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「変わる人々、変わらない人々 その2(GS) 」

リト (2008-06-01 18:03/2008-06-15 03:06)
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私だって努力はしたのよ?


ルシオラを失った彼が、どんなに辛かったか。
私の腕の中で泣き叫んだ彼が、どれほど傷ついたか。
彼一人に全て負わせてしまった。私も彼と同じ気持ちで悲しみたかったけれど、私はママが生きてたし、妹も生まれたし、なんか逆に申し訳ない気持ちになったの。

だから、私はルシオラが彼の子供として転生してくる可能性を思いついた。
まだ彼女の魂は天に召されたわけじゃない。
彼の気持ちを少しでも楽にしたかった。
ハッピーエンドなんかにならないことはわかってるけど、それしか方法がないのよ、仕方ないの。仕方ないで済ませられないかもしれないけど、納得するしかなかったのよ。


そして彼も、納得はしてくれた…ように見えた。


でも、次の日から普通に振舞っている横島クンは、痛々しくて逆に見ていられなかった。
もうちょっと甘えても良かったのよ?恋人が死んで次の日からいつものようにふるまう人なんかいないわよ。
私たちに気を使っているのかしら、と思ったわ。横島クン、バカのくせに変に優しいから。

最初のうちは私たちも、そんな彼の気持ちを尊重しようとこちらもいつものように振舞うように努力した。
でも、それも最初のうち。疲れるのよね、こっちも。
そのうち段々私たちと横島クンの雰囲気がおかしくなってきて。
そういえば最近あいつ、私にセクハラすらしなくなったわ。そりゃなきゃないほうがいいんだろうけど…なんか調子狂う。
これじゃいけないと思って、さんざん悩んだけど、体を張ってみることにした。
横島クンが廊下を通るのを予測して、物陰からバスタオル一枚で彼の前に飛び出てみた。
さあ、私に飛びついてきなさい。
そして私がいつものようにアンタを叩きのめす。
それで元通りよ。いつもの私たちに戻れるわ。
そう思って、身構えてたら。

「あ…すみません」

あわてて踵を返して向こうへ行ってしまった。
なによこれ。体を張った私の立場は?この私がここまでしてやったのに、これじゃ単なるバカみたいじゃない。
…この日から、本当に私と彼の関係は壊れて行った。

でも落ち着いて考えると良かったかもしれない。
だって、万が一…万が一、私とあいつがどうこうなったら。
私がルシオラの生まれ変わりを産むことになるかもしれない。
冗談じゃない。どこの世界に、夫の元恋人を好き好んで産む女がいるって言うの?
1000年前の約束なんて、今の私には関係ないわ。
確かに横島クンを意識はしてた。それは認めるわ。いえ、むしろ、彼との関係がこうやっておかしくなったからこそ認められるのよね。
まだ、意識してたら逆に認められなかった。つまり、いまの私は、もう…

離れてみると、結構意識してたのかなと思う。
色んなことに嫉妬してきたし、ルシオラとのことにショックも受けたし。
でも、人間の心って簡単に変わるのね。
今はもう、横島クンのことを思っても、なんとも思わないの。
むしろ…


邪魔、かな。
視界に入れるのも段々鬱陶しくなってきた。
酷い女だと自分でも思うけど、もう心がざわざわしてしょうがない。

仕事が終わったら、早く帰るように促すようにした。帰りにわざわざアパートまで送ってまで。
――あいつが事務所にいつまでもたむろしないように。

給料を上げて、あいつが自分で食事ができるようにした。
――私たちと一緒に、食事をしないように。

前だったらおキヌちゃんが何か言ってきたかもしれないけど、何も言わない。むしろおキヌちゃんもそれで良いような感じ。
良かった、私だけが悪者のような気持ちになってたから。
ううん違うわ、悪いのは彼。私やおキヌちゃんを自分から遠ざけるようなことしたんだもの、自業自得よ。うん。
人口幽霊壱号に何回か諭されたけど、オーナーは私よ?私のやり方に口を出さないでと黙らせる。


この頃になると、気を使うのにもほんとに疲れてきて、そろそろ自分からやめてくれないかなあと思うようになってきた。
私からクビを言い渡せば簡単なんだけど、そしたらほんとに私が悪者じゃない?ママに突っ込まれるかもしれないし。
横島クンだってこんな状態は辛いはずよ。私だってこんなことしたくない。
こうなっちゃったら、お互いのために、離れたほうがいいことだってあるのよ。いったん距離を置けば、もしかしたらまた戻れるかもしれないじゃない。私とパパのように。
それなのに、彼はまだやめると言ってこない。

