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「Revenge For The Destiny〜序章〜第1話(ナデシコ)」

アンスリウム (2005-01-31 22:30)
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   Revenge For The Destiny


                〜序章〜


    第1話「Say Good−By For The Now」


木連強硬派首魁『草壁春樹』が起こした『火星の後継者の乱』から早1年が経とうとする頃、火星と木星の間にあるアステロイドベルト近くの宙域で2席の戦艦がにらみ合っていた。片方の戦艦の名は『ユーチャリス』、世間ではコロニー襲撃犯『黒の皇子』として知られる『テンカワ=アキト』の乗艦である。そしてもう一方は連合宇宙軍最強の呼び声も高い『ナデシコB』言わずと知れた『電子の妖精』こと『ホシノ=ルリ』の乗艦である。

 『アキトさん、戻ってきて下さい!!ユリカさんも皆も待ってるんですよ!!』

 『言ったはずだ、血に塗れた俺に皆の所に戻る資格は無いと。だから俺の事はもう忘れて幸せになってくれ』

 『何言ってるんですか!!資格なんて関係無いです!!それに、私達の幸せにはアキトさんが必要不可欠なんですよ!!』

火星の後継者の乱の後からたびたび繰り返されている会話。最近では『宇宙最大の痴話げんか』と呼ばれている。何時もなら一通り言い合った後ユーチャリスがボソンジャンプで消えておしまいだったのだが、今回は違った。

ヴィーッヴィーッヴィーッ!!!

ルリがそう言った瞬間、双方の艦にボソンジャンプ警報が鳴り響いた。

 【【ルリ(アキト)!!何かがジャンプアウトしてくる!!質量は戦艦クラス。形状照合……ナデシコD級!!】】

ナデシコBとユーチャリスに搭載されているAI『オモイカネ』と『サルタヒコ』が同時に報告を行う。ちなみに『ナデシコD級』とはナデシコBをデチューンした量産型の事である。オモイカネ級AIの搭載を止めた事でオペレーターにマシンチャイルドを必要としなくなったため、連合宇宙軍の時期主力艦として期待が寄せられている艦である。

そして双方にジャンプアウトしてきたナデシコD級1番艦『ローズゼラニウム』から通信が入る。

 『ルリちゃーん、手伝いに来たよー!!』

元ナデシコA艦長『ミスマル=ユリカ』だった。火星の後継者の乱の折に遺跡に融合されていた彼女は幸い人体実験などもされておらず、半年ほどリハビリをするだけで元の生活に戻れていた。

 『ユリカさん、こんな所に来て大丈夫なんですか?確か退院は一昨日だったと思うんですが…』

訝しげに問いかけるルリ、しかし、その答えと同時に彼女の口からとんでもない言葉が飛び出てきた。

 『ルリちゃんが頑張ってるのにのんびりしてられないよ!!という訳で…コロニー襲撃犯の偽アキトさん、あなたを逮捕します!!大人しくお縄についちゃって下さい!!』

 『…っ!!!』

バイザーのためによく解らないが、驚いたような表情をするアキト。

 『ユ、ユリカさん!!い、一体何でそんな事を!!?』

驚愕にどもりながら問いかけるルリ。しかし、ユリカはけんもほろろに答える。

 『えー?だってアキトはユリカの王子様だもん。こんなコロニーを襲ったりするような人じゃないよ。ルリちゃんだって知ってるでしょ、アキトが争いが大嫌いなの。アキトがいなくて寂しいのは解るけど、いくらなんでもこんな人と間違えたらアキトに失礼だよ、プンプン!!』

 『………!!!(何て事…ユリカさんの精神状態を悪くする事を恐れてアキトさんの事を黙っていたのが仇になってしまったんですか…)』

あまりといえばあまりな言葉に絶句するルリ。そしてアキトは……。

 (サルタヒコ、ジャンプの準備だ…)

 【解った……】

表面上は無反応を装ってサルタヒコにジャンプの準備をさせている。しかし、心の内には悲しみと苦悩が渦巻いていた。そしてジャンプの準備が完了しようとした次の瞬間

 『あー!!逃げようったってそうは行きませんよ!!グラビティブラスト発射ー!!!』

ボソンの光にいち早く気付いたユリカが逃がすまいとグラビティブラストを発射した。ナデシコBやC、それにユーチャリスと比べて威力の低いそれは、本来ならユーチャリスのディストーションフィールドを貫くことは無い…はずだった。しかし、ジャンプ準備のためにエネルギーをいくらかジャンプフィールド発生装置の方に回していた事が仇となった。

ガガゥゥゥゥゥン!!!!!!

