インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始▼レス末

「生まれ得ざる者への鎮魂歌―第一話『過去の系譜2』―(天上天下+オリジナル)」

ホワイトウルフ (2005-02-10 20:21/2005-02-10 23:10)
BACK< >NEXT

記憶にこそないが・・・そのときの俺の心境はさぞや複雑なものだろうと思った。
今も、蝕む業の一翼がまさかこんな形で始まるとは思わなかったからだ。


生まれ得ざる者への鎮魂歌
第一話『過去の系譜2』


・・・全く、せっかく真夜のおかげで晴れた欝な気分が、違う原因で欝になってきた。其れというのも、今目の前で、狸親父よろしくといわんばかりにニコニコした眼鏡親父こと、高柳道現氏のせいだ。

「海馬。紹介しよう。彼が、『白観 勇士』君だ」
「はじめましてと言う前に、道現氏」
「何だね?」

ニコニコした顔を崩さないまま、この家の主である海馬氏に俺をまるで『旧知の仲です』と言わんばかりに紹介する道現氏にいささか俺は、気分を害した。

今、俺は体の水気を落とし、屋敷の奥の間で俺を含めた4人で談笑している。
メンバーは俺、真夜、海馬殿、道現氏だ。

「アレから、どうせ俺のことを調べたのであろう?」
「そのとおりだ。白観殿」
「・・・・・・何か分かったか?」
「むぅ」

そこで少々、道現は眉をひそめた。

「それが全くだ。これでも調べさせたら嫌でも、余計な素性まで分かるほどの能力を持つ部下に頼んだのだが・・・隠蔽力がすごいのか。全く、お前の素性が分からん」
「な、何、ほんとか道現!?」
「ああ、本当だ海馬。私がこの少年に興味を持った理由がある程度分かっただろう」
「あ、ああ」
「白観の名が偽名ではなく存在するのは分かったが・・・それだけだ。後は何も分からなかった。で・・・そろそろ素性を」
「日を改めて、話すとそう言ったはずだが?」
「まあ、そう堅いこと言わずにだな」
「はじめまして、棗 海馬殿。私は、白観 勇士といいます。歳は一応、十歳です。以後、お見知りおきを」

しつこいから、思い切りスルーしてやった。

「うむ、中々、礼儀正しいな。―――真夜と同い年くらいかと思ったが、慎より年上とはな。―――して、何故君は家に?」
「それは、わしが家に招いたからじゃ父上。まさか道現師父と知り合いとは思わなかったがのう」

横で、会話に加われないかとうずうずしていた真夜がチャンスとばかりに会話に参加してきた。

「真夜が?・・・何でまた?」
「それについては、礼を言わさせてもらいます。実は気持ちを沈ませて公園で雨に打たれていた身の上でいた所を、偶然彼女の眼に移り、暖をとってはどうかと誘われてきた次第です」
「ほう、真夜がか? なるほど、それで先程、風邪を引くから後と真夜が言っておったのだな」
「そうです。私は遠慮したのですが、強引に連れてこられまして・・・しかし、それも私の身を案じてくれたからでしょう。やさしい良い子、お持ちで」
「そうか。真夜・・良いことしたな」
「は、はい」

顔を赤らめて、真夜は俯いてしまった。

「・・・・・・」

気づけば、『じ〜』と真夜がこっちを見てきたので聞いてみた。

「どうした真夜?」
「いや、ずいぶんと道現師父と父上とでは、言葉遣いが違うから気になってのう」
「それは、道現氏が、言葉の端から端まで、人の腹に探りを入れているからだ」
「?・・・どういうことじゃ?」
「まあ、出会い方のせいもあったのだが・・・探りを入れている人間に使い慣れぬ言葉を使っているとぼろを出す危険性があるからな。地で話しているとそういった心配はなくなるしな。其れと比べて、海馬氏はそのようなことをせず、まっすぐした言動で対応してくるから、自然と敬語でも応対しやすいのだ」