しょうがない。
自分に嫌悪を感じながらも、自主退職に追い込む手段その1、「くだらない仕事を押し付ける」を実行することにした。10万円程度の仕事をいくつか引き受けて。
彼が来る時間に事務所にいないようにして。
人口幽霊壱号に言伝を頼んで。
ああ、私ってクソ女だけど、薄々は自覚してたけど、ここまで堕ちたか。
お願いよ横島クン。自分からやめるって言って。退職金ははずむから。私もこんな自分が嫌で嫌でしょうがない。これ以上苦しめないで。
自分が酷いのはわかってる。でもね、正直、もうあんたの顔も見たくないの。
おキヌちゃんだってそうよ。このところあんたの顔見るとほんとに嫌そうな顔してるのよ。それですぐに奥に引っ込んでるわ。
ある意味私よりわかりやすい。

それでも、横島クンはまだ、やめると言ってこなかった。
明日、彼は高校を卒業するから、それに合わせてやめるのかもしれないけど…もし、まだここに居座るつもりだとしたら?
マジで勘弁してよ…。もうこうなったら形振りかまってらんないわ。
自主退職に追い込む手段その2。
「仕事を与えない」
これはもうどうしようもないでしょ。だってお金が稼げないもの。
やめるしかないでしょ?

そして横島クンの卒業式、私たちが事務所に帰ると、人口幽霊壱号から彼がやめるという事を聞いた。
はぁーっと息をつく。やっと、これで気分が楽になれるわ。
おキヌちゃんも、少々複雑そうな表情ながらも、「やっと、ですね」と笑いかけてくる。
「ひどいわよね、私たち」
「でも、しょうがないです。これがお互いのためなんですもの」
「私たちのことなんて、忘れてくれたほうがいいわよね」
「そう、ですね…。私も横島さんのこと、忘れるようにします」
「私もそうするわ。退職金も払わずにすんだし…ハッピーエンドってことにしましょ?」

シロには、うまく説明するとして。タマモには気を使うことはないしね。
大丈夫よ、彼女たちも結局女だし、きっとうまくやっていけるわ。

彼と会って、たくさんいろんなことがあったわ。
何回もセクハラされて、
何回もバカやって、
何回も助けてくれて、
何回も一緒に戦って、

最後はこんなことになっちゃったけど。
今度こそ、私たちみたいな酷い女じゃなくて、素敵な女性と巡り逢えるように祈っておいてあげる。
またこんな目に会いたくないなら、ルシオラのことは内緒にしておきなさいよ?

でも、時間がたつと色々、忘れちゃうのも人間なのよね。
彼への申し訳ない気持ちも、きっとすぐに忘れちゃうんだろうなぁ。
私のことだから。

だから、今のうちに言っておくわ。


ごめんね、さよなら、横島クン。


―――――――――――――――――――――――――続く


どうも、リトです。
またいろいろ後味の悪い感じになってしまいましたが。
美神も元の関係を取り戻そうと一生懸命だったんです。
でも、・・・という話でした。
一度嫌になると、ほんとにどうしようもなく嫌悪を感じてしまい、無意識にですら避けてしまうようになったりすることがあります。
美神とおキヌにとって横島はそこまで嫌悪する対象になってしまった、という話です。
次回ですが、おキヌ編を書こうか、その後の横島で終わらすか迷っています。その後の横島は絶対に最終回ですので、おキヌ編を入れるか入れないかだけの話なのですが。
あっても短いでしょうし、正直、美神より後味悪いかもです。
それでは今回はこの辺りにて失礼いたします。


コメント返しです
>いしゅたる様
ご意見真摯に受け止めます。
が、あくまで二次創作という立場上、どうしても原作とは変わる部分があるのは仕方ないと思います。
おキヌが特定の誰かを嫌うことはない、ということですが、「地上より永遠に」の時点では、この話の中でも横島のことは大事に思っています。
ここから、横島が卒業するまでの一年半の時間をかけて変わっていくと言う設定ですので。
この話のコンセプトは「人間は変わる生き物」「絶対などない」ということですので、人間になった以上、おキヌちゃんも例外ではない、ということですのでご理解いただきたいと思います。

>オルテンシア様
コメントありがとうございます。
おキヌちゃんと美神さんは確かにこれは同意する相手がいたから、横島君への嫌悪の気持もより早く大きくなっていってしまったのかもしれませんね。
シロとタマモに関しては後の話で触れると思います。


