インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始▼レス末

「Fate/capture night4(Fate+CCさくら)」

SK (2005-01-04 00:04/2005-01-04 00:27)
BACK< >NEXT

銀の騎士が蒼い槍兵を圧倒する
その場にいた全員が一瞬思考を放棄して、その様に見惚れた
その中でもっとも早く我に返ったのは、兄でも妹でも泣く、数多の時を越えてきた使い魔達だった

「で、結局あれはなんなんやろうなあ?」

「さあな。私達とは桁の違う幻想であることは確かだが。士郎、あの槍の解析は?」

月が士郎に話をふってようやく、彼らは正気に戻った

「ゲイボルク――持つ能力は因果の逆転。一度放てば必ず心臓を貫く魔槍」

未だ熱に浮かされたような声で、彼は自分の眼で“視た”結果を告げる

「へぇ、またえらいたいそうなもんがでてきたなあ。ゲイボルクっちゅうたらアレやろ?アイルランドの」

「光の御子、ク・フーリンの所有だな。あの身のこなしから見ても、まず間違いなく本人だろう」

「正真正銘の“英霊”やないか!まさかあの金ぴかの兄ちゃんがいっとった戦争っちゅうのは」

「聖杯戦争、この冬木の町がその場とはな」

昔、彼らの前の主、クロウ・リードが存命だったころ
かの主と仲が良いのか悪いのかはまったくもって不明だが、そこそこ長い付き合いのあった魔法使いがいた
時の翁と呼ばれる彼が、確かそんな儀式の事を話していた

曰く、七人の魔術師と七体のサーヴァント(英霊)によって行われる大魔術儀式、と

さて、彼らはどこかほのぼのと世間話のようにこの会話を行っていたが、実際はまだ蒼の槍兵と銀の騎士は戦闘中である

「・・・・・・推測するまでもなく、私のマスターとその他が御身の真名を割り出したようだな。今回のマスターは、なかなか優秀なようだ」

激しい斬撃を浴びせながらも、誇らしげな笑みを浮かべる銀の騎士

「はっ、全くだな!あの嬢ちゃんといい、あの坊主といい、どっちかはしらねぇがどっちにしてもいいマスターを引いたもんだ」

楽しそうな笑みを浮かべると、一跳びで距離をとり、くるりと背を向ける

「こっちはあの腐れマスター、正体がばれたのならとっとと帰ってこいだと。まあ、楽しみはとって置くもんだからな。今は退かせてもらうぜ」

振り返り、獰猛な笑みを浮かべる

「追うも追わぬも自由。だが追うつもりなら、この槍がその心臓を貫くと思え」

その言葉に、槍の能力を思い踏みとどまる銀の騎士
蒼の槍兵は、夜の中に消えていった
残されたのは、魔術使いの兄妹と、使い魔

「え、えっととりあえず助けてくれてありがとう」

「本当にありがとうございました」

揃って深々と頭を下げる兄妹
未だに頭が混乱している中でも、お礼だけは言おうとする辺り、性格がうかがえる

「いえ、礼には及びません。マスターを守るのがサーヴァントの務めですから」

生真面目に、その美しい騎士は応えた
近くで見ると、まだ幼い小柄な体躯である
この小さな体で、あの槍兵を圧倒したのか、と改めて驚く
顔立ちは中性的で、身につけている頑丈な鎧とあいまって性別は分からない
短い金糸の髪がさら、と揺れた

「えっと、君が俺のサーヴァント、でいいのかな?俺もいまいちよく分かってないんだけど」

「ええ、確かに私のマスターはあなたです。私はセイバーのサーヴァント、マスターの名をお聞きしても?」

「えっと、俺は衛宮士郎。マスターじゃなくて、士郎って呼んで欲しい。よろしく、セイバー」

ごく自然に、士郎は右手を差し出す
掴んだ手の感触で、ようやく目の前の騎士がこの現にいるのだと認識した

「シロウ、確かにこの発音の方が好ましい。では、これからはシロウと」

そこで、さくらの方に目を向ける

「それで、そちらの少女は、何者なのですか?敵ではないようですが。少女の姿をしてはいますが、あのランサーと僅かながらでも渡り合っていた事といい、あれほど完成された使い魔を連れている事といい、もしかして、あなたの師か何かなのですか?」

どうやら、さくらの事を高位の魔術師だと勘違いしたらしい
確かに、潜在能力だけなら規格外なのだが

「いや、さくらは俺の妹だ」

簡潔な士郎の応えを、使い魔二匹がフォローする

「あ〜、カードやわいらは、造り手は別におるんや」

「今の主は、それを受け継ぎ、造り変えた。才能はとてつもないが、肉体年齢も精神年齢も見た目どおりだ」

彼らの説明に、騎士は納得したように頷いた

「大体わかりました。その少女は、何かの魔術の継承者で大変な才能をもっているのですね。だが、年齢は関係ない。たとえ肉親関係があっても、魔術師であるなら、聞いておかなければならない」

