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「『最強の』後継者その23(GS)」

ラッフィン (2008-04-01 21:52/2008-04-01 23:36)
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森と急斜面に挟まれ、真ん中に大きな穴を開けている山道にメイドと黒服達が対峙していた。
両者には動きが見られないが、緊迫した空気に包まれ一種の嵐の前の静けさであることがわかる。互いに額に浮かんだ多量の汗がそれを物語る。両者ともちょっとの隙でも見せようものなら、すぐさま仕掛けようとしているのだ。
ただ、大鎌を構えているメイドはわかるが、黒服のリーダーが構えているライターと忠夫の写真でどうやってメイドの動きをとめていられるのだろうか?という疑問は第三者には決してわからない難問である。

「・・・あのメイドを捕らえろ」
「「「「はっ!!」」」」

リーダーが写真にライターを近づけたまま部下に命じる。命じられた部下は忠実に数人でフミを包囲しながら、徐々に距離を詰めていく。その行動をとっている者の誰もが侮り、油断と言ったものを持ち合わせずに、その命令だけを忠実にこなそうとする強い意志を持っていることが見て取れる。さきほどからお寝んねしているSS達に爪の垢を煎じて飲ませたいほどであるが。さすがのフミも焦りを感じていた。

「隙がありません。さすがにこう警戒されてしまうと下手に動くことが出来ませんね。私が動いてしまうと忠夫様(のゲキレア写真)が殺されて(※焼かれて)しまいます!そ、そんなことになったら私は・・・」

しかし、このまま諦める女ではない。何故なら、これはある意味チャンスだからだ。何せ、冥子だけしか撮ることができない忠夫のある意味ヌード写真である。フミには喉から手が出るほど欲しい一品なのだ。それをうまく行けば手に入れることが出来るのだ。こんなおいしい話はないだろう。そのため、口ではあんなことを言っていてもフミの目は油断なく、相手の隙をうかがっているのだった。
その間にも、黒服達がフミ包囲網をじりじりと狭めていき、ついに後一歩で捕らえられるところまで近づかれてしまう。

「くっ・・・私に触っていいのは忠夫様だけです!こんな汚らわしい手なんかで触られるなんて許されません。この身は全て忠夫様だけのものなんです!」

そんなときだ。あと一歩の間合いまで近づけたことに安心してしまったのか、無意識だがリーダーの手が1センチ下がり、ライラーと写真の間に少しの距離が生まれた。フミはそれを逃さない。

「フミ流戦闘術!残光!!」

ドスン!

それはまさに言葉を体現するような技である。なるべく長く大鎌を持つと全力で地面に撃ちつける。その瞬間に両手を離し、撃ちつけた大鎌の上に立ちミサイルの発射台よろしく跳んだのだ。撃ちつけられしっかりと固定された鎌に足をかけ両足を使ってフルパワーのロケットスタートである。その速さ、光を残すかの如く。
フミを捕らえようと動き始めていた黒服は最初の大鎌を大地に撃ちつけた衝撃で足がおぼつかず、一瞬動けなくなる。その間、フミとリーダーの間を防ぐ者は誰もいないし、何もない。フミは片手を精一杯伸ばして忠夫の写真を獲ろうとリーダーに迫る。
虚を突かれたリーダーは反応に遅れたが、すぐに冷静になって対処した。

「あ!忠夫様!?」

「なんですってぇ!?どこ?どこですかぁ!?どこにいるんですか?忠夫様〜〜〜!!!」

リーダーはあさってのほうに指を指し大声を上げた。いかにもバレバレで幼稚な対処法だったのだが、あっさりとフミはひっかかる。まさか、本当にひっかかってくれるとは思わなかったリーダーは唖然としたが、慌てて飛びのきフミとの距離を開ける。

「あなた、嘘をつきましたね!忠夫様がいるって言うから体が思わず反応しちゃったじゃないですか!私の純情を弄び利用するなんて許せません!成敗です!成敗!むしろ、滅殺です!!

