インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始▼レス末

!警告!壊れキャラ有り

「ラ・カンパネラ 第四章(GS)」

にょふ (2008-05-31 15:26/2008-06-14 19:01)
BACK< >NEXT


 横島がタマモを勝手に家族にした時こそ怒ったベスパだったが、ベスパもなんだかんだでタマモを可愛がっていた。

 一人は寂しかろうと、一緒の部屋に住んだり、社会勉強と称して一緒に買い物に出かけたり。その様子は、まるで姉妹の様に仲が良かった。

 そんなベスパとタマモだったが、彼女等にはある一点、人界で生活するにあたってどうしようもない懸念材料があった。
 それは―――

「そうだよな。魔族として生まれて、更にそれから一年も経ってないベスパも、転生して間もないタマモも……社会のルールと言うか、常識がないのも頷ける」

「そ、そうだよ…な?」

「そ、そうなの…よ?」

「あっはっはっはっ! そりゃ仕方ない……って言うと思ってんのかー!!」


      GS美神極楽大作戦!! 〜ラ・カンパネラ〜


          第四章 〜メノ・ヴィヴオ〜


「だ、だって仕方ないだろ?! 社会のルールってなにさっ! 私は魔族なんだし、そういったルールとかに縛られるのは好きじゃないんだ!」
「そ、そうよっ! 私だって金毛白面九尾の妖狐だしっ! 社会のルールとかそんな小難しい事、勉強する必要なんてなかったもん!」
「それがもたらした現状を見て、まだそんな事が言えるのか? ぁぁ?!」
 横島は現状を鑑みる。
 ベスパとタマモの部屋――横島が貰ったマンションの一室。部屋番号で言えば102号室。位置的に言えば横島の隣の部屋でもある。
 その部屋から、とんでもない爆発音が聞こえたので、横島は飛び出してその部屋に飛び込んだ。神魔の中には横島を快く思わない過激派も居るし、タマモの事を処分しようとしていた頭の固い政府高官も、完全に居なくなった訳でもない。
 そんな事が脳裏に浮かんだ横島は、半ば正気すら失いかけながらも、必死になって駆けつけたのだが。

「ヨコシマに、何か作ろうと雑誌で見た、出汁巻きタマゴと言うヤツを作ろうと思って、タマモと相談したんだが…」
「私も料理とか知らなくて…」
「それでタマゴをレンジでチンしたら、爆発したと…」
 魔族の襲撃でもなければ、タマモを狙った政府上層部の神経質な行動でもなく――単純に料理を失敗して、レンジが大爆発を起こしただけだった。
 ちなみに、何故タマゴだったのかは、ベスパの主食がタマゴの為である。更に、何故調理をしないかと言うと、生卵で飲むのが一番楽だからと言うラフな理由である。ついでにタマモの主食はゴンベエと言う、キツネうどんのインスタント食品である。これまたお湯を注ぐだけなので、タマモも調理の仕方が知らなかった。

「なんて基本的な萌え……じゃない、ボケをしてくれてんだよ…」
 ちょっと本音が漏れている横島だったが、それは仕方が無い事。なにせベスパとタマモは、朝故に、可愛らしいパジャマの上にエプロンを付けていた。更に、自分の為に料理をしてくれると言う、萌えポイントも加算して、その萌え度は計り知れない。
 閑話休題。

 そこまでなら普通……否、普通よりかなり萌える程度なのだが、先にも述べた通りに、二人には常識がない、それも壊滅的なまでに常識がない。
 料理をする時にエプロンを着ると言う事は知っていても、その料理をどうやってするかまでは知らなかった。
 そして基本的な常識の欠如がもたらした結末が、マンション備え付けの調理器具である電子レンジの大爆発……そんな、萌えてしまう様な行動をとってしまった二人を見た横島が、その根源とも言うべき煩悩を抑えたきった事は賞賛に値する……多分。

「「ごめん(なさい)」」
「……まぁ、二人が無事ならいいんだが…」
 純粋に二人を心配した結果、何事もなかったので胸を撫で下ろしたいのだが、この部屋の清掃・修繕費の事を考えると、横島もマンションのオーナーなので、少し頭が痛かったりするが、それでもやはり、二人の無事は何事にも代え難い。
 大事な家族の安全こそが、今の横島にとって一番大切で、一番身近な幸せなのだから。

