注意:本作品にはTS要素が含まれています、注意してください
第2話「忠夫と忠代」
「あぁ、私は『横島』あんたの平行世界の同一人物だよ」
その言葉にピシリと石化する横島、というか忠夫、どうやら思考が追いつかなかったらしい
その様子を見て『あー、やっぱりなー』と予め予期していたかのような表情を見せる。
たっぷり5分ほど経ち――その間に横島(女)はラーメンを平らげていた――復活すると
あらん限りの声で叫びだしはじめた。
「う、嘘やー!?、俺が俺がこんな美人のはずないやないかー!!つまり俺ってことは飛び掛っても
結局は俺自身で!、この場合飛び掛ったら自分に飛び掛るという事で!背徳的な感じをこさえつつ
総合的に考えてまったくの無意味だという事やないかーー!?、はっ?待て!?つまり目の前の美女は俺!!
ということは!?飛び掛っても法律上ありということだな!よしっもう一人の俺今こそインモラル溢れる愛の園へーー!!」
「いいたい事はそれだけかー!!」
ボディーブローが決まりボールのように跳ね飛ばされる横島、最後は壁に激突しめり込んだ、それでも生きているのは
横島(女)の加減のおかげなのか、それとも彼の不死身属性なのか…。
いい加減その身体構造がどうなっているのか調べたくなるがおそらくギャグ補正というやつなのだろう、素晴らしきかなギャグ補正。
「あー、死ぬかと思った」
いつもどおり一瞬で復活しお決まりのセリフを放つ忠夫。
相も変わらず呆れた生命力である、すでに神族や魔族の回復スピードを大幅に超えているのではないだろうか。
「さて、このまま下らない事してたら明日のお日様拝んじゃうし、きりきり巻いて説明するから大人しくしてろよ?」
「へーい(こいつは本当に俺なんかー!?俺と性格がまったく違うやないかー!?、あれか並行世界の俺は真面目なんかー!?)」
二人とも座り(横島(女)は1つしかない座布団の上に座りながら)何故彼女がここにいるのか話し始めた。
彼女の名前は『横島忠代』忠夫と同じく平行世界で美神所霊事務所でアルバイトをしていたらしい
使える霊能力は忠夫とまったく同じで『サイキック・ソーサー』『栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)』そして『文珠』
文珠の並列使用は忠夫と同じで最大2つまで連結可能らしい、2文字分入れられる文珠は使用不可能らしい
つまり話を聞く限り霊的戦闘力は忠夫とほぼ同じという事だ。
次にあちら側の歴史、どうやら、細かい差異はあれどほぼ同じ歴史を似たようなタイミングで経過してきたらしい
天竜事件やハーピー事件、原始風水盤事件、フェンリル事件など、ほぼ何もかも同じとのこと
ムカついた部分といえばワンダーホーゲル部がこちらと違って美人だということと、百合だということだ
それを話した途端「なんでやー!!なんでそのワンダーホーゲルがこっちにおらへんかったんやー!!
そんな不毛な愛は俺の愛で打ち消してやるのにーーーー!!」と壁に血が出るまで
頭突きをしていた、けろっと治るのが忠夫らしいというかなんというか…。
閑話休題
そして、何故忠代がこちらの世界に飛んできてしまったかというと、少しというか多分に呆れる理由からだった。
いつものように美神(その世界では男性である)に対し覗きを敢行した所、一発でばれてしまい流石にキレた美神が
『今日という今日は本気でお仕置きが必要だなぁ…忠代ちゃ~~ん』と笑顔でお仕置きしようとしたため
あまりの恐怖に我を忘れて文珠を2つ同時に展開『転』『移』と発動して逃げようとしたが、制御に失敗したらしい
時空の狭間に飛ばされたがすぐ出口を見つけて飛び出したところ、この世界に来てしまったとのことだった。
「つまりだ…忠代がこの世界に来た訳は、何か大事な用があったわけでもなく、覗きがばれてキレた美神さんの折檻から逃げるために
文珠を使用したら、転移に失敗して此処に飛ばされてきたという訳だな」
「ぶっちゃければそうなる…」
「……」
「……えへっ」
ひゅるるるるるる……
隙間風が二人の間を通り過ぎた。
この時期は少し寒かった、そろそろおでんが欲しくなる時期だろう。
「あんた行動パターンが俺と大してかわらんやんけー!!」
「堪忍してー!!仕方なかったのよー!!美神さんの折檻は肉体的っつーか精神的にやばいのよー!!