ようやく騙されたと理解したフミの怒りはさきほどのSS達とのやりとりでためたストレスも加わり、大変なものとなっていた。それを見て、リーダーの頬には写真が獲られそうになって浮かんだ汗とは別に、さらに冷や汗が浮かんだのった。

「待て!今回は見逃してやるが、次は・・・ないぞ?」
「くっ・・・卑怯な。忠夫様の写真を人質に・・・忠夫様の写真・・・忠夫様・・・」

「欲しい・・・欲しい・・・欲しい!!

再び、写真にライターを近づけて脅す黒服だが、フミの目にはすでに忠夫の激レア写真しか写っておらず、黒服の言葉も耳に入ってすらいなかった。その目は真っ赤に充血して血走っており、思わず黒服は一歩引いてしまった。
だが、今だに自分達の有利だという状況が彼に精神的余裕を取り戻させる。再び、フミ捕獲を再開するが、今度は同じ過ちを繰り返さないためにフミに言う。

「また飛び掛られても面倒だ。持っている武器を捨てろ!もちろん、隠し持っている武器もだぞ?全部だ!さもなくば、この写真を焼く!」
「くっ・・・」
「早くしろ!!」
「わかりました」

武器を捨てるのを渋るフミだったが、一喝されて悔しそうに顔をゆがめながらも武器を捨て始める。やはり、悔しくても忠夫の激レア写真には変えられないのだ。

ガシャン・・・ガシャン・・・

服の袖口から以前に活躍したトンファーを捨てる。今度はスカートの中に手を入れ、拳銃2丁を捨てると、またスカートの中に手を入れ、バズーカを取り出す。
次々と武器を捨てていくフミを見ている黒服達は捨てていく武器を見るたびに汗が垂れていくのをとめることが出来なかった。
そんな黒服達を気にすることもなく、フミはどんどんと武器を取り出しては捨て、取り出しては捨てるを繰り返すのだった。ようやく全部捨て終えると、フミの後ろには武器の山が。数は・・・20を越えたあたりで数えることをやめてしまったためわからない。とりあえず、どこにこんな隠し持っていたのか疑問に思うが、乙女の秘密を探ることは命に関わるのでやめておこう。

「これで全部です」
「そ、そうか・・・よし、動くな。おい!そいつを捕らえろ!」
「「「「はっ!」」」」

さきほどと同じような状況になったが、フミを包囲しつつ距離を詰める黒服達。彼らもプロだ、さきほどのような失敗はもうしないだろう。武器も取られて人質により動けないフミ。今度こそ絶体絶命かと思いきや、さきほどよりもフミの瞳には力強さが感じ取れる。
黒服が完全にフミを包囲し、捕まえようと手を伸ばす。黒服のリーダーは部下が完全にフミを包囲したためにフミの姿が隠れて見えない。それでも、さきほどの失態を犯さない。油断なくライターを構えている。

「よし、今度こそ!」
「「「獲った!!」」」

カッ!!

ついに黒服がフミを捕らえたと思ったのだが、黒服の手がフミに届く直前、フミの体が明るくぱっと発光した。最後に隠し持っていた小型閃光弾を足元で破裂させたのだ。黒服達はサングラスをかけているが、完全には光を遮断できず思わず目を瞑ってしまう。それでも、感覚でメイド服を掴むことが出来たのでホッと安心する黒服だったが・・・。

「あれ?ふ、服だけだとぉ!?」
「「「な、なんだってぇ〜〜!!」」」

そう、捕まえたと思ったら服だけだったのだ。つまり、黒服が掴んだのはフミのメイド服だけでフミの姿がどこにも見当たらない。本来ならこの時点でリーダーはライターで写真に着火しているはずなのだが、部下達に隠れてフミの姿が見えなくなっていたので反応が遅れてしまったのだ。その一瞬の間が、フミにとっては千載一遇のチャンスであった。

