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「GS横島異界大成記 第一話 「逢(あい)」(GS+オリジナル)」

TAMTAM (2008-02-25 01:56/2008-06-18 21:12)
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「ここは…どこだ…?んで、俺…誰…?」
目が覚めたような、自分と言う存在がそこから始まったような奇妙な感覚だった。
「ここはよく、混沌とか呼ばれるところさ。そんでキミは、横島忠夫だったヤツ。」
真っ黒なのか真っ白なのかよくわからない空間に、居るような居ないようなそいつが言った。
「…そっか。…うっすら覚えてる気がする。…アンタは誰?」
「僕?…誰だと思う?」
「…わからないから聞いてる。」
「…なんかノリ悪いな…。まぁいいや、僕はキミ…いや違うな。キミだった者さ。」
そいつはやたら軽くて、懐かしいような感覚だった。
「…は?」
「強いて言うならキミの残りカス。」
「…それってト○チ?」
「いや、別にフレ○ムヘイズが置いてった代替物ではないよ。
ん〜…分かりやすく言うと、『横島忠夫が死んだ』と言う現実の副産物とでも言うかな?」
そいつは訳のわからないことを淡々と喋る変なヤツだった。
「よくわからない…。」
「それでもいいさ。することは変わらない。」
「…俺に何をしろって?」
「選んでもらうだけさ。『横島忠夫』と言う存在の所有権を、僕に譲るかどうか。」
「死んだ人間の存在を所有したいのか?」
「したくはないよ、別に。けど、僕が生まれてしまったからにはどちらか選ぶ必要がある。」
「選んで、…それからどうなる?」
「…まぁ、一方が現世で幽霊になるんだろうね、きっと。」
「…くだらねぇ、好きにしろよ。」
「おや、どこに行くんだい?……やれやれ、それじゃ、好きにさせてもらうよ。」


GS横島異界大成記 第一話 「逢(あい)」


「極楽へ…行きなさい!」ズバッ
「ギャーーー!!」
「…おキヌちゃん、シロ、タマモ、次行くわよ。」
「え…美神さん、これで今日六件目ですよ?」
「そうでござる、いくら美神殿でもこれ以上は危険でござるよ!」
「最近バカみたいに仕事しすぎなんじゃないの?」
横島が死んでから数日が経った。
最近の美神は明らかに情緒が不安定で、それをひた隠すように仕事をしていた。
以前のような優美な戦い方と、卑怯なまでに周到な戦略はなく、
自慢のキメ台詞までが以前とは若干違っていた。
「うるさいわね!仕事は所長の私が決めるわ!!」
こうして急に怒鳴ることもしょっちゅうで、最近では所員三人も慣れてしまったようだ。
「…ごめん、三人とも…やっぱり今日は事務所に帰りましょう…。」
それから一行は事務所に戻るが、その間会話は一言も無かった。

深夜、事務所のオフィスにはコンピューターと睨み合う人影があった。
美神令子、その人である。
カタカタカタ―――
「…ふう。」
一息つき、机の上のコーヒーに手を伸ばす。
「…(美神さん、またこんなに遅くまで…。)」
たまたま階段を降りてきたおキヌがその姿を見つけ、何度目かわからない心配をする。
「…美神さん、そろそろ休んだ方が…体に障りますよ?」
「?…おキヌちゃん…。」
振り返った美神はしばし考えた後、呟くように答える。
「…眠れないのよ、布団に入ると考える時間が出来てしまうでしょ?
書類整理をしていた方が幾分か楽…。余計なこと考えなくて済むから…。」
そう言った美神の声は酷く弱弱しく、世界最高のGSと言われる者の顔には見えなかった。
「…お気持ちはわかります。…けど、体を壊したら元も子もありませんよ?」
おキヌの口調は文面に反してことのほか強かった。
「…そうね。…けど、どうしても怖いのよ…思い出したくない…。」
美神自身、それが現実からの逃避でしかないことはわかっていた。
それでも、今まで接したことの無い現実に、感じたことの無い危機感。
彼女に逃げをとらせるには充分だった。
「…そんなに辛い思いをするくらい、嫌なことなんですか?」
おキヌのセリフは遂には完全に脱線していた。必死なのは彼女の方かもしれない。
「…そうじゃないのよおキヌちゃん…、嫌じゃないの…むしろその逆…。
きっと思い出すのは素敵なことばかりだと思うわ…。だから辛いの…。
ふと我に返ったときに、それがもう戻らない過去の事だって思うと…きっと凄く辛い…。」
その思いは、今までの彼女には無い思いだった。
純粋で、真っ直ぐで、素直で、…そして、脆かった。
それっきり黙ってしまった美神におキヌは言葉を掛けられず、やがて部屋に戻った。
残された美神は、書類の整理を続けることはできなかった…。


