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「光と影のカプリス 第145話(GS)」

クロト (2008-04-08 20:44)
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 弓はもうGS試験に合格できるだけの霊力を持っているが、それでも雪之丞と比べれば半分以下だ。殴られた横島はすぐに起き上がって、不当な暴力に抗議の声をあげた。

「な、何するんだよいきなり。痛えじゃねーか」

 それはごく当然の主張だったが、弓は彼よりも腹を立てた様子で逆ねじを食わせた。

「それはこっちの台詞です! もう勝負はついてたのに『ナブって始末してくれる』って、雪之丞に何か恨みでもあるんですの!?」

 組み手の邪魔をするのが良くないことだという事くらいは弓も承知している。しかし動けなくなった相手の背後を取ったのなら勝利宣言をして終わりにしてもいいところを、わざわざ手間をかけて痛めつけようとはどういう料簡なのか。
 すると横島はちょっと目をしばたたかせた後、いっそおごそかと言っていいような口調で、

「ああ。恨みはねーけど、仏罰を下す理由ならある」
「ぶ、仏罰!?」

 その穏やかでない単語に今度は弓が驚いて首をすくめると、横島はくわっと両目を見開いて思いの丈をぶちまけた。

「そーだ、バトルマニアのくせにじょしこーせーを4人も侍らせるなんて生意気なんじゃー! 弓さんもそー思うだろ?」
「……」

 弓はいろんな意味で力が抜けて、これ以上追及する気力も失せてしまった。まあ彼氏が意味もなくボコられるのは阻止できたのだから、別に不都合はないのだが。

「……で、雪之丞。あなたまだ動けないの?」

 弓がふとその彼氏の方に顔を向けてそう訊ねると、雪之丞はさも面目なさげに声だけで答えてきた。

「ああ、上半身は何とか動かせるんだが脚が全然力入らねぇ……もうしばらくは立ってるのがやっとだな」

 雪之丞の魔装術の装甲は頭部や胸、肩は厚いが下半身や前腕は比較的薄い。その弱い脚に集中的に麻痺ガスを吹きつけられたのだから、そうそうすぐには治らないのだ。
 ただ雪之丞の態度に怒りや不満といったものはなかった。実際弓の言う通りあれで自分の負けは決まっていたから、むしろ「降参」なんて屈辱的な台詞を口にせずに済んだことを感謝しているくらいなのだ。
 負けたことは悔しいといえば悔しいが、それは己の未熟のせいだから弓に八つ当たりするような事ではない。ただ次回の組み手や除霊仕事の教訓にしようと思うだけである。

「……横島さん、雪之丞はどのくらい経てば治るんですか?」

 雪之丞の返事に少し不安になったのか、弓はまた横島の方に向き直ってそう訊ねたが、煩悩少年からの回答ははかばかしいものではなかった。

「いや、人間にこの技使ったのは初めてだからそれは俺にも分からん。
 でも後くされはないからそんなに心配することはねーと思うぞ? そっちは小竜姫さまのお墨付きだから」
「……そうですか」

 弓は横島のいい加減さにちょっとあきれたが、後遺症はないと言うなら怒るほどの事はない。とりあえず雪之丞をどこかに座らせてやろうかと思ったところへ、横島の連れの金髪少女が何か紙切れのようなものを差し出してきた。

「これは……治癒札ですか?」

 大きめの短冊のような紙に、「傷病平癒」と書かれていたことから弓がそう当たりをつけて訊ねると、少女はこくんと頷いて、

「うん、横島が書いたやつだけどけっこう効くわよ」

 何しろ竜珠の「他人が横島に向けた煩悩も霊力に変えることができる」機能を使って書かれたものだから、その効力は絶大だ。もし横島に「霊具職人」としての社会的信用があったならこれだけで食べて行けるくらいに。
 ちなみにタマモが傷病平癒符を雪之丞に直接貼り付けずわざわざ弓に渡したのは、彼女の雪之丞の恋人としての立場を尊重したからである。雪之丞にちょっかいを出すつもりはないという意思表示だった。