「ありがとう兄様!」
 タマモが横島の事を兄様と呼ぶのに、特に理由はない。
 自分も横島となったので、横島の事を横島と呼ぶには憚りがあったのと、見た目と精神年齢が横島よりも年下であるタマモが、横島の事を忠夫と呼ぶにも些かの違和感があったので、兄と呼ぶ様にした。
 更に、タマモの常識自体が古いので、兄の事は敬うべき存在だと認識している所為か、『兄様』と呼んでいる。
 ベスパの事もそれに倣い、『姉様』と。そう呼ぶ様になった。
 超閑話休題。

「はっはっはっ、お前等が無事ならなんでもええんじゃ〜」
「きゅ〜ん♪」
 そんな横島の言葉に、多少獣っぽい仕草で甘えるタマモ。
 簡潔に言えば飛びついて抱き付いた。ついでに横島の胸板に顔を擦り付けている。
 横島には無限と言っていい程の衝動(煩悩)があるのだが、タマモの身体は中学生程度。ストライクゾーンから微妙に外れているだけに、己のジャスティス(非炉)をかざして、底なしと言ってもいい程の煩悩は反応しない……萌えたりはするが。
 その煩悩が発揮されない横島は、抱き付いてきたタマモを優しく抱き返したり、ワシャワシャと乱雑ではるが、嬉しげに頭を撫でていた。

「……」
 ベスパは二人の仲の良い光景を目の当たりにして、心の中でモヤモヤとしたモノが渦巻いている気がした。
 イライラとして、ウズウズとして――何かはっきりしない自分の気持ちにも苛立ちを覚える。

(私は――羨ましいのか?)

(私は――甘えたいのか?)

(私は――)

「どうしたんだベスパ?」
 そんなベスパを見て、横島もまた、何か違和感を覚えた。
 距離感とも、疎外感とも取れるベスパの戸惑いに。

「ん、なんでもない」
「そんな顔で、なんでもないって事ないだろ?」
「本当になんでもないさ」
 ベスパの表情は晴れない。
 横島に言われても、自分の心裡を表す言葉が見当たらない事もあった。嫉妬に似た感情を孕んでいた、甘えたいとも思った。
 しかし、それを言ってしまえは、タマモに嫉妬している自分を認める事になる。寂しいと感じた自分の弱さを認める事になる。
 そんな自分が嫌だった、その嫉妬が醜く思えて、その弱さが情けなく思えて。
 そんなベスパの間違いを――

「言ってくれなきゃ解らない事だってある」
 ――横島が溶かした。
 抱きとめていたタマモと共に、ベスパもまた抱きしめた。
 感じた距離感をなくす為に、疎外感すら感じたベスパの表情を消す為に。
 ベスパの暗い表情を見てしまった横島に、煩悩がつけ込む隙もなく、魅惑的なベスパの身体を抱きしめても、純然たるベスパへの……家族への想いしか湧かなかった。

「……ヨコシマ」
「なんだ?」
「私も……こうして欲しかった……けど、私はタマモみたいに可愛くないから、駄目だと思っていた…」
「そんな事ねえって、ベスパはめちゃくちゃ可愛いぞ。それに家族だって言ったろ……こうして欲しい時は、素直に言ってくれないと困る」
 俺は鈍感だからな。
 そう言って、ベスパの言葉を遮った。
 自嘲気味に笑っていたベスパの顔がいやだったから。
 ベスパの気持ちに気付かなかった自分が情けなくて。
 大事な家族に――新しい絆で繋がったベスパやタマモに、無限の情愛を捧げる為に。

「そうだよ姉様、兄様にこうしてもらっても暖かいけど……姉様も一緒なら、もっと暖かいんだから」
「そう…だな……凄く暖かい」
 嬉しかったから、暖かかったから、横島とタマモの体温が愛しくて、その体温の向こうにある心音が尊くて。
 横島の左腕に抱き締められていたベスパの両手が、そっと左腕を掴む。
 弱く――それでいてしっかりと。

「けど、頻繁にされても困る――俺の理性が危ない」
 抓られた。
 結局、大事なところで台無しだ。


◆◆◆


「と言う訳で、ご教授お願いしますっ!」
「ま、まぁ……私も電子レンジを初めて見た時はどう使っていいか解りませんでしたし」
 困惑気味に、そして、ベスパとタマモの事を傷つけない様に言葉を選ぶおキヌ。
 彼女が呼んだのは横島。ベスパとタマモの横島に対して美味しい食べ物を作って上げたいという気持ちを汲み取った横島が、頭を下げて頼んだ結果だ。
 そして――

