『ええい! いい加減に避けるのを止めぬか!! 止めねばこの娘を(ザンッ!!)……なあっ!?』
それは業を煮やした死津喪比女が手にした早苗を掲げた瞬間の出来事であった。
死津喪比女が我に返った時には、手にしていたはずの早苗が自分の左腕ごと宙を舞っていたのである。
そして死津喪比女がそれに驚いている暇はなかった。
(ドドン!!)『ぐわっ!』『ぎゃっ!』
『なっ!?』
続けて起こった連続した爆発音と悲鳴は、左右に居た“花”から発せられたものであった。
「今よ! お兄ちゃん!!」
「おう!! おキヌちゃん、戻って!!」
『はい!!』
『なんじゃと!?』
もはや死津喪比女は混乱の極みであった。
声のした方を見れば、いつの間にか自分の直ぐ左後ろに横島の姿があり、
その場でジャンプしたかと思えば、落ちてくる早苗を空中でキャッチした後、
あっという間に元居た場所まで走って戻って行ったのである。
よく見れば、その足には霊体と思われる光る何かに覆われていた。
『な、何が……一体何が!?』
死津喪比女が混乱するのも無理はない。
気が付いてみれば左右に居た“花”は顔を両手で覆っており、酷い火傷を負っているし、
おキヌを攻撃していたグループは、呆然としている内におキヌを取り逃がしてしまっていたし、
何より自分が捕まえていたはずの娘は、斬り落とされた左腕ごと取り戻されてしまったのである。
一体何が起こったのか……
「……待っていたぜ、あの瞬間を……お前ら全ての花がおキヌちゃんに注意を向けた時をな」
「そういうこと、アンタ達がおキヌちゃんに注意を向けた瞬間、お兄ちゃんがアンタの腕を斬り飛ばしたのよ」
「そしてタマモが左右に居たヤツらに炎をぶつけて援護してくれたって訳さ……」
兄妹が何かを堪えるようにしながら、口々に死津喪比女に解説する。
無論、全ての花がおキヌに注意を向けない場合も想定していたが、
それを使うまでもなく、上手くいったようである。
「早苗ちゃん、大丈夫かい?」
「ケホッ……だ、大丈夫だ……」
「早苗!!」『早苗さん……よかった……』
「……これで残るはあいつの始末だけね……」
横島が早苗の首に巻きついた腕を取り除いてやりながら声を掛ける。
早苗も咳き込みながらもなんとか声を絞り出す。
そして無事な様子の早苗に父親とおキヌがそれぞれ安堵の声を出し、
最後にタマモが死津喪比女を睨みつけてそう宣言する。
「ああ、散々好き勝手やりやがって……覚悟はできてんだろうなぁ?……」
「ただでさえおキヌちゃんの事は腹に据えかねているのに……いい度胸だわ……」
タマモの宣言を受けて横島が怒りの声を上げ、妹もそれに倣う。
二人共底冷えのする声で死津喪比女を見据える……
その顔は怒りを通り越して、まったくの無表情になっていた。
そして両者の手からは、淡い光りが灯り出す……
『お、おのれ! おのれ!! こうなればその虫けらの小娘ごと(ドガッ!!)ヒガッ!?』
それまで火傷の痛みを堪えていた二体の内、右側の一体が怒りの声を上げるが、
その途中で何かが顔面を貫いていた。
『なっ!? こ、これは!? (ズドッ!!)ガアッ!?』
今度は左側に居たもう一体の顔面にも何かが突き刺さる。
「おキヌちゃんを……」「……虫けらですって?」
「「もうお前(アンタ)等は……」」
「「喋るんじゃねぇ(ないわよ)!!」」
ズドオオオオオォォォォン!!
二人の兄妹が口々におキヌを虫けら呼ばわりした事に怒りの声を上げ、
そしてその声を揃えると、二体に突き刺さっていた何かが爆発し、
断末魔の声を上げる間もなく上半身を四散させていた。
横島が投げ付けたのは、以前美神にも見せたことがあるサイキックジャべリンである。
そしてタマモが投げ付けたのは……兄のそれを参考にした炎の槍【フレイムジャベリン】であった。
双方とも貫通力を重視し、内側から相手を破壊する恐るべき技であるが、
威力そのものは兄のジャベリンの方が上である。
尤も、炎による追加ダメージを与えることができるタマモの技の威力も申し分ないのだが……
『な、な、なぁっ……!?』
左右に居た花を瞬時に破壊され、中央の早苗を捕まえていた花も切り落とされた左腕を庇いながら、
起こった事態に狼狽し、驚愕の声を上げながら後退していく。
そして後方で控えていた葉虫達を前に出して壁を作る。
その様子は、まるで女王を護る兵士達のようであった。
(……? 妙ね、なんであいつだけ……)
タマモはその行動に疑問を感じていたが、隣の兄が声を掛けてきた為に、その思考を一時中断させた。
「さてと……タマモ、左は頼んだぞ?」
「あ……ええ、任せといて」
「宮司さん、早苗ちゃんと一緒に下がっててください。
それとおキヌちゃんも……」
「うむ、さぁ、早苗……」
「わかっただ……それにしてもホントに強いだな……横島さんもタマモちゃんも……
それにおキヌちゃんも……ホントにすげぇだよ……」
『ええ、分かっています、横島さん。万一の時は文珠がありますから……
それと早苗さん、私はそんなに凄くないですよ? 横島さんやタマモちゃんに比べたら……』
「そんなことはないさ、おキヌちゃんのおかげで早苗ちゃんが助かったんだから……」
「お兄ちゃんの言う通りよ? それは誇っていいことだと思うわ……
それにね、私達と比べるのは意味がないわよ? 強さって人それぞれだと思うから」
「タマモの言う通りだ……さて、待たせたな? 死津喪……」
「私達の怒り……存分に味わいなさい……」
二人の兄妹による死津喪比女への総反撃が、今ここに始まろうとしていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
GS横島!? 幸福大作戦!!