セイバーは手にもつ“何か”を構えたまま問う

「あなたは、我がマスターの味方か?」

その応えに、さくらはセイバーの目を見つめてきっぱりと言い切った

「私は、お兄ちゃんの味方だよ。何があっても」

「誓えますか?ただの言葉ならなんとでも言える。だが、あなたが魔術師である以上、形式を踏んだ誓いなら強制力が発生する」

ほんの少し、柔らかい表情で騎士は聞いた

「わかった。私、衛宮さくらは、お兄ちゃん――衛宮士郎の味方である事をここに誓う。これでいいのかな?」

いつの間にか覚えた、魔術師の顔でさくらは誓いをなした

「ええ、安心しました。っと、新手のようです。あなた方はここで待機していてください」

素早く、敷地の外へと飛び出す
兄妹は、それをあわてて追った
そして、彼らが見たのは――

乱舞される巨大な魔力塊、それをものともせず突き進み
紅い騎士に刃を振り下ろそうとする姿だった
その後ろには、少女の姿

「だ、ダメー!」

「やめろ、セイバー!」

マスターの声に、セイバーの足が一瞬止まる
そのとき、風が吹き荒れた
ただ、純粋に激しいだけの突風
それは、さくらが無意識に掴んでいた“風”のカードの効果だった


ふわり、と体が宙に浮く

サーヴァントたちには、充分耐えれる風でも、マスターである彼女には無理だった
何の心の準備もなしの自由落下に、魔術を発動させることも出来ない
叩きつけられる衝撃を、覚悟したそのとき

「遠坂!!??」

彼女には、とっても聞き覚えのある、声がした
同時に、風がふわりと優しく彼女を包み込む

「大丈夫だったか?凛」

気づけば、自分のサーヴァントに受け止められていた

「ありがとう、助かったわ」

「いや、マスターを助けるのサーヴァントの役目だからな。それにしても、あの少女は一体」

困惑したように、アーチャーは先ほどの魔術の放ち手を見つめていた

「間に合ってよかったね、お兄ちゃん」

件の少女は、そんな会話も知らぬげに安堵の笑みを浮かべていた

「はっ、それより!衛宮君、あなたマスターだったのね」

厳しい、魔術師の表情で駆け寄ってきた人物を見据える

「え、ああ、なんかよくわからないけどそうみたいだ」

「・・・・・・聖杯戦争のことは、知ってるの?」

「さっき、おおまかに聞いただけだけどな」

「最後に、聖杯戦争に参加する意志はあるのね?」

何の感情も見せない声で、少女は問うた

「ああ。特に叶えたい願いなんてないけど、こんな壺毒じみた儀式なんて、放って置けない」

強い意志をあらわにした声を聞き、少女も心を決めた

「そう。じゃあ、あんたは敵ね。まあ、さっきセイバーをとめてくれたお礼に、今ここでは争わないであげる。ついでに、監督役の居場所も教えてあげるから」

表情を微動だにせず、少女は言い切った

「凛、私も彼らに聞きたいことがあるのだが、いいか?」

「構わないわよ」

そこに、セイバーが割って入る

「敵だと言うなら、今ここで決着つけても構わぬぞ。アーチャーとそのマスター」

「やめとけ。せっかく向こうが今は戦わないっていってくれたんだ。それに、今は何より情報が欲しい」

その声にしぶしぶと構えを解くも、警戒は怠らない

「えっと、聞きたいことってなんですか?」

「ああ、簡単なことだ。君達は血が繋がってはいないだろう?なのに何故そこの男を兄と呼ぶ?」

何故、と言う疑問は少なくともさくらの頭には浮かばなかった
ずっと昔から知っている相手のような感覚を、目の前の男に受けたから

「私は、十年前の火事でお兄ちゃんに助けてもらって、お父さんに拾われました。だから、血はつながってなくても、お兄ちゃんは私の大事な家族で、恩人です」

そのとき、男が浮かべた表情は筆舌に尽くしがたい
それは、絶望の様でも、失望の様でも、羨望の様でも――そして歓喜の様でもあった

「そう、か。次にお前だ、セイバーのマスター、お前は、何のために魔術を学んだ?」

その問いの答えは、常に自分の中にあったもの
自分の生き方の中心にあるもの
故に、すんなり言葉に出来た

「出来るだけ、後悔しないように。何かがあったとき、大切な者を守る力がこの手にあるように」

それは、炎の中、唯一助けたいと思った幼子を、もう助けられないと思った時に願ったこと
養父に助けられた後、彼はそのことを思って魔術の修練を絶やさなかった
次に、大きな災厄が襲ってきたとき、大切な誰かを――妹を、護りきれるように
最後に、養父と交わした誓いのとおりに