「獲った〜〜〜〜!!!」
「なにぃ!?」

黒服のリーダーを上から奇襲するフミ。武器を捨てたことにより、軽くなった体と強靭な足腰で空高く舞い上がっていたのだ。まさに不意を突かれたリーダー。ちなみに奇襲してきたフミの服はさきほどと変わらずメイド服であったことを記しておく。
ライターに火をつけようと親指を下ろす前にフミによって腕を掴まれ引っ張られる。フミはその引っ張ってバランスを崩したリーダーの頬に拳を叩き込む。まさに、引っ張った力を利用した見事なカウンターパンチであった。さらに驚いたことにフミの拳はリーダーの顔を紙を突き破るかの如く、突き抜けたのだ。これには攻撃したフミが一番驚いた。

「きゃあああああ!!」

ポムッ!?

「へっ?」

まさか、顔を突き破るとは思わなかったフミは悲鳴を上げるが、次の瞬間。そのリーダーの体が軽い破裂音をさせ煙のように消えたのだ。思わず間抜けな声を出してしまったフミだが、その消えたリーダーのあたりに人型に切ってある紙が落ちていたことでカラクリを見破った。

「し、式神ケント紙ですか」

そう、黒服のリーダーは式神ケント紙で作った分身体だったのだ。これで、フミの拳が顔を突き破った理由がわかった。破壊したのが式神ケント紙でホッとしたフミだったが、肝心の忠夫の写真のことを思い出し、慌てて探し始める。がすぐに見つけることが出来た。

「あ、ありました!!良かったです〜・・・エヘヘ〜♪

お目当ての忠夫の写真を手に入れることが出来てご満悦なフミ。もう、残っている黒服達なんてアウトオブ眼中であるが。
フミはしばらくぽやや〜んと癒されていたが、さらに今は(フミにとって)重要な作戦中だったことを思い出し、慌てて捨てた武器を全部回収し、再び車で爆走したのだった。

「待っててくださいね〜!忠夫様〜〜〜!!!」

フミが再び走り始めた頃、忠夫達はちょうど仕事中だった。今回はフミは間に合いそうである。


フミが去った山道の車の中に黒服達が戻って来た。その車の中には腕を組んでフミの走り去っていくのを見送る黒服リーダーの姿が。戻って来た部下達がまずはリーダーに謝罪した。

「すいませんでした。フミを捕らえることに失敗してしまいました」
「もうよい。次の任務はしっかりと完遂してもらうぞ」
「はっ!」
「しかし、失態をしでかしたのは確かだ。減給は覚悟しておけ!」
「「「「はっ!!」」」」
「では、我々はこれより帰還する」
「「「「了解しました!」」」」

リーダーの号令で部下達はそれぞれ車に乗り込み、帰還するために車を走らせる。後部座席に座っているリーダーは腕を組んで落ち着いているようではあるのだが、内心はどうしようもないくらいに慌てていた。

「(やばい!やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい〜〜〜〜!!!冥子の写真を獲られちゃったよ!どうする?どうすんのよ!?俺!!これがバレたら冥子だけじゃなく冥奈にまで怒られてしまう!!いや、怒られるだけならまだいい。どんなお仕置きされてしまうか!?ひぃいいいいいい!!!)」

とかなり怯えていたのだ。実は彼の正体は冥奈の夫であり、冥子の父であったりする。だから、娘である冥子の部屋にあったランクSSSの写真を入手できたのだ(もちろん、冥奈の手助けがあったからこそなのだが)。
帰還した彼らに幸あれ・・・。


では、本編にGO♪


「くっ!もうやめてください?神主さん!」
「殺ス、ススススス。ガアアアアアアアアアアアア!!」

神主の攻撃を霊気の盾で防ぎ続けている忠夫だが、神主の様子が危険になっていることに気付く。霊気を使っているせいか、霊的防御力が普通よりも高いはずの神主の精神が急速に侵されているのだ。早くなんとかしなければ!そう思っていても忠夫にはその手段がない。その上、忠夫の体力事態もそろそろ限界に達しようとしている。
それは、いくら修行をしているといっても本物の戦闘である。その実戦特有の緊迫した現場での戦闘で尋常じゃないくらい体力を消費させられていたのだ。ここにきて、忠夫の実戦経験のなさが影響してきた。
そのため、今まで均衡を保っていた攻防もついに破れる。

ガクン

「やば!」
「グアアアアアアアアアアア!」

バキィ!!

