Pipi Pipi Pipi
突然の音と振動にぼーとした思考の海から突然引き上げられた。
学校からの帰り道、いつもの様に夕食の買い物をする為に商店街へ向かう途中”あの時”以来、考え込むことの多かった横島さんが突然バイトを休んで妙神山へ出かけてしまった事について。
ー 誰だろう、仕事は入っていないと言っていたので美神さんじゃ無いだろうし、一文字さんと弓さんはたった今まで一緒だったし・・・ ー
そんな事を考えながら携帯を開くと見覚えの無い番号からの電話であった。
「はい、氷室です。どちらさまですか?」
「おキヌちゃん、お久しぶり横島百合子です、横島忠夫の母で判るから?」
横島百合子?・・・・「よよよよ 横島ひゃんのおおお母さんですか?」
「おキヌちゃん、久しぶりね。急に呼び出したりしてごめんなさい。」
電話で呼び出された喫茶店に入ると店内には既に横島さんのお母さんがコーヒーを飲みながら待っていた。
「お待たせしました。お久しぶりです、いつ日本にいらしたんですか?(うーん、一体なんで呼び出されたんだろう、また横島さんを連れて行っちゃう話なのかな・・)」
「あら、そんなに警戒しなくても大丈夫よ。折角日本に帰ってきたのにあの馬鹿息子がふらふらと出かけて居ないみたいだから、おキヌちゃんに色々聞こうと思ってね。帰ってきたときにびっくりさせたいから誰にも言わないで来て欲しいってお願いしただけよ。」
おキヌはほっとしつつも、横島が妙神山へ出かけていることを伝え、少しでも点数稼ぎをしようと部屋に食事を作りに行くことなどを織り交ぜながら日常生活について話をしていった。
「相変わらずおキヌちゃんにはお世話になってるみたいね」
「いえ、お世話だなんて、せめて・・・」
「でも、あんな事があったのにおキヌちゃんから見た忠夫は変わってないって事でいいのかしら?」
ー あ・ん・な・こ・と・・・?!! -
おキヌは血の気が引き、体から力が抜けていくのを感じながら振り絞るように答えた
「ご存知 だった の ですね・・」
「ええ先日、美神さんの母親って人が来るまではスパイとして潜入してたってことしか知らなかったけどね。オカルトは門外漢とはいえ焼きが回ったものよ」
重い沈黙がどれ位続いたであろうか、おキヌが思いつめた声でこうつぶやいた
「あの時の横島さんの姿は忘れることが出来ません。でも私にはどうしていいのかわから無くて、ただ見ていることしか出来ないんです。夕日を見ながら考え込んでる横島さんの・・横島さんの力になれなくて、でも最近何かまたあったのか少し変わって、でも何も言わないで妙神山に行ってしまうし、本当に私何も・・・」
これだけ言うとぼろぼろと涙を流し泣くだけだった。
「あの子の為に泣いてくれてありがとう。忠夫には私から話をするので、今日あったことはおキヌちゃんだけの秘密にしておいてちょうだい。」
おキヌが泣き止むまで黙って座っていた百合子は、そう告げると伝票をもって立ち去っていった。
「ご苦労様、クロサキ君。政治家関連は最近母親が相当無茶な事したみたいね、これなら少々ごり押ししても五月蝿い事言ってくるのは居ないからそれとなく圧力を掛けておくだけでよさそうね。
で、これが帳簿関係と、酷いわね~、今までこんな申告良く通したわね、こんな手口そこらの個人商店並みじゃない。大企業相手のビジネスやっている割には脇が甘いというか、自分だけいくら辻褄合わせても・・これは国税の方に回しておいて頂戴。これなら直ぐ動くでしょう。
こっちのは・・・これは私が預かっておきます。これは忠夫と話をしてからどうするか決めるわ」
「了解しましたチーフ、いえ横島夫人」
数日後、国税局査察部が動くとの情報が入った美智恵はそれを止める為、暗殺阻止に使ったルートを使おうとしたが・・
「先生、その節は大変お世話になりました。はい・・・もうお耳に入っていましたか。はい、娘の不始末ですので、先生にご迷惑はおかけしません。はい、それでは失礼いたします。」
結局のところ頼りにしていた伝も娘の暗殺阻止の際にかなり無理をしたため有効に使うことが出来ず、出来たことといえば最低限のことのみであり自分達親子が敵にまわしてしまった相手の力の大きさを改めて知るのであった。
娘に査察が入る前に修正申告を行うように電話をするべきか電話の前で暫く考え込んでいたが、今後の事を考えると良い教訓になるだろうと結論を出し、都内のホテルへ何か大きな封筒のようなものを持って出かけた後、自宅で静かに次女と過ごし、この子の教育だけは間違えないように心に誓うのであった。
