません」
「とりあえず、夕菜に関しては」
「さっきのサイコ野郎の名前か? とりあえず連れてくるな」
「どうしてですか?」
「話が進まないような気がする」
さも当然のように和樹が言い切る。
なお、この和樹の意見に玖里子と凛は賛成したのは言うまでもない。
さらに付け加えておくが、和樹は夕菜に止めを指さなかったことを、次の日に後悔する事になるのだが、それはまぁ別の話だろう。
あとがき
ずいぶんと間があいてしまいましたね。
反省しています。
まぁ、理由が告別式の参加などが理由です。
D’さんへ。
とりあえず、直死の魔眼については考え中です。
基本的に、両儀の瞳は「万華鏡写輪眼」の能力の1つである「天照」を参照にさせていただいています。
今回の「クイックシルバー」につては・・・まぁ、まんまですね。
芋版さんへ。
まぁ、D’さんと同上です。
なお、「両義」ではなく「両儀」でした。
これは単なる打ちミスです、すいません。
紫苑さんへ。
今現在、「天照」と「クイックシルバー」だけです。
あとは「直死の魔眼」と他に1つくらいかなぁと。
最有力候補は「月読」ですね。
では
BACK< >NEXT