第十話『送り火』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
兄妹による宣戦布告とも言うべき宣言。
それを受けて、死津喪比女は狼狽しながらも、無傷で残る左右の集団に攻撃を指示する。
『おお、おのれぇ……か、掛かれい!!』
「フン……よくもおキヌちゃんをいたぶってくれたな……
本邦初公開だ! 冥土の土産にしっかりと受け取れ!!」
横島が死津喪比女にそう告げると、身体を右側の集団に向け、両足を広げて腰を落とし、
両手を前にして、まるで何かを持つように構える。
「木よ…草よ…花よ…虫よ……自然に宿りし精霊達よ、我にその大いなる力を分け与えたまえ……
……栄光の手、第四形体≪栄光の足≫! ならびに第一形体霊波刀……≪霊式斬魔刀≫!!」(※注:1)
横島の声と共に、両足に≪栄光の足≫を発動させ、更に、両手に持つように発現させたのは……
自身の身長よりも長い――二メートル以上はある――巨大な両刃の霊波刀であった。
前にも述べたが、唐巣神父の下で修行したおかげで栄光の手の霊波刀のバリエーションが増えていた。
その内の一つが『両手持ち武器の追加』である。
すなわち、長い槍状の武器――ポールウェポンや巨大剣を作れるようになったのだ。
尤も、必ず両手で持って集中していなければならないのだが……
そして、その巨大な霊波刀――≪霊式斬魔刀≫を水平に構え、
刃の切っ先を右後ろへと向けると、両足の≪栄光の足≫の技――≪韋駄天足≫を発動させる。
「食らえ!! 栄光の手、複合奥義!!!
一閃!! ≪草薙の太刀≫!!!!」
ズドオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!
凄まじい轟音が周囲の山々に響く。
そして上がっていた土煙が風に流されて晴れていくと……
そこにあったのは、剣を振り切った体勢の横島と、
上下に一刀両断された上に完全に吹き飛ばされた花と葉虫で『あったもの』だけであった。
しかも、その後ろにあった森の一部の木々までもが衝撃波で薙ぎ倒されている。
そのあまりの破壊力に見ていた全ての者――死津喪比女も――声もなくただ呆然とするだけであった。
その呆然とした状態からいち早く我に返ったのは、逆行してからの兄の実力をよく知るタマモであった。
「流石ねお兄ちゃん。まさしく“草薙”だわ、相手が植物なだけにね……さて、私も負けてらんないわね……」
タマモが兄の技をそう評価すると、自分も負けじと先程自分を襲った左側の集団に眼を向ける。
「さっきはよくもやってくれたわね……お返しよ! 受け取りなさい!!
我に潜みし狐火の焔(ほむら)よ……我に災厄をもたらす者達を喰らい尽くす炎の大蛇となれ……」
タマモは自身の内に潜む妖力を集中させるために目を閉じて詠唱を行なう。
そしてカッと目を見開くと、思い描いたイメージ通りに技を発動させる。
「燃え尽きよ! 妖狐炎術奥義!!
≪大蛇≫(おろち)!!!!」
グオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!
タマモの技の発動と共に表れたのは、巨大な炎の大蛇であった。
全長こそ十メートルほどと、ジャングルの奥地などに居る大蛇とそう大差はないのだが、
頭の部分――特にその口は全長に比してアンバランスなほどに巨大で、
開いた口の大きさは二メートル以上と、人間など一飲みにできるほどであった。
そして正に本物の蛇のごとく左右に蛇行しながら左側に居た集団を、
次々とその巨大な口の中に飲み込んでいく。
そして後に残ったのは……もはや原型さえ止めぬほどに消し炭と化した『モノ』であった。
「フフ……燃えたでしょ?」(※注:2)
タマモは手を銃のようにして人差し指と親指の間からでた小さな炎を吹き消す。
「フ……タマモもやるな。だが、ま〜たゲームの影響を受けやがったな?
ま、俺のも老師が遊んでたゲームを参考にしたから人のことは言えんが……」
横島も妹の技を見てそう評価するものの、何を参考にしたのか分かった為に、
少々呆れ声の評価となったが……自分もそうであるため、小声で言うに止めていた。
『こ、ここ……こんな……わしの……わしの三百年の成果がこんな……』
一方、完全に狼狽した様子の死津喪比女は、左腕を押さえながらジリジリと後退していく。
「おい! どこに行こうっていうんだ? 今更逃げようなんて思ってるんじゃねーだろうな?」
横島はそう言いながら、ゆっくりと最後に残った花に近づいていく。
既に巨大剣も両足の“第四”も消えているのだが、
二度目の≪韋駄天足≫に加え、大剣を振るった反動なのか、
両腕はあちこちの皮膚が破れ、ポタポタと血を流しながら迫るその姿は……
もはや凄惨という言葉すら生温いほどの迫力に満ちていた。
『お、おのれぇ!!』
その姿に怯えた様子を見せた死津喪比女は、もはや最後に残った葉虫達を横島に向かわせる。
その様子はもはや破れかぶれの攻撃……のようにも見えた。
(……やっぱり妙ね、どうして一緒に攻撃してこないのかしら?
