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「変わる人々、変わらない人々 その3(GS) 」

リト (2008-06-15 01:51)
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幽霊だった時。幽霊のままじゃどうしたって横島さんとは結ばれないんだなって悲しくなったこともありました。
でも、今考えたら幽霊のままだったほうが、ずっと一緒にいられてたんでしょうね。


横島さんとの思い出。たくさんあるんですけれど。
やさしいひとでした。本当に。
感謝はしているんです。横島さんがいなければ、今私はこうして生きていないんですから。

まだ私が幽霊の時に出会って。
美神さんと私と横島さん、三人いつも一緒でした。
そのうち横島さんのことを異性として意識し始めて。なんとか横島さんのために色々したくって、
お部屋に行ってお掃除してあげたり、今の時代のお料理を覚えたのだって、横島さんに食べてほしかったから。

私が生き返ってまた美神さんのところにお世話になるようになって。
今度は人間として横島さんのそばにいられると思うと、嬉しかった。今度は、ちゃんと生身の女の子として一緒にいられるんだって。

でも、生身の体になって、今まで見えてこなかったことまで見えてくるようになって。
スケベでバカで、そんな横島さんが好きだって、ずっと思っていたけれど。
なんでだろう?いつからだろう?幽霊だった時の、純粋にそばにいたいって気持ちが、だんだん薄れて行くのが自分でもわかったんです。
ルシオラさんが横島さんの彼女になったってわかったときも、全然悲しくなかった。
美神さんはもうちょっとイライラしてたみたいだけど。
少しは嫉妬、してたかな?でも気のせいだったかもしれません。
今まで当たり前に一緒にいたお兄ちゃんを取られちゃった、その頃の、私の横島さんへの気持ちなんてその程度だったかもしれない。
それでも、横島さんが私にとって大事な人には変わりなかったんです。その時は。

ルシオラさんが横島さんを救うために亡くなって。
結局、必要な霊破片も集まらなくて、彼女は帰ってこなかった。
そして、唯一残された可能性が、横島さんの子供として転生、と言う形。
横島さんは、その可能性に賭けて、無理やり自分を納得させてたみたいでした。

でも、そこから、少しずつ、少しずつ、ぶれていったんです。
私たちと、横島さんが。
今までの横島さんらしく、もっと自分に正直に表に出しててくれたらいいのに。
なんでそう、全部自分で抱え込もうとするんでしょう。
わかってます。横島さんは優しいから。
でも、ルシオラさんのことを一言も口にしないのは、どうかと思うんです。
横島さんに世界の命運を全て預けて、何もできなかった私。せめてお話くらい、聞かせてほしい。
「横島さん、何でも話してくださいね」
そう言っても横島さんは。
「何のこと?」
まるでなかったかのように。
わかってるくせに、どうして?一人で抱え込めば、私達が何も思わないだろうと?
いつも横島さんのことを心配してるのに。してあげてるのに。
私たちにも、あの時何もできなかったって負い目があるんですよ?
それなのにそばで、一人で全部抱え込んでますって顔してたら…ちょっと、溜息つきたくなります。

美神さんも同じ考えみたいで。
このころから、少しずつ、私たちは横島さんと話したりすることが少なくなっていきました。

ある日、学校の帰り。弓さんや一文字さんに、ちょっと相談してみました。
「最近、横島さんと、ちょっとうまく行ってなくて…何かいい方法ないでしょうか?」
そうしたら思わぬ答えが返ってきた。
「前から思ってたんだけど、あいつのどこがいいんだよ?」
「私も疑問に思っていましたわ。氷室さん、付き合う男性はもっと選んだほうが良くってよ?」
「え?優しい人、だと思いますけど」
「そう?下心あるだけじゃないの?」
「氷室さんならもっと素敵な男性が出来ると思いますけど。自分を安く売っては人生後悔しますわよ?」
なんかちょっとひどいなぁと思ったけど、他の女の子から見たら、やっぱりこう見えるんだなぁ。
早苗お姉ちゃんもずいぶん横島さんのこと嫌ってたっけ。
でも、私ったら、前だったら絶対に「そんなことありません!」って否定してたのに。
弓さんたちの答えより、横島さんの弁護もしない自分に驚いちゃって。
これが今の私の気持ちなんだなあって。


一度、そういう気持ちを持ったらもう止まらなくて。
少しずつだけど確実に、私の心は自然に横島さんを拒絶して行く。
心が拒絶すれば、体も近寄りたくないって思う。横島さんが近くに来たら、無意識に離れるようになっていた。
そういえばもうこの頃は横島さんの顔を見るだけで何かつかれちゃうなぁって。
美神さんが色々してくれてるみたいで、最近は横島さんが事務所にいることもほとんどなくて。
横島さんがいないことに気が楽になる。シロには悪いけど…ちょっともう、あまり横島さんに傍に来てほしくないの。
そういえばずっとご飯も一緒に食べてないなぁ…もっとも、今、横島さんと一緒に食べても、おいしく食べられないだろうなあ。
そう思ってたら、美神さんが横島さんのお給料を上げて、自分でご飯を食べられるようにしたと後から聞いて。
さすが美神さん、わかってます。

そういえば後片づけの時、うっかり横島さんのマグカップ割っちゃったけど、もう、代わりのはいらない、ですよね?
あ、わざとじゃ、ないですよ?

