「文珠なんかじゃなくて……
やっぱり、ひとの温もりが欲しいんです……」
「お……おキヌちゃん!?」
美神を救うために、十二宮を突き進むおキヌと横島。
宮と宮との間の長い階段では、人外な体力を持つ横島が、普通の人であるおキヌを抱きかかえて運んでいた。クロスが邪魔でおキヌとの密着を楽しめぬ横島は、
「この姿勢が一番運びやすいから」
という口実で、片手をおキヌの胸まで伸ばしている。
ただし、ソッとあてているだけなので、おキヌには不快ではなかった。それでも、
(……もう!! 横島さんったら!!
いつもは美神さんにセクハラしてるくせに、
美神さんがいなかったら、私に来るんですか?)
というヤキモチじみた感情は持ってしまう。その結果、
(いいんです!
横島さんが、そういうつもりなら……
私にも考えがありますよ!?
機会があったら、私のほうから
少しだけ誘惑しちゃおう!
でも、こわいから『少しだけ』だけど……)
と思っていたおキヌ。
もちろん、横島は、彼女の内心には気付かない。
そんな二人は、宝瓶宮の戦いで、一時、氷の棺フリージングコフィンに閉じ込められてしまった。
脱出後、おキヌは文珠で暖めてもらったが、むしろ、それを寂しく感じるのだ。
(やっぱり……私は美神さんとは違うんだ……)
もしも相手が美神なら、横島のほうから『こういうときは、お互い素肌で暖めましょう』と抱きつくだろう。でも、自分に対しては別なのだ。
おキヌは、そう考えてしまったからこそ。
今、宮と宮との間の階段で。
まだ体が震えていることを活かして。
冒頭の一言、
「文珠なんかじゃなくて……
やっぱり、ひとの温もりが欲しいんです……」
を口にしたのだった。
そして、これに対して横島がとった行動は……。
番外編 宝瓶宮の後で……
「そ……そうだね……」
ゴクリと喉を鳴らしながら、横島は、おキヌの言葉にうなずいた。
そして、走っていた足をとめ、周囲を見渡す。
ここは、宮と宮とを結ぶ階段なのだが、その脇に、人ひとり横になれる程度のスペースを見つけることが出来た。
彼は、そこに、おキヌをおろす。
そして、おずおずと問いかけた。
「こういうときって……やっぱり……
服の上からじゃなくて、
生肌のほうが効果的だよな……?」
「は……はい……」
顔を真っ赤にして、おキヌは、首を縦に振った。
___________
(恥ずかしいけど……。
でも、ここまでは嫌じゃないわ……)
おキヌは、自分が横島を誘惑していると分かっている。しかし、これは半ばイタズラ心から始めたことだ。最後の一線まで許すつもりは、まだ、なかった。
では、どこまでならばOKなのか?
実のところ、おキヌ自身が理解していない。そもそも、自分の横島への好意が本当に恋心なのかどうか、分からないのだ。
かつて、ルシオラと横島が恋仲になったとき。妬いていたのは事実である。それでも、美神との会話の中では、
「女として……どーとか、
う……うばってやるとか……
だ、抱いてとか……
自由にしてとか……
忘れさせてとか……
メチャクチャにしてとか、そーゆーんじゃ……。
私、まだ子供なのかも……」
と、否定的な発言をしている。それが、当時の正直な気持ちだった。
そして、今でも結論は出ていない。
しかし、だからこそ、積極的な行動に出るのである。
(どこまでは嬉しくて、どこから先が嫌なのか。
それが分かれば、気持ちもハッキリするはず……)
許容出来ることには身を任せるが、もしも、拒絶を感じるラインが出てきたら……。
そこが、気持ちの限界なのだ。
おキヌは、そう考えていた。
(横島さんだって……こういうの嬉しいのよね?)
おキヌは、横島がスケベであると知っている。
だから、どこまでであれ、女性がスキンシップを許せば、それは彼を喜ばせることにもなると信じていた。
実経験ではなく、週刊誌やワイドショーから知識を得ているだけに、『中途半端なところで止められたら、オトコとしては、かえって辛い』という可能性は想定していないのだ。
(横島さん、優しいから……。
私が拒絶したら、そこで止めてくれますよね?)
横島を過信するおキヌであった。
___________
「おキヌちゃん……」
「横島さん……」
二人の若い男女は、今、裸で向き合っていた。
おキヌは、横島が視姦しているのを感じている。恥ずかしいけれど、それで彼が喜んでくれるのであれば、おキヌも嬉しかった。
そして、おキヌ自身も、横島の裸を凝視していた。特に、一点から目を動かすことができない。
(す……すごい……。 これが……!?)
それは、ビィンと天に向かって突き出している。
(男の人って……。
こんなに上向いてて、オシッコするとき困らないのかな?)
