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「GS横島異界大成記 プロローグ 「滅(ほろび)」(GS)」

TAMTAM (2008-02-22 00:54/2008-06-18 21:13)
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とある小さなアパートの一室。
おぼろげな朝焼けが、カーテンのレース越しにうっすらと照りつける。
そのひどく殺風景な室内には、一人の青年が横たわっていた。
彼はかつて、魔神の反乱から人類を救った英雄である。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリ
「わぁ!すんまへんっ美神さん、許してぇ!!」
・・・・・・たぶん。
青年は目覚まし時計が鳴り響いてからコンマ5秒と経たない内に目覚め、
何かに身構えるように縮こまった体勢で動きを止めた。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリ
「・・・・・・?・・・あれ?」
依然時計が鳴り続ける中、少年は恐る恐る顔を上げると疑惑の音を口にした。
「・・・ゆ、夢か・・・死ぬかと思った・・・。」
びっしょりとかいた冷や汗を拭いつつ、時計のベルを止めるとようやく彼の一日が始まる。
これが最近の彼の日課。
横島忠夫18歳、今日は高校生活最後の日である。


GS横島異界大成記 プロローグ 「滅(ほろび)」


『あーおーげーばー とーおーとーしー わーがーしーのー おーんー』

卒業式と言えば定番の曲を合唱し、卒業式も中盤に差し掛かる。
それぞれ思い思いの気持ちを抱き旅立つ、少年達の最後の集合の日である。
それにしても、卒業式とは不思議なものである。
学校に強い思い入れがあり、長い時間を過ごした者は滝のような涙と共に卒業し、
大して深い思い出も愛着も無い人間にとっては、単なる最後の大行事である。
なんともこの前者と後者の温度差を、後者のみが知り、後者のみが滑稽と思うのだ。
そんなことを、後者である横島が暇つぶしとして分析している内に、
式は終盤、卒業証書の授与に移っていた。
生徒の名前が呼ばれ壇上に上がると、担任の激励の言葉と証書を貰う。
三年と言う、長いようで短い期間を共にした教師と生徒。
しかし別れを惜しんでも、やがてこうして離れる時がやって来るのだ。
『横島忠夫』
「はい。」
横島の名前が呼ばれた。何ともしまりの無い顔だが、何も考えていないわけではない。
学校に愛着がないとは言え、気の良い仲間や、何だかんだで忠夫を卒業させてくれた教師達。
彼は充分すぎるくらいにこの場所を、共に過ごした人たちを愛していた。
壇上に立つと、欠席する度に横島を叱りながらも、三年間最も手を尽くしてくれた担任の先生と向き合う。
「横島・・・。」
「・・・はい。」
先生は横島に証書を手渡し、横島はそれを受け取る。
ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・
しかし先生は一向にその証書を手離さない。
「・・・何のつもりですかせんせいぃ〜〜〜・・・。」
「お、お前には本当にこれは渡したくないんだがぁ〜・・・
残念ながらぎりぎりで成績が足りてしまったようだからぁ・・・?、仕方ないから渡してやる・・・。」
「そら、えらいすんまへんなぁ〜〜・・・・・・。」
両者は額に血管を浮き出させ、満面の笑みで言った。
本当は横島の卒業を誰よりも祝福している先生だが、彼らはこうして三年間の絆を育んできたのである。
「成人したら報告に来いよ、行きつけの店に連れてってやる。・・・卒業おめでとう。」
「ありがとうございます。必ず来ます。」
内容は高校の卒業式で教師が言う言葉ではないが、なんだかんだで美しい師弟愛である。
「・・・先生。」
「何だ?」
「・・・そろそろ証書を離してください。」
「・・・・・・。」
・・・先生があともう少しだけ素直だったら。


「横島さぁ〜〜〜んっ!ワッシは、ワッシは〜〜〜!!」ばきぼきばきっ
「ギャーーッ・・・は、離せけだものー!!」
横島は会場を後にし、三年間それなりに親しんだ教室に別れを告げに来た。
そこで、卒業式で感極まったタイガーが親友横島と感動を分かち合おうと、男泣きに泣きつつ彼を強く抱きしめた。
「や、やめるんだ、タイガー。横島さん背骨折れてるからっ!」
「横島さん、しっかり!」
同じく教室に居たピートと小鳩は、泡を吹く横島の姿を見て慌てて制止に入る。
そんな彼らを愛子は遠巻きに見つめつつただ一言。
「あぁ青春だわっ」
・・・どの辺が?