そのうちほんとに横島さんが嫌で嫌でしかたなくなって。
事務所に来たとわかったら、その時点で奥に行って顔を合わせないようにしてた。
あまりあからさまにすると、横島クンが可哀そうよ、って美神さんに言われたけど。
正面から会って、無理に笑顔を作る方が、辛いと思うんです。お互いに。

「横島クン、やめてくれないかなあ」
お茶を飲んでるとき、美神さんが、ふとその言葉を口にしました。
「そうですね…」
そう返すことしか出来なかったけれど。
私も、もうそろそろ横島さんの声も聞きたくなくなってたから。
横島さんも、いつまでもここにいないでもっと早く見切りをつけてくれてたら。
そしたらお互いに、こんな嫌な思いせずに済んだかもしれないのに。ここまで横島さんのこと嫌にならなかったかもしれないのに。
空気、読んで欲しかったです。

そして、横島さんが高校を卒業した日。
やっと、横島さんがここをやめてくれました。
美神さんに、「やっと、ですね」と言葉をかける。神妙に言おうと思ってたけれど、自然に笑みが交ってしまう。
「ひどいわよね、私たち」
「でも、しょうがないです。これがお互いのためなんですもの」
「私たちのことなんて、忘れてくれたほうがいいわよね」
「そう、ですね…。私も横島さんのこと、忘れるようにします」
「私もそうするわ。退職金も払わずにすんだし…ハッピーエンドってことにしましょ?」
退職金くらいはあげたほうがいいんじゃないかなあ。
でももう終わったことだし、横島さんはもう二度とここに来ないし。

ひどいわよね、私たち。
美神さんの言葉を反芻する。ほんとにひどいですね。横島さんに、あんなこと。
でも、横島さんだって…ううん、もうやめよう。終わったことだもの。

あ、そういえば。
明日はごみの日だったわ。私も進級するし、気持ちを切り替えるためにもお部屋をお掃除しようっと。

タンスを開けて、色々いるものといらないものを分けていると、底の方から、一着の服が出てくる。
私がまだ幽霊だった頃に横島さんにもらった、あのお洋服。
生き返って初めてのクリスマスの時にも着て行ったっけ。
でも、今見ると…もう、流行からは外れている服。
人間になった今は、もう可愛い服もたくさん持ってるし、何より、横島さんからの贈り物だと思うと、二度と着る気はしないだろうな。
そうね。横島さんのこと、忘れるようにするって決めたんだもの。ちょうどいい機会だわ。
思い切って捨てちゃおうっと。
あ、でもちゃんと分別はしないといけないわね。
ボタンの糸を切りとって、ファスナーも同じようにして外して。うん。
燃えるゴミと燃えないゴミに分けて、ごみ袋に詰めて。
これでよし、っと。


次の日の朝は、とっても綺麗な青空が広がっていた。
ごみを集積所に運んで、ふうっと息をつく。
こんなに晴れ晴れとした気持ちはいつ以来かなあ…。


横島さん、今は何してますか?まだ寝ていますか?
ちゃんとご飯、食べてくださいね?
そして、これから他の女の人の前では、前のあなたのように振舞ってください。
そしたらまたきっと、あなたのこと好きになる人ができるかもしれませんから。
私はもうあなたのこと、忘れようと思います。あなたからもらった服も、捨てちゃいましたし。
私があげたマフラーも、捨てちゃってほしいと思います。

お互い、新しい道で頑張りましょう。
でもどこかで会っても、もうお互い他人でいましょうね?


ありがとうございました、さようなら、横島さん。


―――――――――――――――――――――――――続く


リトです。ちょっと間が開いてしまいました。
結局書いてしまいましたおキヌ編。
書くなら短いと言いつつ一番長くなってしまいました。
みなさんにあまり望まれなかった編ですが^^;
最終話に向けて重要な伏線になる予定ですので…。
次回は予定より1話増えて、美神事務所ではない人の視点から書くつもりです。
その次が最終話、だと思います。
では今回はこの辺りにて。

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