『僕はね、昔正義の味方に憧れていたんだ」

『憧れていたって…今は諦めたってことか?』

『大人になればなるほど、それはどんどん遠いものになっていってしまうんだ。結局ね、僕は一を捨てて九を救う事しか出来なかった』

『そっか』

切嗣の寂しい笑い方が見ていられなかった
だから、だろうか。あんなことをいったのは

『なら俺は、切嗣が切り捨てた一を守るよ』

その言葉に、切嗣は少し驚いたように目を見張った

『その一がなんなのかも分からないのに?』

『わかるよ』

だって、切嗣は不器用だから

『切嗣なら、きっと一番大事なモノから切り捨てる』

そう、例えば――“せいぎのみかた”になりたいと願った一番大本の“人を助けたい”という思いとか

『切嗣が捨てたものは、俺が拾って、大事に守るから』

だから、自分は“人を助けたい”という思いを、大切な宝物として抱えて、一生生きていこう

『手が足りなかったら、他の奴の手を借りる。今は、さくらくらいしか思いつかないけど』

自分がもっと大きくなれば、手を貸してくれる人も増えるだろう
そして自分も、同じように誰かに手を貸せればいい
自分は、助けたいと思った小さな子供一人、自分だけでは助けれなかったほど無力だけど
あの時、切嗣がしてくれたように、誰かに手を差し伸べるくらいは、出来るようになるから

『だから、爺さんは安心しなよ。これからは、俺がちゃんと一を守るから』

切嗣は、九を守ればいい

その言葉を聞いて、切嗣は本当にうれしそうに笑って

『ありがとう』

そういって、静かに目を閉じた


過去に遡っていた士郎の意識は、アーチャーの呟きによって現在に戻された

「やはり、ここは――お前は、“違う”のだな」

「え?」

「いや、なんでもない。私は聞くべき事は聞いた。凛、地図は書き終わったかね?」

「ええ」

「では、今宵は退くとしよう」

そして、赤の主従は夜闇の中を駆けていく


「凛、私の記憶も大体戻った。後で私の能力を教えよう」

夜の町を駆けながら、弓兵は主にそう切り出した

「真名は?思い出してるんでしょう?」

「残念ながら、教えられない。私はどうやら、未来の英霊のようなのでね。戦略を練るには、能力だけで充分だろう?」

「未来の英霊って・・・・・・ああ、そういえば英霊って時間軸からは外れてるんだっけ。よく考えれば、触媒のない私が英霊を召還出来たのもおかしいしね。未来で、私がもってた何かがあんたと縁が出来るのか」

「そう言う事だ、凛。――此度の聖杯戦争、勝ちにいくとしよう」

「ふん、当たり前よ。勝つのは、私とあんたなんだから」

主従は、不敵な笑みを浮かべあった


<Interlude>

火がはぜる
暗闇の中、浮かび上がるのは、複雑に描かれた“陣”

「場は整った。そしてここには我がいる。召還の時間は、もうすぐだな」

金の髪の男は、傍に立つ黒い人影に声をかける
彼は、マスターとしての資格をもたない
それどころか、彼は魔術師ではない
だが、彼は――彼ら退魔は、聖杯戦争に参加せねばならなかった
魔術師どもの、これ以上の無法を許さぬために

そのための手段に、助力を申し出たのが目の前の男だった
それは、聖杯を利用した、降霊儀式
名のある霊は呼び出せずとも、この地に縁のある無名の霊なら呼び出せる
これほどの霊地になれば、質の高い霊もまぎれているだろうし、高い能力をもったものが、必ずしも歴史に名を馳せているわけではない
危険な、賭けだった
だが彼らは、それに縋るしかなかった