「うわああ!!」

疲れによって足をもつれさせた忠夫に、霊に乗っ取られた神主の容赦ない攻撃があてられた。霊気の盾を出していたことにより、他の部位に対する防御力が下がっていたこともあり、忠夫はしばらくは動けなくなってしまう。

「くっ・・・そこの君!早く逃げろ!!」

必死に体を動かそうとするも、自分の体ではないように動かすことが出来ない。このままでは子供が殺されてしまう。忠夫は子供に向かって叫ぶ。その忠夫の言葉にも恐怖に震えてしまい、動くことが出来ない子供には無意味であった。
ついに神主が子供に飛び掛った。

「やめろおおおおおおおおおおおおおお!」

バキィイ!

忠夫の叫びが木霊する。神主の攻撃は子供を捉えて・・・いなかった。
何故なら・・・。


「か、母ちゃん!?」
「・・・大丈夫?ケイ?」


わが子を自分の体で包み込むように抱きしめている妖怪の姿と。


「何をやってるのかしら?」


真剣な顔でしっかりとした口調をしているインダラに乗った冥子と神主の攻撃を受け止めたビカラの姿があったからだ。

「冥子姉さん!?」
「忠夫君、大丈夫?ちょっと待ってね。すぐにこの人に憑いてる霊を除霊しちゃうから」

忠夫に魅力的な笑みを向けた後、冥子は神主、正確には神主に憑いた霊を睨みつける。

「グルアアアアアアアアアアア!」

邪魔されたことで冥子すらも攻撃対象になったのか、飛び掛ってくる神主。冥子も慌てることなく神主を迎撃するため、式神を呼び出す。呼び出した式神はアンチラとサンチラ。
まず、アンチラで神主の攻撃を防ぐとサンチラの電撃で体を痺れさせ動きを一時的に止める。

「マコラちゃん!」

続いて呼び出したのは変身能力があるマコラ。呼び出されたと同時に自分の体を変化させる。その姿は冥子の姿である。マコラは体が痺れて動けずにいる神主の後ろにまわると後ろから体を押さえる。

「バサラちゃん!」

最後に吸引能力のあるバサラを呼び出すと、冥子は印を結ぶ。

「そこに憑りついている霊よ。その体はあなたの体ではない。大人しく出て行きなさい!鋭!!」
「グ、ガァアアア!」

なかなかしぶとく、霊が出てくる気配がない。冥子は諦めずに霊気を高めて再度チャレンジを試みる。

「鋭!鋭!鋭!!」

「アアアアアアアアアアアア!!」

ブワッ!

神主の体からどす黒いモヤが浮かび上がる。ついに耐え切れなくなった霊は神主の体から抜け出てきたのだ。

「今よ!」
ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

シュポン!

それを見逃さずバサラが吸引を開始。霊は抵抗も出来ぬままバサラに吸引されてしまったのだった。霊が吸引された神主は気を失っていてその場に倒れた。
冥子はそんな神主など見向きもせずに真っ先に忠夫の元へと駆けつけ、すぐさまショウトラでヒーリングをかけ始める。

「う・・・冥子姉さん」
「もう大丈夫よ〜」

すっかりいつものぽややん口調に戻った冥子はにっこりと笑いかける。それを見て安心したのか、戦い疲れか、目を閉じるとそのまま眠りに入ってしまう忠夫。冥子は優しい眼差しで忠夫を膝枕すると小声で呟く。

