「ライダーチョーップ!!」
「ぐふっ。」
俺のチョップが突き刺さる。
戦いは一方的に俺が押す展開になっていた。
常人の6倍程度の力しか引き出させないジュンでもそこそこ戦えた相手である。常人の50倍の力を持つ俺の敵ではなかった。
「くっ、この力、隊長に匹敵する。まさか地球にこれ程までに強力な改造人間がいるとは。」
ナメクジは肩で息をしながら呟く。そして、嫌な笑みを浮かべた。
「こうなれば、切り札をださせてもらもう。」
そう言って口を開けるとそこから数千匹のナメクジが湧き出てきた。
「う、うげっ。」
その光景に俺は思わず呻く。そしてナメクジ男はさらに気色の悪い事を言い出した。
「ふっふっふ、このナメクジは俺の腹の中で飼っていたものだ。胃酸をたっぷり吸っているからな。触れるだけで皮膚が溶けるぞ。」
「なっなっなっ、お、おまえこんなもの腹の中にいれてるかよ!?」
あまりの気色悪さに吐き気がする。後ろの民間人の皆さんも“うえー”とか“
おえー”とか言ってる。
「わっはっはっは、さあ、どうする?これだけのナメクジ、どうにもなるまい!!」
「き、き、き、気色悪いんじゃあああああああああああ!!!!!!!」
ボソンジャンプ裏使用法、引き寄せを使い俺は大量の塩を召還する。それをみてあからさまに動揺するナメクジ男。
「なっ、ちょっと待て!!それは卑怯だろ!?」
「やかましいいいいいいいい!!!!!!!!」
そしてその大量の塩をぶちまけるとナメクジ&ナメクジ男は水分を吸われてあっさり干からびた。
「はあ、はあ。」
よし、何はともあれ悪(あれはもはやこの世の全ての悪と断定)は滅びた。これで、俺も少しは・・・・。
「大丈夫ですか!?」
「お兄ちゃん、かっこよかったよ!!」
「ナイスガッツだったぜ。あんた。」
そこには大勢に囲まれたジュンの姿があった。
・・・・悔しくなんかないやい。
そして3人のパイロットと他何人かがナデシコのクルーとして加わった・・・・が、
「う、わ、わりい、でもちょっと近寄んないでくれ。」
「あはは、ごめんねー。」
「ピンクのカブトムシ・・・・ピントムシ・・・駄目、思いつかない・・・・。」
・・・・悲しくなんかないやい。
そして、俺達はその後も長い(と、言っても一月ほどだが)航海を経てついに火星にたどり着いた。
火星にだどりついて・・・・・・いきなり大ピンチに陥っていた。
「かこまれちゃいましたねー。」
「そうですなー。これはまずい。」
ナデシコの周りには数えるのも嫌になるほどの敵が密集している。
この状況ではパイロットなど出撃してもものの役にも立たないのサブオペレーターとして俺はルリちゃんをサポートしていた。
「これはもう、諦めた方がいいんじゃないですか?」
そう、隣に立ったプロスさんに語りかける。
無論、諦めて死ぬという訳では無い。遺跡の確保を諦めてボソンジャンプで帰ると言う事である。元々俺をナデシコに乗せたのはこれが一番の理由であろう。
単独で戦艦単位をジャンプさせられる改造人間の能力、これのおかげでやれるとこまでやって、駄目になったら引き下がるという無茶が可能になったのだ。
「いえ、ですが、こちらとしてはもう少し粘りたいのですが。」
「戦艦を無駄に壊す事も無いと思うんすけど。」
どの道遺跡の確保はもう100%不可能である。
ここはさっさと引き上げるのが得策。そう思った時だった。
ズガアアアアン
船体が大きく揺れる。そしてその後、いきなり絶望的な状況が告げられた。
「相転移エンジン破損!!ディストーションフィールド出力60%低下!!」
「なっ!?」
どうやら相当当たり所が悪かったらしい。
この出力ではボソンジャンプした時、遺伝子改造していないものは助からない。