平常時を知らぬおキヌは、そんなノンキな疑問も持ってしまう。
一方、横島は、『ノンキ』とはほど遠い状態だ。ここで止められたら、まさにオアズケである。早く先へ進みたかった。
「おキヌちゃん……それじゃあ、
横になってくれるかな?」
「は……はい……!!」
いよいよ、二人の肌と肌が密着するのだ。
おキヌは、ドキドキする。しかし、少しだけだが、ワクワクする気持ちもある! そのことに、自分でも感激してしまう。
(私……やっぱり……
横島さんのこと好きなのかな!?)
と思いながら、脱いだ衣服の上に横たわったおキヌ。そんな彼女に、横島がおおいかぶさってきた。
(あ……これが……横島さんなんだ……!!)
全身でお互いを感じながら、全裸で抱き合う二人。
「おキヌちゃん……
もしかして……俺が重い?」
「平気です……」
横島の体重がのしかかることなど、今のおキヌにとって、別に不快ではない。存在を強く感じることができるから、逆に嬉しかった。
その気持ちをこめて、おキヌは、彼の背中に回した腕にギュッと力をこめた。
「むしろ……もっと……くっついてくださいな」
「うん……わかった……」
ベッド代わりの衣服と、おキヌの背中との間に、横島の腕が入ってくる。おキヌ同様、彼も彼女を強く抱きしめたいのだ。
「横島さん……
ずっと……このままで……」
「うん……。おキヌちゃん……」
おキヌの体は、小さく震えていた。
寒さからではなく、恥ずかしさと……そして悦びで。
___________
「熱くて……気持ちいい……」
「えっ!? おキヌちゃん?」
「いや、なんでもないです!!」
小さなつぶやきだったが、何しろ、密着しているのだ。おキヌの言葉は、ハッキリと横島の耳に届いていた。
熱くて気持ちいい。それが何を意味しているのか、同じ心境なだけに、横島にも明白だった。
触れ合っている局部の熱さを、お互いに感じていたのだ。
(うん、気持ちいい……。
だけど……ジッとしてなんか、いられねーぞ!?)
このまま静止していることなど不可能だった。横島は、こすりつけるように腰を動かしてしまう。
「……えっ!?
横島さん、何を……!?」
驚くおキヌ。だが横島は、その口調に含まれる響きを、正しく理解していた。
(あんまり……いやがってない……!?
それならば……!!)
こういうとき、男は、弁が立つのだ。
「ほら、俺たち、今、
おキヌちゃんの体を暖めるために抱き合ってるんだよな?
それなら……体を動かしたほうが……
こすりあわせたほうが、もっと暖まるだろう?」
「……そうですね」
おキヌも嬉しかった。実は、彼女にだって、わずかだが、下半身がモジモジする感覚があったのだ。
「じゃあ……私も……」
横島の体で地面に押し付けられているおキヌは、大きく動くことは出来ない。それでも、彼女なりに、下半身を動かし始めた。
全裸で抱きあう若い二人が、お互いの秘所を押し付けあうようにして、こすりあわせる……。
___________
横島の言いわけによれば、これは、体を使った乾布摩擦みたいなものだ。横島の全身が、おキヌを暖めるための道具なのだ。
だから、彼は、下半身だけでなく上半身も動かしている。
そして、自分の胸にあたるおキヌの乳房のふくらみを、シッカリ感じていた。
(うう、やわらかい……)
おキヌの胸は、美神のような巨乳ではないが、決して貧乳でもない。スレンダーな体に似合う程度の豊かさはある。
(生チチを生肌で感じるのって、こんなにも気持ちいいのか!
おキヌちゃん、サイコーだ!!)
チチだけではない。おキヌの両脚は、横島の両脚でガッチリ挟まれている。だから、太ももの感触も満喫している。
そして、背中に回っていた両腕のうち、右手は、いつのまにか臀部に移動していた。
つまり、今、横島は……。
おキヌのチチ・シリ・フトモモ、その全ての感触を、思う存分楽しんでいるのであった。
___________
一方、おキヌも、横島の全身で摩擦されているというだけで、心が満たされていた。同時に、体のあちこちに快感が走ってしまう。
例えば局部。横島のソレ自身が押し付けられているのだ。感じるなというほうが無理である。
そして乳首。横島の胸でこすられているのだ。その引き締まった胸板に、強く『オトコ』を意識してしまう。
(横島さん……!!
ジンジンします……。
もっといじって〜〜!!)