「ご協力、感謝する」

「大いに感謝するがよい。それに、まあ、これも可愛い弟と妹へのささやかな助力だ。少なくとも、イレギュラーが増えれば言峰も動きにくくなるしな」

愛おしさがその瞳によぎったのを、彼は見た

「さて、お前は、聖杯戦争に生き残れる程度の能力はあるのだろうな?」

一瞬で、暖かさをもった表情は消え、代わりに検分の視線が注がれる

「幼き頃より、退魔の業は積んでいる。術の類は使えぬが、防御の為の手段ももっている」

元々、魔術師の本分は研究
実戦経験では、どうしても退魔に劣る

「そのようだな。この場に我がいる以上、無銘の名剣は必ず引けようぞ」

すっと、支配者の目で彼は男を見た

「さて、今一度問おう。命をかける覚悟はあるか?この聖杯戦争でお前がなすべき事は、命を賭けるだけの価値があるか?」

その問いに、男はうっすらと笑みを浮かべて応えた

「覚悟など、この話を聞いた時点で出来ている。とても尊いもののために戦うのだ。価値など、計り知れない」

そして、男は無名の剣士を呼び出す
後に、聖杯戦争において佐々木小次郎を名乗る、魔人がここに降り立った


「さて、これでよいのか?」

儀式が済み、場を辞した後、何もない空に問いかける

『うん、ばっちり。これで少しは彼らの助けになる。あの人は、彼らの害になる事はしないから』

ぼんやりと、何もなかった空間から銀髪に赤目の少年が浮かび上がる

「全く、そのようにカタチを持った貴様と会うとは思わなんだな。ずいぶんと、人間らしくなったものだ」

その言葉に、少年はあいまいな笑みを浮かべる

『僕が自分の意志で接触できるのは、あの神父かあなたくらいしかいないから。あの神父には、頼れないし』

さくらの場合、“繋がった”のは偶然のようなもので、彼の意志で自由に接触する事は出来ない
少年は、憂いをそのきれいな顔に浮かべた

『さっき、人間らしくなったっていったよね?それも、問題なんだ。僕は自分が人間であったことに気づいてしまった。だから、“悪”から外れかけている』

彼が聖杯を染め上げた“悪”と言う概念の核であったのは、彼自身が自分は絶対的な“悪”であると信じていたことによる
しかし、召還されてからと言うのも、彼は徐々に人間としての感性を覚えていった
そして、先日のさくらとの邂逅以来、彼は急速に人間に戻りつつある
それは、呪いの中核からはずれ、制御権を失うと言うことである

『だから、まだ干渉できるうちに出来ることはやっておかないと。最近ね、僕以外の“何か”が入り込んでいるんだ。きっとそれが、新しい中核になるんだろう』

彼が“悪”でなくなっても、塗り替えられた聖杯は“悪”としての機能を果たそうとする
そのための新しい“悪”が呼ばれたのだと、彼は感じた

「せいぜい足掻くがいい。望みがあるのだろう?」

誇り高く笑う、彼の“悪”にすら染まらなかった英雄王
だからこそ、彼はこの王を頼ったのだ

『うん、ありがとう』

そう――自分は、絶対に現実であの兄妹に会いたい
たとえ、汚らわしい呪いの塊としてでも

そして、願わくばこの身に止めをさして欲しい

<Interlude out>


To be continued...

やっと実家から帰ってきたSKです
Interludeの使い方がいまいちよく分かっていないのですが、今回初めて使ってみました
これ、どこで入れるか迷ったんですがタイミング的にここしかなかったので。
今回のテーマは、ここの士郎のスタンスと、敵モードに入った凛と、吹っ切れたアーチャー
原作では、士郎が最初は巻き込まれただけなので親切だった彼女ですが、ある程度の情報を持ってて覚悟があるなら、敵に回ると思うのです 
それでも地図かいてあげている辺り、相当お人よしなんですが

セイバーの正体は原作と同じです。性別不詳にしたのは、ゲーム中、男装してきたくせに、何で少女だと一発で分かる姿なんだ!と私が思ったからです
アーチャーは、私怨を気にしないほうが強いと思います。この場合、答えを得たのではなく完全に別人と割り切っただけですが
頭が回って手数が豊富な分、下手したらイリヤよりも難敵かもです
あと、この士郎君も固有結界は同じなんです。オリキャラはともかく、オリジナル技は出したくなくて。違うと、何故投影できるのかと言う理由付けが大変だし。ですので、心象風景は明らかに違ってるだろうというツッコミは勘弁してください

タカちゃん様>渚の彼ですか?言われて初めて気づきました。容姿のイメージは、少年版イリヤでしたので

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭


名 前
メール
レ ス
※3KBまで
疑似タグが使えます、詳しくはこちらの一覧へ
画像投稿する(チェックを入れて送信を押すと画像投稿用のフォーム付きで記事が呼び出されます、投稿にはなりませんので注意)
文字色が選べます   パスワード必須!
     
  cookieを許可(名前、メール、パスワード:30日有効)

記事機能メニュー

記事の修正・削除および続編の投稿ができます
対象記事番号(記事番号0で親記事対象になります、続編投稿の場合不要)
 パスワード
    

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!