「横島さん! 凄いですっ!」
 もう一人の助っ人、花戸小鳩は別の事に関心があった。
 既に貧乏神は福の神へと転身したものの、その貧乏から抜けるまで些かの時間を必要とする彼女にとって、横島が貰ったマンションの部屋は、筆舌にし難い程に豪華絢爛で、まるで天上人の生活する様な場所に思えた……普通よりちょっと高級なマンションでも。

「そうだね……もし良かったら、一部屋使う?」
「いいんですかっ!? って駄目ですよ! 私、そんなお金持ってませんから…」
「ん〜、俺もコレをタダで貰ったからなんとも言えないんだけど……やっぱり駄目かな?」
「横島さんのご好意は嬉しいのですが……賃貸だとしても、そんなに払える余裕はありませんから」
「だったらウチで働く? 管理人さんとか?」
 それでも横島は踏み込んだ。

「……どういう意味ですか?」
「いや、このマンションの管理ってのも意外と大変でさ。俺やベスパ、タマモが幾ら頑張っても、誰もマトモに掃除とか出来ないしさ、結構汚れてたでしょ?」
 横島が貰ったマンションは8階建ての、決して大きくないマンションで、全戸60戸と部屋数も多くない。
 それでも、デザイナーズマンションとでも言ったかの様な、趣向を凝らした外観と部屋が、傍目からでも見て取れる。更に都内の新築マンションともなれば、その価値はうなぎ上りだろう。
 現に、そんな瀟洒な優良物件に、何人もの人々がこのマンションの購入や賃貸契約を結びたいと、横島が提示していた連絡先……オカルトGメンの西条へ連絡があった。
 それは、商才があってもまだ子供な部分が多い横島を心配した美智恵からの提案だったのだが、横島も嫌がらせにでもなるかなと思い、二も無く頷いた。
 西条もまた、その連絡を無碍にする様な事もせずに、『そこのオーナーはスケベで誰彼構わずセクハラしますけど……それでもよろしければ紹介しますよ?』と、完全に喧嘩を売っていた。
 しかし、西条がそんな事を言っているなど知り得ない横島からすれば、単純に外観や内装が汚れているからだと思っても仕方が無い。
 閑話休題。

「いいん……ちょ、ちょっと考える時間を下さい!」
 小鳩は二も無く頷きたかったのだが――

「ふふ〜ん♪ 料理の基本は包丁〜♪ 食材切るのと一緒に〜♪ ……斬ってしまっても問題ありませんよね?」
 ――黒かった。無理だった。

「だ、大事な事だしさっ! ちゃんとお母さんとも相談しないと!」
「そ、そうですよねっ! 大事な命……じゃない、大事な事ですからっ!」
 その鮮やか且つ、艶やかな微笑みに、小鳩はおろか、横島、ベスパ、タマモの肝を冷やすだけ冷やしていた。

「どうしたんですか〜♪ さっさと肉を捌きましょうよ〜♪」
 その胸についている余分な肉とか♪
 おキヌはそうは言っていないが、十歩もの距離を後退った小鳩には、そう聞こえたのかも知れない。

「さ、さて! 料理をしようじゃないか料理をっ!!」
「そ、そうだなヨコシマ!」
「う、うん! 兄様の為にも頑張って作ろう!!」
「……そうですね、横島さんの為に頑張りましょうね……ふふふ」
 恐怖は拭いきれない。


◆◆◆

 あの後、黒いオーラを放つおキヌを包丁の傍に置いておく事を危険視した横島が、逃げの一手を使い、おキヌを買出しに連れ出した。
 横島一人では危険であると、タマモも決死の覚悟を秘めて、買出しについて行った。
 そんな中、捌かれるだけの肉があるので、変に刺激しては駄目と思ったベスパと小鳩は、三人を見送る事しか出来ずに、小破したキッチンの後片付けをしていた。