「お疲れ様、忠夫君」

そんな冥子の元に妖怪の親子が歩み寄ってくる。親のほうはまだ警戒しているようだったが、子供のほうは眠っている忠夫を心配気に見つめていた。

「私の息子を護っていただいたそうで、お礼を言いにきました」
「いいんですよ〜。元々〜、こちら側の不始末でしたし〜。それに頑張ったのは私じゃなくてこの男の子ですから〜」
「そういうわけにも行きません。この子は私の宝なのです。それを救っていただいたのですから。もちろん、そちらの方にもお礼をするつもりです」

子供の頭を撫でながら、母親は冥子に感謝の言葉をかける。忠夫に感謝の言葉を言いたかったのだが、今は眠っているので冥子に代わりに言っているのだ。そして、妖怪親子の今後の話に移る。

「本来ならなんらかの形でお礼をして差し上げたいのですが、何分私達に出来ることがありませんし・・・」
「いいんですよ〜。それよりも〜、今後〜あなた達はどうするんですか〜?」
「そうですね・・・このようなことになっては、ここにはいられませんし。また、転々と山を周ってみます」

悲しげな顔で答える自分の母親を見て、子供が不安気な顔で慰めるようにきゅっと手を握る。そんな子供の姿に母親も心配をかけまいと笑顔を向けるのだった。そんな親子の様子に何かしてあげたいと思った冥子の頭に名案が閃く。そして・・・。

「わかりました〜。あなたを私の家で雇います〜!」

と叫んだ。
冥子の予想外の発言に驚愕し、口を挟むことができなくなっている妖怪を他所にどんどんと話は進んでいく。

「えっと〜、確かどっかの山に別荘があったはずだから〜。そこの管理人ってことで雇う形になります〜。で〜、給料はこれくらいになるんですけど〜どうでしょ〜?何かと入用になるんで〜、お金はあったにこしたことはありませんよ〜?」
「いえ・・・その・・・」
「あ〜!ご心配なく〜。私の家の私有地なので人はいませんので〜。もし〜、そこに人がきても〜、それは私の家族や友達ですから〜。それに大抵は私がいますので危害を加えることはありませんよ〜?」
「そうではなくてですね・・・その・・・」
「私に任せて〜。悪いようにはしないわ〜」

もう冥子をとめられない。口を挟もうにもどんどんと話を進めていき、全く聞く気を持っていない冥子に妖怪の言葉が届くことはないのだ。そこで冥子は大事なことに気がついた。

「そういえば〜、まだ自己紹介をしてなかったわね〜。私は〜、六道冥子っていうの〜。よろしくね〜」
「あ、わ私はミイ。猫又のミイです。この子はケイ」
「よ、よろしく」
「そうなの〜。よろしくね〜。じゃ〜、旅館に戻ってお仕事の話をしましょ〜」
「・・・本気ですか?私は妖怪なんですよ?」
「何か問題があるかしら〜?」
「問題って・・・私が妖怪であることだけで充分です!」
「だから〜、なんで妖怪ってだけで問題なのかしら〜?」
「人間は妖怪ってだけで排除しようとします!今までずっとそうやってやられてきました!!」
「平気よ〜。私は絶対そんなことしないわ〜」
「あなただけしなくても他の人は違うでしょ!!」
「私だけじゃないわ〜。お母様やお父様だってそんなことしないわ〜」
「でも、それだけじゃ!!」
「私がそんなことさせないわ」

