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「光と影のカプリス 第141話(GS)」

クロト (2008-03-14 19:40/2008-03-14 21:21)
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 翌朝カリンとタマモが居間に行くと、そこには誰もいなかった。

「んー、やっぱり一晩中ってのは無理だったのかな?」
「……いや、単に場所を変えただけだろうな。朝になったら私たちが来るのは分かり切ったことなんだし」

 狭い部屋で夜通しヤることヤっていたら、アレな空気がこもって色々と気まずい事になってしまう。横島はともかく、小竜姫はそれくらいのことすぐ気づくはずだというのがカリンの見解であった。
 はたしてその10秒ほど後、横島と小竜姫が寝ぼけまなこをこすりながら襖を開けて入ってくる。再生能力のおかげか精気が尽き果てていたり腰を痛めたりしている様子はないが、影法師娘の推測が当たっていたのは間違いなさそうだ。
 特に小竜姫は何だかお肌がつやつやしているし。

「おはよう、横島、凛明殿」
「おはよ」
「……ああ、おはよ、2人とも」
「……おはようございます」

 健全な人間関係は健全な挨拶からである。眠たかろうとヤりボケてようとそれは変わらない。

「……2人ともまだ目が覚めてないみたいだな。朝食は私がつくろうか?」

 そのあとカリンがそんな提案をしたが、小竜姫はそれを丁重に拝謝した。

「いえ、修行者の食事をつくるのも私の仕事ですから。確かに眠いですけど、外の空気に当たればすぐ目は覚めます」
「……そうか」

 管理人のいつもながらの仕事熱心ぶりに、影法師娘は軽く肩をすくめてあっさり引き下がる。そして出来上がった朝食を摂りながら、今日の修行の内容についての話が始まった。

「昨日横島さんの回復力を見せてもらったので、今日はそれを生かした修行をしてもらおうと思ってます」
「……」

 小竜姫がそれを具体的にどう見せてもらったのかはさだかでないが、横島は何となく嫌な予感がした。

「といっても別に目新しいものじゃありません。横島さんに私の装具をつけて色々術を使ったり武術の稽古をしてもらうというだけですから」

 この方法は自分の容量をはるかに超えた霊力を一時的に体に宿すことで霊的キャパシティを大きくしようというもので、いわゆる超回復と同じ原理である。ただし当然のことながら体がものすごいダメージを受けて、「両腕両脚の骨が折れて肋骨にヒビが入ったところへ相撲取りにボディプレスされる」ような苦しみを味わう事になるのだが……。
 妙神山での横島はその回復速度が非常に速いので、以前は何日かに1度しかできなかったのが今日は1日に何度もやれるというわけだ。 

「神話のヒドラみたいに『1本の首を切ったら2本の首が生えてくる』という具合にはいかないでしょうけど、今の横島さんは霊的成長期の真っ盛りですから相当の成長が見込めると思うんですよ」

 といっても小竜姫に横島への悪意は微塵もなく、この台詞のように純粋に彼の成長を願っているだけである。この方法はまかり間違えばそのまま再起不能になってしまう事もあるのだが、小竜姫は長年修行場の管理人をしてきた身だからその辺のさじ加減には自信があった。
 横島にもむろんその辺の事情は理解できるのだが、

「うげぇ……マジっスか凛明さま」

 と吐きそうな顔になったのも当然といえるだろう。いくら効率がいい修行法だからといって、「両腕(以下略)」の激痛をえんえん味わい続けるなんて嫌に決まっている。

「はい、つらいと思いますけどがんばって下さいね」
「はい、全力で頑張らせていただきます……」

 しかし横島は、目の前でにこにこしている小竜姫のまっすぐな笑顔に逆らうことはできなかったのだった。


 その1時間ほど後、横島と小竜姫は修行のために例の異空間に移動していた。ただしそこはいつもの荒野とは少し違っていて、目の前にはかなり広いため池が掘られており、冷たそうな水も満々とたたえられている。
 カリンは横島の中に引っ込んでいて、だからというわけでもないが横島は竜神化の儀式の時に出した胴着を着ていた。タマモは宿坊で読書中である。