「ああ、そういえばあの時ももらってましたわね。ありがとう」

 前回のことを思い出した弓がそう礼を言うと、タマモは頷いて今度は横島の方に顔を向けた。

「横島も使う?」
「いや、俺はいいよ。もったいないから」

 お札を書くのは結構疲れるのだ。この程度のダメージは再生能力ですぐ治るから、わざわざお札を使うほどのことはない。しかしタマモが弓にお札を渡すのは止めなかったところを見ると、ナブるだの仏罰だのというのは本気ではなかったようだ。
 そして弓がそんな2人の会話を背中で聞きながら、魔装術を解除した雪之丞の眉間に傷病平癒符を貼り付けてやると、その横合いから遠藤がニヨニヨと意地の悪そうな笑みを浮かべながらチャチャを入れてきた。

「でも弓さんアツアツよね。横島さんが本当に伊達さんをナブるかどーかは分かんなかったのに、あんな血相変えて飛び出したりして」

 横島は口はけっこう遠慮ないしセコい戦い方もするけれど、決して暴力を好む性格ではない。あの発言は単に雪之丞にギブアップさせるための脅しだったと考えた方がしっくり来るが、弓にはそういう冷静な判断をする余裕はなかったのだろう。まことにお熱いことで、大変うらやましい話である。
 不意の突っ込みを受けた弓がびくっと後ずさりして、顔を真っ赤に茹で上がらせた。

「なっ……わ、私はただ」

 大勢の前でそんなことを認めるのはさすがに恥ずかしい。弓は何とか弁解の言葉をひねり出そうとしたが、「無意味な暴力を止めようとしただけ」という建前はすでに封じられている。言葉に詰まって肩をぷるぷる震わせた。

「ただ……何カナ? カナカナ!?」

 遠藤がわざとらしく手で笑みを隠しつつ、さらに1歩を踏み込む。もはやこれまでと見た弓は開き直って、ばっと手を振ってなぜか横島を指さした。

「そ、そーよ、私は雪之丞とアツアツよ! あなたも羨ましかったら彼氏つくればいーじゃない、そこの横島さんとか」
「へえっ!?」

 遠藤は彼氏持ち女をやり込められた事には満足したが、弓の台詞の最後にはちょっと驚いてしまった。当の横島もびっくりして目を白黒させたが、口は出さずに状況の推移を見守っている。
 しかしもちろん、遠藤が横島の期待するような返事をするわけはなかった。

「そりゃまあ私も彼氏は欲しいけど……相手を選ぶ自由はまだ捨てたくないし」
「酷!?」

 と横島が思わず立ち上がってクレームをつける。別に遠藤の彼氏になりたいというわけではないが、タイマンで魔装術使いに勝った上に治癒札を書けるという特技まで見せたのに、何故そこまで言われねばならぬのか。
 横島に詰め寄られた遠藤は反射的に両手で体をかばいつつ、

「あー、横島さんの場合は能力より性格の問題と言いますか……セクハラ魔人とゆーかやることセコすぎとゆーか」

 本当の果し合いならともかく、ただの組み手、つまり稽古のための試合であそこまでするのはどうかと思うのだ。しかし一応は目上かつ実力者なのにこんな失礼なことを目の前で言えたり、弓に至っては拳で突っ込みまで入れられるというのは、ひょっとしたら彼の人徳なのだろうかと思わなくもない。
 ……単に助平でおバカで不恰好で芸人だから、能力に見合った敬意を払う気になれないというだけのような気もするが。
 もっとも横島に伝わるのは、あくまで彼女が口に出した部分だけなわけで。

「おがーん! ちくしょー、どーせ俺はそーゆーキャラなんだ! ぐわーとか迫っていやーとか言われて!
 でもいーんだ、俺には小竜姫さまがいるんだからー!!」

 痛い思いして戦った事が無駄に終わった悲しみに泣きわめく横島だったが、それでもタマモやカリンの名は出さない辺り、割と理性は残っているようだ。

(……。小竜姫さまって神様も大変ねえ)