「・・・あ゛ぁ〜・・・。死ぬかと思った・・・。」
折れた背骨が五秒で治ったらしい横島は、とりあえず自らの作り上げたタイガーの屍に腰掛けた。
「横島さん、卒業おめでとうございます。」
ピートは、空気が落ち着いたのを幸いと、横島に祝いの言葉を言った。
「あぁ、お前もな・・・。」
教室の窓から、沈みかける太陽を眺めつつ横島が答えた。
答えた横島の表情はどこか儚げで、差し込む夕日の光に何かを思っているようだった。
「いろいろあったわね・・・。」
横島の隣で机に腰掛ける愛子は、そんな横島の横顔にただならぬ思いを察しつつ誰にとも無く呟く。
「本当に・・・いろいろありました・・・。」
そして誰にとも無く相づちをうったのは、高校との付き合いがもっとも短い小鳩だった。
「絶対に無理だと思ってたのに・・・皆さんのおかげで、横島さんのおかげで、高校に通うことができて・・・。」
窓際に立つ小鳩は横島の方を振り向いて言った。
「・・・そんな大したもんじゃないよ、俺はさほどいろいろやったわけじゃないし。」
横島は照れくさいのか、小鳩のその言葉には謙遜で返した。
「・・・いいえ、感謝してるんです。・・・言葉では、とても言い表せないくらいに・・・。」
「・・・そっか。小鳩ちゃんが喜んでくれたなら、無茶やった甲斐もあったかな・・・。」
おどけたように言った横島に、小鳩は今度は何も言わなかった。
横島を見つめてうっすらと俯いた小鳩の表情は、夕日の逆行に照らされて横島からは見えなかった。
「僕だってそうですよ。横島さんが居てくれたから、この教室に溶け込むことができたんです。」
「私だって同じよ。」
「ワッシもですけん!」
ピート、愛子、いつの間にか蘇っていたタイガーまでもが、小鳩に次いで横島に伝えた。
「へへ、みんな大げさだよ・・・。俺なんか本当にたいしたこと無いんだから・・・本当に・・・。」
そう言った横島の表情には、一瞬だけ深い悲しみの色が差し込んだ。
彼にはあまりにも似合わない悲しい表情。しかしその表情が優しすぎて、なぜかどこか彼らしい。
「昼と夜の一瞬の隙間・・・。短時間しか見れないから、余計美しい・・・その通りだ・・・。」
横島の見つめる窓の外には、もう夕日は見えなかった。