「小竜姫さま、これは……?」

 ここで横島が小竜姫のことを「凛明さま」と呼ばなかったのは、彼女がこの空間の中では彼を婚約者ではなく弟子として扱う方針でいるからだ。横島はそういう辺りはいいかげんな所もあるので小竜姫のことを堅苦しいと思いはしたが、同時に立派だなあと素直に感心もしたので、特に不満は抱いていない。

「まずは天候操作系の術を見せてもらおうと思いまして。いつもの空間だと水気が少ないですから」

 小竜姫がそう答えたのは、横島の持ち技の中では1番霊力の行使具合が分かりやすいものだし、パンドジニウムでの上達ぶりを我が目で見て確かめたいという気持ちもあったからだ。

「あの空間だけではできる事が限られてますから、こういう場所も用意してあるんですよ。ため池の真ん中に闘技場がありますから、そこに行ってやりましょう」
「あ、はい」

 ふわりと宙に浮いて闘技場に向かう小竜姫を追いかけて、横島もあわてて空に舞い上がる。小竜姫が半歩先に到着して横島がそれに続く形で着地したとき、不意に小竜姫が横島にはにかんだ笑顔を見せた。

「その姿の横島さんと並んで空を飛んでたら、本当に横島さんは私と同じ存在になってくれたんだなあって、また実感しちゃいました。すごくうれしいです。
 ……って、ごめんなさい。ここでは弟子として扱うって決めたのは私なのに」

 しかしすぐ師匠としての顔に戻ってしまったが、横島的にはむしろそれが残念であった。

「へ? いや、気にすることないですって。ここには俺たちしかいませんし、つかさっきの小竜姫さまマジで綺麗すぎて見とれちゃいましたから」

 具体的には今すぐ抱きしめてキスしたいくらいに。だが小竜姫はそれに応えるどころか、顔を赤らめて逃げてしまった。

「も、もう横島さんったら。ダメですよ、今はあなたのための修行中なんですから」

 しかしすぐ我に返って振り向くと、空気を変えるためかわざとらしく手を口元に当てて咳払いする。

「……こほん。時間がもったいないので、そろそろ修行を始めて下さい。
 とりあえず細かい指示はしませんので、思うままにやってみてもらえますか?」
「わかりました」

 いくらわざとらしくても、こう言われては横島もそろそろ真面目に修行せざるを得ない。おとなしく頷いて、眼下でさざ波を立てている広いため池を見下ろした。片手を突き出して、じっと念をこめる。

「じゃ、しっかり見てて下さいね小竜姫さま。横島忍法、霧隠れの術っ!」
「……何なんですかその名前は?」

 小竜姫は横島の安直なネーミングにあきれたが、技の威力自体はすさまじかった。視界すべてを覆うほど広大な、それも10センチ先が見えないほどの白い濃霧が大きな噴水のように噴き上がったのだ。それはもう、術者である横島自身が驚いてのけぞってしまったぐらいに。

「うおっ、すげえ!? これマジで俺がやったのか!?」
「ふふっ、今の横島さんと私じゃ霊力が違いますから。でもいずれは自力でやれるようになりますから、たゆまずに精進して下さいね」

 小竜姫は横島の素質について、努力次第で今の自分と同等かそれ以上のレベルに到達できると見立てていた。だからこそこんな荒行を課しているのだが、そこでなぜか横島は急に眉根を寄せた。

「そうっスね。男の価値は顔でも霊力でもないですけど、130と8万じゃやっぱり小竜姫さまのメンツに関わりますし」
「え? いえ、そういうつもりで言ったんじゃないんですけど……」

 そんな他意はなかった小竜姫がちょっと慌てたが、横島はそれを聞いているのかいないのか、

「いえ、カリンがたまに言うんですよ。小竜姫さまに恥をかかせない男になれ、って。小竜姫さまが告白してくれた時は反対してたくせにズルいですよねー」

 横島の台詞はやや抽象的だったが、カリンの思惑はもっと具体的である。
 横島はヒャクメのような文官タイプではないから、今の小竜姫とご成婚するなら1万マイトくらいのパワーは欲しいところだ。カリンのスキャンでは横島が「普通に」修行すれば生理年齢20歳になるころに10万マイトに達する見込みだが、これだと年平均670マイトほど成長するという勘定になる。
 このペースで1万マイトになるのは15年後だから、戸籍上は32歳だ。まあ結婚適齢期の範囲内だが、横島はあまり修行熱心な方ではないからサボってペースが落ちないようハッパをかけているのである。小竜姫にとっては多少時間が変動しても大した問題ではないが、大樹と百合子にとってはかなり切実な話だろうから。
 もちろんカリンは横島にこんな世間擦れしたことを説明したわけではなく、字面から想像できるように「修行や勉強を通じて人格と識見を高めろ」といったニュアンスで言っているのだが。