美神の事務所に来た査察官は通報された情報があまりに正確であることに驚いた。なんせ取引相手の企業で計上されている金額まで詳細に記されており、帳簿の矛盾点をこことごとく指摘してあったのだ。
通常であれば押収した資料を基に反面調査等でこちらが見つけなければならない情報まで網羅していた為、異例のスピードで課税額が決定されたのである。
担当査察官が後日同僚にこの情報を送った人が査察部に居てくれれば脱税なんて世の中から無くなるに違いないと語ったそうだ。
ただ、核ジャック事件の解決の立役者であること等が考慮され、政治的判断により起訴は見送られた。
下界では着々と物事が進行しているそんな頃、妙神山の加速空間では・・・
「横島さん、妖怪を見つけるには霊視を徹底的に鍛えないとだめなのね~」
「見鬼君とかじゃだめなのか?」
「人に対して警戒している時の妖怪の隠業はそんなものじゃ見つからないのね~、猟師と同じようにしてこちらの気配を消して、相手の気配を読まないとダメなのね~、でも横島さんは気配を消すのは出来るのだから後は霊視だけなのね~」
「ふははっは~、覗きで鍛えたからな!でも霊視なんかしたことないぞ?」
「横島さんが覗きをする時に消そうとするものを見ればいいのね~」
最初のうちはヒャクメに手伝ってもらいながら霊視をすることでコツをつかんでいった。その時、心眼にサイキックソーサーを習った時を思い出して、なんとなくしんみりとした気分になってしまった。実質的にはあいつが俺の最初の師匠だったよな
その後、ヒャクメに各地にある隠れ里についても色々教えてもらい人狼族の里のような所が実は人間に知られていないだけで他にも結構あるってことに驚いたが人で無い者の生き方として良い参考となった。そういやシロの奴元気にしてるかなぁ・・・
「横島さん、どのような物の怪が居るか、何処に封印されているか等は古文書に記されている場合が多いですので、それを読み解く必要があります。」
「ちょっと前まで補習で古文やってたのにまたか~~!!」
「あと結界術や封印術も必要になりますね。横島さんの場合前世が陰陽師でしたので相性がよさそうな陰陽道のものでいきましょう。」
「前世の記憶なんて憶えてないんですが・・・・」
まぁ、一番足りなかったGSとしての知識をこの際だから身につける為、補習以上に頑張った。
古文書解読に取り組んでいる時にジークとワルキューレがやってきて、これ位は最低限憶えておけと英語やラテン語、古代ギリシャ語で書かれた本やら資料を持ってきてくれた。
後で小竜姫様に聞いたらかなり貴重な資料もあるようだ。ありがとうなジーク、ワルキューレ・・。でも流石に全部には手が回らなかったので英語の資料だけ読むことにした。
小竜姫様も横文字はだめだし、読めないものは持って帰ってマリアかカオスの爺さんに教えてもらうか。大体、古代ギリシャ語の辞書なんて聞いたことも無いぞ
「ワシも元は石猿、物の怪の一種じゃったからワシと同じくらい、といいたいところだが、まあそれなりの者に話を聞いてもらえる程度で取り合えず勘弁してやろう。ではいくぞ!」
良く考えると妙神山で霊能の修行はしたことが在るけれど、格闘や剣術のような武術の修行ってした事がなかったんだよな・・・もしちゃんと修行してたらあんな事・・・・もう二度と後悔しないために出来る限りの事を、と考えて今までなら泣き叫んでいた修行も真面目に取り組んでみた。
- ルシオラに会えた時、お前の命を貰った男は一生懸命生きたと胸を張って言う為に -
けど、老師、あんたみたいなのを力で納得させられたら最高神魔クラスじゃねーか!!
体感時間で数年、実時間で10日ほど経ったある日「取り合えず、こんなもんかの。まぁ仮免ってところじゃが」と言われた。どうも老師からみた最低限の力はついたらしい。でも最後の組手でも相変わらずボコボコにされたので強くなった実感は全く無かったりするのだが。
仮免に喜んでいると小竜姫様に「続きはいつにしましょう?」とにこやかに言われてしまい、学校の休みにまた来ることを約束させられてしまった。パピリオが「また来てくれるんでちゅね」と喜んでくれたので良しとしよう。
そうして修行をひとまず終わらせ、母親が来ていることもバイト先に巨額の課税がされた事も知らない横島はアパートには戻らずそのまま事務所に向かうのであった。
ーやっとプロローグ的な所が終わりました。
戦闘シーンなど書ける訳も無く稚拙な表現しか出来ないことを思い知りました。
他の作品と似ないようにしつつも自分の思っている横島らしさを出していけるように頑張って行きたいと思いますのでよろしくお願いします。