完全には防ぎきれず、船体の何箇所かに直撃を受けるユーチャリス。そしてそのうちの一つが、ジャンプフィールド発生装置を直撃していた。その結果……

 【アキト!!ジャンプフィールドが暴走してる!!このままじゃランダムジャンプになっちゃうよ!!】

ユーチャリスのブリッジにサルタヒコの悲鳴にも取れる声が響く。無理も無い、ランダムジャンプ……どこに飛ばされるのかまったく予測がつかない危険極まりない代物……などしたら下手をしたら恒星の中やマグマの中、はては過去や未来に行く事すらありえるのだ。

 『!!そんな……アキトさん、脱出して下さい!!』

顔色を蒼白にして叫ぶルリ。しかし、アキトは………

 『もういいんだよ、ルリちゃん……もともと俺の体はボロボロになっている…後半年生きられればいいくらいだった……それに、これで皆も俺の事を忘れられるだろう…』

 『……嫌です…アキトさんの事を忘れて生きるなんて……そんなの嫌です!!どうしても来ないと言うのなら………こっちから行きます!!』

 「!!?ちょ、艦長、どこ行くんスか!!?」

涙を流しながらそう叫んでブリッジを走って出て行くルリ。副官の『タカスギ=サブロウタ』が慌てて止めようとするが、

 「邪魔です!!」

キーン!!

の一言と共に前蹴りで大事な所を蹴り飛ばされて悶絶する羽目になった。そして猛ダッシュで格納庫まで行くと整備の済んでいたサブロウタ用のスーパーエステで艦外へ飛び出し、そのままユーチャリスの方へ向かってバーニア全開で飛んで行く。

 『ルリちゃん!!だからそのアキトは偽者だってばぁ!!戻って来(ブッ)』

 『艦長!!戻ってきて下さ(ブッ)』

途中でローズゼラニウムやナデシコBから通信が入るが、全て途中で遮断してユーチャリスに近付いていくルリ。そしてユーチャリスにたどり着いた時にアキトから通信が入った。

 『ルリちゃん!!すぐに戻るんだ!!今ならまだ間にあ『嫌です!!』…ルリちゃん!!!』

 『もう…離れ離れになるのは嫌です…人が生きるために空気が必要なように…私が生きるのにはアキトさんが必要なんです……二度と会えなくなるくらいなら……死んだ方がましです!!!』

ルリがそこまで言った時、一気にユーチャリスの周りを覆うボソンの光が強まり、そして………

 【ジャンプ、開始します……】

パシーーーーーン!!!

一瞬の閃光と共に、ユーチャリスとルリの乗るスーパーエステはその姿を消し、後にはただ静寂のみが残された……。

 『ルリちゃん……嘘だよね…ルリちゃーーーーーーーーん!!!』

 『艦長ーーーーー!!返事を…返事をして下さいーーーーー!!!』

A,C2206年『ホシノ=ルリ』『テンカワ=アキト』両名、行方不明。以後、彼らの仲間による徹底的な捜索が行われたが、2人が見つかる事は無かった。漆黒の皇子と彼を慕う瑠璃色の妖精の、運命への反抗の始まりである………。


To Be Continued……


後書き

皆様はじめまして、アンスリウムと申します。どこまで書けるか解りませんが、出来る限り完結できるように頑張りますので、これからよろしくお願いします。

次回予告

ランダムジャンプによって飛ばされたルリとアキト。彼らが飛んだ先はどこなのか?そして、その見知らぬ場所で彼らが出会った者は一体?
次回、『人を超えし者達(仮)』お楽しみに!!

注)こんな出だしですが、ユリカヘイトにはなりません。ユリカは嫌いなキャラではないんですよ。ただ、アキトとくっつけるのが嫌なだけで。ちゃんとくっ付けるキャラを用意しますので、長い目で見て頂ければ幸いです。

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