 遠藤たちはこんなおバカに「片思い」されている小竜姫に同情の念を禁じ得なかったが、そこへ空気を読んだのか無視したのか、峯が横島の傍らに歩み寄って声をかけた。

「横島さん、カリンさんはまだ呼ばないんですか?」
「…………は? 何でだ?」

 とりあえず泣くのは止めた横島が胡乱げな顔を向けてきたが、峯は別段気にかけた風もなく、

「せっかく組み手を見せてもらったんですから、講評とかしてもらえたらいいかなと」

 とごく普段通りの口調で答えた。
 もっともさっきの組み手はパワーや能力こそ凄かったものの、戦いの構図自体は分かりやすいものだったから、解説してもらうまでもなく理解はできたのだが、カリンを呼んでもらう口実や会話するネタとしては使えるのだ。

「……別にそんなの要らんだろ」

 しかし横島は自分が講評を必要とするほどご立派な戦術を使ったとは思っていないし、むしろ人前で解説などしてほしくない。そんな内心をはっきり顔に出しながら断ったのだが、それでも峯は引かなかった。

「じゃあ伊達さんが治るまでの暇つぶしに、私と組み手でも」
「……。まあそれならいっか」

 横島はどうせなら自分が相手して組んずほぐれつしたいと激しく思うのだが、それは言っても無駄である。今のカリンならどっちもケガはしないだろうと考えて、峯の望み通り己の分身の少女を呼び出してやった。
 召喚に応じて横島の頭上に現れたカリンは、何かを警戒しているのかいつものボディスーツの上に銀色のフルプレートアーマーを着て、手にはでっかい長剣を持っていた。
 さすがの峯もこれには恐れをなしたのか、

「あ、あの、カリンさん……? ど、どうしてそんな重武装を?」

 と訊ねる口調はどもっていたが、地面に降りたカリンは対照的にくくっと唇の端をゆがめて、

「それは峯殿も知っているはずだぞ? それより組み手なら私より弓殿とやる方がいいと思うが」

 と答えたのはパンドジニウムで峯に胸や内股を触られた記憶がまだ鮮明に残っていたからだが、弓とやれば彼女の修行にもなると思ったからでもある。今なら多少ケガしても治してやれるし。
 しかし峯はさも心外そうな顔つきで、カリンの提言をあっさり却下した。

「いえ、弓さんには興味ないですから」
「なっ!?」

 そのあまりにライトな扱いに、今度は弓が激しく目を剥いた。クラス対抗戦の時は勝手に人の奥義まで調べ上げていたくせに、1度勝ったくらいで待遇を変えすぎではないだろうか。

「ちょ、ちょっと峯さん、興味ないっていったい……」
「だって弓さんとやっても面白くないし」

 峯は別に弓に対するライバル意識を完全に捨てたわけではないのだが、今はカリンと仲良くすることの方が1000万倍ほど大事なので、弓への返事はやっぱり木で鼻をくくったような、完璧にアウトオブ眼中みたいなものだった。当然弓はますます憤慨して、どこからか取り出した手袋を峯の胸元に叩きつける。

「け、決闘を申し込みます! 今ここでっ!!」


 というわけで、峯は不本意ながら組み手は弓とすることになってしまった。ドジっ娘の面目躍如というところだろうか。
 もう少し愛想よくしておけば良かったと後悔していたが、戦いに臨むその表情は真剣である。まじめにやらないとカリンに失望されるだろうし、弓は手を抜いて勝てる相手ではないからだ。

(でも最初から水晶観音つけてるってのはずっこいわよね)

 弓はさっき横島を殴る前に水晶観音を出したあと解除していないので、カリンの合図を待っている今すでに装着済みである。これでは技を出させないとか、出す瞬間の隙を突くといった作戦はとれない。
 峯のパワーでは強化服の上から殴ってまともなダメージを与えるのは無理なので、格闘で弓を倒すには露出した頭部を狙うしかない。それでは勝ち目などないから触手で勝負するしかないわけで、かなり不利な戦いを強いられることになるだろう。

(こっちは素手なんだから使うなとか言ってみようかしら)

 果し合いとか除霊の仕事であれば、どんな道具を持ち込もうと当人の自由である。しかしこれは(弓は決闘だとか言っているが実質は)ただの練習試合なのだから、条件は同じであるべきだ。林間学校で横島と試合した時もそうだったではないか。
 ―――よし、それでいこう。