「……なぁ、お前は私が怖くないのか?」
「へ? どうしてですか?」
「私は魔族……それも力だけなら上位の魔族だ」
「そうなんですか?」
「あぁ、私は魔族で……先の事件で人間を滅ぼそうとしていた」
 ベスパは疑念を抱いていた、自分を怖がらずに、一緒に掃除をする小鳩に。
 人界に来てから出会った人間など数が知れているが、それでも出掛けた時、ナンパをしてきた男に、『自分は魔族なんだが?』と面倒臭げに言って、抑えている力を少しだけ解放すれば、その男はベスパに恐怖して足早に逃げ去った。
 そんな事もあったので、自分を怖がらない小鳩に、自分が魔族である事……そして、先の事件で自分が人類の敵であった事を告白した。

「……そうですか」
「やはり怖いか? 別にいいんだ……私はそれだけの事をしてきたんだから」
 別に残念と言う気持ちは抱かない。
 自分はそれだけの事をしてきたのだから……ただ残念な事は、横島と友誼を結んでいる人物に嫌われる事に対する無念さが、ベスパの思考を埋め尽くす。

「いいえ、私は魔族の方を嫌う理由はありません」
「何故だ? 魔族といえば……アシュ様の事もあって、恨まれるだけの事はしたんだぞ?」
「そうでしょうか? 私は直接被害に遭ってないからかも知れませんけど……私は魔族と言うだけで嫌う事は出来ません」
「……強いんだな」
 ナンパ男の情けない逃げ方や、人間が魔族に抱く感情を鑑みれば、自分の事を知っても怖がらない小鳩が強いと、ベスパは素直にそう思った。

「それは違います……私は弱虫です」
「何故だ?」
「あの時……横島さんは大事な人をなくしたって聞きました……それでも、横島さんは元気に振舞って、誰にも気付かれない様に……泣いてました」
「……」
 小鳩の、元気なく、深々と紡ぐ言葉がベスパの心に軋みを与える。
 その要因が自分にあると、その最大の原因が、自分が家族の為に家族を傷つけた事だったから、幾ら否定されても、それを横島が受け入れてくれても、その咎だけはベスパの心に一生残るしこりだったから。

「私の家は横島さんの隣だったので、そのすすり泣く声が聞こえたんです」
「……そうか」
 小鳩の残酷なまでの事実に、ベスパの心の軋みが加速する。
 それでも、その事実を受け止める。その咎を受け止めてくれた横島に為にも……そして、いつか甦る姉に横島の想いを伝える為にも。

「私はなにも出来ませんでした……横島さんの気持ちも考えずに、自分のエゴで横島さんを傷つけるのが怖かったから……嫌われるのが怖かったから」
「好き……なのか?」
 感情が凍る。
 何故だかベスパには理解出来ない。一途に姉を想う横島を想う小鳩に対する哀れみなのかも知れない、その好意を口に出せる勇気に嫉妬しているのかも知れない。
 それでも、その理解出来ない感情を殺して小鳩を見る。

「好きですよ、私は横島さんが……でも、怖いんです」
「ヨコシマが魔族に成るからか?」
 人間と魔族が結ばれた事など、長い歴史を紐解けば、幾らでも前例はあるのだが、それでも人と人とが、普通に結ばれる事よりも珍しい。
 それを奇異の目で見られる事に対する不安なのか。
 人と比べて、比類なき力を持つ魔族に対する、純粋な恐怖なのか。
 人間と魔族を比べれば、成長も老化も寿命も……生き様がまったく違う事に対する懸念なのか。
 ベスパの脳裏に様々な理由が浮かび上がる。

「違います。嫌われるのが怖いんです……勇気がないんです……傍に居たいのに、傍に行く勇気も持てずに、横島さんの零れる涙すら拭えない……拒否されたらって思うと怖かったから……なにも出来ませんでした」
「……そうか」
 ベスパは小鳩を近くに感じた。
 自分の想いを口に出せる勇気があろうと、それを実行するだけの勇気がない小鳩に。

「……私って友達が居なかったんです、貧乏神の貧ちゃんに取り憑かれている所為で、貧乏がうつるとか思われて……でも、そんな事を知っても、横島さんは私の友達になってくれました」
「GSだから知っていたんじゃないのか? 貧乏神に憑かれているとしても、その効果が他に及ばない事を?」
「違います、横島さんはそんな知識なんて持ってませんでした」
「……呆れてモノも言えんな」
 小鳩を近くに感じたからか、話題が話題なだけか、ベスパの口調も軽くなる。

