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「GS横島異界大成記 第二話 「違(たがい)」(GS+オリジナル)」

TAMTAM (2008-03-01 22:12/2008-06-18 21:12)
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――――――――――さぁ…キミはどう出る?


『横島』は、取り押さえられるおキヌの正面に腕を組んで立ち、興味深げに観察し始めた。
「(残念ながら持っても居ない命を張ってまで助け出す気にはならないよ。
僕にはその理由が無い…。そう―――――僕には、ね…)」
『横島』は無言。彼の頭の中では様々な計算が凄まじい速度で回っていた。
彼の脳はまるで精密機械。かつての横島にはできない芸当だった。
「よ、横島…さん…?」
おキヌは既に錯乱を通り越して、無の境地に至っていた。
目の前の『横島』の不可解な行動と、自分の知る横島像が重ならない矛盾。
頭は何かをしきりに考えても、本能が思考を拒否した。
「おっと、それ以上喋るんじゃねぇぜ…」
ルスィトは取り押さえるおキヌに言った。
「まったく、ゼクティスを倒しちまう幽霊が居たとは驚きだぜ…。
まぁいいさ。…代わりはいくらでも居るからな」
そう言うとルスィトは、人間の顎の可動限界を超えるほどの大口を開いた。
「お゛ぉえぇぇぇぇ!…ゲロォッ」
と言ったルスィトの中から出現したのは、直径20cm程の球体。
『横島』は訝しげな顔でその球体を観察する。
「ギュイィィィィィィィィ!!」メキメキッバキッ
地獄の底から響くような不気味な咆哮が鳴り響き、球体が割れる。
「…おや?――こいつは参ったな…」
さすがの『横島』も、相変わらずの口調ではあるが驚いたようだ。
「魔族には、いろいろ種類があってな。基本的には、生まれつき何かしら固有の能力を持って生まれてくる」
中から出て生きた生物は、先ほどの球体に入っていたとは思えない大きさだった。
「俺のように中級魔族と言われるやつは基本的にその能力を二つ以上持つ」
球体から出た後もその生物は脈動し、質量をどんどんと増やしてゆく。
「その能力は戦闘か、知能か、はたまたそれ以外の何かに片寄っている」
そう言うとルスィトはまたもゲロォッと言って、今度は三つ一気に球をを生んだ。
「ゲホッ…しかし高い霊力値を持った魔族は稀にその片寄りがなく、総合的に質が良い。…そいつが―――――」
言ったところで一匹目の魔獣の変異が終わる。
「―――――上級魔族だ」
「ヴオ゛オ゛オ゛ォォォォォォォォォォォ!!」
『横島』を襲った魔獣、ゼクティスだった。
「こいつは俺の眷属『ゼクティス』…なかなか面白い魔獣でな…。
腹が減ってる時に、生き物や幽霊の霊体を無差別に食う。そして食った霊体は全て俺の体に送られる。
―――――つまり…」
ルスィトがそこまで言うと、『横島』が後に続ける。
「―――食えば食うほどあんたの霊格は上がり、ゼクティスは永久に空腹…ってことかな?」
質問と言うよりは確認。額には汗がにじんだ。
「―――――ご明察!」
「「「ウヴォォォォォォォォォォォォ!!」」」