「・・・道現。言われているぞ」
「これは、参った。確かに、少々、好奇心が先立って外に出すぎたかも知れんな」

そう言いながら、ニコニコした顔を崩さない道現氏。・・・喰えない人だ。どうせ探るのをやめないのに、言ってくれる。

「ところで、話は変わるが、ご家族の方は「居ません」・・・これは失礼なことを聞いたな」
「いえ、お気になさらず、海馬殿。・・・家族はみな他界しています。もう2年もまえのことです」
「では、君は誰と暮らしているのかね?」
「一人で」
「一人? 君みたいな子供がか?」
「・・・確かに、ナリは子供ですがこれでも一通りひとりで生活する能力を有していますよ。炊事、洗濯などの必要な生活力も、生活するための資金も全て己一人でまかなっていますから、さして問題はありません」
「お主、若い身空で、すごいのう」

俺の言葉に、感心したと『うんうん』真夜は頷く。

「――――――う〜む、海馬。どうだね、ここはひとつ。この子を引き取っては?」
「道現・・・唐突だな。しかし、なぜお前ではなく私の家なのだ?」
「確かに、私が引き取っても良い。うちには光臣も、雅孝もおる。彼は会ったばかりだが、良い兄になってくれるだろうと私の感が言っている」

感なのか?―――ひどく欝になるな。本人を差し置いて、話を進めるというのはどうかと思うのだが・・・。

「がしかし、彼は私のことに対し、不審を見ている。私自体、この子に興味深い眼で見ているのに自覚があるしな。家族として招くにはいささか、無礼というものだ、其れは」

なるほど、確かにそれは納得いく言葉だ。
だが、それ以前の問題もある。

「道現氏・・・今日、私があなたの所で行った事をよもや忘れてはいまい?」

俺は、少々呆れた顔で道現を見る。

「おう、まだボケてはいない。だが、お前さんは必要最低限のことしかせず、被害を最小限に収めておった。大なり小なりと怪我をした者はおったが・・・大の男が、ビィビィわめくほどの重症は、誰一人負ってはおらん。大抵、気絶して伸びているだけの奴が多かったのも事実だ。なあに、うちの奴らに活を入れるための抜き打ちの予行演習だったと言えば、それでよい。幸い、白観殿のおかげでうちの連中も精進するだろう」

む、無茶苦茶だこの人。
俺の横でかんらかんらと笑いながら言う道現氏を見て、俺は呆れをこして冷や汗を流した。

「う〜ん、確かに私が見たところ、君に対する評価は道現と同じ評価だな。まあ、二三、眉唾なものを感じるが・・・しかし、この資料に書いてあることは本当のことか道現?」

さきほど、道現氏に渡された資料に眼を通しながら海馬は道現に問う。
何の資料かと聞けば、言わずもがな、今日俺が行った道現氏のビルの被害状況と俺の其処での行動記録を詳細にまとめた資料だろう。

「ほんとも、ほんとだ海馬。今日の朝方に来て、うちのシークレットサービスを全部叩きのめして颯爽と帰ってった。真、すがすがしいくらいにな」
「・・・この少年が、お前のところの精鋭をか」
「な! お主!! 道現師父に闇討ちをかけたのか!?」

話を端的に聞いていた真夜が、驚き俺に食いかかってきた。

「ああ、違うぞ」
「へ? 違うとはどういうことですか?」

道現の否定で、落ち着く真夜。

「闇討ちじゃなく、正々堂々、正面の玄関から入ってきてな。すたすた、進んで止まられようものなら一撃で昏倒させてな。いや、監視カメラのあれを見ても信じられんものだなアレは・・・」
「お、お主。そんな無礼なことをしたのか!?」
「いやいや、いいんだ。先程も言ったようにうちの連中にいい刺激になったしな。実際、私が襲われたわけでもないし、そこの小僧は私に用があったわけでもないしな」
「道現、セキュリーティーのドアは・・・いや、この際、本人に聞こうか。どうやってセキュリティーロックのかかったドアや扉を開けたのかね白観君?」