今更葉虫をお兄ちゃんに向かわせた所で、敵わないのは分かってるでしょうに……)
その様子を見ていたタマモが最後に残った花の行動に、先程感じた疑問を更に深める。
死津喪比女にとって、花も葉虫も本体の手足にすぎないはずなのだが……
「バカが……」
そんな妹の疑問を余所に、横島が死津喪比女の行動に対して一言そう呟くと、
今度は通常の霊波刀を発動させて近づいてくる葉虫達に突進する。
次々と切り裂かれ、蹴散らされていく葉虫達……
もはや横島にとって、群れるしか能のない葉虫など敵ではなかったのだ。
そして最後に残った葉虫の手足と尻尾を切り落とし、足で踏みつけて身動きできないようにすると、
最後の花に向かって何かを確認するかのように話しかける。
「この葉虫もお前も、本体にとっては手足でしかないんだよな……
だったらこいつも本体に繋がっているって訳だ……」
横島のその言葉にゾッと悪寒を感じた死津喪比女は、
更に後退しながら横島に疑問をぶつける。
『な、何をするつもりじゃ!?』
「フン……こうするのさ!!」
横島は最後に残った葉虫に向かって栄光の手の基本形――第零形体を発動させ、
その手に文珠を二個掴むと、踏みつけていた葉虫の体内に叩き込んだのだ。
『な、何を…………ガッ!! き、貴様……何をした!?』
何をされたのか理解できなかった花が、急に苦しそうに呻き出す。
その体は既にあちこちがひび割れ、色素が失われて茶色に変色してくのが見て取れた。
「なぁに、単に文珠に≪枯≫≪渇≫と込めただけさ……お前が溜めてきた力が枯れ果てるようにな」
横島がなんでもないように言うその間にも、文珠を叩き込まれた葉虫は既にボロボロに崩れ去り、
花のほうも髪の毛代わりなのか、葉っぱのような髪がポロポロと朽ちて落ちていく。
『ぐわあああぁぁぁぁっ!! は、早く切り離さなければ…………ま、間に合わぬ!!
こ、こうなれば“……”だけでも……』
慌てたようにそう言った瞬間、死津喪比女の最後の花がその姿を地中に消した。
だが、最後に呟いた言葉は小さすぎて横島の耳に届くことはなかった……
『横島さん!』「横島君!」「横島さん!」
ようやく我に返ったのか、後ろで見ていた彼等が口々に横島の名前を呼びながら駆け寄ってくる。
「やったな! 横島君!!」「すごいだ! ホントにすごいだよ!!」
まだこの後に残る本体との戦いを知らない氷室親子が口々に横島を褒め称えるが、
横島達三人はまだ油断はしていなかった。
「いえ、まだ本体が残っています。それを叩かないと終わりとは言えません」
『その通りだ。だがしかし、本当に見事な戦いぶりであったな……』
「初代様!?」『導師様!?』
横島が二人の親子をなだめるように言うと、不意に彼等の背後から声が掛かる。
それは祠に居るはずの導師の残留思念であった。
「中々出てこないと思ったら、やっぱり見ていたんですね?
すると、さっきのあの視線は……」
横島はおキヌに文珠を渡す際に感じた視線を思い出していた。
『左様……もしあの時に文珠を渡しておらなんだら、おキヌを強制的に装置に戻すつもりであった。
そして結界の範囲を広げて彼奴らを君達から切り離すつもりであったが……その必要はなかったな』
「しかし、それをしていれば激高した死津喪比女によって早苗ちゃんは……」
『うむ、私としても我が子孫の娘が殺されるのを見るのは忍びなかったが……』
「俺たちを信じてくれたんですね……ありがとうございます」
『なんの、礼を言うのは私のほうだ、よくぞ我が子孫を護ってくれた、礼を申すぞ? 現代の退魔士よ。
……それとおキヌよ、私が知らぬ間に強くなったようじゃな、女華姫も喜んでおるであろうな……」
『そんな、導師様……』
それまで二人の会話を聞いていたおキヌは急に自分に話しを向けられて、
喜びと戸惑いと申し訳なさの入り混じった複雑な心境で導師の言葉に応える。
恐らくは自分達の会話を聞いて、自分が既に只の村娘であった頃の自分とは違うと察していたであろうに、
そのことには一切触れずに自分を誉めてくれたのである。
会話が途切れ、彼等の間に穏やかな雰囲気が流れるが、
それを断ち切るかのように周囲に地鳴りが鳴り響き、地面が揺れ始めた。
「……出てくるな……ヤツが!」
『む……地脈の封印が無理矢理破られようとしておる!
そんなことをすれば彼奴とてタダでは済まないはずじゃが……』
「恐らくは残った全ての力と、ヤツ自身の命を引き換えにするつもりでしょう。
さあ! みんな、森の方に避難するんだ、ヤツは……俺が倒す!」
『忠夫さん……』
新たな決意と共に一人で戦いに望もうとする夫の姿に、
思わず名前で呼びかけたおキヌに横島が答える。
「生き返ったら……一緒に暮らそうな!」
『!! ハイッ!』
その二人の様子を見ていた早苗は……
(わたすなんかが割って入る隙間なんて、最初っからなかったんだな……)
ただ憧れだけで横島を見ていたということを悟った早苗は、
そっとその想いを胸に仕舞い込むことにしたのだった。
そんな早苗の様子に、父親はそっとその肩に手を置き、見上げてくる娘に頷きを返す。
「さっ! 早く森の中へ!! タマモ! みんなを頼んだぞ?」
「……あっ……ええ! 任せといて! それよかお兄ちゃんこそドジんないでよ?」
横島は最後に歩み寄ってきた妹に声を掛ける。
タマモもそれに答えてはいたが、何やら考え事をしていたらしく、その返事は若干遅れたものになっていた。
「分かってるって。それよかどうし(ズズゥン……)!! ……来たな?」
横島が妹のその様子に疑問を持ち、どうしたのか聞こうとしたのだが、
新たに起こった地響きの音に、死津喪比女の本体が姿を現したことを悟った。
その為、直ぐにその疑問を頭から追い払い、思考を切り替えて上空を見上げたのである。
『おのれおのれおのれおのれおのれーーーーーー!!!
