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「Revenge For The Destiny〜序章〜第2話前編(ナデシコ+秘密+オリジナル)」

アンスリウム (2005-02-02 22:43)
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   Revenge For The Destiny


                〜序章〜


      第1話前編「人を超えし者達」


 「クッ……ここは…どこだ…?」

ユーチャリスのブリッジで目を覚ますアキト。確認しようと上半身を起こした瞬間、だれかが抱きついてきた。

 「アキトさん!!目を覚ましたんですねアキトさん!!ぜんぜん目を覚まさないから、もう目を覚まさないんじゃないかって……心配、したんですか…ら…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 「すまん…心配をかけたな……」

そのままアキトの胸に顔をうずめて泣き出すルリ。アキトはそのまま優しく抱きしめる。そして、しばらくそうしていた時にサルタヒコが声をかけてきた。

 【あの〜、いい雰囲気になってる所悪いのですが……現状の報告をしてよろしいですか?】

 「「……!?ご、ごめん(なさい)(ルリちゃん)(アキトさん)!!」」

その声と一緒に出てきたウインドウで自分たちの状態に気付き慌てて離れる2人。ルリの方はしばらく顔を紅くした後ウインドウの方を恨めしげに睨んでいたが、サルタヒコは自分の精神衛生のために努めて見ないふりをしたまま話し出した。

 【取りあえず現状です……船体の損傷は軽微ですが…微妙ですね。いいとも悪いとも言えない状況です】

 「どういう事だ?」

 【ま、そこらへんは外を見て頂ければ解るかと】

訝しげに聞き返すアキトに外の風景を表示するサルタヒコ。そこには……

 「何だこれは?」

 【見ての通り、残骸です。200年以上前に使用されていた雷撃機から20世紀から21世紀頃に使われていた一般航空機、その他船舶、自動車etc etc……ありとあらゆる年代のありとあらゆる物、果ては私のライブラリにも存在しない物までが残骸となって漂っています。中に人間の遺体…もっとも、すでに白骨化してますが…がある物もありました】

サルタヒコが説め…解説する通り、ありとあらゆる物の残骸が浮遊していた。しばらくその光景に固まっていた2人だが、先に現世復帰を果たしたルリがサルタヒコに問いかける。

 「一体ここはどこなんですか?ぱっと見、宇宙空間みたいですけど…」

 【ぶっちゃけ言ってしまえば、不明です。いくらレーダーで探査しても反応するのはこういった残骸ばかり…信じられないかもしれませんが、恒星や惑星すら無いんです。これは私の憶測ですが…ここは俗に言う『異次元』と呼ばれる所ではないかと…】

 「異次元…だと……確かにいいとも悪いとも言えんな、恒星の内部やブラックホールのどまん前といった死が確定する場所でこそ無いが…生き延びれる保証も無い……クソッ!!俺があの時無理矢理にでもルリちゃんを引き離していれば!!」

ゴガッ!!

ルリを巻き込んでしまった(ルリ本人はそんな事はまったく思ってないが)責任を感じ、苛立ち紛れに壁に拳を叩きつけるアキト。

 「俺は…周りに不幸を呼ぶ事しかできないと言うのか!!!」

ガスッ!!ゴスッ!!ガンッ!!!

がしっ!!

 「止めて下さいアキトさん!!」

幾度も叩きつけるうちに拳から血が出てくるが、それを無視して叩き続けていると、不意に横からルリが手を抱きしめるように止める。少し驚いてその顔を見ると、目から涙が溢れていた。

 「アキトさんは疫病神なんかじゃありません…もしそうだとしたら…私がアキトさん達と暮らしたあの2年間をどう説明するんですか…?あの3人で寝起きして、屋台を引いて暮らしていた2年間を…たとえお金が無くても、部屋が狭くても、あの時私は間違い無く幸せでした…ユリカさんも幸せだったはずです…それでもアキトさんは、自分が疫病神だと言うんですか?お願いです……もう、自分を責めるのは止めて下さい……」

 「ルリちゃん………っ!!!グッ!!ガハッ!!ゴホッ!!ゲホォッ!!!(ビシャッ!!!)ガッ……グガァァァァァァァァァ!!!!」


 「っ!!!ア、アキトさん!!!?」

泣きながらアキトを慰めているルリの頭をなでようと手を伸ばした瞬間、突然血を吐いて苦しみだすアキト。その顔色は土色になり、額には脂汗が浮かぶ。ルリは知らないが、これが五感の喪失と並ぶアキトが抱える物の一つ…『ナノマシンスタンピード』であった。体に入れられた過量のナノマシンが一斉に暴走するそれは、五感を喪失した事によって『痛み』と言う物をを失ったアキトにすら、脳神経に直接作用する事で地獄の苦しみを味あわせるのである。

 【ルリさん!!そこのロッカーに入ってる無針注射器を!!早く!!】

 「は、はい!!!」

ガチャ…ゴソゴソ……

 「これですか!!?」

 【それです!!早くマスターに打って下さい!!!!】

 「はい!!」

ドタバタ…ドタバタ…カチッ

ドサッ……

サルタヒコの指示に従って中和用のナノマシンを取り出し、暴れるアキトを何とか組み伏せてそれを注入するルリ。そしてそれを撃たれたアキトはがっくりと崩れ落ちた。

 「はぁ…はぁ…はぁ…いざという時のためにサブロウタさんに頼んで体術を習っていて正解でしたね…よくこうなるんですか?アキトさんは…」

荒れた息を落ち着かせながらサルタヒコに質問するルリ。

 【はい、時々そうなるんです…ラピスさんが居た頃は大変でした…ラピスさんに打ってもらおうにも彼女はルリさんより体が小さかったですから…ある程度収まるのを待つしか無かったですからねぇ…治療できれば一番よかったんでしょうが……】

