「それじゃあ、まず、あなた達の宝具について教えてもらえるかしら?まさか、クロノだけって事はないんでしょ?教えて頂戴。」
自己紹介が終わり、落ち着くと凛はこれからの聖杯戦争にそなえ、これからの戦略を立てる為にもまず、クロノとロゼットの実力を把握して置くことにし、質問した。ロゼットはそれに答える。
「ええ、いいわ。まず、私は銃を2つ装備している。一つは宝具、一つは宝具外の武器。弾丸数はどちらも魔力が尽きない限り無限よ。後、両方とも悪魔や死徒、反英霊など悪や魔の属性を持つ者には効力がアップするわ。ここまではいい?」
ロゼットの問いかけに凛が頷く。それを見てロゼットは話を続けた。
「それから十字架を使って爆発と防御の二つの結界がはれる。これは宝具の扱いには入ってないけど重ね掛けもできるし、それなりに使える武具ね。そして、これがある意味一番重要な宝具、“命の時計”よ。これはクロノと対になる宝具で使う事でクロノの真の力を引き出せるわ。」
命の時計を見せて言うロゼット。凛は真の力という所を問い返してきた。
「真の力?」
凛の言葉にロゼットは険しい表情になって答える。
「ええ。クロノは悪魔の力の源、ホーンを持っていない。これは英霊として呼び出された時のみしか使えないの。けど、その代わりこの時計を通してあるものを代価としてその真の力を開放できる。」
「あるものっていうと・・・・・やっぱり魂かしらね?」
古来より悪魔との契約に魂を・・・・というのはセオリーである。凛は特に動じた様子もなくそう口にする。ロゼットはそれにうなずき、そしてクロノが答えた。
「そう、これはマスターである君の命、残りの寿命を喰らうわ。それもかなりの速さでね。魔力を代替にする事もできるけど、あなたほどの魔術師でも全開で飛ばせば1分はもたない。だから、これはできれば使わないで欲しい。」
「なるほどね。まあ、私としても無駄に死にたくはないし、魔術の研究をするには時間が必要だからね。最後の切り札にしとくわ。勿論、いざって時は迷わないけど。」
そう、強い意志を込めて凛は答えた。
「むにゅうう。ぎゅうにゅう。」
「なんていうか、凄いね。」
「そうね、ギャップのある娘だわ。」
クロノとロゼットは早朝、寝起きの凛を見て呆れた表情で見ている。なんというか、そのまま溶けていきそうな感じだ。
「もう、しゃっきりしなさいよ。」
そんな凛を見て紅茶と牛乳、軽めの朝食を用意するロゼット、そして3人で朝食を取ることにした。
「そういえば、あなた達って食事を取る必要あるの?」
朝食を取りながら目を覚ましてきたらしい凛がそう尋ねる。それにたいしてロゼットが少し困った顔をして答えた。
「う〜ん、食べなきゃ死んじゃうって訳じゃないんだけど、そうする事で魔力の消耗を抑えられるし、せっかく現界してるんだから、食事くらい楽しみたいと思うんだけどだめかな?」
「別にいいわ、そのくらい。けど、それより魔力の消耗を抑える・・・・ってもしかして魔力の供給量が足りないの?」
凛は一流の魔術師で魔力量も多い。だが、サーヴァントは規格外な存在なのでそれでも足りないのではないかと心配になって尋ねる。だが、ロゼットとクロノの二人は首を振った、
「ああ、それは大丈夫。供給は十分よ。けど、少しでも温存しておけるならそれにこした事はないでしょ?」
「まあ、そうね。それならいいわ。食事位は自由にしてもらってかまわない。その代わりその分の働きたっぷり見せといてもらうわよ。」
「それは、任せといて!」
自信満々に頷くロゼット、そこで、凛は思い出したようにクロノの方に視線を向けて言う。
「そういえば、昨日は忘れてたけどクロノの呼び方考えて置かないとね。」
「え?僕の?」
「どうして?クロノはクロノでいいじゃない。」
突然の凛の言葉に二人は不思議そうな顔をする。それを見て凛は小さな溜息をついた。
「英霊が真名を明かしたら不利でしょうが。まあ、クロノは宝具だけど、この場合は同じ事よ。シスターとクロノは決して知名度が高いって訳じゃないけど、それでも知っている者がいてもおかしくない。命の時計何かはその性質を知ればかなり対抗策がたてやすい代物よ。二人の真名を知られる可能性は少しでも低くしなきゃ。」
その言葉に二人はあっという顔になる。そして3人でクロノの通称を考える事になった。
クロノの通称、最初に案がでたのは、デーモン(悪魔)、だが、悪魔という事、事態弱点を暴露してしまっているので没。次にでたのは彼が魔術を使える事ができるという特性を利用してキャスター。上手くいけば相手に不必要な警戒を抱かせる事ができるが、本物が出てきた時ややこしくなるという事でそれも没。そして、最後に出た案、“パートナー”が採用された。
「さて、そろそろ学校の時間ね。」
「ちょっと、待って!!学校に行くつもりなの!?」