資料をから、眼を離して、道現に問おうと目を向けようとしたが、途中で話を俺に振ると同時に、海馬殿は俺に向き直った。

「・・・苗字で呼ばれるのは好きじゃないので以降、名前で呼んでくれるのなら、お答えします」
「其れくらいならたやすいことだ。では、勇士君。改めて問おう。どうやったのだ?」
「大抵は近くにいた人のセキュリティークリアランスを失敬して開けましたが・・・」
「大抵はか。・・・ではそれ以外は?」
「自前のハッキング式セキュリティークリアランスカードを使って」
「・・・其れはまた・・・物騒なものを」
「アレがあれば、非常用にライセンスのコードを変えられても問題ないですから」

「・・・・・・そんなものまで持ち込んでおったのか。あとで部下に報告しとかねばな」

俺の言葉を聞いて、開いた口が塞がらないような状態の二人ができた。
無論、言わずもがな、道現氏と海馬殿の二人である。

「さて、お話は其れくらいで?」
「あ、ああ・・・・・・う〜む、道現」
「ん? 何だ、海馬?」
「私も、興味がわいたぞ」
「ほほう、そうかそうか」

突然の海馬殿の言葉に、ニヤニヤする道現氏。

――――――嫌な予感がしてきた。そもそも、この家に長居する気はさらさらなかったのだ。とっとと、引き上げるが吉か。

「お主、無茶苦茶なことをして。・・・公僕(警察)に捕まったらどうするのじゃ?」

逃げようかと思った矢先に真夜に問いかけられた。

「いや、其れはない」
「何でじゃ?」
「どこの世界に、こんな子供にシークレットサービスを全部叩きのめされましたと言われて信じる奴がいるのだ? ましてや、日本武道総本山がだ。それに仮に、信じてもらったとしても、いい恥さらしだ。天下の日本武道総本山がたった一人のガキの殴りこみを止められませんでしたなんて、言えるわけがないだろうに」
「―――それは確かにそうじゃの。わしも、聞いても信じられぬしな」
「いやはや、耳が痛いな。其れを見越してお前さんは堂々と入ってきたのか?」

少々、苦笑いを浮かべながら、道現氏は問いかけてくる。

「ええ、その問いに対しては肯定だ」
「全く、末の恐ろしい童だなお前さんは」

「―――決めた」

突然の海馬殿の言葉に俺は悪寒が走った。

「君を養子に迎えたい」

・・・・・・的中した。無茶苦茶だ。
何で、こんな子供を引き取りたがるのだ? わけが分からないぞ。

「納得いきませんね」
「何じゃ、お主。わしの兄になるのか?」

不満毛に言う言葉も、真夜の言葉に邪魔されて小さくなる。
そして邪魔した本人は、どことなく海馬殿の台詞に眼を輝かせて、俺ににじり寄ってくる始末だ。

「真夜。頼むから話がややこしくなるから、入ってこないでくれ」

・・・神など信じぬが、あえて問おう。俺が何をした? 
確かにやましいことはあるが、それでもこんな形の災難はごめんこうむるぞ。

「むぅ」

・・・どうもふてくされてしまったようだ。

「そういえば、お前さん。どうして、そんな髪と眼をしてるんだ? 確か、今朝は銀髪に赤眼だったではないか?」

道現氏が痛いところを急についてきた。
と、思ったら今度は真夜が・・・。

「―――ああ、それはじゃの。勇士殿がおか・・『もご』

俺は、いらないことを喋りそうになった真夜の口を慌てて手で塞いだ。

『んーー!!!!』

当然、そんなことされて黙ってるはずもなく、真夜が口を押さえられながら唸る。

『おか』?・・・なんだ? 真夜は何か知っているのかな?」

道現氏が、真夜に問いかけるが・・・。

「しばし、失礼を」

と俺が一言、言いながら真夜の口を塞いだまま、部屋の隅へと連れて行く。

『むぅ!!』
「わかった。放してやるから、いらぬ事を言わないでくれ」

そう言いながら、俺は真夜の口を開放する。

「ぷは!! お主、唐突になんじゃ!?」
「あそこでおきたことは、忘れろ。そうすれば、できうる限りの願いを一つ叶えてやる」
「ほんとか!?」

何やら、頼みがあるのか。先程より眼を輝かせて問いかけてくる真夜。
・・・いかん、何か、先走ったことをしてしまったか?