立ち直れなくなるわーー!!!」
先程までのまるで大人のような態度から一変、何処からどう見てもこいつは自分だなー
と感じられずにはいられないくらい錯乱している忠代を見て逆に落ち着いてきた忠夫、一方で忠代は
何かしらのトラウマに触れたのか「美神さん堪忍や…やめて…その羽はやめてー!!キー君笑ってないで助けてー!!」
と叫び続けている、よほどつらい事があったのだろう、平行世界の自分を見てほんの少し涙が零れた。
暫くして復活した忠代にこれからどうするのか相談を始める。
「で、これからどうすんだ?」
「んー、戻ろうにもどうやって戻ればいいかわからないから後で妙神山にでも行こうと思う
まぁ、来る事ができたんだし戻る事もできると思うからあんまりやばいなーとは感じてないけどね」
「後でって?明日一番に行けばいいんじゃないのか?」
「あー、あれだよあれ、せっかく違う世界に来たんだし、少しはこっちの世界も知っておきたいじゃない」
「そんなもんなのか?」
「そんなもんよ」
そういって軽く笑う忠代、結構何も考えていないようだ、まぁその辺が横島らしいといえばらしいのだが。
「まぁ、明日当たり美神さんの所行こう、こっちの美神さんも見てみたいし、此処じゃお前が危険だし」
「ほっとけっ!」
そっぽ向く忠夫、その仕草が少し可愛くて苦笑してしまう。
「しっかし、ほとんど同じ歴史を歩んどるなー、これも美神さんが言ってた宇宙意思ってやつなのか?」
「そこまでは知らないよ、まぁこういうこともあるんだなー程度に考えてればいいんじゃないの?」
「とりあえず、忠代の言うように明日一番に美神さんに話しておくか、これからの事について一応話さないといかんし
あぁ、後、流石に襲わんから安心しろ」
「私は自分のことが一番信じられん、だからお前の言い分も信じん!!」
ばっさり言い捨てる忠代、確かに先程までのことを考えれば信じろというほうが無理だが。
「ひでぇ!?こう見えても俺は『清廉潔白いい人忠ちゃん』で通ってるのに!!」
初耳である。
「清廉潔白でいい人が、いきなり飛び掛るかぁ!!」
「美人に飛び掛るのは男して当たり前では!?」
「んなわけあるかい!!」
ハンズ・オブ・グローリーをハリセンに変形させてどつき回す、見ている限り仲の良い夫婦漫才のようだ
ただ、威力はそれなりに高いのかドクドクと流血していたりするが…。
「やれやれ…まぁ、寝る前に簀巻きにするか文珠で結界張ってれば問題ないか」
「うぅ、そこまで信じてもらえないのは悲しいが、ほぼ自分のせいだから何もいえない」
そうやって暫く下らない会話をしながら改めて夕食をとる忠夫、忠代も足りなかったのか
新しいカップ麺に手をつけ始めている、暫くはラーメンをすする音だけがこの狭い部屋に流れ続けていた。
食べ終わり一頻り休んだあと、忠代は布団を敷く用意を始める、ちなみに縄を用意して忠夫を縛る用意
も忘れては居ない、そんな忠代の様子をぼーっとした表情で見ていた忠夫は、一番聞きたかった事を話し始めた。
「なぁ、忠代、大事な話があるんだが聞いて言いか?」
急にシリアスな表情をして問いかける忠夫、それはいつも見せるようなアホな表情ではなく
何か悲しいものを感じさせる表情だった、忠代も忠夫が何を聞きたいか大体理解していた、此処に来て
自分と同じ歴史を歩んできた忠代、彼が何を言いたいのかすでにわかっていたから。
できれば話したくなかっただから適当に馬鹿なことをやってやり過ごそうとしていたのだが
忠夫にこんな表情をされては無視するわけにもいかず、忠夫の前に座り話を聞く事にした。