しかし、恥ずかしくて、とても口には出来ない。
いや、もしもハッキリ告げたところで、横島には無理だっただろう。すでに、そんなタイミングだった。
___________
「ご……ごめん、おキヌちゃん! もう出る!」
実は、横島のほうに、限界が来ていたのだった。
挿入こそしていないものの、ずっと性器をこすりあわせていたのだから。
「えっ、ええっ?」
わけが分からず聞き返したおキヌだったが、答は、言葉とは違う形でやってきた。
ピュピュッ! ドピュッ!! ドピュッ……!
横島の先端から出た白濁液が、おキヌの体にふりかかる。最初の一滴は頬まで届き、残りの大部分は胸をおおった。
(あったかい……。
これが、横島さんの『赤ちゃんのもと』なんだ……)
おキヌは、小さい子供や赤ん坊が好きだ。
幽霊となる前は、おキヌ同様に孤児となってしまった子供たちを、姉のような立場で世話していた。
また、少し前に美神の妹が産まれた時には、頻繁に、赤ん坊に会いにいっていた。
そんなおキヌだから、好きな男性の『赤ちゃんのもと』には、特別な意識を持ってしまうのだった。
___________
「ごめん、汚しちゃって……」
横島は、体を離して、あらためておキヌの全裸を眺める。
彼自身の体液で汚されたおキヌは、なぜか、色っぽかった。
自慰行為で出したときには、まさに汚物でしかない白濁液なのに、今は、それすら、おキヌを美しく際立たせるための小道具となっているのだ。
顔についた一滴は、セクシーなほくろのようだ。そして、桜色に上気していた胸と、それを飾る白液とのコントラストも神秘的だ。
(触りたい……。
今のおキヌちゃんに、この手で触れたい……)
さきほどまで全身で感触を楽しんでいたはずなのに、この瞬間、そう思ってしまう横島だった。だから、
「お……俺が、手でふいてあげるよ。
俺が汚しちゃったんだから、俺がキレイにしないとね」
「え……?」
「遠慮しなくていいからさ……」
そんな言葉が自然に出てくる。
おキヌが小さくうなずいたのを見て、横島の手が、胸へと伸びた。
___________
(あん! 横島さん……!!)
男の指が胸の頂きに届くと、女は、嬌声が出そうになった。
だが、おキヌは我慢したのだ。
今二人が行っているのは、性行為ではない。体を暖めあっているうちに起こったハプニングの後処理に過ぎない。だから、あえいではいけない。おキヌは、自分に、そう言い聞かせるのだった。
(あんっ!! いいっ!!)
それでも、おキヌは感じてしまう。
さきほどから、すでに乳首はビンビンに勃っていたのだ。胸板で大雑把にこすられるだけでは、我慢出来ない気持ちもあったのだ。こうして手で直接触られることは、まさに体が望んでいたことだった。
「ここに……いっぱい……
かかっちゃったみたいだね」
「あっ……そっ……そうです……。
だっ……だから……そこを……もっと……」
横島が、おキヌの胸の突起をいじりながら問いかけた。おキヌの返事に応じて、彼の右手が、両の乳首を行き来する。指先で先端を愛撫し続けるのだ。
そして、左手は、おキヌの全身をまさぐっていた。
「こんな感じで……いいかな?」
白濁液を拭き取るという口実だが、横島がやっていることは、むしろ、それを塗り広げていることだ。
ベタベタしたものが体に広がっていく感覚。それは、普通ならば不快感になり得るのに、おキヌは、むしろ心地よく感じてしまう。
(不思議……。
これも……
横島さんの『赤ちゃんのもと』だからなのね)
今、自分は、彼の『赤ちゃんのもと』を体で受けとめている。だから気持ちいいのだ。
そう考えると、下腹部がジンと熱くなってくる。
(私……もっと欲しい!)
おキヌは、ゆっくりと体を起こした。
そして、彼に対して、ニッコリ笑いかける。
「ありがとうございます。
今度は、私の番ですね!」
「……えっ!?」
「横島さんにふいてもらったんだから、
今度は私が……横島さんをお掃除しないと……!!」
おキヌの視線は、横島のモノに向いていた。
それは、依然として固く、上方へ突き出している。そして、先端部には、彼自身の液がまとわりついていた。
「お……おキヌちゃんがそう言うなら……
お願いしようかな……」
おキヌの瞳には、妖艶な潤いがあった。横島にとって、こんなおキヌを見るのは初めてである。ついつい、色々と期待してしまう。
そして、おキヌは、それを裏切らなかった。
「はい……。
でも……こんな複雑な形をした部分、
うまく手でお掃除できないですから……
口と舌を使っていいですか……!?」
「……!! もっ、もちろん!!」
さんざん女性週刊誌は読んでいるのだ。おキヌには、ちゃんと知識があった。
(まさか、こんなことするなんて思わなかったけど……)
男性の性器を口で愛撫する。そんな行為を初めて知った時、おキヌは、とても驚いた。尿が出る部分を口にするなんて、なんて下劣だろうと感じたのだ。
しかし、今、横島のモノを前にしてみると、全く違う。むしろ愛おしいのだ。
だから、まだキスすらしたことない唇を、そこへかぶせてしまう。
カプッ!!