「男に二言は無かろうな?」
「・・・余計なことを言ったかもな」
「二言は無かろうな!!」
「あ〜、ないない」

適当にあしらおうと思ったが、其れも億劫になり、なかば自棄(やけ)を起こしたい心境だった。

「では、戻ろうぞ」
「はいはい」

俺は、真夜に手を引かれ、部屋の中央へともどる。

「何を話しておったのだ?」
「何でもありませぬ道現師父」
「そうか」

多少不審な顔をしていたが、真夜の一言でしぶしぶ道現は引き下がった。

「ところで、父上」
「ん? 何だ真夜?」
「お喜びください。吉報です」

・・・何が吉報なのだ?
俺と海馬どのは、「ん?」と言った顔で首をかしげた。

「勇士殿が、わしの兄上になってくれるそうです」

・・・・・・ん?

「って・・・まてーーーい!!!!」
「何じゃ?」
「いや、普通に『さも当然の流れです』といった顔で物事を進めるでない!!」
「それは、よかったな海馬」
「うむ、吉報だ」
「そこ、勝手に話を進めないでください!!」

何でそうなる!?

「お主、男に二言はないはずだぞ」
「俺は、『できうる限り』と言ったはずだぞ」
「其れくらい造作も無かろう」

真夜が、すまし顔でものを言うが、正直そんな顔で語れる話ではないはずだ。

「確かに造作も・・・・・・は!!
「なら、問題はないだろう」
「ないな」
「ありませぬ」

思わず、俺が頷きかけたことに海馬・道現・真夜の三者は、三様に納得している。

・・・・・・まずい。ここから抜け出る機会を失った。

「そもそも、めぼしい仇は全てデリートしたとそう私の前で言ったではないか? どうせ、気持ちの整理とは『これからどうしよう?』とかの先の話であろう。お前さん、先行きがあっさり決まって良かったではないか?」

にこやかに笑いながら言う道現氏に、いささか殺意を覚えたのは気のせいか?

「真夜の言うことはともかく。何故、私のような物騒な者を家に置こうと言うのですか海馬殿!?」
「なあ、勇士君。本当に物騒な輩は、己のことをそう罵ったりはしない者だ。君は、私たちに迷惑がかかると―――そう思ってはいないか? 私は、確かに君に興味を持っただけがきっかけかも知れぬが、少なくともそういう優しい発言ができる者を無視しておけるほどの人物では私はないのだよ」
「・・・・・・」
「わしも、父上と同じじゃ。お主が雨に打たれていたのを見た時から気になった。そして、今おぬしの言動を見ていたら、お主はお主が言うほどの危ない奴にわしは見えない。それで父上が家族に迎えようと言おうものなら、わしは其れに賛同したいのじゃ」

「・・・・・・やれやれ、言い訳の言葉がこれ以上見つからないな」
「では!!」

俺の言葉に、真夜が反応する。

「その件を頷く前に・・・三つ、条件があります」
「何じゃ!?」
「まあ、真夜。落ち着きなさい」

興奮する真夜を海馬殿は、勇める。

「分かりました父上」
「して、条件とは?」
「一つ、私に白観の名を名乗らせ続けること」
「戸籍は、うちの物にしてもいいが名前だけはいじるなということかな?」
「そうです。どういう形でもいいです。別に戸籍上の名で棗と書いてあってもよいです。所詮、紙の上ことと区切りがつけられますが・・・しかし、その場合、俺自体は白観の名を名乗り続けます」
「そうか。では、その件は何とかしよう。しかし、それはどうしてかね? 君は苗字を呼ばれるのは嫌いと言ってので、名に愛着があるようには思えなかったのだが・・・」
「呼ばれるのは、私には過ぎた名だからです。ですが、『白観の名』は私にとっての誇りだ」
「・・・なるほど、今も尚、君は亡き家族を誇ると言うわけか。納得がいった。で二つ目の条件とは?」
「道現氏の私の過去への追及をやめてもらいたい。私が、自ら話す気になる以外は追求をやめてもらいたい。無論、これは海馬殿も例外ではありません。ただし、自力で調べるのについては止めません故、どうぞご勝手に」
「お前さん、よほど情報の隠蔽力に自信があるようだな?」

