第三の帝王
三話『電波な人』
明け方、満足した沙弓が帰り、来花は和樹に命を受けどこかへ消え、妹達は疲れて眠りにつく中、和樹はパソコンの画面を睨みつけていた。
「バカなクラッカーは来花に任せるとして、近いうちに隠してきたことバレるな」
ため息をついてからキーボードを叩いた。
「父さんに頼るのはしゃくだけど『賢者会議』の調査は俺じゃ無理だし、今度の会議、代わりに出てやればいいだろう」
自分の父親、式森峡児がニヒルに笑う姿が見えて腹が立った和樹はメールにウィルスを付けて送信した。
「ん?何の音だ?」
自分達の部屋の前で物音がする事に気づいた。和樹は特に気にすることなく朝食を作り、涼と舞穂を起こして三人で食べ、支度をし、出かけるという日常が出かけるの部分で止められた。
ドアの前に大量のダンボールが積まれていた。
「何なんだ?二人とも通販か何かで馬鹿買いしたの?」
「舞穂じゃないよ」
「私も知らない」
和樹は不意に誰かが後ろにいることに気づいた。
「おはようございます。和樹さん♪」
「おはよう、宮間さん」
「夕菜と呼んでください!」
「じゃあ、夕菜さ「呼び捨てにしてください!!」・・・夕菜、この荷物は君のか?」
「はい!私の荷物です」
「何故、君の荷物がここに山積みされているの?この階の部屋は全部うまっているんだから、他の階だろ」(どこそかの圧力で沙弓、凛、来花は同じ階)
「私達は夫婦なんですから、一緒に住むんです!」
(この娘、絶対に電波だ)
この妄想女をどうするか、和樹は考えだした。
「いい加減にしてよ!兄さんはあなたの夫なんかじゃ、ないの!」
「まだいたんですか。あなた達、私と和樹さんの愛の巣からさっさと出てってください!」
夕菜は涼と舞穂に気づいていなかったようだ。
「あなた、馬鹿じゃないの?妹が兄と一緒に住んでなにが悪いのよ」
「妹さんですか」
夕菜は涼と舞穂の顔をじっと見てから言い放った。
「あなた達、義姉の言うことを聞きなさい!」
「誰があんたなんかを義姉と認めるか!!」
「そうだそうだ!」
「義姉にたてつくとはいい度胸です!そんな妹は粛正してやります!」
夕菜の両手に光が集まる。
「あんたなんかに負けるわけないでしょ!!舞穂!」
涼の両手にも青白い玉が生まれる。
「は〜い」
舞穂は魔力略奪を止めるチョーカーを外す。
騒ぐ三人を見ながらクラスメートに山吹色のお菓子をわたして荷物を夕菜の住む予定の部屋に運んでもらった。
「さてと、お隣に謝りにいくか」
和樹は三人の戦いをチラリと見てため息をつくと左隣の部屋に行った(和樹達の部屋は一番端にある)。
ピンポーン
「誰じゃ?」
「式森和樹だけど、ごめんね、騒いじゃって」
「おお!和樹か!入れ」
「少しだけおじゃまさせてもらうよ。エリザ」
和樹の入った部屋には舞穂より少し高いくらい背の少女がいた。
「死人同士、仲良くしようではないか」
「生憎だけどエリザ、俺は進化したの。うちの技術で肉体を得るまで幽霊だった君とは違う」
「フム、まぁ・・・そんなことはおいておいてだ」
「なに?」
「何故、昨日の宴にわらわを呼んでくれなかった?姉様とはしたくせに・・・わらわは捨てられたのか?」
彼女、エリザベートは幽霊であったがひょんなことで和樹と知り合い、成り行きで和樹の実験につきあい、肉体を得ることができたのだ。ついでに都合で来花の妹として学園の一年生をやっている。
「え、え〜と、あれ以上いたらさすがにつらいから」
視線を泳がせながら和樹は言う。
「では、今ならつらくないな!」
「学校あるじゃないか」
「休む!」
この後、何があったかは言うまでもない。
――――――――
エリザベートが疲れて寝てしまったのでこっそり和樹は自分の部屋に戻った。
部屋には疲れて倒れている舞穂と肩で息をしている涼と夕菜がいた。
「まだやってたのか」
小さくため息をつくと部屋の中に入っていった。
「いい加減、気がすんだ?夕菜、勝手に君の荷物運ばせてもらったよ」
「では、ここは今日から私達の愛の巣なんですね?」
「ううん、君の入る予定だった部屋にだよ」