「何だ…?」
「お前の世界にも……ルシオラはいたのか?」
「っ……」
忠夫が生まれて初めて心から愛した魔族の少女、自分の創造主を裏切ってまで忠夫の為に尽くしてくれた最愛の人
不甲斐ない自分の為に命まで譲ってくれた彼女に忠夫は何も出来なかった事で心に深い傷を負っていた、今は努めて
いつも通りに振舞ってはいるが完全に乗り越えたと言うわけでもない、だから知りたかった、自分と同じ存在の忠代が
ルシオラと出会ったのか、そしてこの辛い現実を乗り越えられたのか、どうしても知りたかった。
黙っていた忠代だが、ぽつりと呟き始める
「あぁ……名前は違うけどね…こっちでは『ルシオ』って名前だった、蛍の化身だったよ機械を弄るのが好きだった」
「そう…か、名前以外はルシオラと同じみたいだな」
忠代は思いを馳せる、初めはペットとして連れて行かれた、そこで体験したのは、敵なのに暖かなあの3兄弟。
『昼と夜の一瞬の隙間…だからこそ余計に綺麗なのかもな…』そう問いかけたられた時の寂しげな表情。
敵との交戦中に、放り出されそうになったのを助けたときに見せたあの驚いた表情。
――――二人は互いに惹かれあい――――
『アシュタロスは私が倒すわ!!』
『馬鹿だな…嫌な訳無いだろ――全然』
『何で…何で私がやらなくちゃいけないんですか!』
『約束したじゃないか、アシュ様を倒すって』
『どうせ後悔するなら―――あんたがくたばってからよ!!アシュタロス――!!』
『魔族に生まれ変わりは別れじゃないんだ』
――――そして一生で一度の悲しい恋をした――――
世界と彼を天秤に賭け、忠代は世界を選んだ、世界は確かに救われたけど結局彼は救われなかった。
美神達があの後も自分を何時も通りに扱ってくれなければ多分自分は壊れていたかもしれない。
乗り越えたといえば嘘になる、引き摺っていないと言えばそれも嘘だ、けれど皆がいてくれるから
自分はいつものままで居られたのだと思う。
「忠夫は後悔してる?その、ルシオラと出合った事」
「後悔なんかしてないさ、あれは俺にとって一番幸せな時間だったからな」
「私も同じよ、ルシオに出会えてよかった、だから今は凄い幸せなんだと思ってるし」
生きている以上悲しい事が無いなんてことは無い、でも乗り越えていくことが出来るのは
きっと幸せな事なのだと思う、きっと忠代も少しずつ乗り越えて行っているのだろう、ならば自分も
乗り越えていこう、他ならぬ自分と同一の存在である忠代が乗り越えて行ったこと、ならば自分に出来ない通りは無いから。
「悪かったな、思い出させちまって」
「いいよ、忠夫が言わなければ私が聞いてたかもだしな」
「ったく、似合わねぇな俺がマジな事言うなんて」
「まったくだ、私達はいつも馬鹿やってるほうが似合ってる」
二人して笑い出す、一頻り笑い終わった後お互いの顔を覗き始める
「いや、しかし」
「何よ?」
「見れば見るほど似てねぇなと思って」
「まぁ、全部が全部似てるわけじゃないんじゃないの?性格はそっくり見たいだけど」
「忠代はどちらかというとお袋に染まってる気がするがな」
「そういう忠夫は親父そっくりだ、モテはしないだろうけど」
「げふぅ!?」
忠夫の心臓に矢が数本高速で突き刺さった。
そのまま蹲り、「ちくしょー!男はやはり顔か!?顔なのかー!?」と辺りを転げまわる
そのあまりの哀れさに、すこし言い過ぎたかなーと思った忠代だが、良く考えれば自分もモテるほうではないので(誤解している)
あぁ、はたから見た自分はきっとこんな感じなんだなーとちょっと大き目の汗を流した。