「な、何てことです。」
プロスさんが珍しく顔を青くする。
俺は席を蹴って飛び出そうとした。だが、その時だった。
『待てい!!!』
突然、艦内に声が鳴り響いた。しかも、何故か無人兵器が言葉通り素直に待っている。
「え、今の声は一体どこから?」
ユリカの奴が驚きの声を漏らす。するとルリちゃんが驚くべき答えを返した。
「艦の外からです。信じられない事ですが何の通信設備も使用していない肉声が艦内に届いています。」
「そ、そんな馬鹿な!?」
今回初登場、図体でかい割りにジュンより影の薄いゴートさんが驚愕の声を漏らす。
そして、どこからかスポットライトが照らされ、人影、いや、正確には文字通り人の形をしかものの影が映し出される。
「ゴキブリ?」
「いやああああああ!!!!!」
その姿を見てポツリとつぶやいたルリちゃんの言葉にレイナードさんが悲鳴をあげる。
その人影は全身真っ黒で確かにゴキブリに酷似していた。
最もそのサイズは人間大だが。
『圧倒的な数にて、少数のものをいたぶる行為。人、それを“数の暴力”という。』
ゴキブリ男は何やら叫んでいる。
しかし、“数の暴力”って、確かにそうだが、他にもっとまともな台詞は無いのか?
『ピーピーピー(誰だ!?)』
『貴様等に名乗る名前は無い!!っと、言うか名乗れるか!!こんな恥ずかしい姿で!!』
無人兵器の言葉?に対し、やけになったように叫ぶゴキブリ男。
どうやら自分が恥ずかしい格好をしているという自覚はあるらしい。
『まとめて消えろおおおお!!!!!!』
ゴキブリ男の叫びと共に、あたりは黒い何かで包まれていく。
って、あれは“拡散ボソン砲”!?
親父が次の改造人間に組み込むんだと言って開発していたものを何故あいつが!?・・・・・って、原因は明らかだな。要するにあいつも親父の被害者って訳か。
「はー、何か、ここまでくるともう非常識もなれちゃうわね。」
次々と無人兵器を破壊するゴキブリ男の姿を見てミナトさんが呟く。
だが、ゴキブリ男のほうも圧倒的な数を前に流石に限界にきているようだった。
「くっ。」
俺は歯軋りする。打つ手は・・・・・ある。
変身には第2形態がある。そのパワーは第1形態をも遥かに上回るが、その代わりに2度と元の姿に戻れなくなるかもしれない、親父にそう教えられた。
「もう、これしか、ない・・・。」
俺は覚悟を決める。
ちなみに何故そんな形態を作ったのか聞いた所“だって燃えるじゃないか。”とのたまったのでとりあえず殴っておいた。
そして、俺は環境を飛び出し、格納庫へ走る。
「おう、アキトじゃねえか。」
「山田!?どうしてここに!!」
格納庫まで後、少しという所で俺は山田と遭遇する。
こんな場所で会った事に俺が驚きを示すと山田はニヤリとして言った。
「多分、お前とおなじだよ。このまま黙ってやられるより精一杯やってやろうっていうんだ。それからな、俺の名前はダイゴウジ・ガイだ。」
「っ・・・・。」
山田、いや、敬意を表してガイと呼ぼう。
俺はこの時、初めてこの男に対し尊敬を抱いた。
だが、いや、だからこそ・・・・・・・・・。
ドムッ
「なっ、アキト、てめえ・・・・。」
俺はガイの鳩尾を叩いて気を失わせる。
この男をこんな所で死なせる訳にはいかない。
犠牲になるのは・・・・・・・・俺、一人でいい。
「ガイ、あばよ。」
俺は倒れたガイを壁に寄りかからせる。その時、一人の男が俺の前に歩いてきた。ムネタケ副提督だった。
「テンカワ、あなた死ぬ気ね?」
「・・・・・・死ぬ気はありませんよ。ただ、きっともうこの場所には戻って来れないでしょうね。」
俺は今から本当の化け物になる。もう、人とは暮らせない。
