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「Fate/capture night8(Fate+CCさくら)」

SK (2005-02-12 06:10/2005-02-12 06:19)
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一度は、彼女の味方になろうと思った
“自分”を裏切ってでも、助けたいと願ったのは、偽りのない自分の気持ちだった
だが、彼女の“悪”は人々を飲み込み
もう、自分がしてやれるのは、彼女の命を断ってやることだけしか残されていなかった

“一緒に、桜を見に行こう”
約束を交わした晩、自分は彼女を殺しにいった
そのときにはもう、部屋はもぬけの殻だった
あの、たとえようもない安堵を覚えている
だが、彼女が内に孕んだ“悪”は、もう世界を喰らい始めていた
自分には、それを放って置くことができなかった

彼女に自らの剣を、突き立てて殺した
それでおしまい

“世界よ、契約しよう”

ああ、だから、これが始まり
“自分”を裏切った自分の報い

“我が死後と引き換えに、彼女の犠牲になった人々を、助けてくれ”

彼女の躯を抱きしめて、そう願った
せめて、■■■、お前の“罪”だけは消していく
祈る権利などないけど、それでも、どうか願わくば安らかに逝けるように

“幸せ”なんて不相応なものを、“自分”が望んでしまったから、こんな結末になった
“自分”という在任は、もうどうしようもない、救われぬ存在なのだと、そのとき思い知った

これが、一つの“英雄”の始まり


「では、確かに送り届けた」

「は、はい。ありがとうございました」

ぺこりと一礼するキャスター
いつものように、動かない表情で去っていく葛木教諭

「はあ、葛木先生がキャスター連れて来たときは、びっくりしたよ」

「!あの方のことを、知っていらっしゃるのですか?」

「知ってるも何も、うちの学校の先生だよ。葛木先生は」

「そう、ですか。葛木様とおっしゃるのですね・・・」

キャスターは、どことなくぼうっとした表情だ
そう、それはまるで・・・

「ふふ、恋する乙女はかわいいねえ、キャスター?」

バゼットが背後に立ち声をかけると、キャスターはびくっと背筋を震わせて、あわてて振り向いた
顔が真っ赤だ

「ま、マスター!?なにを、いってるでしゅか!?」

あわてるあまり、語尾が変になってる

「隠さなくてもいいよ。何、私は女性の味方だ。恋愛相談も受け付けるよ」

完全にからかいモードに入ったバゼットを止めたのは、セイバーだった

「キャスターをからかうのは、その辺りで止めてください。キャスターのマスター」

「ああ、そんな呼び方ではなく、バゼットと、名で呼んでくれないか。その可愛らしい口で」

「・・・では、バゼット。気になっていたのですが、何故私を女性と同じように扱うのですか」

「別に良いだろう?それだけ綺麗なら、男も女も関係ないさ」

飄々と言ってのける
綺麗な顔立ちに、食えない笑み

(ばれている・・・というわけでもなさそうですね)

性格なのだろうと、セイバーは判断した

「まあいいでしょう。サクラが目を覚ましました。今後の方針なども含めて話し合いたいと思うのですが」

「じゃあ、居間に行こうか」

居間には、さくらがいた
これはいい
しかし、月とケルベロスまで真の姿でお茶を飲んでいるのはいかがなものか

「そこのねえちゃんには、バレたみたいやからな、現状確認のためにも真の姿で話したほうがええやろ」

開き直りか

「ほう、これがクロウカードの番人か・・・!素晴らしい・・・ここまで来ると本当に反則としか言い様がないな」

「ほえ?」

さくらが首をかしげる

「ここまでのレベルの使い魔を二体養い、更にあのクロウカードをも行使する。その歳で、すでに化け物レベルの魔力量だ。流石に“世界一の魔術師”の後継者は伊達ではないな」