___________
(す……すごい……
とろける……ああ……
こんな気持ちいいことがあったなんて……!!)
横島は感激していた。
おキヌは、口を精一杯開いて、横島自身をくわえこんでいるのだ。しかも、これは『複雑な』部分を『お掃除』するという名目で始まったフェラチオである。
だから、あたたかい口内にただ包まれているだけではない。カリ首やウラスジなど『複雑な』部分を、おキヌは丁寧に舌でぬぐってくれているのだ。
もちろん、おキヌにとって初めてのフェラだ。その技術は拙い。しかし、これは、横島にとっても初めての経験だ。十分気持ち良かった。
「気持ちいいですか?」
と、声に出せないおキヌは、時々、視線で問いかけてくる。この上目遣いがまた色っぽい。
「うん……すごい……つづけて……」
と、つぶやく横島。
だが……。
この気持ち良さは、ずっと続く種類の快感である。
男には、もっと刹那的な快感も必要なのだ。
だから、彼は、さらなる要求を口にした。
「おキヌちゃん……」
「……?」
「できたら……そのまま口を上下させるか……
あるいは、手でこすってくれるかな……?」
___________
(……!!)
一瞬驚いたおキヌだが、すぐに意味を理解した。
(出したいんですね……!? 横島さん……)
これでは、出るものが出ないらしい。それでは可哀想だ。それに、おキヌとしても満たされない。
なにしろ、おキヌだって『赤ちゃんのもと』を受けとめたいからこそ、この行為を始めたのだ。
彼のモノをくわえたままコクリとうなずいて、おキヌは、口を上下させ始める。
ジュブッ! ジュブッ! ズルズル……!!
女性週刊誌には、動画はついてなかった。ワイドショーでも、フェラチオまでは扱われない。だから、どう動かすべきなのか、おキヌは何も知らない。それでも、ただ女の本能に従って行動していた。
(ください……私の口の中に……
『赤ちゃんのもと』を出してください……)
そう一心に願いながら、行為を続ける。
「ああ……そう……そこ……その感じで……。
いいよ……おキヌちゃん……」
横島の気持ち良さそうな声が聞こえる。それも、おキヌには心地よかった。
彼の反応を確かめながら、時々、おキヌは、手も使う。口は軽く先端をくわえるだけにして、代わりに、手で幹の部分をこするのだ。
「う……それもイイ……」
おキヌにも、少しずつ、コツがわかってきた。
同じ動きを続けすぎてもダメ。単調にならないように、多少のバリエーションが必要。でも、もちろん、その『バリエーション』は、気持ちいいことだけで構成したほうがいい。
(横島さん……いっぱい感じてくださいね)
手や唇や舌だけではない。歯を軽くあてることも、敏感過ぎない部分には効果的なようだ。
そうして、色々と学習していくうちに……。
(え……!? これって……!?)
口の中の彼のモノが、突っ張ったように、いっそう太くなる。おキヌが、それを感じたとき。
___________
「おっ……おキヌちゃん……!!」
横島の叫びとともに、熱いモノが飛び出してきた。
それは、おキヌの喉にぶちあたる。そして、あとからあとから出てきては、口内をいっぱいに満たしてゆく。
(う……。しょっぱい……。ちょっとヘンな味……!
でも……なんで?
なんで……私、これを『おいしい』って思うんだろ?)
自分の感覚に戸惑いながらも、おキヌは、それを飲み下していく。
(そうか……!!
横島さんの『赤ちゃんのもと』だから?
だからなのね……!?
うん、もっと欲しい!!
もっと食べちゃいたい……!!)
おキヌは、搾り取るかのように、彼の体液を吸い出すのだった。
___________
(おキヌちゃん……。
気持ちいいんだけど……、
イッたばかりには刺激が強すぎるよ!)