「ところで弓さん。見ての通り私は素手なんだから、あなたもその水晶観音は外してほしいんだけど」
「!?」

 思わぬ要求を受けて弓は一瞬口ごもった。
 確かに峯の言い分には一理ある。片方が奥義のアイテムを使うのにもう片方は素手というのは実に不公平な話だ。
 しかし弓は正直なところ、素手勝負では四分六分で自分が不利だと思っていた。だが前に対抗戦で負けている以上、今日また負けるわけにはいかない。

「あなた対抗戦の時だって素手だったじゃない。私はこれが弓式の標準装備なんだから、お互いこれがデフォルトって事でいいと思うけど」
「む」

 今度は峯が押し黙る番だった。なるほどクラス対抗戦の時をデフォルトとするなら、峯自身はあの時と同じだが弓は薙刀がない分不利なくらいなのだ。
 しかし即座にこんな理屈を持ち出してくるとは、やはり自分がライバル視しているだけあって色ボケしてても頭はちゃんと回っていると見える。
 だがこれでは自分に不利だ。峯がどう対抗すべきか考えていると、見届け人というか審判のカリンが口がはさんできた。

「なら峯殿が何か道具を持てばいいんじゃないか?」
「え? あ、はい。でも今は持ってませんし」

 というか、級友に使ってもいいような武器自体を持っていないのだ。林間学校に持って行っていた寸鉄(すんてつ)やら角手(かくて)やらは、クリーンヒットしたらシャレで済まない傷跡を残してしまうし。

「ふむ、ならこの剣でも使うか? 峯殿の霊力をこめるのは無理だが弓殿の鎧にも通用はすると思うし、刃引きだから頭さえ狙わなければ大ケガもしないだろうから」
「はい、喜んでっ!!」

 カリンが手助けしてくれるというのを峯が拒むわけはない。大喜びで剣を受け取ると、見た目よりはるかに軽いその感触に驚きながら弓の顔にずびしと突きつけた。

「さあかかって来なさい弓さん! カリンさんに頂いたこの性剣エターナルハーツで、あなたに2度目の敗北の味をかみしめさせてあげるから」
「聖剣って、何を大げさな……」

 実は全然大げさじゃない、というか字が違うことに弓は気づかなかった。急にハイテンションになった峯にあきれつつも、改めて腰を落として身構える。
 本当は彼女に剣など使ってほしくないのだが、自分が水晶観音をまとっている以上文句は言えない。峯が剣術に造詣が深いとも思えないし、この条件で戦う覚悟を決めた。
 カリンは「頂いた」とか「性剣」とかいう単語に小さな苦笑を浮かべたが、あえて何も言わずにすっと右手を頭上に掲げる。

「2人とも準備はいいか?」

 と声をかけ、峯と弓が頷くのを確かめると、

「では……始めっ!」

 とその右手を振り下ろした。


 カリンが開始の合図をすると、弓はいきなり突進して接近戦を挑んだ。懐にもぐり込めば剣も触手も無用の長物になるという判断からである。
 しかしそれはあまりにも順当すぎる行動だったために、峯にはしっかり読まれていた。ドンピシャのタイミングで胸元に剣を突き出されて、あわててサイドステップして逃げるハメになる。彼氏の前でちょっと不恰好な動きをさらしてしまったのが少し悔しかった。
 峯は弓の見立て通り剣術については素人だったが、エターナルハーツ(仮称)は非常に軽いし、単なる棒状武器として扱うのなら特別な技術は要らない。得物の長さを生かした片手突きを連発して、徹底的に弓の接近を阻む。

「くっ、この、やはり強い……!」

 素手の間合いに飛び込んで腕を掴んでしまえば弓の勝ちなのだが、さすがにそれを簡単に許すほど峯は甘くなかった。それどころか腹に一撃を受けて後ろによろめいてしまう。

「くうっ!」

 かなりの衝撃。弓がそこに手を当ててみると、強化服に直径5センチほどのヒビが入っていた。
 追撃を避けるため弓はとっさに後ろに跳んだが、峯は追いかけては来ず、逆にバックステップしてさらに間合いを広げていた。そして訝しがる弓に向かって会心の笑みを浮かべる。

「さあ、とっくりと拝むがいいわ。私の新技を!」
「!?」

 峯の額から霊体の触手が2本現れ、真上にすーっと伸びていく。それは形状こそ対抗戦の時と同じだったが、色は真っ赤になっていた。驚く弓に向かって、全霊力をこめて振り下ろす!