道現氏は、この条件にさして不満が無い様子で聞いていた。

「まあ、どちらかと言えば、己の口から語りたくないだけだな」
「そうか。道現・・この条件」
「みなまで言うな。其れくらい、分かっている」

海馬殿が、道現氏に確認を取る。

「では、最後に」
「ああ、聞こう。最後の条件とは何だね?」
「俺の過去に関したトラブルがこれから先、起きないと断言できません。それについて覚悟して置いてください。まあ、極力、己が手で潰しますが
「――――――道現。お前の話が今になって信じられてきたぞ」

・・・俺は今どのような顔をしているだろう?
分からないが、海馬殿が発言から想像がつく。

きっと闇を連想させるような暗き面(おもて)をむいているのだろうな。

『スパン!!』
「やめんか! 怖い顔しおって。今日はお主が、我が『棗家』に来る日の門出じゃぞ!」

・・・頭を、叩かれた。

「く、くくくくく」
「ど、どうしたのじゃ。打ち所が悪かったかの?」

突然、笑い出した俺に真夜は少々引いているようだ。

「か、海馬殿」
「ん? どうしたのかね」
「真夜は、怖いもの知らずですね。毒気が一気に抜けました」
「そ、そうか。く、くはははははは」
「「「ははははははは」」」
「むぅ〜」

いつの間にやら、道現氏も一緒になって真夜を差し置いて俺は三人で笑っていた。
案外、面白い日々を送れるのかもしれない。

あの遠き過去さえ、拭えるような明るい日々が。



「して、あの少年をどう見た? 海馬よ」
「うむ、刹那のような修羅の顔と、それと反対にして、真に優しき心を持った二面性をもつ本当にかわった童だな。道現、私は彼の行く末が気になったが、故に引き止めたが・・・お前はどうなのだ? よもや、飛翔鳳凰の一派かそれ以上のモノを彼に期待しておらぬか?」

勇士と真夜をのぞいた部屋で海馬と道現は、先程の陽気さを微塵も感じさせない真剣な顔で話し合っていた。

「それこそ、まさかよ。私は、興味本位が先立ちすぎて、ただ縫い付けたくなったまでだ。あの小僧は、おそらく、ここで引き止めねば、朝露のごとくその存在が闇へと消えただろうに・・・。それに、あの能力からしてお前の家を含めた赤羽衆に勝るとも劣らぬ異能を有している」
「其れについては否定はしないな。『アレ』は、我等と同じ異端な者だ」
「それに、茶を濁されたがあの小僧。先刻、言ったとおり容姿が銀髪に赤眼だった。あれは変装の類ではない。それに・・・」

そこで、言葉を止めて道現は少々、物思いにふける。

「それに・・如何したと言うのだ道現?」
「その資料には載ってはいないが、あの時、私の部屋に着た彼の眼の瞳孔は獣のごとき縦に裂けていた」
「赤い瞳に獣のような瞳孔・・・まるで龍眼のようだな」
「私もそう思ったが・・・そうである筈はあるまい」

海馬の言葉に首を大きく横に振り、道現は否定する。

「そうだ。其れはありえない。『アレ』は我が家の者にしか持ちえぬものだ」
「それに小僧の瞳は『紅』過ぎる」
『紅』過ぎる?」
「あれは・・・赤い紅い真紅の・・・それも、暗き血を連想させるような『闇の眼』だ」