最後に見せた冥子の貫くような鋭い視線。それゆえにわかるその言葉に込められた想い。妖怪――ミイ――はその目を、その言葉を、冥子を信じてみようと思った。

「よろしく・・・御願いします」
「ええ〜。任せてね〜」

冥子はにっこりと笑みを浮かべる。信じてくれたことに感謝しながら。


気を失っていた神主を起こす(その間、ミイとケイは森の中に隠れていた)と、自分で霊具を持って無事に運び終える。報酬については翌日に話すことにして、今日のところはとりあえず旅館に戻ることにした。旅館に戻って来た冥子達であったが、その間忠夫はインダラに背負われていて今だに眠りについていたりする。冥子達のとっている部屋に戻る際にミイは人化し、ケイは冥子とミイの陰に隠して他の人の目に入らないようにした。旅館の中までさすがにインダラを出してはおけないため、忠夫は、冥子が背負うことになる。そして、自分達の予約した部屋に戻ってくるとミイ達を座らせて、冥子は早速今後のことを報告するために旅館に設置させている公衆電話を利用しに向かった。電話するのはもちろん自分の母親である冥奈にである。
その間、ミイは緊張感が抜けず警戒心を解くことがない。ケイはものめずらしそうに部屋をキョロキョロと見回していた。そんな中、眠っていた忠夫が目を覚ます。

「う・・・ん?」
「あ、兄ちゃんが起きた!」
「あれ?あ、お前。無事だったか?怪我ない?」
「うん、大丈夫!兄ちゃんが護ってくれてたし。最後は姉ちゃんがやっつけてくれたんだよ」
「そっか。怪我がなくてよかったぜ」
「あ、あの!」
「はい?って、どわあああ!!」

怪我もなく無事な姿を見せたケイに一安心した忠夫。そこにミイが息子を護ってもらったお礼を言おうと口を挟んだのだが、忠夫にはまだミイが自分達を襲ってきたという記憶しかなかったためにいきなり話しかけてきたミイに驚き、飛び上がってしまったのである。

「あ、ああああなたは?」
「はい。この子の母親のミイです。さきほどは息子を助けて頂いたということでお礼を言いたかったのです」
「あ、そうですか。でも、良かったですよ。怪我がないみたいだし。それに結局最後は姉さんが助けてくれたみたいだし。お礼なら姉さんに言ってあげてください」

ケイを護ってくれたお礼がしたいというミイに忠夫はさきほどの怯えが嘘のように何の疑いもせずに簡単に警戒心を解いて普通に接して来た。その異常に切り替えの早い忠夫にミイは驚きで呆然としてしまう。妖怪と知っているはずなのに、ましてやそんな妖怪の言葉を信じるなんてといったことで。それで、この男の子も冥子と同じだということがわかった。自然と笑みが浮かぶ。

「ふふ、冥子さんも同じことを言ってましたよ。頑張ったのはあなただから、お礼はあなたに言ってくださいって」
「姉さんには敵わないな〜」
「ふふ、ほら。ケイ?ちゃんとお礼を言いなさい」
「うん。にいちゃん。オイラを助けてくれてありがとう!」
「本当なら格好良く最後まで護れればきまってたんだけどな」

ケイの頭を撫でながら忠夫は呟く。その呟きは小さく聞こえなかったようでケイは気持ちよさそうに頭を撫でられていた。もし、聞こえてたらきっとこう言っていただろう。『にいちゃんはかっこよかったよ』と。
やがて、冥子が戻ってくると四人で談笑する。そのとき冥子はいつの間にか、隣の部屋をミイとケイように借り、そのことを伝えると本日何度目かの驚愕に顔を染めるミイがいたり。さらにミイの驚愕は続く。夕食も終わり(女将さんに頼んでミイとケイも一緒の部屋で食事にしてもらった)お風呂に入ろうということになり。先にミイとケイが一緒に家族風呂に入る。問題はその後、今日も今日とて冥子は忠夫に反論を許すことなくお風呂に連れて行き、一緒に入ったのだ。まだ子供であるケイはわかっていないが、ミイは忠夫と冥子がお風呂で行っているであろう行為を想像してしまい顔を真っ赤に染めて、そそくさとその場を後にするのであった。実際は、いつもと同じようにイチャついているかのように体を洗いあったり、一緒にお湯に使って会話してるだけであったのだが。これも毎度のことながら、忠夫は冥子を意識しないように頑張って精神的に疲労困憊だったことを付け加えておく。