おキヌの口は、まだ横島自身をくわえたままだ。そして、その中では、舌が生き物のように蠢いている。
くすぐったいような感覚に耐えられず、横島は、みずから腰を引き抜いてしまった。
「え……!?」
おキヌが、残念そうな顔をする。だが、
「……おキヌちゃん!!」
今の彼女は、すごく色っぽかった。
目付きはトロンとしているし、口も半ば開いている。顎が疲れて、閉じられないのかもしれない。口の端からこぼれる一筋の白濁も淫美である。
しかも、その流れは、ツーッとおキヌの体を伝わっていくのだ。
喉から胸元へ。やわらかな胸を経て、下半身へ。
横島の視線も、つられて動いてしまう。
(おキヌちゃん、きれいだ……。
これが本物の『美しさ』なんだな……)
とまで、横島は思ってしまった。
そんな状態の彼女が、ポツリとつぶやく。
「もう……終わりなんですか?」
___________
最初は体の表面で浴びた『赤ちゃんのもと』を、今度は口で受けとめて、飲みこんだのだ。
体の外側でなく、内部に入ってきたのだ。
これは、おキヌを満足させるはずだった。
しかし……。
実際には、満足どころではない。
ジン……ジンジン……。
むしろ、下腹部の痺れが、どんどん強くなっていく。
(そうか……。
お口じゃダメなんだ……)
自分の熱い感覚の震源は、口ではないのだ。それが下半身から来る以上、『赤ちゃんのもと』を真に受け入れるべき場所は……。
一つしかない。
(だめ……もう私のほうが止められない……)
今や、おキヌには分かっていた。
自分の横島への気持ちが、ハッキリしたのだ。
(どこまでは嬉しくて、どこから先が嫌なのか。
……そんなライン、なかったんだわ!)
許す許さないどころではない。おキヌ自身が、今、最後まで望んでいるのだ!
(横島さん……!!
私……あなたと一つになりたいです!
……身も心も!!)
___________
「よ……横島さん……。
私……もっと体の……中から、あっためて欲しいな」
「お……おう!」
もう横島だって理解している。
これは、もはや体を暖めあうなんて次元を越えていた。
しかし、そうやって始まった行為である以上、まだ、そうしたフリを続けるのだ。
(そうだよな……。
おキヌちゃん、女のコだもんな。
それも清純派美少女なんだから……
おキヌちゃんの口からは、
直接的なこと言わせられないよな)
このまま、おキヌの『フリ』に付き合うことが、今、男として為すべきことだ。横島は、そう思った。
「どうしたらいいかな……?
この……俺の……出っ張った熱い部分を
おキヌちゃんの中に入れたらいいのかな?」
「はい……そうしてください。
それから……中で……
さっきの熱い液体をたくさん出してください。
そうすれば……もっと暖まると思います」
おキヌは、サラッと凄いことを言った。中出しして欲しいと懇願したのだ。
しかし、脱童貞で頭がいっぱいの横島は、それに気がつかない。
ただ、挿入の許可をもらったことだけを理解していた。
「じゃ……じゃあ……
いくよ……!?」
「はい……!!
お願いします……!!」
横島は、すでにビンビンに回復しているモノを、おキヌの秘所にあてがった。
___________
ツルッ!!
「えっ!? 横島さん!?」
「あれ?」
「……横島さん!?」
「ごめん、もう一回!」
ツルッ!!
「えっ!?」
「あれ……?」
何度かトライするが、すべってしまうだけで入らない。
いくら横島がその気で、おキヌが濡れているとはいえ、童貞と処女である。処女の扉がどれだけ固く閉ざされているのか、どちらも、理解していなかった。
そして、これを繰り返すうちに……。
ドピュッ!!
秘部をこすりあわせた刺激だけで、横島は、またイッてしまった。
「ごめん……」
横島としても、これは本意ではない。
ここまできたら、おキヌの純潔を貫き、その中でイキたかった。
しかし、横島がションボリしているように、彼のモノも硬度を失ってしまう。
そんな横島を見て、おキヌは、彼の横に座り込む。そして、
「慌てないでいいですから……」
優しい言葉を投げかけると同時に、彼のモノを両手で包み込んだ。
「急ぐことはないですから……。
でも私……ここで横島さんと……
身も心も一つになりたいから……
ゆっくりでもいいから、お願いします!」
「……おキヌちゃん!?」
ついに、彼女は、『フリ』をやめたのだ。
口実も演技もかなぐり捨てて、真摯な気持ちを彼に伝えたのだ。
それが、横島の心にも体にも伝わる。
「あら……!?
横島さんったら……!!