クロノの呼び方が決まって、一息ついたところで学校に行こうと言い出す凛にクロノが慌てる。
「そうよ、あなたが言いたい事はわかるわ。危険だって言いたいんでしょ?けど、私は普段と生活を変えるつもりは無いわ。それに魔術師が学校みたいな場所で襲撃をしかけてくる訳は無いわ。」
そう、自信を持って答える凛。だが、ロゼットは険しい表情になって言う。
「凛、まだ会って一日しか立っていないけどあなたが魔術士として一流なのはわかるわ。けど、戦士としてはあまりに経験不足よ。実戦では予想外の事態なんていくらでも起こる。常識なんて通用しないのよ。」
「わかってるわよ。けど、そんなものを恐れていたら何もできないでしょ。」
ロゼットの忠告に対し、凛はそれほど気にしてはいないように見える。それを見てロゼットは怒った。
「わかってないわ!!戦場では“そんなもの”を恐れる位に慎重じゃなきゃいけないの!!常に脅えていろとは言わないけど、無慮な行動は自分だけじゃなく周りも巻き込むわ!!それとも、あなたは無関係な人間がいくら被害に合おうとも気にしないタイプ!?だとしたら、悪いけど昨日の誓いは撤回させてもらうわ!!そんなマスターの為に私達は戦えない。例え、令呪を使われたとしてもね!!」
その言葉に今度は凛が表情を険しくする。
「その言葉は私に対する侮辱よ。そんな結果を私は好まない。そして私自身の誇りとこの冬木の街の管理者としてそんな真似は許さないわ。それから、あなたの言葉はちゃんと受け止めさせて置くわ、安心して。」
そう言った、凛に対し、ロゼットは表情を緩める。
「そう、ごめんなさい。ちょっと言い過ぎたわ。あなたの為に戦う事、改めて誓うわね。」
「勿論、僕もね。」
そんな二人を見て凛は満足そうな表情を浮かべ、二人もほっとした表情になる。だが、次の言葉で再び場の空気が変わった。
「けど、学校へは行くわよ。」
「なっ!?ちょっとあんた!!話聞いて・・・・・」
凛の言葉を聞いて再び怒り出しそうになるロゼット。しかし、凛は平然としたままそれを止める。
「話は最後まで聞きなさい。戦場では常識が通用しないって言葉を聞いてほんの少しだけもしかしたらって思ったんだけどうちの学校に聖杯戦争のマスターがもしかしたら、いるかもしれないのよ。」
「「えっ!?」」
その言葉に驚く二人。凛の話の続きを待つ。
「万が一の可能性なんだけどね。魔術士の家系なんだけど魔術回路を持たない奴と、それから・・・・・・・魔術の才能は持っているだろうけど魔術を知らない子がいるのよ・・・・。」
凛は二人の人物を上げ、前者の人物について語る時には嫌悪感を後者の人物について語る時には暗い感じを表情に僅かに見せた。
「まあ、ありえないとは思うけど、一応2、3日は様子を見て置こうと思ってね。特に“魔術回路を持たない魔術師の家系の男”がマスターだった場合、結構やばいことしでかしそうだから。」
「そうね。今までノーマークだったんたらなおさら警戒して置いた方がいいかもしれないわ。」
凛の意見にロゼットが頷く。そこでクロノが意見をだした
「わかった、それじゃあ、僕達は霊体化してついていくよ。」
「霊体化?そんな事できるの?」
「ええ、クロノは私の宝具の扱いだから私が消えたり、あるいは消そうとすれば消えるし、私はあなたから供給される魔力で実体化している訳だから。魔術の供給をカットして見て。」
言われて凛が魔力をカットすると二人の姿まで気配まで消える。
「えっ!?」
その事に僅かに驚く凛、そこに虚空から声が投げかけられる。
『これで、僕達は他の人に気づかれることなく君の直ぐ傍で護衛ができるし、魔力の消耗も抑えられる。もし、危険が迫ったらその時は直ぐに僕達を実体化して。ただし、気をつけて、サーヴァントにはその気配を気取られてしまうから。』
「へー、便利なのね。あれ?ちょっと待ちなさい!!それじゃあ、あんた達ご飯なんか食べる必要ないで・・・」
『まあ、それはそれよ!!さ、それよりも学校!!行くならいきましょう!!』
凛の言葉を遮るロゼット。凛もまあいいか、と追求をやめた。そして3人は学校へ向かいたどり着いた。そして、そこには“まさか”の懸念が当たり結界が張ってあった。それもすこぶる太刀の悪いものが。
(後書き)
ちょっとロゼットの性格が違いますかね?最終回位までの経験を積んだロゼットならこの位は言うかな?っと思うんですけど。でも、ドジなとこは変わっていなかったり・・・・。それにしてもクロノが影薄いなあ・・・。
PS.後、宝具が多すぎるという指摘が多かったのでセイクリッドと十字架は宝具ではなくそれ以外の範疇の武器という事にしました。
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