「では、お休みなさい。冥子さん」
「ええ〜。お休みなさい〜。明日は〜、私の実家に戻って最終交渉を行ってもらいますから〜」
「はい。わかりました」

隣の部屋に戻るミイ親子を見送りつつ、明日は実家に帰ってミイの雇用についての交渉を冥奈と行うことを伝える。しっかりと頷いたミイを見送り部屋に戻ると、忠夫はもう布団で眠っていた。

「今日はがんばったものね〜。お休みなさ〜い。忠夫君」

忠夫の頭を一撫ですると書置きを残し冥子は部屋の電気を消して外へと出て行く。

『少しお散歩してきます   冥子』

まだ、眠くないらしく夜の散歩に出かけたらしい。忠夫と同じく戦闘したはずの冥子であるが、まだまだ元気そうである。ここが、経験者と素人の差であろうか。冥子に追いつくにはまだまだのようである。

スーーーー・・・

冥子が出て行きしばらくたった頃、忠夫しかいないはずの部屋に、音をさせずに扉を開ける影が・・・。

「忠夫様〜?眠ってらっしゃいますよね〜?」

その正体は、六道SSと後から現れた謎の黒服隊を撃退して、急いで駆けつけたフミであった。小さな声で忠夫が起きてるか確認するフミ。反応がないために眠っていると判断し、中へと侵入した。
敷かれていた布団は中央で盛り上がっていて、枕が二つあるのに布団が一組しかない状況を見てフミは悟ってしまう。

「な、なななななんって羨ましいことをぉおおおおおおお!!忠夫様とそそそそ添い寝ですって〜〜!!羨ましい!羨ましいにも程がありますよ!お嬢様〜〜〜〜!!」

と暴れ出したい気持ちがあったのだが、そんなことをすれば忠夫が起きてしまう。忠夫だけならまだいいが、冥子までも起きてしまうためになんとか自重するフミ。とここであることに気がついた。

「あら?なんか、片方しか膨らんでないみたいですね?」

そう、布団が二つある枕の内片方しか膨らんでいないのである。しかも、その膨らみはどうみても一人分の大きさしかないのだ。しかも、良く見ると書置きがしてある。

「こ、これは!忠夫様しかいないってことですか!!まさに千載一遇のチャンスです!!」

冥子は散歩に行っている。つまり今この場には忠夫しかいないのだ。フミの理性は決壊寸前であった。

「お、落ち着きなさい。フミ・・・寝ているところを襲うなんて、不潔よ!そうよ。それに私のプライドが許さないわ!起きているときに迫るからこそ、意義があるのよ!だだだだから、添い寝だけ。添い寝だけよ」

今にも飛び掛りそうな雰囲気のフミはそう自分に言い聞かせる。体全身を痙攣しているように震えさせている様子から相当な努力をしているのだろう。だが!

「これを逃したら、もうチャンスはないかも。これが最初で最後かもしれないですね・・・。そう、チャンスを逃しては・・・でもでも、忠夫様の寝込みを襲うなんて・・・」

フミの頭の中で欲望と理性が激しい戦いを繰り広げている。

「忠夫様の匂い、忠夫様の感触、忠夫様の・・・ああ、もう我慢できません!プライド?なんです?食べ物ですか?プライドでお腹は膨れないんです!!」

戦闘時間わずか10秒。あっさりと欲望が勝利を納め、フミは忠夫に向かって伝説のダイブを敢行する。

「たっだおっさま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」

果てして!忠夫の運命は如何に!?


あとがき

あれ〜?ミイさんはネコミミメイドにする予定がいつの間に別荘の管理人になってる?
ラッフィンです。

ええ、ミイさんの処遇は別荘の管理人ってことで山で暮らしてもらいます。やっぱり、今まで人間に追い出されていたのですから、いきなり人間のところで暮らせと言われてもストレスを溜めるだけになってしまいそうですから。
ってことで、管理人です。ちなみにケイは男です。ケイ君です。女の子ではありません。

