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「『神々の迷惑な戦い』第四話(GS+聖闘士星矢)」

あらすじキミヒコ (2008-03-11 03:01)
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 『魂の牢獄』から魔神アシュタロスが解放され、神魔のバランスは崩れてしまった。
 この機に乗じるかのように、ギリシアの神々が勢力争いを始めるらしい。神々同士のケンカは、バランス補正を考える上ではプラスとなる。だから神族上層部は黙認せざるを得ないが、ギリシア神に付き従う人々が犠牲になることには胸を痛めてしまう。
 人間の介入ならばOKと判断し、神族上層部は、美神たちを動かすことにした。依頼を快諾した美神たちは、白銀聖闘士(シルバーセイント)が青銅聖闘士(ブロンズセイント)を殺そうとする現場へ急行。同期合体という反則ワザで、その場のシルバーセイントを一掃してしまう。
 続いて、教皇を懲らしめようと、ギリシアへ飛んだのだが……。美神が、アテナと間違われてしまった。胸に黄金の矢を受けた美神を助けるためには、十二時間以内に『十二宮』を突破しなければならない!
 文珠で作ったクロスをムウが本物に改修してくれたり、おキヌが途中合流したり、そんな嬉しいハプニングも経て、横島は、教皇の間を目指して突き進む……。


    第四話 十二宮編(その三)


「誰もいない宮も、けっこうあるんですね」

 横島の腕の中で、おキヌがつぶやく。体力のないおキヌは、宮と宮の間を進む際、ずっと彼に『お姫様だっこ』されているのだ。
 なにしろ、宮どうしをつなぐ階段は長い。走っているだけで三十分アニメが何話か出来てしまうと言われるくらいだ。そこをノンストップで駆け抜けられる人間など、それこそ、厳しい修行を経たセイントか、あるいは、非常識な身体能力をもつ横島くらいなものだった。

「おキヌちゃんが来る前にも、
 無人のところが一つあったからね」

 第六の宮『処女宮』で横島は大苦戦をした。おキヌがいなければ、そこで終わりとなるところだった。しかし、その後、なんと無人の宮が四つ続いたのである。
 横島が今おキヌに述べた『双児宮』では、一瞬だけ、幻惑攻撃らしきものもあった。しかし、第七の宮『天秤宮』から第十の宮『磨羯宮』までは、何の問題もなく駆け抜けることが出来たのだ。
 ただし、第九の宮『人馬宮』において、小さなイベントも生じている。サジタリアスクロスから放たれた矢が壁に突き刺さり、隠されていたメッセージを白日のもとにさらしたのだが……。
 あいにく、ギリシア語で書かれていたので、おキヌにも横島にも読めなかった。二人が走り抜けた後、サジタリアスクロスは、まるでジェミニのクロスのように涙を流したという。


___________


 こうして、横島は、おキヌを抱きかかえたまま、かれこれ二時間以上も走り続けているのだった。

「でも……横島さん?」
「……ん? なに?」
「疲れませんか……?」

 おキヌは、横島の疲労を気遣う。
 もちろん、おキヌは、少しでも横島の負担を減らすために、彼の首にしっかり腕を回している。また、なるべく横島がラクな姿勢で彼女を運べるように、彼の腕が自分のどこに触れようと、気にしないつもりだった。

「ああ、大丈夫だよ。
 それに、こうしていると、
 俺の霊力も上がるから……」
「えっ!?
 ……どういう意味です?」
「あっ!?
 いや、なんでもない!
 最後の言葉は、忘れてくれ。
 ハハハ……」

 少し怪訝な顔をしたおキヌに対して、横島は、慌てて取り繕った。
 おキヌとの密着を、最初は悦んでいた横島である。しかし、素直に感触を楽しむには、どうもクロスが邪魔なのだ。
 そこで、彼は、途中から少し方針を変更していた。横島がどういう持ち方をしても、おキヌは文句を言わない。それにつけこんで、片手で少し彼女の胸に触れていたのである。

(……こんなチャンス、めったにないもんな!
 気付かれて終わりになったら、
 ちょっと、もったいないぞ……) 

