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「横島大戦 第陸話(GS+S大戦)」

とくなぎのぞむ (2005-01-30 05:09/2005-01-30 05:11)
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「よっと……しっかし、今日はいつにも増して多いな……」

まだまだ春真っ盛りの帝都。
とはいえ、さすがに昼頃になってくると、それなりの気温になってくる。
まして、この帝都はただでさえ蒸気機関がそこらじゅうをひしめいているのだ。
さすがにそれなりの気温になるのは自明の理だろう。
で。
そんな中、帝劇の事務室で彼――横島忠夫は、額に光る労働の証、玉の汗をぬぐいながら晴れ晴れとのたまった。
その視線の先にあるのは、おそらくは千の数をこえているのではなかろうかと言う大量のファンレター。
これが、毎日届くのだから、紙問屋はおお儲かりである。

(……そういや、なんかこの前紙問屋の人が菓子折り持ってきたけど……やっぱこういうことなのかなあ……?)

なんてのんびり考えながら着々と自らの仕事を済ませていく横島。
因みに心眼は、何故か朝から爆睡中。

――ま、心眼のことだし大丈夫だろ

まあ、この頃はぐっすりと眠れるようになった横島、心眼には絶対の信頼を置いているので、あまり気にしていないのだが。

「おお、いたいた」

と、そんな横島に声がかかる。
振り返るとそこには――

「……支配人?」

珍しく酒瓶を持っていない米田が――いた。


横島大戦
第陸話  『狼と人魔』


「ほれ、ついた」

米田に連れてこられた横島。
つれてこられた場所は、なんと今の今まで立ち入りを禁じられてきた地下。
そこにあるのは――

「……基地?」

そう、そこにあったのは秘密基地よろしく、横島がいた時代にも勝てずとも劣らないほどの設備が施された基地のような部屋。

「あんまおどろかねえな?」

この時代にしては、最先端どころか日本の技術の粋を結集したとも言えるこの設備を見ての横島の反応に、不満の声を漏らす米田。
米田にしては、もっと驚くと思っていたのだ。
対して横島はのほほんと答える。

「いえね、地下に何かあるなーってのは思っていたんですよ。まあ、さすがにこんなのだとは思ってもみませんでしたけど。……で、これを俺に見せて、まさかそれだけだ、なーんてことは無いですよね?」

にやりと笑って、言う。
そんな横島に、米田は苦笑を浮かべ――切り出した。

「ああ、そうさ。俺らの正体は“闇”から帝都を守る特殊部隊、『帝國華撃団』だ。……横島、おめえにも、協力して欲しいんだが……」

「いいですよ?」

「………………………………………………………………………は?」

即答する横島に、しばし絶句する米田。

「い、いやなあ、何か早すぎねえか? もっと、こう……なんだかなあ……はあ」

何かもだえ始めて、最後にはため息をつく。

「……ま、まあいいか。取り敢えずは、入団はいいんだな?」

「はあ、別にいいっすよ、それぐらい。こんな見ず知らずの自分をここにおいてくれた恩もありますし」

「……助かるぜ」

こうして、横島の帝國華撃団への入団が決定したのだった。

『一つ訊いてもいいだろうか、米田殿?』

と、まあそんな簡単にいくはずも無く、心眼からの一声。
これに対し、米田の答えは是。

『特殊部隊だと言うのだから、隊長はいるのだろう、当然。一応、誰なのかを聞かせておいて欲しい。……一応言っておくが、この者に隊長は不可能だぞ?』

「あのなあ……」

じろりと、視線を向けてくる心眼に、苦笑する横島。

「もちろん、んなこたぁわかってる」

「……おーい」

そして米田に止めを刺される。
哀れ横島、心眼を戦略図みたいな机に置き、部屋の隅でいじけだした横島を尻目に、米田はにやりと笑って言う。

「いま、さくらのやつが迎えに行っているさ」


所は変わって上野公園。
春うららかな光景が見られるその場所。
そこに、彼はいた。
彼の胸は期待に膨らんでいる。

しかし、彼は気付かない。


自分が、これから途方も無い運命の波に飲まれていくことを。


自分が、これから途方も無い世界の闇を垣間見ることになることを。


全てが――そこから始まることを――


彼の名は大神一郎。

かつて“神”をその身に宿し、“闇”を打ち倒した『神人』――その血を受け継ぐただ一人の人間である。


(ふー……それにしても緊張するな……)
心の中でそう呟きながら、今年海軍士官学校を首席で卒業したばかりの新人軍人、大神一郎は直立不動の体勢を崩さない。
その純白の礼服が、なかなかに輝いている。
それもそのはず、彼は今日、自分が隊長となる部隊に初着任するので、あえて候補生時代に使っていた礼服を使わず、わざわざ新調したのだ。
まあ、軍から支給されたものにはかわらないので、大神の懐が痛むことは無いが。
と、大神の立っている場所に向かい、一人の軍人が歩いてくる。