さて、次回はこの依頼の完結編です。アフターストーリーっていってもいいかもしれませんが。久々にあの人が登場です♪


では、レス返しです。


にょふ様

SS達はこれで立ち直るのか?はたまた壊れるのか?それとも解雇されてしまうのか?全ては冥奈にかかっているかもしれない(笑)
NTデビューおめでとうございます。
これから多くのご指摘、批判などがありますでしょうが、めげずにそれをバネにして頑張ってください。お互いに精進しましょう。


いしゅたる様


冥×忠の糖度100%に暗雲がwメイド服の使者が登場し、どうなる次回!?ってことで終わらせましたw
SS達はこれから冥奈さんに報告しにいくでしょうから・・・想像するのは怖いのでやめときます。


俊様

残念、ミイさん達は別荘の管理人になります。

ついに追いついたフミ!忠夫はどうなる!?


Tシロー様

いや、妄想力を高めたら雑念が大きすぎて明鏡止水の境地には至れないのではないかと・・・。いや、至れるのか?

ケイは男の子にしました。それで、静かに暮らすと考えてたらメイドでなく管理人になって、しかもどっかの別荘の・・・レギュラーは難しいです。


大海様

えっと、まずは言っておきましょうw
裏と表で区別せず、本編、フミで区別しましょうw
何せ、フミが暴走するたびに壊れますからw


星の影様

ケイは男の子です(ぉ

残念ながらミイさんのレギュラーは難しいです。どっかの別荘の管理人だし・・・。
この親子には静かに暮らさせてあげたいって考えたら、こんなことになってしまいましたので。

でも、フミついに参戦wどうなる?忠夫!?


DOM様

>メイド人員増加の予感
当初はそうするつもりだったんですけど、気付いたら管理人に。あれ?どうしてだろう?猫耳メイド長で行こう!って考えてたんですけど、親子の幸せを考えていたら・・・あるぇ〜?

今回、ついに追いついてしまいましたよ!フミさんが!?
さあ、どうなる忠夫!?


菅根様

ご指摘ありがとうございます。
最初、神主に数珠って違和感があったんですけど、他に思いつかなくてそうしてしまいました。これについては無知が原因でした。申し訳ありません。


HEY2様

やはり、フミさんが一枚上手でした。そして、とうとう忠夫の元に到着してしまってさあ大変!どうなる次回?

>一方オマケ
こら〜!そっちが本編だ〜!!おまけはフミさんのほうって書いただろ〜〜!!!
と言ってみる。
さて、ミイさんですが、ネコミミメイドフラグを立てたつもりなんですが、蓋を開けてみれば、どっかの別荘の管理人になってしまって。ゲストキャラになってしまいました。期待されていたようで申し訳ないです。


meo様

そうですね〜。この冥奈の夫はどうなるんでしょうかw
怖くて想像も出来ませんが・・・たぶん、生きているでしょうw


鹿苑寺様

>フミさん
な、なんででしょうね?私も気付いたら、人気が出るわ、もう戻れないところまできている状態になってました。
普通のメイドのほうが良かったですか?

PS.ケイは男の子ですw

PS.PS.ご指摘ありがとうございます。勉強になりました。


内海一弘様

おしかったですね。大樹ではなく、冥奈の夫でした。
クロサキ君はすっかり忘れてて思いつきもしませんでした・・・。

ミイさん、ゲストキャラになる可能性99%ですね。

>後ろへ向かって
だが、壁に当たったように後ろに進めなくなる。

「何故だ?」

後ろを振り向くとそこにはすっごい笑顔を浮かべたメイド服の死神の姿が・・・。


食欲魔人様

ランクSSSの写真を奪われた上、フミを忠夫の元へ行かせてしまったことはかなりの重罪になることでしょうw

>エンピツ
あれ?魔鈴の友達3人がいn(ry


秋桜様

読んでもらえただけで嬉しいですw
体を壊さないように無理をせずにいてください。
私の作品で笑ってもらい、少しでも励みになれば嬉しいです。

>フミさんストーリー
おう!?やっぱ、フミさんの出番を減らすべきなのか?

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