「へ!? あ、いえ、それは……」

 カリンの気持ちはありがたいと思うものの、態度に見せるわけにもいかず口ごもる小竜姫。その間に横島は池に向き直って、両手を万歳のように高くかかげていた。

「次は必殺、横島サイキックスーパー津波ーーー!」

 横島が両腕を振り下ろすと同時に静かだった水面にいきなり高さ10メートルはあろうかという大波が立ち、轟音とともに岸に向かって流れていく。ちなみに津波とは海底が地震などで隆起、あるいは沈降した時にできる水位の高まりが水の塊のような形で押し寄せてくる現象で、横島が起こす波は風浪に近いものだから全くの別物である。
 小竜姫は人界にいたころに見たTV番組でその知識を持っていたが、いま指摘するのも何なので黙っていた。

「さらに次は横島メイルストローム! 横島グレートウォーターピラー! 横島アクアスプレーーっ!!」

 自分の力ではとても起こせない派手な現象に気をよくしたのか、調子に乗って次々と技(?)を繰り出す横島。その子どもみたいに水遊びに興じる姿を、小竜姫は微笑ましげにみつめていた。


 その結果として、修行を終えて装具を外した横島は痛みのあまり起きている事もできず、居間の床でのたうち回ることとなった。

「ごんげー……小○が、○錦がぁ……」

 うめき声すら意味不明になってしまうほどの苦しみのようだ。心配したタマモが枕元ににじり寄って、

「横島大丈夫? 薬湯持ってきたけど」

 とお盆を自分の膝元に置く。ここが自宅なら口移しで飲ませてやってもいいのだが、今は「小竜姫優先」という方針なので言い出さなかった。

「乳……尻……太腿……」

 しかし横島は相変わらず自爆属性が抜けないようで、そのおバカすぎるうわ言にタマモと小竜姫はあっさり心配するのを止めた。

「もーだいぶ良くなってきたみたいね」
「そうですね、ではタマモさんの修行を始めましょうか」

 せっかく修行場まで来たのだから、タマモも何か身になる事をやっていくべきであろう。まずは静かに妙神山の霊気を浴びながら妖気制御の練習をするというメニューである。

「うん、じゃあその前にトイレ行ってくるから」
「はい、ではその間に準備をしておきますね」

 というわけで、2人は横島を放置して(一応目の届く場所に居るのだが)修行とその監督に入るのだった。


 それから1時間ほどして、タマモが修行に飽きてきた頃には横島もほぼ完治していた。気分転換ということで、居間でゆっくりお茶会タイムとしゃれこんだ。

「ホントにもう治ってるのね……」

 とタマモが感心したような声をあげる。装具の使用自体は以前からカリンの超加速練習用にやっていたことだが、今までは1度やると1〜2日くらいは尾を引いていた。それが今日は8倍の出力でやったのにもう平気な顔をしているとは。
 人間じゃないわね……と呟きかけて、タマモははたと思い出した。そういえばこの男は比喩ではなく、文字通りの意味で人間ではないのだった。

「まーな。何だったら今すぐ1発……いや2、3発くらいはできるぞ」
「そーゆーこと言うから修行がキツくなるんだと思うんだけど……」

 小竜姫は横島とヤること自体は嫌がらないはずだが、今は修行中で一休みしているだけである。そんな不真面目な上にふしだらなことを言い出したらお仕置きは必定だろう。
 タマモがお茶請けの羊羹をほおばりつつもチラリと流し見てみると、案の定小竜姫は笑顔のままだったがそのオーラは微妙に温度が下がっていた。