「みんな、卒業おめでとーーー!!!」
『カンパーーーーーーーイ!!』

ドクターカオスの提案で、横島たちは卒業祝いに招かれていた。(おそらくカオスがタダ飯を食いたいだけだが)
場所はもちろん、魔鈴のレストランである。
こう言ったパーティーの時には、魔鈴の店の異空間が便利である。
勿論かわいい小鳥さん(スカベリンジャーとか言うらしい)は今日は近くには居ない。
騒ぐのが好きな人間が多く、音量を気にしなくて良いこの空間は都合が良いのだ。
今回は部屋の外をのぞくと、月明かりの差す夜の景色に桜の花びらが降り注いでいる。
どうやら魔鈴の計らいで卒業の時期に合わせたようだ。今回は外にも出られるらしい。
参加者は、カオスにマリア、事務所のメンバーに弓、一文字、雪之丞、幹事に唐巣神父と魔鈴、
上司として美神とエミ、そして卒業生メンバー、横島、ピート、タイガー、愛子、小鳩、
加えて特別ゲストに美智恵と西条、六道親子も居た。
かくして、そうそうたるいつものメンバーは、騒がしいことこの上ないパーティーを楽しむ。
しかしそんな中、いつもと違う人間が一人居た。
パーティーの主役の一人である、横島である。
彼は部屋の片隅で、一人でソファーに腰掛けていた。いつもと違う横島を見て、今日はシロもそっとしておいたようだ。
「おや、どうしたんだい、横島君?こんなところで一人で居るなんて、君らしくないね。」
それを見かねた唐巣神父が話しかける。
「・・・何か悩み事かい?」
人を安心させるような、自愛に満ちた神父の笑顔。しかし横島は元気が無いわけではないようだ。
「悩み事・・・ですかね?・・・よくわかんないッス。ひょっとしたら、別に悩んではないのかも・・・。ただ・・・」
「・・・ただ?」
「・・・霊感にはっきりと引っかかるんです。これから何かとんでもないことが起きる・・・って。」
「それは良いことなのかい?それとも・・・」
神父は興味深げに聞いた。
「多分・・・悪いことッス・・・。それに、それはきっともう目前に迫ってます・・・。」
何かを覚悟するように言い放った横島に、神父は何も言うことができなかった。
「ちょっと、外に出てきます。一人になりたいんで・・・。」
横島の顔には一見覇気が無かったが、それは全てを諦めた男の顔ではなかった。
ひょっとしたらこのとき横島は既に知っていたのかもしれない。
これから起きる、とんでもないことの正体を・・・。

降り注ぐ桜の花と美しい月を眺めながら、横島は静かに腰を下ろした。
「ルシオラ・・・。あれからもう、一年経ったよ・・・早いもんだな。」
今はなき最愛の女性の名を呼んで、横島は眼を閉じた。
「悩んでたんだ、今日のことが俺の霊感に触れてからずっと・・・。」
その場に寝転び、真上から降る花びらと孤高の月を見上げた。
「俺はまた・・・お前を見殺しにする。一年前のあの日のように。」
無表情に言い放つが、目尻からは涙が一すじ溢れ出し、重力に従って耳元まで流れた。
「再生させてやれなくてごめんな・・・。けど、これがお前の愛してくれた俺なんだ。」
そう言ったところで、横島はすっくと立ち上がる。
「来たぜ、ルシオラ・・・。さよならだ。」


『ゾクッ』

その場に居た全員が感じた。
その悪意の塊のような霊気が、大量にこの異空間に雪崩れ込んで来たのだ。
「これは!」
誰が最初に叫んだのか、気付くと戦闘要員は全員その方向へ走っていた。

そこは横島の居た場所。
遠い場所ではないが、メンバーが駆けつけた頃には全てが終わった後だった。
・・・そう、全てが。
周囲に転がる魔獣や魔族の無数の屍。その中心地点で、横島と見慣れた魔族の攻撃が交わっていた。
「「「お前は・・・メドーサ!」」」
美神たちは一斉に吼えた。
「やっぱりお前だったか・・・。」
横島は向き合ったまま静かに言った。
「あぁ、コスモプロセッサで生き返ったときに、現世に独自のチャンネルを組んでおいたのさ。
あそこで倒されるつもりは無かったけどね。おかげでこんなに時間がかかっちまったじゃないのさ。」
メドーサはそれに答えた。
「文珠一つであっさりなんて、話が上手いと思ったんだよな・・・。」
「だから人間はアマちゃんなのさっ」
「・・・そうだな・・・。・・・けどこれで、本当におしまいだ。」
「・・・それはお互い様さね・・・。まさか最初から死ぬつもりだったとは、あんたには最後までやられたよっ」
一通り話が終わると、2人は妙にさわやかに笑いあった。
「よ、横島君・・・アンタたち何を言って・・・?」
唖然とするメンバーの中心で、美神がやっとのことで言葉を放った。
その目線は、2人の間・・・正確には、それぞれの体を貫通するさすまたと霊波刀に注がれていた。
「人間ども、横島に感謝するんだね。これで本当にお別れさ、アタシは横島を殺れただけで満足しちまった。」
メドーサはその場の全員に別れを告げる。すがすがしい笑顔だった。
「横島・・・。」
「・・・ん?」
「今のアンタ、よく見ると案外良い男だね。アンタが魔族じゃなかったのが残念だよ・・・。」
そう言ったメドーサはまるで女神のような笑顔で横島に口付けすると、しずかに虚空に消えていった。
「・・・お前も良い女だったぜ、メドーサ・・・。」
横島はメドーサの死に、人生に何度目かのもどかしい思いを抱いた。