「それなのに横島さんは、私に憑いている貧ちゃんの事を知って尚、私に向き合ってくれました」
「……色目に眩んだとは思わなかったのか?」
 ベスパは、捌かれるだけの肉がある方向に視線を向けて問うが、それは、冗談染みた視線でもあった。

「ふふ、それもあるかも知れません……けど、それを差し引いても恐れるどころか、貧ちゃんの試練にも立ち向かって……見事に成功しました」
「……まぁ、悪運は強いからな」
「美神さん曰く、煩悩の勝利らしいですけどね」
「……あの馬鹿」
 横島の煩悩は理解している。たまに部屋に行こうとすると、頑なに扉を開けない横島を不審がったベスパは、眷属である妖蜂を使って横島の部屋を覗けば…………まぁ、そういう訳だったので、小鳩の言葉に頭痛を覚えた。

「……そんなにも強い横島さんと比べて、私は弱虫なんです……自分のエゴで嫌われたらって思うと踏み出せなくて、自分の気持ちが拒否されたらって思うと立ち竦んで……すすり泣く横島さんの背中すら擦る事が出来ませんでした」
「それはそうだろう……誰だって、好きな人物に嫌われる事は怖い……私とて、ヨコシマやタマモ、パピリオ……家族に嫌われると考えると……怖い」
「優しいんですね」
「私が優しい? なんの冗談だ?」
 自分の腕を抱いて俯くベスパに、小鳩は優しげに微笑む。
 しかし、ベスパには理解出来ない。自分が優しい箇所を見出す事が出来ない。

「その気持ちが……家族を想う気持ちがあるなら、誰だって貴女を怖がりません」
「魔族であってもか?」
 家族を想う気持ちは強い。それだけはベスパは自分でも思っている。父であるアシュタロスに抱いた感情と似た感情を横島やタマモ、パピリオにも抱いている事を鑑みれば、それだけは……家族を想う気持ちだけは胸を張ってそうだと言える。

「人間って……たとえ血が繋がった間柄でも、恨み、妬み、憎しみ……殺し合います。それに比べて、貴女の気持ちは……優しさは、たとえ魔族だとしても関係ありません」
 小鳩は貧乏神が花戸家にとり憑いた理由を思い出す。
 曽祖父が高利貸しとして暴利を貪り、自分の身内であってもその法外な利子をつけていた。そして、その因果応報として、曽祖父は実の兄から貧乏神を降ろされた。
 そんな、家族でも争う事を知っている小鳩から見れば、ベスパの家族を想う気持ちの……その優しさが眩しく思えた。

「そういうモノなのか?」
「はい、そうです」
「そうか……これもヨコシマの御蔭だな……アイツが私を家族と言ってくれたから、アイツが私の咎すら……私の全てを包み込んでくれたからだ」
 自分の腕を抱きながら俯いていたベスパの眼に光が宿る。
 横島が与えてくれた優しさに、横島が差し伸べてくれた手の暖かさに、横島が再び繋げてくれた家族の絆に。
 与えられるだけではなく、自分からも横島に……何か与えれないモノがあるのではないかと思考するベスパは、同性の小鳩から見ても魅力的だった。

「横島さんは強いですから……憧れるのも当然でしょ?」
 小鳩は、そんなベスパに負けない様に、ベスパの魅力的なまでの決意に霞まぬ様に。新たに自分の想いを強くしていた。
 小鳩の脳裏に、ベスパもまた、自分と同じ感情を抱いているのではないのかと言う疑問と、それを口に出してしまえば、いらぬライバルを作ってしまう懸念も相まって、自分の感情を前に出して、相手の気概を削ごうとしていた……案外したたかだ。

「そうだな、ヨコシマは凄いからな」
 ベスパからすれば、案外したたかな面を持っていた小鳩に気付かない。そこに考えが辿り着く前に、自分の感情を理解している小鳩への憧れの方が強かった。
 なにせベスパ自身、横島に抱く感情が家族に抱く感情である事は理解はしているのだが、何処か腑に落ちない。
 自分と横島、タマモも一緒に、今の様な状況をずっと過ごしたいという気持ちと、小鳩の横島に対する想いを聞いて、何処かモヤモヤする感情がなんなのであるのかが、生後一年未満で、そういった感情を家族以外に向けた事のないベスパには理解出来なかった。
 だからベスパは横島が……家族が褒められた事に対してのみ反応を示した。