 横島のおキヌに対する接し方は、美神に対するものとは大きく違う。基本的に、彼は、おキヌにはセクハラできないのだ。だが、だからこそ、現在の状況を貴重な機会だと感じていた。
 なお、横島は、今の言動に関して『おキヌは天然ボケだから気付いていない』と思っている。しかし、おキヌは、単なる天然ボケ少女ではない。週刊誌やワイドショーの見すぎと言われるくらいのカマトトでもあるのだ。その手の知識は、豊富に持っているのである。だから、自分が今されていることを、ちゃんと理解していた。
 その上で、許していたのである。
 正直、おキヌは、まだ自分の気持ちをハッキリとは分かっていない。横島に対する好意が、友情の範囲内なのか、あるいは、恋心の一端なのか。
 分からないからこそ、おキヌは、許容出来ることには身を任せようと思っていた。『嫌!』と感じるラインが出てきたら、それが、気持ちの限界ということなのだ。
 そんな考えだから、今も、平気で胸を触らせているのだった。別に横島は、何も『十五禁』『十八禁』なことをしているわけではない。ただ、ソッと手をあてているだけだ。この程度ならば、おキヌとしても、むしろ心地よい。
 だが、それはそれとして。
 ちょっと腹立たしい気持ちもあった。

(……もう!! 横島さんったら!!
 いつもは美神さんにセクハラしてるくせに、
 美神さんがいなかったら、私に来るんですか?)

 おキヌは、昔の『こーなったらもーおキヌちゃんでいこう』発言を思い出す。しょせん、自分は横島の本命ではないと考えてしまうのだ。
 実のところ、今回の横島の行動に、そこまで深い意味はない。いつもと少し違う態度をとっているのは事実だが、これも単にオトコの本能なのだ。しかし、おキヌには分からなかった。

(いいんです!
 横島さんが、そういうつもりなら……
 私にも考えがありますよ!?)

 こうして、それぞれの思惑を胸に秘めたまま。
 若い二人は、第十一の宮『宝瓶宮』に突入した!


___________


 一方、その頃、教皇の間では……。

「まさか、そこまで攻め込まれるとは……」

 横島の快進撃に、教皇が焦っていた。
 彼にも、無人の宮が四つ続くことは分かっていた。
 第七の宮『天秤宮』の主は、どうも教皇が悪であると見抜いているらしい。いくら呼び出しても、中国五老峰に留まったまま、招集に応じないのだ。
 また、第九の宮『人馬宮』の守護者は、すでに死んでいる。教皇自身の命令で、ゴールドセイント山羊座(カプリコーン)のシュラが、十三年前に殺したのである。
 そのシュラは、第十の宮『磨羯宮』の番人だ。しかし、現在は、教皇から与えられた別の任務により、自分の宮を留守にしていた。
 サンクチュアリを運営していくには、それなりの資金も必要。表向きはきれいごとで済ませていても、実際には、俗世間の黒い領域と関わるケースも出てきてしまう。そうした仕事に差し向けることが出来るメンバーは、多くはない。シュラは、教皇を『悪』と知りつつ、それでも己の信念のために彼に従う、そんな貴重なセイントの一人だった。
 そして、第八の宮『天蠍宮』を守護する蠍座(スコーピオン)のミロも、別の命令で出かけていた。彼は、教皇に騙されているクチである。教皇としては、彼が自分に不信感を抱いていると感じつつも、彼本来の熱血ぶりを上手く利用し、まだ手駒として扱っていた。
 ただし、気性の激しい男である。真実を知ってしまえば、何をしでかすか分からない。仲間であったはずのゴールドセイントにも、平気で必殺技を撃ち込むであろう。そんなミロを今回の戦いに参加させたくはなく、つい、遠ざけてしまったのだ。

「シャカが負けるとは誤算だった……」

 『処女宮』を守るシャカが『もっとも神に近い男』なだけに、そこを突破されることはないという油断もあった。
 しかし……。

「いや、残る二人も、一筋縄ではいかない連中だ。
 なんとか、くいとめてくれよ……」

 情けない口調である。そもそも、この『悪の偽教皇』の正体は、しょせん低級な魔物。だんだん、小物ぶりが如実に現れてくるのだった。


___________


「こいつも……二枚目系か?」

 『宝瓶宮』の入り口に立っていたのは、ゴールドセイント水瓶座(アクエリアス)のカミュ。
 青い髪が、耳の横から胸元まで垂れている。こう表現してしまうとおキヌと似ているかもしれないが、彼女の比ではない。

(鏡獅子みたい……)
(昔テレビでやってた炎の特撮ヒーローだな……)

 と、おキヌや横島が思ってしまう髪型だった。
 味方になってくれるかもしれないという期待をこめて、横島は質問する。

「おまえ……どっちだ?
 アテナ派か? それとも教皇派か?」
「派閥などない。
 敢えて言うなら……
 氷河派だと言われている」
「は……?」
「いや、今の言葉は忘れてくれ」