――あの人が米田中将の迎えの人なのか……?


その考えが頭によぎり、なお一層背筋を伸ばす大神。
その心臓はばくばくと波打っている。
しかし、そんな大神をよそに、その軍人は大神をちらりと見ただけで悠々と通り過ぎていく。

(……なんだ、違ったのか……?)

落胆しながら、懐から懐中時計を取り出してみる。
みると、ゆうに規定の時間は過ぎていた。

(……まさか、俺が間違えたのか……あの命令は俺の夢だったのか〜〜〜!?)

なんてもだえ始める大神。
まじめと言うかなんと言うか、どうやら書類不備だと言うことは考え付かないようである。
と、そのとき――


「あの……大神一郎さん……ですよね?」


振り返ると、まだ15,6の少女が、そこにいた。

(……この娘は……? まさか、彼女が米田中将閣下の使いなのか……!?)

まさかこんな少女が自分に声をかけてくるとはまるっきり考えていなかったので、少しの間大神は混乱してしまう。
しかし、少女はその間を否定と感じ取ったようだ。

「……あ、やっぱり違いますよね……すいません。……困ったな……写真落としちゃって……どうしよう……」

「え? ああ、俺が大神だけど……」

と、がっくりとした感じで立ち去る少女を、大神は慌てて引き止めた。
すると少女は先程とはうって変わって明るい表情に変化する。

「あ、やっぱりそうだったんですね。初めまして、私、真宮寺さくらといいます」

そう言って少女――真宮寺さくらはにこりと微笑んだ。


(……それにしても……本当にこの娘が米田中将閣下の使いなのか? まだ少女じゃないか……)

上野公園の桜並木を、さくらと二人並び歩きながら、大神は思う。
その横顔はまだあどけなく、簡単に折れてしまいそうに細い。

しかし――

(……心は強い――か……)

隣にいてもひしひしと伝わってくるその精神。

――なんという強き輝きか――

大神は幼い頃から、何故かそういう“心の輝き”というものを感じることが出来た。
それがどうした、と訊かれればそれまでだが、大神にとって人の性根を判断するのに、これ以上の能力は無かった。

(それに――可愛いし)

……失礼、どうやら外見も人の判断に使われていたようである。
なんて隣にいる少女――さくらの顔を見つめていると……さくらは何故か頬を赤らめて、

「あの……そんなに見つめられると……恥ずかしいです」

なんていうもんだから。
当然、人生の大半を女ッ気(姉は除外)の無い生活を送ってきた大神、対処に困り。
んで、慌てて、慌てまくった結果、最初に目に映った桜を――

「い、いやあ、桜、きれいですねぇ、桜、あははは……」

さすがは『無意識女たらし・大神一郎』、そんな感じでのたまっちゃったりして。

「え、あ、きゃ、ええ!!??」

さくらはさくらで、顔を真っ赤にしたりして。

「ちょ、な、何言ってるんですか〜!!??」

「おわ!?」

ドンと、恥ずかしまぎれに大神を押したりするもんだから。

「あっ!?」

大神の持っていたトランクの中身がぶちまけられ。

「あ、す、すいません!」

「あ、いいって別に……」

と、散らばった大神の私物を慌てて拾い始めるさくら。
んでもって。

「……あ」

そんなさくらが最初に手にしたものがよりにもよって。

「げっ!」

下着――つまりはトランクスだったりして。
当然、大神の。

「きゃあっ!」

「ああ! 新調した俺のトランクス!!」

ソレと分かった途端、またも顔を真っ赤にし、トランクスを放り投げるさくら。
ここで言っておくなら、大神は普段褌(ふんどし)を愛用している。
しかし、ここで新しい部隊に配属されることに決まり、気分を変えようと下着を試しにいくつか買ってみたのである。
つまり、散らばった大神の下着の大部分は白い布――褌なわけで。
当然、他の私物がある中で一番最初にトランクスを拾う確立は物凄く低い。
そんな中でトランクスを引き当てたさくらの運はさすがというかなんと言うか。
まあ、取り敢えず確かなのは、彼らが目的地に着くのは、まだまだ先だということである。