>海雲様
コメントありがとうございます
おキヌちゃんの話、やはりちょっとベクトル的には美神さんより怖くなってしまうみたいです。

>Sig様
コメントありがとうございます
美神事務所の仲の良い三人の関係が好きな方にはきついとおもいますが、これも一つのIFということで読んでいただけたらと思います。

>ryu様
コメントありがとうございます
今回の話はあくまで人間視点なので、妖狐であるタマモ編はありません。
が、第4話は事務所以外の人間の視点ですので読んでいただけると嬉しいです。

>コウ様
コメントありがとうございます
シロ編は上記の理由で書きませんが、その後はこの後の話のどこかに入れます。
劇画オバQはとても切ない気持ちになりましたが、あれが現実かなぁと思いもしましたね。

>Von=Schwarzenburg様
ご意見真摯に受け止めます。
進む方向に関してはいしゅたる様へのコメントと同じく、「人間は変わるもの」というコンセプトですので、そういう話だと受け止めて頂きたいと思います。
描写不足は私の力量不足だと思います。淡々として、かつ残酷な流れを書こうとした結果なのですが、そのあたりはまだまだ修行不足ですね。
ヘイト作品ともとれるということですが、私はそのつもりは全くありません。
最終話でご理解していただけるかもと思います。


>・人・様
コメントありがとうございます
「自分は悪くない」と美神が思ってるのには今後に意味がありますので必要なことでした。
おキヌちゃんに関しては第3話を読んでいただければもう少しわかるかと。

>樹海様
コメントありがとうございます
シロとタマモに関してはこの後の話をお待ちいただければと思います(あまり濃い描写はないと思いますが)
おキヌ編はすみませんあります^^;しかしプロット上大事な話になりましたので飛ばせませんです。

>あるぷ様
コメントありがとうございます
美神の掘り下げが浅いのは…すみません、あまり掘り下げるときりがなくなりそうでしたので少々淡く書きました。でもその結果心理描写が甘くなってしまいました。おキヌ編は…蛇足にはならないように頑張りました。
第4話は当事者以外の人間の目から見たものを書きますのでまた見て頂けると嬉しいです。

>赤蛇様
コメントありがとうございます
はい、どこかほんの少し何かがあっただけで変わってしまうのが人間だと思っています。それは例え美神事務所の三人でも変わらないのだと、そういうもとで書いたお話ですのでそこを評価していただいて嬉しく思います。
おキヌ編は書いてしまいましたが、最終話に向けて重要な話となりますので、少々くどいかもしれませんが見て頂けると嬉しいです。

>あらすじキミヒコ様
コメントありがとうございます
正直、アシュ編後の横島の描写に関しては当時はもちろん、今もってなお、不自然すぎるという感想がとても多いと思います、アシュ編そのものを「ドラえもんの長編」と例える方もいますが、アシュ編はGS美神の初期から出ていたメドーサから始まった魔族編の集大成であり、あくまで本編と切り離して作られた長編ドラえもんとは違い、あくまで本編です。それなのにあれだけの思いをしたルシオラのことを本編で思い出すそぶりさえ見せないのは、椎名先生の考えとは言ってもやはり納得しないものありました。あそこの不自然さのぶれが今日のGS美神の二次創作の多さの一旦を担っているとも思います。この作品もその一つです。正直アシュ編後の「GS美神」の描写には納得していない私がいます。その点でどうしても原作とはぶれてきています。しかしこれも多数の未来の中の一つの結末として書いてるつもりです。しかしご意見大変嬉しく思いました。

>高森遊佐様
コメントありがとうございます
はい、一歩何かを間違えた結果です。
もともとGS美神の世界はギャグ要素を抜けばかなり陰湿になってしまう世界だと思います。エミの短編を見てもそういうところが伺えますので、今回はそっち方面で嫌な方向に転がってしまったと。
好きと嫌いは表裏一体とも言いますが、今回の場合、嫌いと言うよりは係り合いたくない、のほうが適当かもしれません。

>Tシロー様
コメントありがとうございます。
美神は美神なりになんとか元の鞘に収まろうと頑張ったんですけれど、そこはやはりまだ20歳の小娘ですかねえ。椎名先生によるとまだ処女だそうですし(それはあまり関係ないかな)
掘り下げが浅いのはみなさんに言われているとおりです。もう少しわかりやすく書けばよかったかなと反省しております。

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