「なっ!?」

 真紅の鞭がすごい勢いで落ちてくる。このために間合いを広げたのか、と弓は気づいたが、そんなことを深く考える前にその体は条件反射的に真横に跳び退いていた。
 一瞬前まで弓がいた所を触手が垂直に通り過ぎ、地面にぶち当たって「バチバチーン!」と痛そうな音をたてる。

「こ、これは……!?」

 対抗戦の時に見た触手はここまでの速さと強度はなかったはずだ。さっと顔を青ざめさせた弓に、峯が勝ち誇った笑みを向ける。

「どう、驚いた? 痛い目に遭う前に降参してもいいのよ」
「くっ、誰が!」

 むろんプライドの高い弓がこの段階での降伏勧告に応じるはずはない。というか峯は単にこき下ろしているだけなのだが、弓は屈辱に眉をしかめながらも、今はさらに横に跳んで距離を取ることに必死だった。
 しかしその足首に、蛇のように地を這ってきた触手がくるくると絡みつく。

「なっ!?」

 驚きの声をあげる間もあらばこそ。弓の体は2本の触手によって空中に持ち上げられ、逆さ吊りにされていた。パンドジニウムでの魔鈴のようにスカート姿だったらあられもない格好になっていたところだが、弓は水晶観音の強化服を着ているのでそっち方面は無問題である。

「終わったわね。降参する?」

 と峯は今度こそ本気でギブアップを勧めたのだが、弓はそれを鼻で哂った。両手を前に突き出して、渾身の霊波砲を撃ち出す!

「―――ッ!?」

 峯の顔が驚愕にゆがんだ。これはまったく予想していなかった攻撃で、しかも人1人を空中でささえているため横に跳んでかわす事もできない。それでも顔に来た1発は何とか腕でブロックしたが、もう1発は腹にまともに入ってしまった。

「ぐうっ……!」

 胃の中身が逆流してくるような不快感とともに脚の力が抜けて、峯は後ろに尻餅をついた。当然触手のコントロールも甘くなり、弓の体を取り落としてしまう。
 弓はそのまま落下したが、水晶観音の腕を伸ばして地面につけ、逆立ちから戻る時のような動作で体勢を整えた。峯も腹を手で押さえつつも立ち上がり、いったん触手を自分のそばに戻して状況を仕切り直す。

「結構効いたようね。あなたの技には驚いたけど、私だって負けたまま足踏みしてたわけじゃないのよ」

 弓がどことなく自慢げな顔でそうのたまった。
 あの敗北のあと弓は峯の触手に対抗する方法をいろいろ模索していたのだが、雪之丞との議論で単純に飛び道具をぶつければいいという素朴な結論にたどり着いたのである。片腕1本動かせるなら、そこから霊波砲を撃てば触手のコントロールのため体の動きがおろそかになっている峯はかわしようがないだろうというわけだ。
 弓式除霊術では霊波砲はやっていないので、父親には内緒で雪之丞に教えてもらったのだが、彼氏の指導で思い通りの成果が出せたことに弓は内心ですっかりご満悦だった。

「……なるほど。勝つメドもないのにケンカ売ってきたわけじゃないってことか」

 峯は弓を改めて見直した。まさか自分に勝つために、弓式にはない技まで習得してくるとは。
 対抗戦で勝ったあとは彼女に対する注意を怠っていたが、やはり弓は首位を争うに相応しいライバルだ。