……合唱。


二時間後。
そんなこんなで帝劇についた大神とさくら。
因みに。
上野公園から帝劇までの道のりは、ほんの一時間足らずである。
まあ、それはおいといて。
大帝國劇場を呆然と大神は見つめていた。

(……一体これはどういうことだ!? これでは、まるっきり劇場じゃないか!?)

思わず叫んでしまいそうになるのをこらえながら、大神は心の中で悲鳴をあげた。
先程からずっと帝劇を見上げている。
その行動を、どうやらさくらは垂れ幕に写っているすみれにみとれていると思ったようだ。
実際は、茫然自失としているだけだが。

「あの……そんなに見つめていなくても……中に入ればすみれさんに会えますし……」

「あ、ああ」

そう言って大神を促すさくら。
そのさくらの声で、大神は我に返り、生返事をするとさくらの後について帝劇の中に入り――
そこには、大荷物を抱えた青年がいて――

「あ、さくらちゃん、今帰って――」

その瞬間――

その青年と目があった瞬間――

自分の中で――何かがはじけた。


それは何か心の隙間が埋まっていくような感覚で。

それは何か心の“ナニカ”が動き始めたような感覚で。

それは何か……そう、心の“ナニカ”が拒絶しているような感覚で――


どこかで。

歯車が。


はまったような気がした――


続きます……か?


次回予告


この平和を守りたい――
そう思ったのはいつごろだったのだろう。
たわいも無い子供のころの希望。
しかし、俺はその希望をかなえるため、軍に入った。
数々の試験を勝ち抜いて。
どんな厳しい訓練にも耐えて。
……やっと卒業して――

なのに、どうしてこの俺がもぎりなんぞしなくてはならん!?


次回、横島大戦第七話 『大神の苦悩』

太正櫻に浪漫の嵐!!


俺は――海軍少尉、大神一郎だ!!!


あとがいちゃおう
ども、想い人の結婚祝いに貯金の全てを使い果たしてしまった馬鹿、とくなぎのぞむです。
さあ、いよいよやっと大神君の登場です。
さあて……どうやっていぢめてやろうか……(酷!)

さあて、今月、どうやって乗り切ろうかなあ……(遠い目をしつつ)


感想批評、ありがとうございます!!


柳野雫様>ついに大神さんの登場です。ヨコシマンについては……イラストを描いてみたのですが、のせようかどうかは考え中です。……なんか短編書こうかなあ。


D,様>横島くんが誰とくっつくかは……私自身も知りません<オヒ
またおいおい決めていくつもりですが……
大神君に関しては……もう横島くんに汚染されることは世界の運命です(爆)


MAGIふぁ様>ありがとうございます。……ヨコシマンと並ぶヒーローを目指しちゃいます<マテ


ATK51様>どちらかというと……仮面ライダーの覆面バージョンみたいな感じですね、私のイメージの中では。まあ、あの夕日をバックに語るオレンジ色の男ですからねえ……しかも少年レッドとは違い、実物を基にしていますので、人気が出るのは仕方が無いかなあ……なんて思いまして。


nao様>はっはっは……最初はヨコシマンの予定だったんですが、何故か数日連続で物凄い悪夢を見まして。慌ててヨコシマスクに変更しました。……そしたら悪夢はぴたりと止んで……(マジ話です)
私もそれでいいんじゃないか、といったのですが、先輩はどうやらそれで数回ひどい目に会ったそうで、それからあそこ周辺ではコピーはしないと心に決めていたそうです。
そして数日後……初めて聖地を訪れて……納得しました。


朧霞様>……あえて私は何も言いますまい。その悲しみを知っているから……(めっさ失礼)
〜しばらくお待ちください〜
……失礼しました。何故か涙が溢れ出しまして。
アシュパンジャーとヨコシマスクは敵対関係にあります。
理由は……近親憎悪?<マテ

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