「ですから、そんな横島さんの事を好きになるのも当然です」
「ふふ、お前の様な……小鳩殿だったな……これからも兄を頼む」
「小鳩で構いませんよベスパさん」
「あぁ、これからもよろしく頼む、小鳩」
「はい♪」
 将を射んとすればまず馬から……そんな思考が小鳩にあったのかは、それは小鳩以外に知り得ないが、それでも意味深な笑みは、まるで勝者の様に――

「……だが、ヨコシマの隣は渡さんぞ?」
 ――写らなかった。

「へ?」
「アイツの傍に居るのは、まず私達だ……あの暖かさは離し難い」
「あ、あの…」
 少しニュアンスが違うのでは?
 そんな言葉を飲み込んで、先程まで浮かべていた勝者の様な笑みを、オドオドとした表情に変えてベスパを伺う小鳩。
 やはり、将を射んとすれば……と考えていたのだろう。

「再び隣人としてなら……しかしそれは…」
「無理っぽいです〜」
「……だな」
 ベスパと小鳩は黒巫女を思い出し、深いため息をつく。
 ベスパは上級魔族程の力をもってしても、あの黒巫女に太刀打ち出来る自信はなかった。
 小鳩は小鳩で、したたかに周囲から固めようとしても、結局、最大の難関である黒巫女の無敵で素敵な強さを思い出して、心が折れそうになっていた。


 一方その頃―――


「はっくしゅん!」
「どうしたのおキヌちゃん?」
「いえ……ちょっと黒い波動が…」
 ―――微妙に黒かった。

「タ、タマモっ! お前の好物ってなんだんだっ!?」
「あ、油揚げですっ!」
 部屋の掃除をベスパと小鳩に任せて、不穏な空気を醸し出していたおキヌの手から、包丁を離さんと外に食材の買出しと言うお題目で連れ出していた所、そんなおキヌを再び見てしまった。
 そんな――惨劇から惨殺に、そして終末を迎えるかも知れない状態を目の当たりにした横島は、必死に話の矛先を変えていた。
 そんな横島の危機感と、先程見てしまった黒おキヌを見た所為か、それに二なく答えるタマモ……いい感じに絆が強くなっていた。

「そうなの? それだったら、お揚げさんたっぷりの御味噌汁を作りましょうね♪」
 そんな二人の決死の覚悟を知り得ないおキヌ―――いや、知らない方が安全だ。


 あとがき(くすくす、笑ってゴーゴー♪ あっ、間違えた)


 壊! をつけるかは微妙でしたが、一応と……そんなことよりもっ! おキヌちゃんの扱いがあんまりだっ!! まぁ、この作品……と言うか、拙僧の全ての作品を通して、おキヌちゃんの扱いはぞんざいです。未だにおキヌちゃんメーンの短編が練れない始末ですから……何故なんでしょうね?

 まぁ、そんな詮無き事は捨て置きベスパは……少しは素直になったベスパですが、それでも牛歩の如く、遅くて遠いです……何か劇薬が必要かも知れません……が! そんな修羅場は苦手なので違う方向で書きたいと思います。後、小鳩ちゃんのしたたかさと、貧ちゃんの設定はこの作品の捏造です。小鳩ちゃんの短編は……練れてないっスね…。

 最後に、スランプと言うモノは、誰にでもあると思うです(語尾出典:某夕映)。未熟な拙僧ですら書けない病に掛かりましたから……やっぱりオチから考えるのが駄目なんスかね?


 無駄に定例化している副題の意味を

 メノ・ヴィヴオ――大して早くなく


 次回! ……番外で、濁っている茶を、更に濁したいっス…。


 レス返しですが……今回の様なレス返しもありなんでしょうか?