許さんぞぉ!! 絶対に許さんぞおお!!!
わしから全てを奪った貴様らを殺すまでぇ!!
わしは絶対に許さぬぞおおおおおおおおおお!!!!!』
上空から雷のごとく鳴り響く死津喪比女の怒声に、横島はフンと鼻を鳴らした。
「許さないだって? それはこっちの台詞だ!! 早苗ちゃん……祠で言った事を今見せるね。
木よ…草よ…花よ…虫よ……自然に宿りし精霊達よ、我にその大いなる力を分け与えたまえ……
栄光の手、第五形体! ≪栄光の翼≫!! 我に天空を駆け巡る力を!!!」
横島が早苗に向かってそう言うと詠唱を開始し、
それが終えた瞬間、横島の背中から二対四枚の光り輝く翼が出現した。
「おお……これは……」
「まるで……天使みてぇだ……」
『なんと……文殊だけでなく、まだこんな隠し技があるとは……恐るべき少年じゃ』
(横島さん、これが新しい力なんですね……ホントに凄いです)
(お兄ちゃん、随分霊力を使ってるけど……無茶だけはしないでね?)
それを見ていた者達からはそれぞれ声と心中で感想を述べる、
ただし、その妹だけは力の使い過ぎを危惧しているようであるが……
それらの声を背に、一気に空中へと羽ばたく横島。
逆行前は一対二枚の翼を出すのが精一杯であり、その滞空時間も精々二、三十分が限度であった。
文珠を使えば更に滞空時間を延ばす事も、更には文珠だけで空を飛ぶ事もできるのであるが……
――――『横島さん、確かに翼を出せば飛べるかもしれないという発想はいいのですが……』
『ええ、文珠だけでも≪飛≫≪翔≫って込めれば飛べるんスけど、でも、それだと……』
『そうでしたね、文珠の複数同時による並行使用には相当な集中力が要るんでしたね。
つまり、文珠で飛んでいる間は他の文珠の使用に制限が掛かるということになります。
そうなると、横島さんの持つ技の幅が狭まってしまいますからね』
『その通りッス、小竜姫様。確かにこの翼で飛べばイメージするだけで結構飛べるんスけど、
その代わりかなりの霊力を消耗してしまうんスよ。おかげであんまり重い物は持てないんス、
飛べる時間も三十分くらいが限度ですし……』
『そうですねぇ……文珠で霊力を補充するという手もありますが、
でも、それだと結局は文珠で飛ぶのと変わりはありませんし……
何か、別の手を考える必要がありますね』
『別の手……ッスか?』
『……横島さん? そこで『煩悩で補充すればー!』とか言って私に飛び掛るのは無しですよ?』
『ハハ……ハ……や、やだなぁ小竜姫様、そんな事考えてませんって。
……ですからその神剣に手を掛けるのは止めてほしいッス……』
結局、修行中にその方法を思いつくことはできず、保留するに止めていたのだが、
戦闘中に限ってみれば、三十分も飛べれば十分であるし、他の修行で忙しかったのも事実であった。
それ故、逆行した時に『霊的成長期の内に神父の下で修行すれば』と考え、唐巣の所に訪れたのである。
そしてその考えは見事に図に当たり、翼を二対四枚に増やすことができ、
飛行時間も大幅に(大体二時間ほど)伸ばす事ができたのである。
今の横島ならば、かなりの重さの荷物(およそ人間二人分)を運ぶ事もできるし、
文珠の平行使用もできることであろう。
そんな事を思い出しながら、空に浮かび上がった横島は、出現した死津喪比女の本体を見据える。
死津喪比女の本体は巨大な球根状の形をしており、その中央にはこれまた巨大な“眼”が出現していた。
『おのれええええーーーー!! そこに居たかああああーーーーーーー!!!』
「……随分弱っているみたいだな」
横島はボロボロに崩れ始めている本体を見て、手を下さなくとも長くは持たないだろうと予測していた。
尤も、元よりこのまま見逃すつもりはなかったのだが……横島は、その姿に哀れさを感じていたのだった。
『ぬぐああああああああっ!! 死ねよやああああああああああ!!!』
死津喪比女が横島を見つけ出し、その声だけで呪い殺せそうな叫び声を上げながら突進してくる。
そして本体の前にある巨大な眼がギョロリと横島を睨みつけると、
恐らくは死津喪比女の妖力そのものであろう怪光線が放たれる。
「フン……」
だが、横島は慌てることなく鼻息一つ吐くと、サイキックソーサーで作られた壁、
サイキックウォールを斜めに傾けて展開する。
バシイイイイイィィィィィ!!!
放たれた怪光線はその壁に阻まれて横島に届くことはなく、上に傾けられているために、
その威力は逸らされて上空へと消えていった。
『なにいいいいいっ!!!???』
「そんなあからさまな攻撃に当たってやるバカが居るかよ……
攻撃ってのはな……こうやるんだ! 行け!! サイキックソーサー!!」
横島は両手に出現させた二枚のサイキックソーサーを同時に投げ付ける。
そして二枚のソーサーが弧を描いて飛んで行き、本体の直前で衝突すると……
パアアアアアアァァァァン!!