四体の魔獣の変異が終わる。もはや霊体である『横島』にとっては脅威でしかなかった。
「見ての通りコイツは大した霊力を持っていない。
だがその分、霊体を狩るのに適した戦闘力を持っている。普通は幽霊ごときに倒されたりはしない。」
ルスィトと、その腕に囚われたおキヌの周りを、四体のゼクティスが取り囲む。
「…まぁそんなことは良い、時間が無いんでさっさと目的を果たすことにするぜ。」
そう言うと、ルスィトはおキヌに話しかける。
「氷室キヌ、お前に協力してもらう。」
「……。」
おキヌはいまだ混乱から解き放たれてはいない。
「俺には霊体を吸収する能力と、ゼクティスを生み出す能力しかない。
そこでだ氷室キヌ、ここに街中の霊を集めろ!」
「!!」
おキヌは一瞬にして現実に帰った。抗議の声をあげようとするが――
「おっと、口答えはするなよ?…こちらの手の中には横島忠夫の霊体がある。
残念ながら彼は一人で俺を倒せるほどの霊力は持っていない。すぐに吸収できてしまうぞ?」
「!――そんな…。」
おキヌは覚醒後、更なる追い討ちをかけられた。
『横島』の顔を見るが、相変わらず何を考えているのか分からない。
しかし、おキヌにとっては目の前の幽霊が横島である時点で、選択肢は一つしか存在しなかった。
「…街中の霊を集める程の力が私にあるかは分かりませんよ?」
おキヌは覚悟を決めるとルスィトに言った。
「…かまわん、それならお前の力の限界まで集めろ。俺が満足できたら横島忠夫を解放してやる」
“開放してやる”と取り付けた約束。おキヌはそのセリフに縋るしかない。
「(―――まずいな…おキヌちゃん、騙されている…。)」
『横島』は何も考えていないような顔で、密かに状況を打開する策を考えていた。
「(おキヌちゃんは僕にとってはどうという存在ではない…が、ヤツを上級魔族にするのはまずい…。)」
そうこうしている間に、おキヌは笛を取り出し口もとに持ってゆく。
「やめるんだおキヌちゃん、この街の霊の中にはキミの知り合いも居るんだろ?」
『横島』はとにかく時間を稼ぐことにした。
おキヌの手が止まる。
「で、でも横島さん…。」
おキヌは再び現実に引き戻された。考えないようにしたことを考えさせられる。
「キミは、なぜ僕…いや横島忠夫の為にそれができるんだ?同じ幽霊じゃないか」
『横島』にはわからないことだった。
同じ幽霊なら「横島忠夫」一人よりも、多くの幽霊を救えば良いじゃないかとしか彼は思わない。
「キミにとって、横島忠夫はそんなに価値があるのかい?」
『横島』は徐々に感情を表してゆく。
「キミの大切な友達を沢山失ってまで救いたい男なのか!」
それはまるで、『横島』のセリフとは思えない。
「その横島忠夫は、今キミを救おうともしないのに!」
そう怒鳴るように喋った後、急に静かになって言う。
「…僕にはわからない。…キミはその後、そんな自分を許してあげられるのかい?」
怒ってもいなければ、泣いてもいない。切実な疑問の表情だった。
そんな『横島』に、おキヌは諭すように言った。
「横島さん、それでもいいの…。また横島さんに会えた。
死んでいても、たとえ私を見殺しにしても、失いたくない…。もうさよならは嫌…。」
そう言ったおキヌは涙を流し、ネクロマンサーの笛を吹いた―――――