「・・・・・・・そう。精々がんばりなさい。」
それに対し、副提督はただ、それだけ返した。俺は無言で格納庫へと足を走らせた。
「んっ?・・・・おい!!おまえ、何してやがんだ。」
「ウリバタケさん、いままでありがとうございました。」
俺は、ウリバタケさんに別れの言葉を発し、そのままエステバリス用のカタパルトで飛び出す。そして、俺はナデシコの外壁に立った。
「変・・・・・・・・・身」
俺はその姿を慣れたピンクのカブトムシへと変える。ここまでは何時もどおり。そこで、一匹のバッターがフィールドを突き抜けて飛び掛ってくる。
「邪魔だ。」
俺はそれを片手で貫く。爆散するバッタ。その時、ブリッジから俺の身体に内臓された回線に通信が繋がった。
『テンカワさん!!何をやっているのですか!?』
それはプロスさんの声だった。どうやら、俺の姿はブリッジのモニターで映し出されているらしい。
「大丈夫ですよ。俺は別に死ぬきな訳じゃありませんから。」
『死ぬ気じゃないって、いくらアキト君が改造人間でもこの数相手に勝てる訳ないでしょ!!』
ミナトさんが叫ぶ。その声から俺を本気で心配していてくれるのがわかる。
「ありがとうございます。ミナトさん。こんな、俺と普通に付き合ってくれて。あなたのことは忘れません。」
『テンカワさん・・・・』
ルリちゃんの呟くような声。出会ったばかりの頃はほとんど感情をださなかった彼女だったが、最近は少しずつ感情が溢れるようになってきていた。
俺の料理も何度か食べて美味しいと言ってくれた。
「ルリちゃん、元気でね。」
俺は一言そう返す。もう彼女に料理を作ってあげる事ができないのは残念だ。そこで今度は2体まとめてやってきたバッタを蹴り飛ばす。
『テンカワさん。』
『テンカワ』
『アキト君』
『アキト君』
『テンカワ』
今まで俺の事を嫌っていたみんなも俺の名を呼んでくれる。
ああ、俺は、満足だ。
「みんな、さよなら・・・・・・・
超 ・ 変 ・ 身 」
そして、俺の姿が変わる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・何故だ、何故みんな無言なんだ?声も出ない程、今の俺の姿は酷いのか。そこでルリちゃんが頬をポッツっと染めて言った。
『テンカワさん・・・・・かわいいです。』
「ふもっ(はいっ)?」
あまりにも場違いな言葉に俺は一瞬呆気に取られてしまう。
って、“ふもっ”てなんだ“ふもっ”ってこ、言葉がちゃんとでない!?
すると、映像のアングルが変わり、“妙なもの”が映し出される。
「アキト君、これが今のあなたの姿よ。」
ミナトさんがそう言う。すると、そこには、ボンタ君とゴンタ君を足して2で割ったような愛らしい着ぐるみのような姿が映っていた。
「ふ、ふ、ふもっふー!!!!(な、な、なんじゃこりゃあああー!!!!)」
火星に俺の叫びがこだました。
追記:その頃、忘れられたゴキブリ男は一人寂しく戦っていた。
(後書き)
話を一気に進めちゃいました。アキト、ついに真の姿に(笑)
レス返しです。
>ていんさん
>何がしたいんだ。
戦力増強。
>柳野雫さん
現実は辛いです(涙)
>アンスリウムさん
戦力増強がしたいのです。手段選ばず
>無謀の仮面さん
ゲキガンで団結力を育て、ライダーで自己犠牲精神をそだてるのです(笑)
>renzaさん
ピンポーン。今回ついに真の姿が出ました(笑)
>ATK51さん
サラリーマンとして想定していたのは、プロスさんとか企業戦士YAMAZAKIとか高槻パパとかです。まあ、実際に勝てるかどうかは別ですがw
>MAGIふぁさん
ははは、そんなこと(?)ぐらいじゃ、アキトはぐれません。