乾いた音と一緒に激しい閃光が本体の眼を襲う。
横島お得意の≪サイキック猫だまし≫の遠距離バージョンであった。
『ぬがああああああああっ…………くっ、ど、どこに行った!?』
その閃光に眼を眩ませた死津喪比女は、視界が戻ると横島の姿を見失っていた。
「ここだ! 死津喪比女!!」
『ぬおっ!?』
声がする方向――下に眼を向けると既に横島が≪栄光の翼≫を二対四枚から一対二枚に重ね、
その翼端を二倍以上(両翼でおよそ七メートル)に伸ばし、急上昇してきた所であった。(※注:3)
ズバアアアアァァッ!!
『ギャアアアアアアアアアアアッ!!!』
回避しようにも時既に遅く、横島の翼が本体の眼を下から上へと切り裂く。
眼を潰されて激痛にのたうち回る死津喪比女を余所に、横島は更に上空へと上昇する。
そして一定の高度に達すると、横に一回転しながら二枚の翼を再び四枚にして大きく広げた。
その姿は正に、大天使が降臨したかのようである。
「これで最後だ! 死津喪比女!!」
横島がそう叫ぶと、両腕を広げて第三形体を発動させる、
しかし、その銃身は通常の物よりも更に銃身が長く、横島の身長ほどもある長大な代物であった。
そしてその両腕の長大な銃身を前に向けると、ガシィッ! と二つの銃身が合体し、
二つの銃口が揃って死津喪比女の本体に向けてブンッ! と振り下ろされる。(※注:4)
「栄光の手、複合奥義! 其の二!!
≪火之迦具土≫(ひのかぐつち)!!!」
ドグオオオオオオオオォォォォォォ!!!!
凄まじい音と閃光と共に、巨大な霊波砲が放たれる。
『お、おのれぇ……ぐわあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!』
なんとか上空に居る横島に、せめて道連れに体当たりをしようと試みた死津喪比女であったが、
放たれた巨大な霊波砲の前に成す術もなく断末魔の声を上げ、塵と化していったのであった。
こうして三百年の時を越えて再び人々の前に現れて、多大なる被害と脅威を与えるはずであった妖怪は、
一人の若きGS(まだ見習いにもなっていないが……)の前に倒された……
……はずであった。
◇◇◇
「す、すごいだ……もうすごすぎて何て言ったらいいかわからねぇだ……」
「………………」
『……なんという力じゃ……現代の退魔士がこれほどの力を持っていようとは……』
横島のその戦いぶりに、早苗は呆然とした表情でそう呟き、
その父親に至ってはもはや声すら出ないようである。
そして導師はその力を恐れるかのような感想を述べていた。
『!! 待ってください! 横島さんが!!』
「え? ……あっ! お、落ちてくるだよ!!」
「やっぱり霊力を使い過ぎたんだわ!!」
「……!! いかん! はやく受け止めねば!!」
おキヌが横島の異変に気付き、早苗がフラフラと頼りなげに落下してくる横島を見つける。
そして悪い予感が当たったとばかりにタマモが叫ぶと、
宮司の言葉を聞くまでもなく、落下してくる予想地点へとダッシュする。
おキヌも遅れじとタマモの後に続いて飛んで行き、親子二人も慌てて追いかけて行った。
結界の範囲内からは動けない導師の残留思念は、彼等の後ろ姿を見送りながら一人呟く。
『あのような力を何故(なにゆえ)……女華姫よ、彼等の行く末は我等の子孫が見届けてくれようぞ……』
◆◆◆
「まったく、無茶ばかりするからよ! こんなに消耗して……
ぶち切れるのも分かるけど、もうちょっと後先考えなさいよね?」
『もう……心配したんですからね?』
「わたすは心臓が止まるかと思っただよ……」
「はは……すまん……いてててて……」
「まあ、無事でなによりだ。だが、しばらくは動かさない方がいいだろう」
なんとかタマモが受け止めるのに間に合い、たいした怪我もなく草原に横になっている横島。
既に負っていた怪我は、おキヌが持っていた文珠を≪治≫に変えて治していた。
そして今は横になっている横島に膝枕をしている。
落下中も翼だけは展開していたため、タマモにもたいして負担はかからなかったものの、
一歩間違えれば二人共大怪我である、彼等が口々に横島に文句を言うのも仕方がないであろう。
その横島であるが、やはり霊力の使い過ぎによる全身の霊体痛に襲われていた、
そのために指一本動かせなくて、彼等の言い分に反論することもなくおとなしくしていたのだった。
流石の文珠も、一個のみの効果では霊体痛まで治せなかったようである。
「さて、しばらくはここにいるとして……早苗、後で横島君を背負うから手伝ってくれ」
横島とおキヌを中心に車座になっていた彼等であったが、宮司が隣に座っている娘に声を掛ける。
「分かっただ! とっちゃ」
「え? そんな面倒を……」
「いいから怪我人はおとなしくしていたまえ。それに何も出来なかった私の代わりに娘を助けてくれたのだ、
これぐらいのことはさせてくれ」
「はい……すみません」
「はは、なになに、家の温泉は疲労回復の効能もある。今日と、出来れば明日もゆっくりと浸かるといい」
「宮司さん……ありがとうございます」
「そうそう、素直が一番よ! お兄ちゃん。それと明日は学校だけど、私から連絡を入れておくわね」
「悪いな……タマモ」
「何言ってるのよ? お兄ちゃんが居ないと帰れないじゃない。バイクも麓に置きっぱなしだし」