 Tシロー様

 本当にどうしてでしょうね? 別に書く事に躊躇いは持ちません、たとえばパピリオにランドセ(ry
 ……ちょっと自主規制している間に、小竜姫さま直々の剣戟の極致を見ました……竹刀ってしなるんです……凄くしなるんです。インパクトの瞬間に40度とか平気でしなるんです。
 げふんげふん……こ、今回の様に、タマモの役どころは今回の様に、ベスパに自分の気持ちを知らしめる為の存在といっても過言ではありません。結構損な役回りですが、おいおいタマモにも幸せは巡ってくる筈です……多分。
 メーンヒロインがベスパ故に、タマモがメーンを張れる日は来ませんが、それでも読んで頂けますと嬉しい限りでございます。


 lonely hunter様

 さぁ、前回よりlonely hunter様一押しのタマモの登場しましたっ! ……いえ、メーンではありませんので、あまり横島君とのラブラブな場面は見れません……まぁ、最終的には全員幸せになって欲しいのですが、今のところ、タマモの役どころはベスパの気持ちを牽引する役目なので、横島×タマモにはなりえません……今の所はですが。
 それでも、タマモが重要なファクターである事に間違いはありませんので、他のキャラより、横島君に可愛がられる回数は多いと思います……金髪ですから、金髪ですもの。
 ベスパも金髪故、最終的にタマモはサブヒロインに甘んじますが、それでも読んで頂けますと嬉しい限りでございます。


 レネス様

 やはりタマモの人気は高いのですね……勿論、私も好きです! ……パピリオも勿論好きなのですが……まぁ、〇ドは厳しいっスね……変に構想が練れている自分の腐った脳は無視する事にします。
 完結させるつもりで書いていますが、それでも途中で息切れして多少の休憩が入るかも知れませんが、それでも、完結まで持っていかないと私が私を許せない気がします……ついでに、短編の構想が出来ているのでそれも投稿したいんです。←こちらが本音っス。
 不純な動機で完結への意欲を見せている私の作品ではございますが、それでも読んで頂けますと嬉しい限りでございます。


 諫早長十郎様

 『隊長―――別に俺が保護してしまっても構わんのだろう?』
 『横島君―――幼女を抱いて溺死するつもり?』
 だったらひのめも……そんなボツはすぐさま封印しました。
 ごほん……さ、西条と横島君は、前世からの繋がりがありますので、切ろうとしても切れない絶対不文律が存在して欲しいです。縁って気付けば嬉しいモノですから……あれ? 綺麗に纏まっていない??
 ……結局、横島君より台無しな私の作品ではありますが、それでも読んで頂けますと嬉しい限りでございます。


 J様

 J様の作品に感化されたと言っても過言ではない前回の作品でしたので、優しさを前面に押し出したつもりです。やはり、レスを頂く事も活力源ではございますが、沢山の作品を読むことも重要な活力源なのかも知れません。
 今回は……若干? 黒いです。これは書いていて気付いた時には手遅れでした。やはりおキヌちゃんは黒くすると書き易いんで……はっ!?
 ……多少……いや、結構切り傷が残る指先で書く作品ではございますが、それでも読んで頂けますと嬉しい限りでございます。


 猫人間ののん様

 パピリオの再登場? …………ドントクライ!! きっと……多分……登場する日が来る筈ですものっ! いや! それ以前にメ〇ミド〇スは時期的に危な(ry
 少し、某国との摩擦に危機感を持ちながらも、私個人としては、悲惨な過去を償いきれるとは思えませんが、それでも人間には、未来に進む事が出来る足がありますので、これからは一緒に歩んで行くべきだと考えています。
 ……少し電波を拾い過ぎな私ですが、至って平熱です。次回辺りからストックが無くなる事への恐怖感と、浮かんでいる構図に上手く文字をつけられない、通称スランプ♪ と呼ばれる病気に掛かっていたとしても平熱です。平気じゃいられませんけど。
 斯様に、胡乱な状態の私が書く作品ではございますが、それでも読んで頂けますと嬉しい限りでございます。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭


名 前
メール
レ ス
※3KBまで
感想を記入される際には、この注意事項をよく読んでから記入して下さい
疑似タグが使えます、詳しくはこちらの一覧へ
画像投稿する(チェックを入れて送信を押すと画像投稿用のフォーム付きで記事が呼び出されます、投稿にはなりませんので注意)
文字色が選べます   パスワード必須!
     
  cookieを許可(名前、メール、パスワード:30日有効)

記事機能メニュー

記事の修正・削除および続編の投稿ができます
対象記事番号(記事番号0で親記事対象になります、続編投稿の場合不要)
 パスワード
    

G|Cg|C@Amazon Yahoo yV

z[y[W yVoC[UNLIMIT1~] COiq COsI