「それじゃ横島さん、休憩はこの辺にして修行を再開しましょうか。今度は風の技を見たいですね」

 ゆらりと立ち上がった小竜姫が横島の背後に回り、その襟首をひっ掴む。そのまま少年を後ろに引き摺るようにして歩き出した。

「え、も、もうっスか? まだ羊羹1個食べただけ……」

 圧倒的な腕力で引き摺られながらも横島は精一杯の抵抗を試みたが、小竜姫はその哀願を聞き流して煩悩小僧を連行していったのだった。

「2人ともがんばってねー」

 というタマモのお気楽な声援を背中で聞きながら。


 横島はそんな過酷な修行を昼食をはさんで午後もやらされていたのだが、おやつの時間になったので休憩ということで居間に戻っていた。
 横島はちゃぶ台の上にぐったり突っ伏している。目の前にはタマモ謹製のお揚げコロネがあるのだが、それをかじる気力もないようだ。
 するとさすがに見かねたのか、団欒タイムという事で出してもらっていたカリンが横島の頭をぽんと叩いて、

「ほら、いつまでもへたってないで元気を出せ。確かに今日の修行はキツいと思うが、精力をつけるトレーニングだと思えばそんなにつらくないだろう?」

 普通の神魔族は霊力が上がってもHの持久力はそんなに上がらないのだが、煩悩魔竜である横島は別だ。小竜姫並みの霊力を溜め込めるようになれば、24時間どころか365日耐久Hも不可能ではないだろう。

「おおっ!? そう聞くと急にやる気が出てきたぞ。カリンおまえ、言葉の魔術師か!?」

 どこぞのオタク少女のようなことをほざきつつ、急に元気になった横島ががばっと上体を跳ね起こす。気分が良くなったらお腹もすいてきたのか、ちゃぶ台の上のお揚げコロネをがつがつと頬張り始めた。

「ふふっ、相変わらず現金なやつだな」

 とカリンはやわらかく微笑みながら煩悩少年のお食事を見守っていたが、小竜姫は逆にちょっと不安げな顔を少女の耳元に近づけた。

「あの、カリンさん……あんなこと言って大丈夫なんですか?」

 今でも精力あり余り気味なのに、これ以上積極的に増やされたらまずくないか。小竜姫はそう危惧したのだが、カリンの見解はごく楽観的なものだった。

「事実だからな。それに精力が増しても状況はあまり変わらないと思う」

 いくら横島の持久力が増したところで相手の持久力は同じなのだし、横島だって精力を使い切らなければ満足できないというわけではない。それにそんなにHばかりしていられるほど彼も自分たちも暇ではないから、結局彼がHをする時間自体は大して増えないとカリンは思っていた。
 といってカリンは横島をハメたわけではない。霊力が増すのは彼にとってあらゆる意味で良いことなのだから。

(まあ、超回復効果を狙った修行は今日はこれで終わりなんですけどね……)

 何事にも限度というものがある。やりすぎて体を壊しては元も子もないのだ。小竜姫が口の中でそうごちた時、部屋の外に何かの気配を感じた。
 その正確に2秒後、ふすまが開いて彼女たちがよく知っている人物がごくお気楽な足取りで入って来る。

「こんにちは小竜姫、今日はここにいたんだ」
「ああ、そういえば今日来る予定でしたね。
 ……ところでヒャクメ、あなたひょっとして食事やおやつの時を狙って来てるんじゃありませんか?」

 小竜姫の台詞が示すように、部屋に現れたのは覗きを司るダ女神、もとい神界の有能な調査官であるヒャクメだった。
 今日はこの前のようなデバガメではなく、ちゃんと予告した上での来訪である。といっても大した用事があるわけではなく、ただ友人の顔を見に来ただけなのだが。

「横島さんたちもこんにちは。今日は修行?」

 ヒャクメは友人のジト目を華麗にスルーすると、横島たちににこやかに挨拶してきた。ただ当たり前のようにちゃぶ台の前に座って勝手にお菓子を口に運んでいるところを見ると、小竜姫のツッコミは正鵠を射ていたようだ。

「どっちかっつーと拷問だけどな」

 横島もその辺にはあえて触れずに聞かれたことだけに答えると、ヒャクメはさもありなんと頷いて、ごく自然な動作で急須を取って(カリン用のオブジェとして)置いてあった湯呑みにお茶を注いだ。