「横島君!」
メドーサが消えると皆は警戒を解き、横島の元に駆け寄った。
「美神さ・・・うっ・・・。」ドサッ
ついに倒れこむ横島。さすまたは心臓を貫いており、普通なら即死の傷だ。
「横島君、一体何が?」
美神は横島を抱き起こすと、落ち着いて問いかけた。
「・・・美神さん、俺、もう半分人間じゃありません・・・。日に日に体が悪魔になっていくんです。」
「・・・それは・・・。」
「きっとルシオラの霊気構造の影響です。でも・・・悪魔になるのは怖くないです。
けど、そうなった時にみんながどう思うか・・・それだけが怖かったんです・・・。」
「・・・ばかねっ・・・・・・。」
美神は上手く喋れなかった。流れる涙が邪魔だった。
「そんなこと考えてるとき、俺の霊感にはっきり、今日のことが引っかかりました。
戦えば死ぬけど、むしろそれで皆が救われるなら・・・せめて心が俺である内に死にたかったんです。」
横島も涙を流した。
「けど・・・メドーサは死ななくちゃならなかったんですかね・・・?」
「・・・え?」
予想外の言葉に美神は困惑した。
「ずっと不幸で、美しすぎて不幸になって、魔族になって虐げられて、信用できる存在も居ない。
きっと誰よりも孤独だった・・・。魔族ってだけでふりかかる火の粉を振り払えば、その分だけ罪が重なって。
力に縋るしかなくなって、余計に孤独になって・・・。
あいつは気がついたら大悪党だったんだ。本当は幸せになりたかっただけなんだ。
いったいルシオラと何が違うって言うんだ・・・。」
「・・・。」
それは美神が答えを出すには重過ぎる問題だった。
「美神さん、あなたはきっと生きて幸せになってください。・・・丁稚でいてあげられなくてすいません。」
そう言った横島の声は、すでに力が無かった。
「何、・・・言ってんのよ・・・それじゃ、それじゃまるで・・・!」
美神はわかっているのだ。それでも認められないのだ。
「美神さん俺・・・最後に美神さんに泣いてもらえて、幸せです。」
「だめ!嫌よ!死んじゃダメ!」
必死で呼び止める声も、徐々に意識の薄らぐ横島には聞こえているのか居ないのか、もはやわからない。
「美・・・神さん・・・。どうか、幸せになって・・・ください・・・。孤独には・・・なら・・・」
ついに言い切ることはできなかった。美神のほほまで上った横島の手は、糸の切れたように地に落ちた。
「横島君・・・嫌ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ひたすら泣くことしかできず、恨む相手も失った美神に言葉を掛けられる者は居なかった。


横島忠夫   享年 18歳


みなさんはじめまして、TAMTAMです。

正直小説って、読んだことしかなくて良く分かりません。
一応思ったことを文章に起こしてみたんですが、出来がどうなのか自分では分からないものですね。
作家さん達のすごさを改めて思い知りました。
初めてなのできっと酷いと思うんですが、皆さんのアドバイスなどいただけるとありがたいです。

多分更新はあんまり早くはできないと思いますので、のんびり頑張りたいです。

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