 「無理だったんですね…」

 【ええ……一度、酔ったドクター…イネス女史が私に愚痴りに来た事がありました…『今世紀最高の頭脳なんて言われていい気になって…お兄ちゃん1人助けれなくて何が博士よ!!何がドクターよ!!肝心な時に役に立たないなんて……まったく意味が無いじゃない!!』と……泣きながら何度も何度も言ってました………私には何でマスターがそんな目に会わなければならないのか解りません…火星生まれだったのが悪かったんですか?ナデシコに乗ったのが悪かったんですか?それとも、ボソンジャンプを成功させたのが悪かったんですか?五感を奪われ…望んでなかったであろう修羅道に堕ちる事を余儀なくされ…挙句の果てに奥さんに否定され……マスターが…マスターが一体何をしたって言うんですか!!?あ……申し訳ありません…ルリさんに怒鳴っても仕方が無いのに……】

何時の間にか我を忘れて愚痴っていた事に気付き、慌ててルリの周りに出した『何故?』『どうして?』『Why?』などと書かれた大量のウインドウを閉じて謝るサルタヒコ。それを見たルリは悲しげな笑みを浮かべて答える。

 「まったくです…もし神様と呼ばれる者が居るのなら…問いただしてやりたいです……それにしても、あなたはアキトさんそっくりですね……大切な人のために憤り、悲しむ所とか得に…そう言えば…ラピスちゃんと言えば、何で彼女は乗ってないんですか?今までどたばたしてて忘れてましたが…」

 【彼女は…最後にドックに寄航した時にエリナ女史に預けてきました…感覚のリンクを私に移した後、彼女とのリンクを切り…最後にマスターの記憶を全て消去して…今頃は護衛付ではありますが、普通に暮らしているはずです……】

 「そうですか……本当に…変わってないんですね、アキトさん…『ルリちゃんの知っているテンカワ=アキトは死んだ』なんて言ってたのに…そうやって人の事ばっかり心配してる所とか…ぜんぜん変わってないじゃないですか……もっとも、彼女がそれを望んでいたかは解りませんが…」

先程までの苦悶の表情が信じられない程、安らかな顔で眠るアキトを膝枕し、その頭を撫でながら優しげな表情で呟くように言うルリ。まるでキリストを抱く聖母を思わせるような情景にサルタヒコが見惚れていると、不意にレーダーにそれまでとはまったく異質な物体が映った。

 【レーダーに感あり!!正常に稼動している艦船らしき物体です!!核パルスエンジンを積んでいる模様ですが、推進源は未知の物なのか解りません!!大きさは……推定全長7000メーターオーバー!!!】

 「!!!(ゴン!!)本当ですか!!?………ゴン?……キャー!!アキトさん!!ごめんなさい!!ごめんなさーい!!!」

 「………いや、痛みは無いから大丈夫だ…(汗)」

サルタヒコの報告に驚いて立ち上がったせいでアキトの後頭部を床に打ち付けてしまい、平謝りに謝るルリ。もっとも、その衝撃で覚醒はしたものの、五感が無いせいで痛みを感じないアキトは気にしてないが。

 「それよりサルタヒコ、計測ミスとかは無いのか?」

 「信じられません…ドック艦の『コスモス』ですら1キロ無いのに…」

冷静に考えるアキトと唖然とするルリ。そうこうしている内に、件の船はどんどん接近してきていた。そして、双方の距離が10キロを割った時……

 『えー、こちらは戦艦『ラフレシア』です。そちらの船の乗組員さーん、聞こえますかー?もし聞こえてたら何か反応をお願いしまーす』

謎の戦艦からサウンドオンリーで通信が入ってきた。それも、自分たちと同じ言語で、しかも(声だけで判断すれば)女性である。慌ててアキトがそれに答える。

 「こちら戦艦ユーチャリス艦長のテンカワ=アキトです。あなた方は一体……」

 『そうですねー…そうだ、説明しますから、こちらに移られてはいかがですか?危害を加えない事は保障しますし、こちらの船には艦船用のドックもありますから、修理もある程度まででしたら出来ますよ』

それを聞いてしばし考え込むアキト。すると、不意にルリとサルタヒコが話しかけてきた。

 「アキトさん、ここは受けた方がいいんじゃないですか?どのみちこのままじゃ、生きて行ける確立は無いに等しいですし…」

 【私もそれに賛成。現在の食糧備蓄量はマスターだけなら1週間分、ルリさんも居ることを考慮すると4日も持ちません。水も同じような感じです】

それを聞いて通信機に向かうアキト。

 「了解しました。貴艦の善意に感謝します。ドック入りの方法はどうすれば…」

 『そうですねー、こちらのやり方がそちらで出来る可能性は低いですし…取りあえず、ドックの入り口を開きますから手動で入ってもらえますか?少々ぶつけてもかまいませんので』

そう彼女(?)が言った後、円錐を半分に割ったような形(と言っても色々付いてはいるが)の船の中心の上部が真ん中から2つに割れ、中にドックが見えた。

 「了解です。それではこれより進入します(ピッ)サルタヒコ、任せていいか?さすがにやった事が無いからな…どうも自信が無い…」

 【了解。任せて下さい♪】

そしてそのドックの中に入っていくユーチャリス。はたして、彼らを待っているのはいかなる人物なのか………。


To Be Continued……


後書きが思いつかないので次回予告〜(汗)

謎の戦艦の内部に招待されたアキトとルリ。2人を助けたのはいかなる人物なのか?そして、ここは一体どこなのか?2人は元の世界に帰れるのか?次回『人を超えし者達』後編、お楽しみに!!

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