 カミュは、目の前の男女を見て、弟子の氷河を思い出していた。
 いつまでも死んだマーマへの想いを断ち切れず、クールになりきれない氷河。
 戦いの場に女連れで来た男に、氷河と重なる『甘さ』を感じてしまったのだった。

「ともかく……ここを通すわけにはいかん!
 おまえのような甘ったれた男は、さっさと引き返せ!
 ここを通りたければクールになることだ!」

 カミュの発言に、おキヌと横島は顔を見合わせる。

「横島さんが『甘ったれた男』……?」
「『ここを通りたければクールに』……?」

 そんな二人を見て、小さく首を振るカミュ。

「わからんのか……。
 では二人で永遠に考えることだな。
 恋人同士仲良く眠れ!
 フリージングコフィン!!」


___________


「氷河……おまえが来ても、こうなるだけだぞ……」

 横島を愛弟子氷河と重ねてしまったカミュは、横島を殺さなかった。
 今、カミュの目の前には、彼の技で作られた氷の棺がある。
 その中で、横島とおキヌは、お互いをかばいあうようにして抱き合ったまま、氷漬けにされていた。

「おまえたちの肉体は、永遠にそのままだ。
 ここで、氷のモニュメントとして存在し続ける」

 この氷柱は、決して溶けることはなく、また、ゴールドセイントが数人がかりで殴りつけても、割れることはない。カミュは、自信を持っていた。

「せめてもの情けだ。
 そこで二人でクールに……」

 カミュは、クルリと反転し、宮の奥へと戻ろうとした。
 しかし、突然、背後に強力なコスモ……横島の霊力を感じ、足を止める。

「……そんなバカな!!」

 振り返ってカミュが目にしたのは、内部から溶けてゆく氷の棺だった。
 横島が文珠で巨大な熱量を発生させているのだ。

「……てめえ、シャレになんねーぞ!!
 俺はともかく、おキヌちゃんは普通の女のコなんだぞ!?」
「……さ……寒い……」

 脱出した横島は、怒りに燃えていた。
 おキヌは、体が凍えてしまって、ブルブル震えてしまっているのだ。
 平時ならば『こういうときは、お互いに素肌で暖めよう!』などと御約束を言うべき状況だ。しかし、今の横島には、そんな余裕もなかった。
 再び文珠を出し、『暖』と文字を入れて、おキヌに投げつける。

「とりあえず……それで我慢してくれ」

 震えながらも、おキヌはうなずく。
 それを見て、横島は、カミュに向き直った。

「……許さねー!!」

 一方、驚愕の表情で二人を見ていたカミュは、一つの結論に到達していた。

「おまえは……熱を操るセイントなのか!?
 ならば、おまえの炎と私の氷……
 どちらが上か、勝負だ!!」

 カミュは、『氷と水の魔術師』とも呼ばれるゴールドセイントだ。
 全力で目の前の敵を倒すため、彼は、奥義のポーズを構える。

「オーロラエクスキューション!!」

 カミュが頭上に組んだ両腕が、横島には、水瓶に見えた。それが振り下ろされ、中に蓄えられた凍気が襲いかかる!

「おっと……!!」

 ゴールドセイントの攻撃は、光速拳だ。超加速の一種である。普通、横島には回避することは出来ない。しかし、カミュのオーロラエクスキューションは、仕草が大仰なため、攻撃の方向が丸分かりだった。技名を叫ばれたと同時に跳んで退けることで、なんとかかわしたのだ。

「危なかった……」
「バカもの!!
 きさまもセイントなら、自身の技で立ち向かえ!
 きさま自身のコスモで、私の絶対零度を破ってみせろ!!」

 カミュは『私の絶対零度』と言ったが、実は、カミュの凍気は、絶対零度までは達していない。それは、カミュ自身でも理解していた。
 究極の凍結状態である絶対零度は、カミュですら不可能。 しかし、コスモを高めれば、それに近づけることは出来る。そして、いかに絶対零度に近づけるか、それが氷のセイントの強さの証なのだ。
 そうした基本をチラッと頭に思い浮かべたカミュ。彼は、次の横島の言動に驚かされた。

「絶対零度か……。
 それなら俺の勝ちだ!!
 俺にも『絶対零度』くらい出来るからな!!」

 横島が、両手を組んで、頭上へと回す。たった今見たばかりの、カミュの必殺技のポーズだ。

「……そうです!!
 横島さんの絶対零度は、ルシオラさんのお墨付きです!!」
「ああ……。
 ここで負けたら、ルシオラの言葉が嘘になっちまうからな」

 おキヌの応援に、キリッとした表情でうなずく横島。二人とも、ルシオラと会った際の『今の、絶対零度近く下がったわよ』という言葉を頭に描いたのだ。
 そんな二人を見て、カミュは、再び憤慨する。『ルシオラ』という女性名に反応したのだった。