「いいわ。どっちの新技が上か、白黒つけてあげようじゃない!」

 峯は改めてそう宣言すると、エターナルハーツ(仮称)を構えて跳躍した。


 ―――つづく。

 なぜか峯と弓が最強を決める戦いを始めてしまいました<マテ
 弓式除霊術に霊波砲はないという設定になってますが、原作の弓は1度も使っていないのでこういう展開にしました。
 あと「一番湯のカナタ」を持っている方は、1巻第7話の表紙を見ていただくとカリンがどんな鎧着てるのか絵で確かめられますので(ぉ
 ところで前話のレスで「六女組の横島に対する評価が低い」という声が多かったのに少し驚きました。プライドの高い弓が「素手で格闘して勝てる気はしない」とまで思ってるんですから、能力については決して軽く見てはいないのですが、やはりもう少し文量をついやした方が良かったようです。なので卑怯技に対する認識も込みで今回少しフォローを入れました。
 横島VS雪之丞の勝敗については、本文の通り弓の横槍に関係なく雪之丞の敗北であります。
 全然違う話ですが昨日はトップページのヒットが4万ちょうどですか。そういう事もあるんですな。
 ではレス返しを。

○ミアフさん
 横島君ももう少しまじめな態度をしてれば、正当に評価してもらえるんですがねぃ。
 弓さんの乱入はむしろ歓迎されたようです。お熱いですねぇ(ぉ

○KOS-MOSさん
 横島らしいと言っていただけると安心しますw
 第2ラウンドは無理でしたが、また挑戦してくる可能性はかなり高いですねぇ。

○星の影さん
 お褒めいただきありがとうございますー。
>決着
 はい、横島君が毎回バカをやるのでなかなか普通にしめられません(ぉ
 彼への評価については仰る通りで(酷)。
>それを認められない人がいる
 いえ、むしろ認めたからこそ割り込んだのですよー。お熱いのです(ぉ

○遊鬼さん
 横島君は女の子のためなら真っ向勝負でも何でもするのですが、やはり「ちやほやされたい」という程度の動機では長続きしませんでしたw
 そしてすぐ搦め手に走って呆れられてこそ横島君だと筆者も思いますw

○cpyさん
 はい、横島君はこういうヤツですw
 そして普通の人には不評なのも(以下略)。
 ユッキーについては本文の通りでありますー。

○Tシローさん
 はい、雪之丞は下半身がマヒしたままなので、素直に負けを認めております。そもそも雪之丞が横島君に求めるのは、ピートにはない搦め手とか意外性とかですからねぇ。

○紅さん
 まあ弓さんが乱入しなければ、横島君はえぐいイジめ方をしてさらにイメージダウンしてたわけですから、むしろ彼のためになってたという見方もできるわけですよーw
 なおユッキーは暴れようにも、脚が動かないので暴れられませんw

○アラヤさん
 就職おめでとうございます。
 横島君の野望は今回は完全なる失敗に終わりましたが、まあ仰る通りすでに奥さんが3人もいるのでまったく問題ナシですな。

○山瀬竜さん
 むう、予想されてましたかw
 まあ仰る通り雪之丞は横島君にとってハメやすい相手ですからねぇ。令子さんだったら……うーん、美衣さん編によると「横島クンの思考パターンなんか全部お見通し」だそうですが、まあ勝った時のご褒美次第ってところでしょうかw
 しかし単独で雪之丞に勝ってしまうとは、最初の頃は何もできなかったのにずいぶん成長したものだなぁ(ぉ
 一家集合はまだイベントがあるのでもう少し先になりますー。
>ギャラリー
 横島君の能力はそれなりに評価できても、普通の女子高生から見ればあの人格で大幅なマイナス補正がつきますから(酷)。
 仰る通りカリン付きでとなれば、戦闘力アップに加えてマイナス補正も減るのですごい高評価になるんですが、そうはならないのが横島君なのですw
>美智恵さん
 今の横島君のフルスペック知ったらまた執着燃やすかも知れませんねぇ。こうなったら色仕掛けでもとか言って<マテ

○whiteangelさん
 ありがとうございますー。でも死合だったら横島君はあんなもんじゃないですよー。カリンと挟み撃ちとかもっとえぐい事やりますw

○チョーやんさん
 HDDが壊れるとはご愁傷さまでした。バックアップは小まめに取っておいた方がいいですよー。
 うちの横島君は頭の中身は原作よりいくらかマシという程度なので、強い相手にはすぐセコいやり方に走ります。ビデオ見せたくらいで反省するほど甘い男じゃないですよー<マテ
 仰る通りタマモたちにはその方がいいので何も言わないわけですがw