―――――その瞬間、何かが爆ぜた。
「な…に…?」
ルスィトのみが、事態を把握する。
「「「「グギャァァァァァァァァァァァァ!!」」」」
四体のゼクティスが消滅する。その軌跡には横島忠夫の姿があった。
「(おキヌちゃんなんて僕にはどうでもいいんだ。)」
「あんたさっき言ってたな?」
「お、お前…一体何をしやがった…?」
「(…僕が彼女を救ったって、何の特にもならないんだ。)」
「俺一人じゃあんたを倒せないって…。」
「く、来るな…こっちへ来るな!!」
「(彼がのんびりしているからいけないんだ。だから―――)」
「まだそう思うかい?」
「お前…ただの幽霊じゃなかったのか!?」
「―――だから僕が彼の代わりをする。」
「お前は、まるで…まるで―――――」
そこで『横島』の霊波刀がルスィトを切り裂いた。
「きっと彼なら、こうしただろうね…。」
救い出したおキヌに、『横島』は優しく言った。


GS横島異界大成記 第二話 「違(たがい)」


「なるほど、あなたは横島忠夫の存在を所有している、本人の一部なわけね…。」
ここは美神除霊事務所。おキヌはただちに『横島』を連れてそこにやってきた。
「そうです。つまり僕と言う存在はつい最近生まれたばかり。
自分の存在理由もよくわかりません―――いや、わからなかった…。」
話を聞いていた美神、おキヌ、タマモの三人がピクリと反応した。
(シロは意味が分からなかったので一人で散歩に行った)
「つまり、今はわかっているのね?」
美神が問う。
「…はっきりとは言えません。でも…僕と本人の違いから、大体のことはわかります。」
「それって、どんなことなんですか?」
おキヌも気になって仕方が無いようだ。
「問題は、存在の在りようです。」
「「「存在のありよう?」」」
三人は声を揃えて疑問を口にした。
「僕が本人から生まれたのは間違いない。しかし、横島忠夫は人間だった。
けど僕の場合、ひとたび戦闘を始めるとその存在は魔族に近いものになる。
しかしそれには、自分の存在を形成する霊力自体を著しく消費してしまう。
つまり自分を魔力に変換している。これだけで、僕が何者なのかほぼ確定します―――」
三人は無言で先を促す。そして『横島』は、指を一本立てて言った。
「―――僕は生前、横島忠夫を魔族に変換していた『魔族因子』です。」
「「「魔族因子!?」」」
衝撃の告白に騒然とする三人。
「恐らくは、もともとそれでしかなかった僕が横島忠夫の死によって自我を持ち、
本人の存在放棄によって、今のような一個の存在に落ち着いたんだと思います。」
『横島』は依然淡々と話しているが、内容は簡単ではなかった。
「…なんで死んだだけで自我が生まれるのよ?」
今度はタマモ。当然の疑問である。
「それも予想でしかないけど…。
まず人間はもともと『生』を持っていて、それを失った状態を『死』と考えるとする。
みなさん知っているように、これらは同時には存在できない。
当然横島忠夫が『生』を失い『死』へと変動するときに新しい存在が生まれる要因など無い。
けどこうしよう。神魔や霊体を、『生』と『死』の『中間』と考える。
すると、『生』を持っていたことによって今まで必要が無かった『中間』が、横島忠夫の存在維持に必要となる。
『死』を迎えない為にね。
つまり僕は、横島忠夫の本能が『中間』の魔族因子を使って生み出した間に合わせの自我意識さ。
そして成仏して『死』を迎えるはずだった横島忠夫は、運良く魂に魔族因子があったために、ある意味『生』を失っても『死』を迎えなかった。」
そして、美神は最も気になっていたことを聞く。
「それで、もとの横島クンはどうなったの?」
「「「ゴクリ」」」
質問と同時に三人は唾を飲む。
「恐らく、僕の潜在意識のどこか奥深くに眠っている。僕と入れ替わる為にね。」
「はぁぁ〜…」
三人は揃って息を吐いた。
「中に居るなら話が早いわ、みんなすぐに出かける用意をしなさい。」

「ただいまでござる…どこに行くでござるか?」
帰ってきたシロを出迎える声は無く、準備の整った所員+『横島』に気圧された。
「さっさと準備しなさい、妙神山に行くわよ!」
そう言った美神は、紛れも無くかつての美神だった。


こんにちは、TAMTAMです。

…あれ?いつの間にかきりの良いとこまで執筆していた。
文量が少ないけどこれで良いんでしょうか?
もう少し慎重に執筆した方が良いんでしょうか?
やっぱりどうしたものか、自分の作品の出来の判断は無理なんでしょうか?
毎回、作品がどう出来ているのかわかりませんorz
みなさん講評お願いします(汗
では次回。


・コウ様

正直私も彼がどういう人物なのかよくわかってません。
かつてを知っている美神がどう思ったのかも謎ですね…。
今後の展開も私にはどうなるのか見当も付きません(汗
どんどんとんでもない方向に動いていくことだけは確かですね。
次回もよろしくお願いします。


・星の影様

また読んでいただいて光栄です。
講評はとても役に立っています。
しかしこの使い方、思ったより何倍も難しい…orz
いろいろ思考錯誤してがんばっています。
また何かありましたらぜひ講評お願いします。


・ユリン様

生き返らないだなんてそんな…げ、本当だ、生き返ってない!?
…おかしいですね、当初は生き返る予定だったんですが…どこから狂ってしまったのやら。
彼、未だに死んでますしね(笑
確かに斬新と言う一点に関してはかなりのものですね。
もう訳分からないくらいに…(汗
今後の展開が作者にも予想できません。


・Yukihal様

あ、やっぱりそうでしょうか?
迷ったんですが、付けるほどでもないと思ってやめたんです。
しかし今後マークが必要とおっしゃる方が居ましたら付けさせていただきます。
今のところは保留でお許しください。

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