「…ふぅ、幽霊って変な感覚だな…。いや、正確には僕は人間の経験は無いけど…。」
早朝から妙なことを言いながら空中を漂っている幽霊。
彼は、『横島忠夫と言う存在』になりたての者である。
したがって、人間横島忠夫とは同じ『もの』であって全く違う『者』なのだ。
「さて、気ままなのも良いけど、正直することも無くて退屈だなぁ…。
やれやれ、幽霊なんてなるものじゃないな…。」
当たり前である。
「何か面白いことでもあればいいんだけど……おや?」
うつろな表情から、何かを期待した表情に変わる。
「ゆうれい、ゆうれい―――…うまそう―――――」
「…おやおや、まずいな…。キミ、魔獣だね?」
口ではまずいと言いながら、全くうろたえた様子は無い。
「…どうしたもんかね?」


「…まったく、どこ行きやがったんだ、ゼクのヤツは…。」
漆黒のスーツに身を包んだ長髪の男。歳は30代半ばと言ったところか。
街中を歩くが、イライラしているらしく足取りはかなり速い。
「ほっとくと人間も霊も見境無く食い散らかして厄介なんだよなぁ…。」
非常に困っているようだが、黒いサングラスに隠されてその困惑の表情は伺えない。
「あれほど寄り道するなって言っておいたのに…これだから戦闘特化型の頭の悪い下級魔獣は…。
仕方ない、面倒ごとは嫌だが…呼ぶしかないか…。」
そう言うと、男は霊力―――――否、魔力を一気に放出した。
『すぐここに来い、ゼクティス』
凄まじい魔力だった。


ゾクッ「何?今の魔力は!?」
さすが美神令子。年中無休でアンテナは働いているようだ。
「―――ま、危険なら依頼が来るだろうからいいか、放っておきましょ。」
結果はそれに関係していないが。
疲れが溜まって休養中だった彼女はもう休むことが最優先だった。


「ゲァァァァァァァ!」ガゴンッ
魔獣は口を開いたまま横島を襲った。
一瞬前まで横島が居た場所で顎が合わさるが、横島はそれを寸ででかわすと距離をとった。」
「ゆうれい、ゆうれい…」
「参ったなこりゃ…。絶体絶命?…だよねやっぱり。だって、魔獣を倒す幽霊なんて聞いたことある?」
はっはっはと豪快に笑いたいところだが、彼はそれをしない。
「そうだ忘れてたっ、そう言えば僕って横島忠夫なんだよ…。」
ポンッと手を叩いて気付く。彼は大発明でもしたかのような顔だ。
「…なんだか魔獣でも倒せる気がしてきちゃったぞ…。幽霊のくせに。」
そう言っておかしそうに笑った『横島忠夫』は、続いて繰り出される魔獣の攻撃を避けた。
「さて、皆が知りたかったことを僕が教えてあげるよ。」
魔獣に向き合う『横島』は、眼を閉じて最初の賭けに出た。
「幽霊でも、生きていた頃の霊能力が使えるのか――――――」
呟くと、『横島』の目が開いた。