うふふ……」
おキヌの手の中のモノが、固さを取り戻しつつあった。大きさも形も、おキヌが最初に目にした状態へ向かう。
「これ……とっても愛おしいです……」
優しく握りしめていたおキヌは、ソレに顔を近づけて、キスをする。口に完全に含んでしまうのではなく、チュッチュッと口づけを繰り返すのだ。
「おキヌちゃん……」
一方、横島の右手も、自然に、おキヌの股間へと伸びていた。
クチュ。
横島の指が、肉と肉の間に挟まり、湿り気を感じる。
「おキヌちゃん……これって……」
「はい……。
『横島さんとつながりたい』っていう気持ちの証です」
おキヌが顔を上げて……。
「おキヌちゃん……」
「横島さん……」
二人の唇が、一つに重なった。
___________
しばらく二人は、そうしていた。
依然として、座ったまま、互いの性器を手で触りあっている。おキヌは両手で、そして横島は右手で。
また、二人のキスは、いつのまにか濃厚なものに変わっていた。求めあう気持ちのまま、舌と舌とが、からみ合う。
さらに、横島の左手は、おキヌの胸を優しく愛撫していた。それは、おキヌの気持ちを高ぶらせる。
「横島さん、そろそろ……」
「うん……」
どちらからともなく、二人の顔が離れた。それから、おキヌがその場に横たわり、少し脚を広げる。その間に、横島が腰を構えた。
おキヌの両手は横島のモノに添えられたままで、横島の右手はおキヌの秘所を撫でたままだ。まるで、気持ちのつながりを象徴するかのように。
そして、お互いの手で導かれて、二人の局部が重なりあう。
今度は……ちゃんと入った。
「横島さん……!!」
「おキヌちゃん……!!」
先端を包みこむ感触。それをシッカリ感じながら、横島は、グイッと腰を突き出した。
___________
「痛いーっ!!」
おキヌが、体をこわばらせた。
横島のモノが、彼女の肉のカーテンを突き破ったのだ。
おキヌが『オンナ』になった瞬間だった。
「……おキヌちゃん? だ、大丈夫……?」
体を止めて、横島がおキヌを気遣う。まだ、彼のモノは、根元まで入ったわけではない。これですでにおキヌが苦痛だというなら、残念ながら、ここで終わりにするしかなかった。
なにしろ、おキヌの目には、涙まで浮かんでいるのだ。
「……平気ですから!
続けてください……!!
お願いします!!」
「だけど……涙が……」
横島の言葉を聞いて、おキヌは笑った。
「横島さん……本当にニブイんですね。
うれし涙ですよ、これ……。
私……今、とっても幸せなんです!」
横島に初めてを捧げることができた……。それがおキヌには嬉しいのだ。
おキヌは、もともと現代に生まれた女性ではない。江戸時代に一度死んで、それから蘇った人間だ。
300年前のことを全て覚えているわけではかった。道士から当時の記憶映像を見せられ、ある程度は思い出したものの、そこに全てが記録されていたわけではない。
例えば、おキヌの恋愛のプライベードなど含まれていなかった。当時は今よりも成人とみなされる年齢だって若いのだ。もしかすると、誰にも秘密なうちにシッカリと恋愛をして、すでに誰かと体の関係をもっていたかもしれないのだ。
それは、おキヌとしては、想像したくもない可能性だったが、今まで、否定する証拠は何もなかった。
しかし、今、横島と結ばれた時に得られた、この破瓜の痛み。これは、自分が生娘だったことの、何よりの証なのだ。横島に処女を捧げたという証なのだ!
「だから……続けてください」
「う……うん」
横島が、深々と腰を押し進め……。
二人は、完全に一つになった。
___________
(痛いけど……でも幸せ!)
おキヌは、横島の背中に手を回し、ギューッと抱きしめる。彼女は、今、体ではなく心で快感を受け止めていた。
一方、横島は、心身ともにとろけていた。
(なんてこった……
おキヌちゃんの口も良かったけど……
こっちは……もっと気持ちいい……!!)
女の秘肉に包まれることこそ、オトコの幸せなのだ。口内で模した肉の壁など、本物には、かなわないのだ。
横島は、今、それを悟っていた。
___________
二人は、少しの間、そのまま動かなかった。ただただ、お互いの感触を楽しんでいた。
「横島さん……」
「……ん?」
「動いてください……」
「……えっ!?」
おキヌは、横島の『赤ちゃんのもと』をおなかの中に受けとめたいのだ。このままでは望みがかなわないことは分かっていた。
「お願いします……」
「でも……痛いんじゃないの?」
横島だって、腰を動かしたい衝動にかられていた。しかし、処女を失ったばかりのおキヌの負担を考え、我慢していた部分もあったのだ。
「何言ってるんですか?
痛いって言っても……
痛痒いような感じですよ!?
痒いんだから、こすって欲しいです……」
「お……おう。
そういうもんなのか。
それじゃ……」
横島が、本能のまま腰を動かし始めた。
「あっ、あん! いっ、いっ……」
これでいい。
おキヌは、そう思っていた。
『痛痒い』なんて嘘だ。これは、ズキズキするような鈍痛である。正直、こすられたら、辛い部分もある。
それでも、そう言わないと、横島は止めてしまうだろう。だから、敢えて小さな嘘をついたのだ。
(だから、口にしていいのは『いっ』まで。
『いたっ』って言ってはダメ……。
それに……嘘も言い続けているうちに
いつかホントになるかもしれないから!!)