勇士の眼を見たときのことを思い出したようで、顔を道現は俯かせた。

「・・・・・・また謎が増えたな。どちらにせよ、普通の眼ではないようだな」
「白観か・・・あそこまで誇るのだから偽名ではないだろうが、かなりの家柄と私は見た」
「―――真貴子に・・・見て貰うか?」
「それも良いだろう」



「というわけで、今日からお前たちの兄になる者を紹介する」

紹介されるべく、道場のようなところに集められたのだが俺の知らない子が二人ばかりいる一人は真夜よりも歳の大きそうな長髪の少年。もう一人は明らかにこの中で一番年下な黒髪で長髪の女の子だ。

「あの、海馬殿?」
「父親を名前で呼ぶな勇士」
「親父殿」
「なんだ?」
「荷物を取って来たいのだが・・・」
「?・・・どんなものがある?」
「ええと、ショットガンが6丁に、愛刀が2本、おまけに拳銃が「却下だ!!」・・な、何故だ!?
「そんな物騒な物、我が家にいらぬ!! そもそも、刀はいいが銃は使わん家だ、ここは!!」
「しかし、今日という日まで俺の命を守護し、心身ともにしてきた相棒なのだが・・・」

俺はさも、『大事な物なのだ』哀愁を漂わせた顔で俯く。

「ぐ!・・・ど、どこに置いてあるのだ?」
「駅のロッカー」
「そんな所にそんな物騒な物をおくんじゃない!!!!」
「むむむ」

先程から、怒られてばかりな気がする。息子になるからには、容赦はいらないと言う言動で迫る『海馬殿』改め、『親父殿』

「以外にばれない物なのですが・・・」
「・・・お前がそう言うならそうなのだろうな」

どこかしら、疲れた顔に親父殿はなる。

「なあ、真夜。兄になるって親父が言ったけど、どう観てもあそこにいる奴、俺より年下じゃないか?」
「そうなのじゃが、兄上。彼は、兄上より年上ですぞ」
「何!? ほんとか!?」
「それに、今日、道現師父の所に、たった一人で殴りこみをかけて侵入した豪の者と聞きましたぞ」
「・・・何ともまあ、デインジャーなのが兄貴になるんだな。・・・面白そうだが
「う〜、私、弟か妹が良かった」
「そう言うでない。亜夜も『兄様(あにさま)』にあえばきっと気に入るぞ」

「・・・真夜、今聞き捨てなら無い言葉をさらっと言わなかったか?」

親父殿と話していた端で雑談している輩の一人から、『ぶっ飛んだ』単語が聞こえたので思わず、親父殿をほおって、俺は話しに加わった。

「何がじゃ兄様?」
「・・・兄様って、なんだ?」

すこし呆れた顔で俺は真夜を見た。

「敬語を使わぬ代わりの唯一の敬語と言うわけじゃ」
「あ〜―――はいはい」

俺は、もう好きにしろと言わんばかりに言う。

「さて、親父殿はああして、何やら物思いにふけっているから放置して」
「いきなりだな」

俺の、言葉に突っ込む少年。

「まあ、気にしていたら・・・話は進まない」
「で、兄貴になるんだって聞いたけど。ほんとに俺より年上?」
「ああ、普通よりガキくさく見えるが、俺の歳は十歳だ。それより、年下なら俺が兄と言うことになるな」
「マジで、俺より年上かよ」
「まあ、いきなり来て。えらそうにするつもりも兄貴風吹くつもりも無い。敬語も真夜にいらないといったのだが、真夜は曲解したようだ」
「あ〜、気にするな。・・・うん、じゃあとりあえずよろしく兄貴。俺の名前は慎だ。一応こいつらの中で、一番上で九歳だ」
「・・・・・・」

何事も無いように、にこやかに話しかける慎を見て俺は、無言になってしまった。

「どうしたんだ兄貴?」
「いや、真夜の話を聞いていたのに・・・やけにあっさり受け入れたなと思ってな」
「ああ、殴りこみの話?」
「一応、与太話でなく事実だぞ」
「マジ!? でも、それはそれで面白い兄貴じゃないか!!」
「面白い?」

何か、ここの家の者は計り知れない何かを持っていて、俺はこれからそれに振り回されそうな気がする。

「ん〜。じゃあ、私はお兄様って呼ぶ。お姉ちゃんが兄様だから・・・うん、ちょうどいい」

何がちょうどいいのだ?