○ncroさん
 はい、あの状況ではもう誰が見ても勝負アリですから。
 雪之丞もそれを認められないほど頑迷じゃないですし。

○Februaryさん
 説教したのはカリンじゃなくて弓さんでしたw
 ユッキーは確かに悟空よりベジータって感じですよねぇ。しかし中の人的には(以下略)。
>シリアスが持続する横島はヨコシマじゃない!!
 そんな横島はGSとして存在価値ないですし(酷)。

○1さん
 命のやり取りをするような戦いなら、仰る通り横島式の方が普通でしょうね。むしろカリンを出さないぶん甘いくらいです。
 雪之丞についてはそんな感じですかねぇ。唐巣やピートほど善良ではないとはいえ、戦うこと自体に面白さとか喜びを感じるタイプですから、少なくとも自分が卑怯技を使うのは好まないでしょうし。
 六女組については本文の通りですー。あと横島君の場合卑怯というよりセコいという感じですから、あまり褒める気にならないというのもあるかと。
>真っ向勝負VS搦め手戦法
 なるほど、確かにそんな話があったかも知れませんねぇ。
 横島君じゃなくて令子さんだったら六女組ももっと真剣に観察してたでしょうな(ぉ

○ぞらさん
 はい、まさしくそんな感じでありますー。読み取っていただけて嬉しいです。
 雪之丞はもともと横島君が卑怯技を使うヤツと知った上での挑戦ですから、むしろ卑怯技を出してくれないと面白くないわけですw
 それでもカリン付きだと仰る通り勝ち目が薄いと理解はしてたでしょうから、女子高生のギャラリーがいる機会に挑んだのは、そうすれば横島君が自分だけで戦おうとすると読んだ上での策だったのかも知れませんな(ぇ
 弓さんについては本文の通りですー。

○読石さん
 六女組が男だったら、横島君のセクハラとかにもそれほど惑わされずにもっと的確な評価ができるんでしょうけど、高1女子では難しいのではないかと思うのです。
 弓さんについてはひとえに「愛」ゆえであります!

○ハルにゃんさん
 はい、横島君のマジメというのはああいうやり方のことですw
 いかに雪之丞がバトルマニアでも、ここの横島君の戦法なんて見たことも聞いた事もないでしょうからねぇ。次があったらもう通じないでしょうけどw
 弓さんについてはまさにその通りです。横島君に向けるデレ要素なんて皆無ですがーw
 峯さんは今回も愛に生きてましたが、どじっ娘なので組み手と称してカリンと触手プレイする作戦は失敗しました(ぇ というか「間違ってない」でいいんでしょーかww

○食欲魔人さん
 はい、ユッキーも強いですよー。横島君の搦め手技があまりに非常識だからまともに食らってしまっただけで、再戦したら横島君かなりヤバくなるでしょうな。
 六女組については上記の通りですー。
>全員横島のような戦い方になったら
 それは名門六道女学院として認めがたいことかとw

○彩さん
 ご意見ありがとうございます。
>戦闘描写について
 確かに理にかなったご意見ですが、パワーバランスとか登場人物の行動パターンといったものもありますので、こうしたものも勘案しながら参考にしていきたいと思います。
 たとえば横島が本当に雪之丞に対して真っ向勝負ではまるで歯が立たないのであれば、彼は初めから1対1なんてやらないでしょうし。
 最後の霧隠れ攻撃については、あえて横島の行動を書かないことで意外さを出そうという意図だったのですが、決着をつける場面としてはやはり描写が不足だったかも知れません。
>弓の乱入について
 彼女が怒ったのは横島の卑怯さに対してではなく、動けなくなった者を一方的にナブろうとした乱暴さに対してであって、そこは前回の「てめえを可哀そうとはまったく思わねえ」「思いなさいよ」というやり取りで表現していたつもりなのですが、不足だったでしょうか。
>一話一話での盛り上げ所
 これについては前にも意見をいただいた事があったのですが、考慮してはいるのですがなかなか難しいものですね。
>追伸について
 そういう手法を使った覚えはないのですが……。
 前回のバトルについて言えば、「横島の戦法が正しくて六女組の感想が間違っている」といった価値判断はしてませんし。
 カリンや小竜姫は確かに強力な存在ですが、キャラの間で知性や能力の格差があるのは仕方の無いことで、たとえば原作中期までの横島は令子やピートに比べて「ありとあらゆる面で負けて」ますが、だからどうこうという話にはなりませんし。