「戦いの中で女性に……しかも別の女性に想いを馳せるとは!
 マーマを忘れられない我が弟子よりもひどい!!
 ……クールになれ!!」

 カミュは、横島とおキヌの微妙な関係を知らない。だから、彼にとっての横島は、恋人同伴でやってきた男なのだ。横島の態度は、節操がないように見えるのだ。

「男ならば……闘いの中で節を曲げるな!
 最後まで自分の立場を貫け!!」
「バカ野郎!!
 『両手に花』こそ、俺の『節』なんだー!!」
「横島さん……それは直して欲しいな

 おキヌの小さなつぶやきは、熱く戦う男たちの耳には届かない。
 そして、二人の男は、互いに同じポースで、技をぶつけあう!

「見よう見まねオーロラエクスキューション!!」
「オーロラエクスキューション!!」

 もちろん、横島の技は、手の中に握り込んだ『凍』文珠を投げつけただけのもの。インチキである。
 しかし……。
 勝ったのは、横島の『絶対零度』だった。

「戦いの中で絶対零度を身につけ……
 私の技まで盗むとは……
 おまえも……今日から私の弟子の一人だ」

 勝手に横島を弟子と認定し、カミュは、その場に倒れ込む。

「あの……大丈夫ですか?」
「ああ……。気絶しただけみたいだな」

 おキヌと横島は、カミュが死んでいないのを確認してから、『宝瓶宮』をあとにした。


___________


「おキヌちゃん……まだ寒い?」
「はい……」

 十二番目の宮『双魚宮』への階段を走りながら、横島は、腕の中のおキヌを心配した。
 まだ彼女が震えているのが、ハッキリ伝わってくるのだ。

(文珠一個で足りないのか?
 でも……もうずいぶん文珠使っちゃったからなあ……)

 横島は気付いていないが、使った文珠が『暖』だから良くなかったのだ。
 おキヌは、体ではなく、むしろ、心が寒いのである。

(やっぱり……私は美神さんとは違うんだ……)

 もしも美神がこの状態だったら、横島のほうから『体で暖めましょう』と抱きついてくるはず。しかし、自分が相手では、そうしてくれなかった。
 そんなふうに、おキヌは少し寂しく思うのだ。
 これは、状況やキャラクターの違いなのだが、彼女は、そこまで気が回っていない。寒さのせいで、頭への血の巡りも遅くなっているのかもしれなかった。
 もともと『宝瓶宮』突入前にも、ヤキモチじみた感情から、

(機会があったら、私のほうから
 少しだけ誘惑しちゃおう!
 でも、こわいから『少しだけ』だけど……)

 と、イタズラ心を胸に秘めていたおキヌである。今こそ、そのチャンスだと思ってしまう。だから、思いきって口にしてみた。

「文珠なんかじゃなくて……
 やっぱり、ひとの温もりが欲しいんです……」
「お……おキヌちゃん!?」


(番外編 or 第五話に続く)

# 18歳以上で、かつ、18禁に抵抗のない方々は、『番外編』へ進んでください。#
# 18歳未満、あるいは、18禁に抵抗のある方々は、『番外編』を省略して『第五話』へ進んでください。#


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 こんにちは。
 この第四話だけ読むと、『聖闘士星矢』の世界の中で横島が戦っているように見えるかもしれませんが、これは『GS美神』の世界です(詳しくは、第一話を御参照ください)。
 今回のカミュ戦、早く書きたかったんです。『絶対零度』という両作品に出てくる言葉。『GS美神』側ではルシオラを言及することになりますが、『聖闘士星矢』側では、相手はカミュです。カミュには、女性がらみで甘ったれな氷河という弟子もいます。だから、誰もが思いつく展開であろうと覚悟し、サッサと書いてしまいたかったのでした。
 そして、おキヌちゃんの活躍。もともとはポセインドン編から本格参加させるつもりだったのですが、前話で登場させてしまった以上……。思いっきり動かしてしまいました(笑)。
 もともとは、カミュ戦だけでなく第四話で教皇戦まで書いてしまい、その後で、宝瓶宮の後の秘事を番外編として投稿するつもりでした。しかし、アフロ戦を書いている途中で「『番外編』を書くならばアフロ戦以前にするべきだな」と思うようになったので、方針変更。一戦のみで第四話としてしまいました。今までの半分くらいの長さしかありませんが、物語構成上の都合ですので、御勘弁下さい。
 では、番外編も次回も、よろしくお願いします。
 

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