「・・・ちといいかな、ああ、その前に俺の名前を言うのを忘れていたな。俺は勇士、白観 勇士だ。養子になるのだが、苗字は変えないつもりだ。もっとも、俺のことは名前で読んでくれればいいからさして問題ないが」
「うん、わかった。あ、私は亜夜、棗 亜夜だよお兄様。私は末っ子で四歳」

どこぞの妹スキーの話にする気は無いが、その呼び方はどうかと思うのだが・・・。

「何で様付けなんだ?」

俺は、先程の真夜に聞いた台詞を亜夜に聞いた。

「まあ、まあ良いではないか? そもそも兄上が二人いては判別しにくい。ここは長兄ということで勇士殿は兄様と、兄上は兄上と」
「何か俺、ランク下?」
「そんなことありませんぞ兄上。わしは名前だけ敬称を兄様につけている代わりに、兄上にはいつでも敬語ですじゃ」
「それはそれで、何やら除け者な気がするな」

俺はすかさず突っ込む。

「う〜ん、まあいいや」

慎はあっさり言う。・・・いいのか?

「じゃあ、改めてよろしく頼む。ここの家族になった以上、血のつながりとか関係なくても、家族ごっこなんて言葉で済ますような縁にするつもりはないから。・・・まあ、しばらく馴染むのに時間がかかるかもしれないがな」
「おう」
「うむ」
「うん」

三者三様に返事してくれる三人。

「それと一応、俺の過去は一切、謎のままということにしといてくれ。というか聞かないでくれ。俺から話したくなったらきちんと話すから・・・虫のいい話かもしれないが頼む」

俺は三人を見据えた後、頭を下げる。

「う〜ん・・・興味ねえからいいよ」
「わしは、先程話しておったから承知しておる」
「私は・・・ちょっと気になるけど、お兄様が話したくないならいいよ。話してくれる時まで待つから」

・・・全く、本当に嫌になるくらい良い子達だな。

「礼を言う」

これが、俺たちの出会いにして始まりだ。


それでも、『あの日』の出来事への布石を、この時点で投じられていたことは、いつの俺においても知らないことだった。


―後書き―

さて、二本目ということでいかがでしたでしょうか? ちょっと無理が出ているかなと思いながら書きましたが、楽しんでもらえれば結構です。

かなり長々と書いたんで、ちゃちゃっとレスの返答に入りますが、すいません今回の投稿サイズの都合上まとめさしてもらいます。すいません。

・・・・と言うことで、第一話からかなりの好感触なレスをいくつもいただいたこととてもうれしく思います。これからもがんばって書いていきますんで以後よろしくお願いいたします。

今回、レスをくれた皆さん次回からはきちんと応答しますんで今回は勘弁してください。

では、レスをくれた

SSさん D,さん makotoさん 草薙京弥さん
たけのこさん ユピテルさん 秋雅さん 隆行さん

どうもありがとうございますこれからも読んでくれることを切に願います。あと今回、初レスだった方、どうもはじめましてです。

以上、ホワイトウルフでした。それでは、次回にまた会いましょうw

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭


名 前
メール
レ ス
※3KBまで
感想を記入される際には、この注意事項をよく読んでから記入して下さい
疑似タグが使えます、詳しくはこちらの一覧へ
画像投稿する(チェックを入れて送信を押すと画像投稿用のフォーム付きで記事が呼び出されます、投稿にはなりませんので注意)
文字色が選べます   パスワード必須!
     
  cookieを許可(名前、メール、パスワード:30日有効)

記事機能メニュー

記事の修正・削除および続編の投稿ができます
対象記事番号(記事番号0で親記事対象になります、続編投稿の場合不要)
 パスワード
    

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!