――続く
――おまけ――
「そういや、もう一つ聞きたい事があるんだが…?」
「ん?いいけど?」
「聞いた限りだと全員性別が違うんだよな、ま、まさか…小竜姫様とかワルキューレとか猿ジジィも性別が!?」
「いや、小竜姫様たちはあっちでも女性だよ。何でも中級神族や上級神族はそこん所変わらないらしい
ってか猿ジジィが女性だったら西遊記がめちゃくちゃ嫌じゃない?」
「まったくだ…ん?まてよという事は下級神族は反転してるのか!?イームとヤームみたいなのは美女だったか!?」
「いや、そこでそんなマイナーなやつの名前言われても、とりあえず、顔は竜だったと言って置く」
「なんでやぁぁぁ!!其処は美人の竜神になってしかるべきやないかああああ!!」
「そんなん、どうでもええやんけ!どのみち忠夫はあっちの世界に行く必要ないんだから!!」
「ま、まぁそうなんだが………まて、大事な話がある」
「な、なんや…!?(急にシリアスな顔にすな!?吃驚するやんけ!!)」
「お袋と親父は…やはり変わってるのか?」
停止時間たっぷり10秒。
「な、名前は?」
「お袋が百合子で、親父が大樹だ」
「それ…本当か?」
「あぁ…」
「私ん所も同じだ…お袋は恐怖の象徴だし、親父はいつもセクハラしてお袋に殴られとる」
冷たい風が通り過ぎる
「何で行動パターンも性別も変わってないんだ…?」
「そんなん、私に言われても…」
更に謎が深まる横島夫妻であった。
――おまけ2――
「所で、忠代の時給っていくらくらいだった?まさか俺と同じ255円ってことは…」
「にひゃ!?………あんた良くそれで生きてこれたわね、流石に私でもちょっと多かったけど」
「お、俺の癖になまいきなーーー!?いくらだったんじゃー!?」
「え、ええっと、600円なんだけど」
「それでも、最低賃金割り込んでるんだな」
「言わないで…悲しくなるから」
後書き
動きが遅いですね、申し訳ないです、もう少し文章力があれば進められるのですが
次回は漸く美神さん達に会いに行きます、さて、どうやって忠代を動かそうか、どうやって美神さんに会わせようか
それが今からどきどきでわくわくです
レス返し
■Tシロー様
確かに、GMの血を多く引いてそうですね…それ以上に大樹の血も
多く引き継いでいたりしますが…(汗
文珠の件ありがとうございます、おそらく指摘がなければ
気づくまでこうしていた可能性が…(汗
■シル=D様
>なんか平行世界横島精神的に大人だな
いえ、実は大して忠夫を変わらなかったりします
■闇の皇子様
忠代に決まりました、この後どうなるかはまだ未定です
■通りすがり六世様
大樹…どうなるんでしょう、まだ考えてなかったりします
あ、でも出てくる予定です!
■死貴様
あちらはほぼ全員の性別が反転している世界でした
雪乃丞ももちろん女性だったりします!!(だからなんだと言う突っ込みは
無しの方向でお願いします(泣)
■謎の横島ファン様
>貴方、横島が平行世界も知らない馬鹿だと思ってるの?
横島君を馬鹿にしないで
大変申し訳ありませんでした、話をギャグのほうに構成するために
態とこのように動いてもらいました、不快な点があったことを
心から謝罪させていただきます
■??様
内容は薄いかもしれませんが、頑張って書き続けていこうと思います
■アークヒーポフ様
此方の忠代は男好きでした、どれくらい男好きなのかというと
忠夫君を例に挙げるといいかもです
■追記
魏四里様の指摘により母親の名前を修正しました
うぅ、大変申し訳ありません、まさかこんな寒いミスを…(泣