『横島さん、バイクの免許取ったんですねぇ』
『まぁ、なにはともあれ、みんな無事でよかったッス』
「……居たのか、ワンダーホーゲル……」
横島はいつの間にかそこに居たワンダーホーゲルに眼を向けて声を掛けるが、
その口調は『今の今まで忘れてました』と言わんばかりであった。
『そりゃないッスよ……そりゃ確かに自分がいても役に立たないッスから姿を消してたんスけど、
これでも心配してたんスからね?』
「はは、悪かったよ……でも、これでお前も晴れて山の神に成れるんじゃないか?」
『それは嬉しいッスけど、とにかく今日はゆっくり休むといいッス。自分のことはまた明日でいいッスから』
「ああ、そうするよ……ん? タマモ、どうしたんだ?」
それまでワイワイと会話をしていた一同であったが、
黙り込んで思案顔をしていたタマモが急に立ち上がったのを見て、横島が声を掛ける。
「ねぇ? 今日はこの後は神社に泊まるんでしょ?」
「あぁ……まぁ、そういうことになるが……」
「なら、ここで待っててね。私はちょっと用事があるから」
「おい、どこに行くんだ?」
「もう、こういう時は気を利かせなさいよ」
「あ〜……小便か、早くしろよ? (ピシッ)いて!! デコピンするこたねぇだろ!?」
「もう! デリカシーがないんだから!!」
「はは、まあまあ……タマモ君、気を付けて行ってきなさい」
「ええ、それじゃ!」
そうタマモが最後に告げると、森の中へと真っ直ぐ駆け出して行った。
そしてあっという間にその姿が見えなくなる。
「タマモちゃん、よっぽど我慢してたんだかな?」
早苗の呟きに思わず苦笑した横島であったが、
なにやら心配げな様子のおキヌと目を合わせるとそっと頷きを返す。
(タマモのやつ、戦闘中も何か考えてたみたいだったが……
ったく、気になる事があるんならちゃんと言えってんだよ。
ま、このザマじゃ今はどうしようもないからな、後で聞いておくか……)
そう考えた後「一人で何もかも背負うんじゃねぇよ……」と呟いて目を閉じる。
膝枕をしていたために、一人その呟きを聞いたおキヌは……
(横島さん……それはあなたにだけは言われたくないと思いますよ?)
と、呆れながらそう内心で呟くおキヌであったが、
やがてハッと何かを思い出して視線をタマモが消えて行った森の方に向ける。
(そういえば、最初に出てきた花だけが他の花と霊力……ううん、この場合は妖力ね、
その動きが違っていたような気が……タマモちゃん、無茶だけはしないでね……)
おキヌは、内心でそう思いながらそのことを夫に告げるべきか思案したが、
どの道、今のこの状態では動くに動けないのである。
ならば余計な心配を掛けないためにも、タマモの無事を信じて待つ以外に方法はなかった。
◆◆◆
ズル……ズル……ズル……
『クッ……ハァ……ハァハァ……』
暗くなりつつある森の中を、何かを引きずる音と、苦しげに喘ぐ声が響く。
『お、おのれぇ……わ、わしが力を取り戻した暁には……必ず……殺してやるぞえ……』
その正体は死津喪比女の“花”であった。
もはや地中に潜る力も失せ、地面を這うように進む姿は哀れさを感じさせるものであった。
しかし、本体を破壊されて滅んだはずの花がどうして単体で移動できるのであろうか……
『ククク……万一を考えて……株分けしておいたのが……役に立ったぞえ……』
そう言うと、残された右手を自らの下腹部――人間の女性で言えば子宮の部分――に手を添えると、
その腹の部分の表面が左右に開いた。
そして中にある何かを取り出すと、自分の顔の位置にまで『それ』を持ち上げる。
『それ』は握り拳ほどの大きさであるが、間違いなく横島が倒したはずの本体と同じ形をしていた、
そして『それ』と花とはまるでへその緒のような管で繋がっていたのである。
『ククク……今頃はわしを倒したと思うておろうな、まさかわしの中に株分けされた本体があるとは思うまい。
咄嗟に切り離しておかなんだら危なかったがの……』
死津喪比女は花の一輪に株分けした本体を入れていたのだ。
それをある程度の大きさになるまで育てた後、別の地中に移すつもりであったようである。
元の時代では本体と同じ大きさにまで育っていたが、この時点ではまだ花の中にあったようだ。(※注:5)
死津喪比女は株分けされた本体を愛しげに一撫でした後、再び腹の中へと収納する。
そして若干膨らんだその腹部を大事そうに撫でた。
その様子はまるで妊娠を喜ぶ妊婦のようであったが……
「ふ〜〜〜ん? そういう事なんだ。道理でアンタだけが特別扱いな訳だったのね。
おかげでアンタが最後に呟いた言葉、『このコだけでも』って意味が分かったわ」
突然、背後から声をかけられる。
それは死津喪比女にとって死の宣告を受けたような衝撃であった。
『!! だ、誰じゃ!?』
「あら? 私の顔を忘れたの? つれないわねぇ……あんなにいっぱい焼いてあげたのに」
『お、お主は……!! そうか! 主は妖狐かえ!?』
「その通り、妖狐の超感覚を甘く見ないでね、あれくらいは聞き取れたわ。
それにしても、まさか私に気付いてなかったとは思わなかったわ……
どうやらおキヌちゃんにばかり気が行ってて気が付かなかったみたいね」
『な、何故じゃ! 何故妖狐であるお主が人間などの味方をするのじゃ!?