「おや?…ハッ、こいつは驚きだ。」
長髪の男は半分驚き、半分喜ぶ、若干複雑な表情でそう言った。
「どこのかわいいお嬢ちゃんかと思えば、ゼクティスを待ってる間に見つかるとはとんだ拾い物だぜ。」
そう言った男の正面に立つのは―――――
「…氷室キヌ。」
呼ばれた少女は確かにおキヌちゃんだった。
「!!…あなたは誰ですか?…なぜ私の名前を?」
おキヌはいきなり名前を呼ばれて驚愕した。
「おっと悪いな。俺はルスィト・ハガルマ。単なる中級魔族だ、よろしく。」
「…なぜこんなところに魔族が居るんです!?」
おキヌは戦闘に向いていないが、心は一応の臨戦態勢をとっている。
「まぁまぁ、そう慌てるな…もうすぐツレの魔獣が来るはずだからよっ」
男は軽い口調で言った。今は本当に何かしらする気は無いようだ。
しかしそこには、後ろから声を掛ける者が居た。
「そのツレ、来ないと思うけど…?」
もちろん『横島忠夫』である。
「…?…幽霊?」
振り返ったルスィトは思わぬ来客に驚いた。
「よ、横島さん!?」
ひときわ大きな声で叫んだのはおキヌだった。
「…おや、キミはおキヌちゃんだね?…いったいなぜここに?」
「用事で出ていたんですけど、途中で魔力を感じてここに来てみたんです。」
「…なんだ、そうだったのか。やぁ、はじめまして。」
『横島』はただ挨拶をしただけである。そう、『彼』にとっては当然の挨拶だった。
「…え?はじめまして…って…なんですか?」
「初めましてだよ。僕は、キミの知っている横島忠夫じゃないから。」
「それってどう言う・・・」
セリフは別の方向からそこで阻まれる。
「…横島忠夫…って言ったか?」
ルスィトだった。
「…そうだけど、何か?」
『横島』も言葉を返す。
「文珠使い…横島忠夫か?」
「その通り。」
「…ツレが来ないって言ったが、何の根拠があって言ってるんだ?」
ルスィトは先ほどとは違い、神妙な面持ちで問う。
「それは―――僕が倒してきたからさ。」
「なっ!!」
衝撃だった。たった一人の、それも幽霊風情に、下級とはいえ魔獣が殺されたと言うのだ。
ルスィトも驚愕を隠せなかった。
「……おいおい…洒落になってねぇぜ…。こりゃまず過ぎるぜ…。」
ルスィトはそれでも冷静に状況を判断し、一つしかない残された道をとることにした。
「キャッ!!」
人質である。
おキヌは後ろで腕を固定され、身動きを許されない体勢となった。
「お前に動かれたら厄介なんでね。このまま事を進めさせてもらうぜ。」
「……。」
しかし『横島』は眉一つ動かさない。
「横島さん、助けてください!」
おキヌは当然恐怖する。しかし答えは予想だにしない言葉だった。
「―――――嫌だね。」
拒否だった。
「!!」
おキヌは愕然とした。今まで横島と共に居た時間や思い出が、今の言葉を痛い衝撃に変えた。
「それが僕に何のメリットがあるって言うんだい?(…さぁ、キミはどう出る?)」
尚も無情な言葉を放つ『横島』に、おキヌは考えを変えた。
「―――そうですよね。今の横島さんは幽霊…もしものことがあったら、転生も出来なくなってしまいますもんね…。
…私のことは良いです。―――――逃げてください。」
悲しい笑顔だった。生きる希望も無いような、そんな痛々しい笑顔だった。
そんな彼女に、『横島』が言う言葉は―――――

「嫌だね。面白そうだし、せっかくだからここで見ていくよ。」
彼の表情はおキヌとは対照的に、実に不敵な笑顔だった。


――――――――――さぁ…キミはどう出る?


こんにちは、TAMTAMです。
思ったより早く上がったのでUPしてみました。
今回のできはどうだったのか、正直また全然わかりません。
一応アドバイスいただいたことは活用してみたつもりなんですが、これで正しいのかもよくわかりません(汗

そして、小鳩を卒業させてしまうと言う最悪の凡ミス…
本っっっっっっっっ当にすいませんでした!!
大筋には関わってこないんですが、これは最悪のミスでした。今後は気をつけます。

作品中のミスですが、基本的には修正しないで行こうと思います。
自分のダメさに向けた戒めの意味もありまして、なんだか直さない方が良い気がしてしまいまして。
私の成長も見守って欲しいからでしょうか?

何はともあれ、三話目こそ本当にのんびりになりそうですので、気長によろしくお願いします。


・残酷な守り番様

はい、いきなり殺しました(笑
タイトルに異界とありますが、そこに行くにはとても長い時間と苦労が・・・
ありがとうございます。ゆっくり頑張ります。


・凛様

そうですねぇ…悪魔になりつつあった横島君は一体どんな辛い日々を生きたのでしょう…。
いつかそんなことも描けたら良いですね…。


・星の影様

ありがとうございます。
これは非常に貴重なアドバイスですね…。
なかなか難しそうですが、とりあえず意識してやってみたいと思います。
ありがとうございます。期待に沿えるように頑張ります。


・ユリン様

転生モノになるんでしょうか…私にもわかりません…。
生きてないから、どちらかと言うと転……死?(笑

うっかりしてました。
今後は気を付けます。


・雲海様

お褒めに預かって光栄です。
力の限り頑張ります。


・のび斗

凡ミスでした、申し訳ないです。
タイガーはいつか友情で人を殺す気がしてなりませんね…。

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