おキヌは、自分に言い聞かせるのだ。
これは快感なのだ、と。この性器のこすりあいは気持ちいいのだ、と。
そして……。
おキヌの体が、おキヌの嘘を甘受し始める。
(え……!? ウソ……!?
ホントに気持ち良くなってきた!!)
___________
(……!? おキヌちゃん……!?)
おキヌの変化は、横島にも分かった。横島のモノを包んでいたおキヌの肉壁が、絡み付くような動きを見せ始めたのだ。
(すっ、すっげー!! 女体の神秘だ……)
それだけではない。
「あっ、あん! いっ、いっ……」
おキヌの喘ぎ声も、言葉そのものは変わらないのに、その音色が、全く違うものとなったのだ!
心なしか、頬の赤みも増しているように見える。
(おキヌちゃん……やっぱり可愛いな……!!)
横島も幸せだった。だから……。
(あ……やべっ!! もう出そう!!)
___________
突然、横島が腰の動きを止めた。
「えっ……?
どうしたんですか……?
……疲れちゃったの?」
やや焦点の定まらぬ視線と口調で、おキヌが横島に質問する。
「いや……そうじゃなくて……。
もうイキそうだから……
えーっと……引き抜かないと……」
横島だって、男の本能としては、おキヌの体内にドバーッと出したい。しかし、それはいけないという理性があった。
これに対して、おキヌは、
「それじゃあ……続けてくださいね!?」
と言って、横島を抱きしめていた腕にいっそうの力をこめる。さらに、自分の両脚で、彼の脚を抱え込み始めた。
「えーっ!? おキヌちゃん!?
それはマズイ、マズイよ……。
そんなことしたら……
できちゃうじゃないか……!?
俺たち、まだ高校生なのに……」
口では否定する横島だったが、頭の中の天秤は、すでに『中出し』に傾きつつあった。ゆっくりとだが、腰が再び動き始める。
「……私、もともと江戸時代の女ですよ?
当時なら……
今の高校生なんて、もう成人扱いですよ?」
時代によって元服の年齢も変わる。だから、この発言は微妙だ。しかし、その真偽は、どうでもよかった。そもそも、無茶苦茶な理屈なのだ。
それでも、横島には効いてしまう。すでに、もう一押しで陥落する状態だったのだから。
「……ね?
だから……くださいな?」
おキヌが、ニコッと笑う。その笑顔には、妖しい艶っぽさと、淫らな美しさが混じっていた。
この瞬間、横島の理性は完全に吹き飛んだ。
「わ……わかった!
いっ、いくよ!?」
「はい!! あんっ、いいっ……!」
横島の下半身が、ラストスパートに入る。そして……。
「お……おキヌちゃんーっ!!」
「……横島さん!!」
横島の精が、彼のモノを駆け抜け、おキヌの中へと解き放たれた。
その瞬間、熱いほとばしりを体内に浴びたおキヌは、横島自身を強くしめつけてしまう。
「あ……あ……おキヌちゃん……」
まるで搾り取られるかのように、横島の『赤ちゃんのもと』は、いつまでもいつまでも出てくるのだった。
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秘事の全てが終わり、今、再び二人は階段を走っていた。
おキヌは、あいかわらず横島に抱きかかえられている。だが、前よりも、もっと幸せそうだ。
時々、彼女は、自分の股間に手を伸ばす。何かが挟まったような鈍い痛みが、消えないらしい。
「おキヌちゃん……
痛いんだったら、文珠で治療しようか?」
貴重な文珠を無駄遣い出来ないが、今のおキヌのためであるというなら、話は別だ。それに、これは横島の責任でもある。
「いいえ……このままでいいです。
これも……横島さんとの絆の証ですから。
それに……」
と、真面目な表情でつぶやいた後、イタズラっぽい笑みを見せた。
「文珠で治療なんかしたら、
処女膜まで再生しちゃいますよ……!?
横島さん、もう一度、
『処女』の私を抱きたいんですか!?
経験済みの私じゃ、イヤですか!?」
「……そんなわけないだろ!?
一度で十分だよ!!
これ以上痛い思いして欲しくないし、
もっと……いっぱいテクニックも……」
「もうっ!! 横島さんったら!!」
二人は、幸せに浸りながら、朗らかに笑いあう……。
___________
「そ……そういうわけには、いかないよな……」
「……!? 横島さん……!?」
横島の言葉で、おキヌは、長い長い空想から、現実に引き戻された。
彼の気持ちまで含めて色々と想像してしまったおキヌだったが、実際の彼の対応は、全く別だったのだ。
彼は、立ち止まることすらしない。
おキヌを抱きかかえて、走り続けていた。
「……そうですね。
そんなこと……できないですよね……」
たった今思い描いた内容と、現実とのギャップ。それは、あまりにも大きかった。
おキヌの表情が陰る。それを見て、さすがの横島でも気付いてしまう。
(うわっ、おキヌちゃん……
清純派のはずだったのに……
ちょっと何か期待しちゃってたのか!?