それにその妖気の大きさ……ただの妖狐ではあるまい?』
「ご名答。金毛白面九尾の狐って聞いたことある?」
『!!! まさか、まさかあの大妖怪の妖狐が……な、何故じゃ!?』
「その疑問に答える義務はないわ……って言いたいとこだけど、
一つだけ答えてあげる……妖狐はね『家族』を大事にするのよ」
死津喪比女はタマモの答えに大きく狼狽する、
それは彼等妖怪にとっての――特に死津喪比女のような――常識では考えられないことであったからだ。
『か、家族じゃと!? バカな!! 確かに妖怪の中には人間社会に寄生せねば生きられぬ弱者もおるが、
そやつらとて人間を家族として心から想う者などおらぬわ!!』
その死津喪比女の返答にタマモは顔をしかめて答える。
「確かにね……私だって何度人間に裏切られたか分からないわ。
でもね……私の知ってる人間達……特にあの二人は私にとって特別なのよ」
『特別じゃと!?』
「そうよ……あの二人、お兄ちゃん……ううん、横島とおキヌちゃんはね……
とっても……とても『温かい』のよ……私にとってかけがえのないくらいにね」
『バ、バカな!? そんなことで……(ボン!)グハッ!!』
死津喪比女の言葉にタマモが炎を投げ付ける。
「……『そんなこと』ですって? アンタなんかには分からないでしょうね……
私にとってそれがどんなに嬉しくて尊くて、とっても大事なものであるのか……
だからね、その大事な家族を傷付けたアンタは絶対許さないわ……絶対にね!!」
そう言い終えると、タマモは妖気を集中させるために詠唱を行い始める。
「我に潜みし狐火の焔(ほむら)よ……我に仇なす者に終焉の灯火(ともしび)を齎(もたら)したまえ……」
『お、おのれぇ……わしは……わしはここで死ぬ訳にはいかんのじゃああーー!!』
タマモの詠唱と共に膨れ上がる妖気に、このままでは死を待つだけと感じた死津喪比女は、
最後の力を振り絞って残された唯一の攻撃手段……
すなわち、右手を伸ばしてタマモの細い首をへし折ろうと迫っていった。
「……安心なさい、せめてもの手向けに、この『送り火』で弔ってあげるわ……
その命が燃え尽きるまで焼き尽くされなさい! 妖狐炎術……≪不知火≫!!」
『ギャアアアアアアアアアアアッ!!!』
詠唱の終わりと共に放たれた術は、一瞬にして死津喪比女を炎に包み込んだ。
『グッ、ガアアアアアア!!』
ゴロゴロと転げ回り、のた打ち回って炎を消そうとするが、
不思議なことにその炎が消えることはなく、又、周囲の木々に燃え移ることもなかった。
「無駄よ、その炎はアンタの妖気を元にしているの……
アンタの妖気が尽きるとき、つまりアンタが死ぬまで消えることはないわ……
まぁ、アンタがそれに対抗する術を持ってたり、今ほど弱ってなければ通用しないし、
私よりもかなり弱い妖怪にしか使えないから滅多に使うことはないんだけどね……」
そう告げるタマモの顔にはなんの表情も浮かんでいなかった、
まるで邪魔な小石を蹴り飛ばした程度のことでしかないかのように……
「じゃ、そこで命が燃え尽きるまで、精々来世ではもっとマシなヤツに転生できるように祈っておくのね」
そう冷たく告げて兄達の所へと向かおうと死津喪比女に背を向ける。
その様子は、もはやなんの興味もないと言わんばかりであった。
『グ……グググ……さもしいよな……人間ごときに……温もりを求めるか……』
最後の足掻きであろうか、もはや全身を炎に巻かれ、
既に全身の大部分が消し炭になりかけている死津喪比女がタマモの背に声を掛ける。
「……なんですって?」
その声に歩き出していたタマモがその足をピタリと止める。
『グググ……お主が大事に想っている人間が……果たしてお主をそこまで想っておろうかの……
所詮、我らは妖(あやかし)よ……人間が妖をそこまで想う事があるかえ……グググ……』
――――ギシリ――――
死津喪比女のその言葉にタマモの胸の奥が音を起てて軋む……
それは横島とおキヌが再会した場面を見ていた時に感じた軋みと同じであった。
ギリッ……
タマモの口から歯の軋む音がこぼれる。
「…………黙りなさい……」
『グググ……迷うておるな? 迷うておろうが!! やはりお主も心の底では人間を(ゴガッ)ガハッ!!』
「黙れって言ってるでしょう!? さっさと燃え尽きなさい!!」
その叫び声と共に特大の炎の塊が死津喪比女を襲う。
先程の炎とは比べ物にならないほどの……
ボオオオオオオオオオオン!!!