少し呆れが混じった表情で、バゼットは評する

「多くの魔術師が代々血統を重ねてもなかなか届かない領域に、一代で、しかもその歳で届かれるとはね。ここまでくると、呆れるしかない」

「え、えっと、あのう・・・」

どう声をかけたらいいのか分からず、あわあわするさくら

「そんな私個人の感傷は置いておこう。実戦においての能力が知りたいところだ。大雑把にでいいから、教えてくれないか?」

「それは、私が説明しよう。主は、朝食の準備をしてくれ。そろそろ頃合だろう」

「あっ、は〜い。セイバーさんやバゼットさんやメディアさんは、やっぱり洋食の方がいいかな?」

「私はサーヴァントですから、食事は必要ありません」

「私も、キャスターと同意見です。どうぞ、私達の事はお気になさらず」

そう言われて、下がる衛宮兄妹ではない

「でも、食べたらいけないってわけでもないんだろう?俺達が食事してるのに、セイバー達だけ食べないってのも気が引けるし」

「ご飯は、みんなで食べたほうがおいしいよ!」

口々に主張されては、それ以上強くは言えない

「いいじゃないか、料理人がそう言ってくれてるんだから、お言葉に甘えれば。ああ、私は“和食”と言うものに興味があってね。そっちの方がいいな」

「わかりました。セイバー達もそれでいいか?」

「・・・異存はありません」

「マスターが、そうおっしゃるのなら・・」

喜々として台所に立つ兄妹を尻目に、話を再開する月

「カードには、それぞれに意志と性格がある。これは、ミラーを見ていれば分かったと思うが」

「ああ、本当にクロウリードと言うのはとんでもないな」

「性格によっても戦闘向きのカードとそうでないものがあるな。たとえば、“鏡”は本来戦闘には向かない。カードは、基本的に“武器”ではなく、“魔術”だからな。戦闘向きでないものも多い」

「だが、戦闘向きのモノもあるのだろう?どの程度の威力かが知りたい。そうだな、たとえばセイバーやキャスター相手にも通じるか?」

「難しいだろうな。攻撃系を使うよりむしろ、特殊系をつかって撹乱したほうがまだいい」

「今回、ミラー君がやったようにか」

「あれも本来は戦闘向きな性格ではないのだが・・・よほど怒りを覚えたのだろうな。ミラーは士郎のことを慕っているから」

「出会って数時間だが分かる、彼は素でジゴロの素質があるな。女性が言われて嬉しい言葉を無意識に吐けるというのは、一種の才能だ」

「ふむ、そういうものなのか。あまり士郎に関してそういった話は聞かないが」

「不器用そうだからね、きっとそこまで言葉を交わすほどの女性の知り合いがいないんだろうさ」

いつの間にか、論題が“士郎の女たらしとしての素質について”にすりかわったところで

「ユエー!バゼットのねえちゃんー!飯が出来たみたいやでー」

ケルベロスが呼びに来て、話はひとまずしまいになった

「こ、こうでいいのでしょうか?あ、おいしい・・・」

たどたどしいが、初心者にしてはかなりの器用さで箸を操るキャスター
箸を使っているときは少し難しい顔だが、料理を口に含むと顔を綻ばせてくれるのは、料理人冥利に尽きる

「・・・・・・」

無言で、こくこくと頷きながら、かなり速いスピードで食事を消化していくセイバー
箸の扱いも、かなり上手い

「美味しいな。料理の腕がいいというのは、大変な美点だ。自慢になるぞ」

どこか無邪気とさえいえる笑みを浮かべて、舌鼓を打つバゼット
こちらも、箸使いはかなりなめらかだ

「セイバーも、バゼットさんも器用だな。ひょっとして、和食食べたことあるのか?」

士郎が何気なく口にすると、二人の肩がぴくりと震える
セイバーは、何事もなかったかのように食事に集中した

「私は、日本人の知り合いがいたからね」

バゼットは、懐古や悔恨等色々な感情が入り混じった表情を浮かべる
見てるほうが、胸が痛くなるようなカオ

「ごめん、聞かないほうが良かったことだったみたいだ」

士郎が頭を下げると、バゼットはいつもの食えない笑みを浮かべる

「何、昔の話だ。まだ割り切れていないと言うことは、私が魔術師としてまだまだ未熟な証拠さ。すまないね、せっかくの旨い料理を、まずくさせてしまった」

そう言って笑うバゼットの笑みには、どこか影があった


<Interlude>

ここではないどこかの映像を見ている

槍で心臓を貫かれる先輩
片腕を切り落とされる先輩
ぼろぼろになっていく先輩
記憶は磨耗し、全身を異物でぐちゃぐちゃにかき回され、自分を失っていく先輩
どうしようもなく壊れていく、先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩

恐怖する
先輩が傷つくこと、きれいな先輩が壊されていくこと
だけど、一番の恐怖は

―――傷つく先輩を見て、喜んで笑う私がいること―――

先輩と、さくらちゃんの顔が浮かぶ
ああ、あの暖かい場所に行きたい
なのに、あの、あったかいせかいは

どうして、こんなにもとおいのだろう――

絶望に飲まれそうになったとき、誰かの手が、自分に触れる
その温もりに、心を取り戻す
まだ、大丈夫。自分の側には、まだ温もりがあってくれるから


「桜・・・」

ライダーに、桜の様子が変だと告げられ、駆けつけて見れば、桜はうなされていた
憔悴しきった桜の顔を見るたび、何の役にも立てない自分が情けなくていやになる

ずっと、魔術師に憧れていた
根源を目指し、神秘を探求するその在り方に、己の中の血が惹きつけられた
自分には、決して魔術が仕えないと知った時の、世界の全てが色を失ったような絶望
桜が魔術師だったと知った時、あの自分でもわけの分からない嫉妬と羨望が入り混じった衝動に身をゆだねていたら、何をしていたか分からない
あの衝動が止められたのは何故だったのだろう
ただ、“帰れなくなる”と脳のどこかで何かがわめいていた
もしかしたら、そこは、自分がくだらないと見下していた、ぬるま湯のような、平穏な世界だったのかもしれない

覚えている、衛宮の家から帰ってきた後、泣きじゃくりながら、震えながら言った少女の姿を

『ごめんなさい。魔術のこと、隠していたことは、謝ります。でも、私は、魔術師になんか、なりたくなかった。魔術は、痛くて、怖くて、辛いです。そんなもの、私は欲しくなかった。ただ、姉さんと一緒にいたかった。先輩やさくらちゃんといっしょに、たわいないお話をして、そんな普通の生活が、欲しかった。嫌われても、憎まれても、仕方ないとは思うけど、それでも、私は兄さんのことが好きです。叩かれたのはいたくないです。でも、兄さんに嫌われるのは、とてもいたい、です』

自分でも、もう何を言っているのか、桜にだって分かってなかっただろう
ぐちゃぐちゃな表情で、多分ぐちゃぐちゃになっている頭で、桜は必死に言葉をつむぐ
僕には、理解できなかった
僕が、焦がれて、狂うほどにも止めても、決して手に入らないものを“いらない”と言う桜が
魔術という神秘を扱うことが出来るなら、どんな苦痛も、恐怖も、卑怯な手段だって厭わない
それくらい、僕は魔術師になりたかった
だから、僕が欲してやまないものを待ちながら、それをいらないなんていう桜に、怒ってもいいのに

『兄さん・・・?どうして』

ああ、そんなこと聞くなよ
僕にだって分からないんだからさ
何で、お前を抱きしめてたりするのかなんて

後はもう、自分でも何を言ったかなんて覚えていない

思えば、あのとき、初めて僕らは兄妹になれたのかもしれない
他所から貰われてきたかわいそうな同情と自己満足の対象としてでなく、一人の人間として、桜の生の感情を見るのは、アレが初めてだった
ずっと衛宮とその妹の前にいるとき以外では、人形めいた印象しかなかったから
手の届かない神秘に焦がれる気持ちは、今も変わりはない
ただ、目の前で泣きじゃくっている女の子が、たった一人の妹が、初めて、愛しいと感じた

―――あの時、自分に誓った。何があっても、今、目の前で泣きじゃくってる妹の味方であろうと

「魔術師に、なりたい」

苦しんでいる桜。何も出来ない僕
今は、自分のためでなく、ただ大切な妹のために魔術師になりたいと、切に願った


<Interlude out>


To be continued

リテイクしまくった第八話です
だいぶはしょらないと、一日が終わらないことに気づき始めました
改めてやると、このゲーム一日で起こるイベントが多くて長いんですね・・・
うう、至らぬところは数あると思いますが、容赦しつつ突っ込んでやってください
今回のメインは、間桐兄妹過去話と見せかけて、アーチャー過去です
間桐は、慎二がちょっといい奴過ぎるかなーと思ったくらいで、それは今更なので、進行は割とスムーズでした
アーチャー過去は、前に書いたのが■■■に焦点当てていたので、今度はアーチャーに焦点を当てただけのものなんですが
自分で設定しといてなんですが、あまりに痛くて、書くのが進まない進まない
私の描写なんでアレですが、消えない想いを流しながら書いてたので、余計ゲーム中を思い出して気分が落ち込んだ罠

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