ひょっとして……俺のスケベが感染した?)
おキヌだって女子高生だ。好奇心旺盛な年頃なのだろう。
そうまとめてしまう横島である。自分への好意が根幹にあるということまでは、まだ理解出来ていなかった。
「おキヌちゃん……」
呼びかけながら、横島が足をとめた。
「そんなことしたら……俺、止められなくなっちゃうからさ」
「え……!?」
「ごめん……。
純粋に暖めてあげるだけじゃなくて、
スケベなことしちゃいそうだから。
でも……そういうわけにはいかないだろ?
おキヌちゃんは……
俺にとって……大切な女のコだからさ!」
忘れてはいけない。横島は、おキヌの抱え方を変えたわけではない。だから、彼の手は、いまだに彼女の胸に添えられているのだ。
この発言は、おっぱい触っている男が言うべきセリフではないだろう。
それでも、おキヌには、横島がカッコ良く見えてしまう。
(横島さん……!!)
さきほどの空想は全く実現しなかった。しかし、空想とはいえ、その中で、おキヌは最後まで許しているのだ。だから、自分が異性として横島を好きであることは、もはや明白だった。
惚れた男から『大切な女のコだから、そういうわけにはいかない』と言われれば、誰だって嬉しい。おキヌの目から、一筋の涙がこぼれた。
(やべえ、おキヌちゃん泣いちゃったぞ!?
今の言葉の……何がいけなかったんだ!?)
一方、うれし涙だとは知らずに、横島は、少し焦ってしまう。場を明るくするために、冗談で誤摩化すことにした。
「あれ……!?
体の震え止まったみたいだね?
もしかしたら、さっきの俺の言葉で
……心が暖まったのかい!?」
自分に似合わぬキザな言葉を、ギャグとして発したのだ。
まさか、それが真実をついているとも知らずに。
「横島さん……!」
ある意味、おキヌは、もう限界だった。
顔を隠すようにして、彼の胸にうずめる。そして、彼の首に回した手に力をこめながら、自分の気持ちを正直な言葉にした。
「……大好き!」
おキヌのささやきは、横島にもハッキリ聞こえた。
(うう……まただ……。
でも……やっぱり……
これは……おいしい……!!
おキヌちゃんとこの状況……!!
ときめく!! ときめくぞっ!!)
だからといって、ここで衝動に従って行動したら、今言ったばかりのことが大嘘になってしまう。
それに、以前の同様なシチュエーションでは、迂闊な発言でおキヌを傷つけているのだ。
(でも……こんな状態続けてたら、俺の理性がもたんぞ!?)
そう思うならば、おキヌの胸から手をどければいいのに、それも出来ない横島であった。むしろ、ほんの少し、指が頂上へ向かって動いているようだ。すでに、理性は消えつつあるのではないだろうか。
(いや、ダメだ……!)
彼は、大きく頭を横に振った。
そして、雑念を振り払うかのように、再び走り出した。それも、かつてない猛スピードで。
「よ……横島さん?
どうしたんですか、突然!?」
腕の中のおキヌが問いかける。
横島は口を開いたが、その答は、むしろ彼自身へのものだった。
「こーなったらもー
はやく次の宮へいこう!!」
(第五話に続く)
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こんにちは。
もしかしたら、この番外編だけ読まれる方々もおられるかと思ったので、状況説明やおキヌの心情など、少し前話をおさらいするような形でもう一度記しました。
そして、肝心の18禁パートなのですが……。私には、身も心も高校生な、普通のおキヌちゃんに経験させてしまう度胸は(まだ)なく、夢オチという形にしてしまいました(エロ描写も物足りないかもしれません。例えば、おキヌの空想ということにしたので、横島がおキヌの体を口唇愛撫するシーンは無しとしました。私には、処女のおキヌちゃんが口唇愛撫されたいと望むイメージがありませんでしたから)。
ただし、現実に返ったあとでも、その『夢』にこそ意義があるような展開です。無意味な妄想ではありませんので、お許し下さい。
なお、『夢オチ』というのは、ある意味ずるい手法かもしれませんが、うまく使えば有効な手法なのでしょう。例えば『聖闘士星矢』では、夢オチっぽい幻魔拳どころか、一輝編での紫龍死亡とか、冥界編での瞬死亡とか、ホントの夢オチも複数使われています。今回は、敢えて『夢オチ』を取り入れるということで、私なりの『聖闘士星矢』への原作リスペクトとしました。
では、本編もよろしくお願いします。
(今回のような妄想番外編に、もし、再び挑戦するとしたら……次の機会は、ポセイドン編のリュムナデス戦でしょうね)
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