「どうしてそんなことをするんですか?約束したじゃないですか!」
「約束?いつ?」
「子供のころです」
和樹は顎に手を当てて考えてみる。
「ああ!あの人の話まったく聞かないうえにむりやり魔法使わせてきた娘!!」
――――――――
和樹が幼くまだオルフェノクじゃなかったころ・・・
「はぁはぁ・・・急がないと千早が怒る!」
和樹は死に物狂いで走っていた。
橋を渡ろうとしたとき、女の子が泣いているのが見えたが、今はそれどころじゃないと通り過ぎようとしたが、泣いていた女の子の手が足を掴んだ。全力疾走していて急に止められたら・・・
「うわぁぁぁ!!」
転ぶ、しかもそのまま少し滑る。今は夏、わんぱく坊主の格好と言えば、半袖半ズボン=傷だらけ
「痛いぃ」
「ないてるおんなのこがいるのにむしするなんてさいてい」
「ぼくいそ「どうしたの?とかこえかけてよ」・・・どうしたの?」
この女の子に逆らうのは危険だと和樹の本能が告げる。
「あのね。わたし、おひっこししたくないの」
彼女は自分が引っ越しばかりしていることを話した(勝手に)。
「もう、どこにもいきたくないもん。ずっとここにいたい。ともだちだってつくりたい!」
女の子はじっと和樹を見た。
「わたしのおねがいかなえてくれる?」
和樹は「何故」と言いそうになったが、身の危険を感じて言葉を選びながら話す。
「魔法でむりやり何とかすることはできるけどそんなことしたら君のお父さんやお母さんが壊れちゃうよ」
和樹にはもう一つだけなんとかする方法があったが自分の父、峡児に借りを作りたくなかったから言わなかった。
「じゃあ、ゆきみせて」
「それぐらい自分でやんなよ」
いい加減行かないと千早にオルフェノクにされてしまうと気が気でない。
「キシャー!!!」
突然、奇声を上げて女の子がウンディーネ(塩が含まれた)を使った。傷に水がかかりしみる。
「痛いぃ!わかったよ。雪だね!えい!!」
純白の雪が降り始めた。
「うわぁ!」
女の子は愛くるしい笑顔を浮かべた。
「ありがとう。おおきくなったらおよめさんになってあげる!」
「なってくれなくていいよ・・・」
和樹の言葉になんか耳を貸さず、女の子は走っていってしまった。
この後、和樹は千早の元へ行き、大変なめにあったらしい。
――――――――
「酷いです!あの時、飛び跳ねて喜んでくれたのに・・・」
「喜んでない、喜んでない」
違う違うと首と手を振るが夕菜は見ちゃくれない。
「キシャー!!!」
「和樹!伏せて!!」
和樹が声に反応して伏せると、後ろから『転移』と書かれた札が飛んできた。その札は夕菜にあたると、夕菜をどこかへとばしてしまった。
「大丈夫だった?和樹」
「ええ、助かりましたよ。玖里子さん」
「ご褒美、昨日の分も含めて欲しいなぁ♪」
「これから親父のところ行くから、これだけですよ」
和樹は玖里子にキスをした。ディープで。
涼は昨日、玖里子をいれてあげなかったからキスぐらい、いいかとほおっておいた。
「・・・それじゃ、また明日」
和樹は出ていった。
部屋には倒れたままの舞穂と疲れてソファに突っ伏した涼、キスだけでイカされ放心状態の玖里子が残されていた。
あとがき&解説
前回の感想で何故、神代が自殺未遂の前科があるのかと言うのがあったのでお答えします。和樹はオルフェノクだからです。想い人と同じになるためです。
仮面ライダーオーガ・・・装着者を選びそれ以外の者がつけても変身できない。他のライダーよりもはるかに高い能力を持っている。ツールを使うことなく使うことのできるパンチ技『ガイヤクラッシャー』、キック技『サタンズクライシス』、ガンモードとブレードモードのある冥界の剣・オーガストランザーを使用する『オーガストラッシュ』を使う大地の帝王
杜崎沙弓・・・杜崎家次期当主にして和樹の幼馴染で許嫁、神代と同じライオトルーパー(格闘戦型)。メンバーの中で常識人だと言われている。自殺未遂の前科持ち
前回のオルフェノクの解説のつけたし、一度死ぬため魔法使用回数が二桁から一桁ぐらいまで落ちる。涼が使っていたのはオルフェノクでも扱える者がほとんどいない『死と再生の力』です。
では