○内海一弘さん
 形としては確かに反則負けですねぇ。お互いこの方が良かったでしょうけどw
 人間ルールなら間違いなくユッキーが上ですな。天候操作も飛行も再生も竜スキルですしw
 横島君の評価が今いちなのはもう宇宙意志ということで(酷)。
 両親帰国は今しばらくお待ち下さいー。

○ばーばろさん
>カリン
 いかに主人公の一角とはいえ、たまにはこういう日もあるのですー。
>ユッキーの戦い方
 そうですねぇ。横島君の能力のことは聞いてたんですから、水のない場所を選んでいればまた違った結果になったかも知れないんですが、横島君とユッキーが遠慮なしで戦える場所なんてそうそうありませんからねぇ。
>「模擬戦」と「実戦」の違い
 むしろ理解してたからこそ、横島君への評価が低くなるのですよー。
 負けても何も困らないのに何でそこまでするのか、という感じでw
>引き出し
 ここの横島君は本当にいっぱい持ってますw
>遠藤さんと神野さん
 横島君の能力についてはある程度理解してくれてるんですけど、人格面で巨大なマイナス補正がかかってますからねえ。今回の作戦はみごと失敗に終わりましたw

○通りすがりのちさん
 たぶん技術的な問題ではないかと。
 風でガスを思ったところ「だけ」に吹き飛ばすには相当細かいコントロールが要りそうですし。

○XINNさん
 横島君ももっとパワーがあればすごい風術や水術が使えるんですが、それはまだ先のことですねー。その時までこのSSが続けばの話ですが(ぉ
 横島君は精霊王より、シルフやウンディーネと仲良くなりたがりそうな気がしますw
>ジョジョ3部の最終決戦
 分かってくれる方がいて良かったですー。仰る通りカリンは星属性ですし時を操る技使えますしw
 アルターな兄貴ネタは第131話を見ていただけると嬉しいです(ぉ
>弓さん
 これも愛ゆえということでひとつ。
>小竜気全身装着の外見
 こっちはカリンが関わってるので、人型の竜という感じで横島君の技よりはかっこいいですw
>ヤればヤる程、お札が
 本当にお得なヤツですよね。

○風来人さん
>猫草
 うーん、まさにあんな感じでしょうか。熟達したら生身の人間には異様に有効な技になりそうですな。
>妙神山でイチャイチャしながらも修行した横島君に軍配
 何かものすごく世の中不公平感のある結末のような気がしてきましたw
>実際大樹が月にいったら
 月面支社が無くて本当に良かったですのぅ(^^;

○冬に咲く雪だるまさん
>英雄といわれるものの表向きの物語ですら
 八岐大蛇退治もそうですよね。まあ普通にやって勝てないなら策を練るしかないわけですし。
 ただ搦め手技は見破られると自分に隙ができますし警戒もされますから、毎回そればっかりというのも問題だと思われます。
>六道の生徒のように〜〜〜
 クラスメイト相手に横島君みたいなやり方するわけにもいきませんしねぇw
 横島君は一応「普通の戦い方」がどんなものかは分かってますが、ちょっと強い相手が来るとすぐに地が出てしまうのですよーw
>死なないための能力
 横島君は「ウンコ食えば死なずにすむなら〜〜〜」とか言い出すヤツですから、攻撃より回避が強くなるのは必然でしょうなw
>雪之丞も凄いな、凄いマザコンだ
 はい、まさに戦闘民族なマザコンなのです!
>報告しなきゃいけないこと
 いあ、それは第113話からのエピソードでやってあるんですが、大樹にはまだ直接は話してませんから何か一悶着あるかも知れませんw

○UEPONさん
 組み手の結果とギャラリーの評価については上記の通りであります。
>シロとか成長しても子ども扱いだし
 アルテミス憑依Verまで行ったらドキドキしたので、やっぱり見た目が最重要なのかも知れませんけど(ぉ

   ではまた。

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