「ここは元々そーゆーところだからそれは仕方ないわ。仮にも武神が稽古つけるんだから、学校の部活みたいな生易しいものになるはずがないのね」
「うーん、確かにそれは言えるな……」

 ヒャクメの態度は軽いが、発言内容は妥当なので横島も否定はしなかった。カリンや鬼道のような真面目でハイレベルな求道者を基準に「厳しい修行」を課する場所だというのなら、自分のようなヘタレが拷問並みだと感じるのはむしろ当然である。
 そこでヒャクメは、横島の体が先週とは明らかに違うことに気がついた。

「横島さん、ひょっとして……?」

 そう、生身の肉の体が完全に幽体に変わっていたのだ。いくら何でも進歩が速すぎるというもので、ヒャクメは台詞の続きを口に出すのをはばかってしまうほど驚いていた。
 しかし横島はいたって暢気な口調で、

「ん、俺もびっくりしたんだけどな。まあこれで俺も一人前……かどーかは分からんけど、完全無欠な竜神になったってわけだ」
「……そう。それなら小竜姫とのご婚礼も近いわねー、おめでとう」

 詳しい事情はまだ分からないが、ヒャクメはとりあえずそう祝辞を贈ってやった。少なくとも彼と彼女にとって喜ばしいことなのは間違いないから。

「へ? あ、いや」

 横島は予想外のご挨拶に面食らってしまったが、しかしなぜかヒャクメはそこではあーっとため息をついて肩を落とした。

「でもこーなると今度は私の方が男日照りとか言われそーね……はあ」
「ヒャクメさんってそんなにモテないの?」

 自らの前科を思い出して物憂げな顔をしているヒャクメに、タマモが不思議そうに訊ねた。確かに性格はちょっと軽いが、男日照りになるほど悪女でも醜女でもないと思うのだが……?
 するとヒャクメはちょっとだけ顔を上げて、

「ほら、私って人の心が読めるでしょ。だから敬遠されちゃって」

 事情は小竜姫の場合と似ている。それで種族が違うのに友人同士なのか、とタマモは一瞬邪推したが口に出すのは自重した。

「こーなったらもー、横島さんの4号になろうかしら。そういう事あんまり気にしなさそうだし」
「何か言いましたかヒャクメ?」

 表面的にはごく穏やかな、しかし噴火寸前の火山のような危険さがこもった声がヒャクメの鼓膜を激震させる。ヒャクメはびくりとすくみ上がってそちらに顔を向けたが、小竜姫はやっぱり見た目だけは穏やかな顔つきで、

「ところでヒャクメ、昨日横島さんに面白いものをもらったんですよ。何でもダメな神を打ち据える武器だそうで……あなたが覗きを司るダ女神か、それとも立派な調査官か、これで見極めてみようかと思うんですがどうでしょう」

 とどこからか駄神鞭を取り出した。ヒャクメにはその鉄棒の詳細な性能までは分からないが、何か恐ろしい神通力を秘めた武器だということは見抜ける。

「ちょ、ちょっと待って小竜姫、別に本気で4号になろーなんて思ってるわけじゃないのね! 私は一夫一妻主義だから、横島さんとどーこーなろーなんて気は全っ然ないんだから!」

 全っ然ない、とまで言われて横島はちょっと傷ついたが、それゆえ仲裁に入ろうとは思わなかった。むろんカリンとタマモも同様だ。

「じゃ、じゃあ家族団欒をジャマしちゃ悪いし、今日はこれで帰るのねー。それじゃ!」
「待ちなさいヒャクメ!」

 並みの武神を遥かにしのぐ反射速度で脱兎したヒャクメを、小竜姫がそれ以上の速さで追いかけてその首根っこを捕まえる。そのあとヒャクメは裏庭に連行されていったが、横島たちはその哀れな子羊を黙って見送るしかなかったのだった。


 ―――つづく。

 今回横島君の竜神としての推定成長速度が明らかになったわけですが、破壊力がある技がないので「文珠使い」ほどの反則的パワーはないんですよねぇ。
 番外編05のレス返しは番外編05のレス欄でいたしましたので。
 ではまた。

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