『グ、ギャ……ガッ……め、冥府の底で……お主の……末路を……見ておる……ぞ……え』
その言葉を最後に完全に燃え尽きた死津喪比女は、
その亡骸を白い灰に変え、風に吹かれて飛び散っていったのであった。
その飛び散る灰を見届けたタマモは……再び横島達が待つ場所へと歩き出していった。
――――ギシリ――――
……タマモの耳に再びあの軋みが聞こえた気がした……
続く。
注釈の解説。
※注:1 元ネタはSRW OGのあのお方、親分ことゼンガー少佐です。
※注:2 この元ネタはKOFのあの主人公です、何年のものか断定はしませんが……(多分95´か96´)
※注:3 元ネタはみなさんご存知(と思いますが)の、光の翼を持つヴィクトリーなガンダムです。
※注:4 こちらも翼を持ったウィングなガンダムが元ネタです、飛び散る羽がやたらと印象的でした。
※注:5 これは原作にはない設定です、恐らく花が存在するのはこういう理由じゃないかと思いました。
おまけ。
【タマモンのショート劇場】
「フンフンフ〜〜ン♪」
「……なあ、タマモ」
「なぁにぃ?」
「やたら嬉しそうだが、やっぱりそのゴスロリ服って……」
「そぉよぉ〜? “KONAKONA”に教えてもらったのぉ〜」
「やっぱり……ってか、その喋り方も……ったくぅ!」
「まぁまぁ、落ち着いてよ、お兄ちゃん……ちゃんと乳酸菌摂ってるぅ〜?」
「だあっ! その格好でその台詞と喋り方はやめい!! マジでシャレにならんわ!
ってか、なんでそいつがそれを知っている!?」
「いいじゃない、いいじゃない♪ それじゃちょっと買い物に行ってきま〜〜す♪」
「あっ! こらっ! その格好で商店街なんかに行くな!! ちょっと待てーーい!!」
はい、元ネタ知ってる人 挙手〜〜〜(´*・ω・)ノ
それから本編飛ばしてきた人も手を挙げなさい……先生は怒りませんから……(#^∀^)
【タマモンのショート劇場】 終わり
後書き。
はい、第十話をお送りします、チョーやんです。(今日中に間に合わなかった……)
やっと死津喪比女との決着も付きました、後はおキヌちゃんの復活イベントで死津喪比女編は終わりです。
それと前話なんですが、本当は先週の頭に投稿する予定だったんですけど……
あまりにも説明文が多くて書き直しに手間取りました(汗)。
それで今回はあまり間を置かずに投稿できたんですけどね……(^∀^;)
それにしても、今回はネタ満載でした……おまけにまで……(´∀`;) (元ネタはローゼンのあの方です)
横島君を強くし過ぎた印象がありますが、まぁ、その分バランスは取っています。
使い過ぎるとああなりますんで、今後は横島君も使用を控えるでしょう。
ま、今回は少々ぶち切れてましたけど……(−−;)
それとタマモンはでっかい爆弾を背負ってもらいました。
それが今後の展開でどうなるかは…………え〜と、ど、どうしよう? コレ<マテコラ
ま、冗談はこのくらいにして、次回の第十一話をお待ち下さい。
ではレス返しです。
●そうか様
はい、今回はタマモンも大活躍です。ま、最後にちょっとダークな所がありましたけど……(´∀`;)
●いしゅたる様
今回もたくさんのご指摘とご指導ありがとうございます。
お気になさらず、今後も気になる点がありましたらドンドン突っ込んで下さい。
>『妾(わらわ)』ではなく『わし』
ぎゃああああああああああああああああああ!!! ま、またこんなポカミスを……orz
次の投稿までには修正しておきます。(ノ∀`)
>「分かってない」って文句言いたく
はい、相変わらず分かっていません。まぁ、まだ先の話ですが、それを修正する……おっととと。
ま、まぁまだ先の話ですw
>さすがに違うんじゃないかなーと
そうですねぇ……ちょっと考えが足りませんでしたね。あ、別に黒キヌ様の信者ではありませんよ?(汗)
私はあまりラブコメものを読まないんですが、何か読んだほうがいいでしょうねぇ。
●月猫様
やっぱり居たんですね……あ、冗談ですからお気になさらず(と、言いながら水が入ったバケツを……w)
●ヨッスィ〜様
ご指摘ありがとうございます。やはり気になりますよねぇ……(´∀`;)
今回はなるべく『……』を多用しないように心がけましたが、どうでしたでしょうか?
それと説明文を減らしたのは、それだけだとあまりにも感情移入し難いのではないかと思ったからです。
台詞と描写で表して説明文で補足する。こんな感じにしたかったんですが……やはり難しいです。
●ながお様
はい、おキヌちゃんのパワーアップに関してはあれだけではないのですが、
喜んで頂けてなによりですw
とりあえずあの舞でできるのは回避のみとしております、エミさんのようなアレは……
一応考えてはいたんですが、ちょっと難しいかもしれません。
でも、アイデアは面白いんで何かに使うかもしれませんね。
>ヒャクメ
はいw ほんとにギャグで落とされるパターンが多いですけど。
原作で心眼を授けたはずなんですが、ほとんど生かされることがなかったんで、ここで出してみました。
●鹿苑寺様
あ〜……あの石神様ですか。確かにプロレス技を使うおキヌちゃんのSSもありますが、
正直、あまりにもキャラに合わないような気がしまして……(滝汗)
それと最後の方はちょっと分からなかったので……ごめんなさい><
●クロト様
>ある意味中途半端な状態
はい、まったくその通りの状態です。本当はギャグで落とすパターンも考えたんですが、
流石に精神年齢三十路近くの横島君がやるのは無理があるかな〜と思いまして……
今後、どのように横島君が成長(ある意味退行?)するか見守ってあげて下さい。
>彼女は空を飛ぶことができた気もしますが
え? ……(原作を読み直し中)あー、どうなんでしょうか? 飛べるのかどうかは判断出来かねますが、
もしそうだとしても、この作品では出来ないことにしてあります。
>例の泉
はい、そういうことだったんです。一応はおキヌが横島と出会った場所に居た理由を考えた結果でした。
以上、レス返しでした。今回もご指摘やご指導、突っ込みなどがありましたら遠慮なくお申し下さい。