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「魔神様の恋 外伝(GS)」

ラムダ (2008-02-08 19:08)
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 朝六時三十分、私は目覚ましより早く起きる。
 聞こえてくるのは、雀のさえずり。
「う〜んっ!」
 私は起き上がり伸びをすると、カーテンを開ける。
 まぶしいくらいの朝日。
「今日も快晴ね!」
 わたしはそういうと、パジャマから着替えて台所へと向う。
 あ、自己紹介がまだだったわね。
 私の名前は、芦原ルシオラ。
 魔神アシュタロス様が、とある計画のために作り出した使い魔だったけど、その計画が廃止されることとなり、今では魔族としての力を封じられて、アシュ様の長女として、人間界で一緒に暮らしているの。
 そして、アシュ様も魔族としての力を封じて、人間界で暮らしているの。
 目的は人間界での人間達の観察……。
 というのは建前で、本当はアシュ様、お父さんが一目ぼれしてしまった美神美智恵さんとの結婚。
 まぁ、昔から魔族や神族が人間と結婚するって言う話はあるけど、まさか魔神が人間に一目ぼれなんて……。
 しかも、自分の力を封じてまで人間界にくるなんて、ロマンチックよね〜。
 私は冷蔵庫から、卵を四つ取り出し、フライパンをコンロにかける。
「……お姉ちゃん、おはよ」
「おはようでちゅ」
 妹のベスパとパピリオが二人仲良く手をつないで起きて来た。
 二人ともまだ眠いのか、寝ぼけ眼を擦っている。
「うん、おはよう。はやく顔洗って着替えてきなさい」
「「は〜い」」
 二人とも、あくび交じりの返事をすると洗面所へと向う。


 私は四人分のお茶碗と目玉焼きを並べる。
「ルシオラちゃん!ルシオラちゃん!!」
 幼稚園の制服に着替えたパピリオが、靴下をもってリビングに飛び込んでくる。
「くまさんの靴下が、片方ないでちゅ!」
「この前、ちゃんとタンスにしまったでしょ?」
「でもないでちゅ!」
「じゃ、他の靴下にしなさい」
「いやでちゅ!くまさんがいいでちゅ!!」
「見つからないなら仕方ないでしょ?うさぎさんだって可愛いじゃない?」
「うぅ、でもくまさんが……」
「わがままいわないの!」
 私はちょっときつめに、パピリオをしかる。
「……わかったでちゅ。今日はうさぎさんにするでちゅ……」
 そういうと、パピリオは自分の部屋に戻っていく。
「お姉ちゃん……」
 今度はベスパ……。
「リボンしばって……」
「今日は何?」
「ツインテール……」
「はいはい」
 私はベスパからリボンを受け取ると、左右の髪をまとめてツインテールにしてあげる。
「ベスパ、あなたも自分でリボン縛れるようになりなさい」
「……がんばってるけど、うまくいかない……」
 ベスパがしゅんとする。
 はぁ、全く手がかかるんだから……。
「パピご飯一番のりでちゅ!」
 パピリオがいつの間にか、テーブルについていた。
 そういえば、まだお父さんが起きて来ていない。
「全く……手がかかるんだから……。ベスパ、パピリオご飯よそって先に食べてるのよ」
「はい……」
「わかったでちゅ!」


「うふふふふ……。芦原さ〜ん!こっちこっち!」
「ははははは、待ってください!美智恵さん!!」
 夕日が沈みかける砂浜。
 そこを走る美智恵さんとそれを追いかける私。
 ああ!美智恵さん!!貴方の笑顔は、あの太陽のようにまぶしい!!
 私は手を伸ばして、彼女の手をとって引き寄せる。
 私に抱かれるような形になった彼女は、私を見つめて目を閉じる。
 私も目を閉じて、彼女の顔に自分の顔を近づけていく。
 その時、私は異変を感じた。
 あれ?彼女って、胸がこんなになかったっけ?
「お父さん!いい加減にしてってば!!」
 お父さん?
「美智恵さん?」
 私は目を開ける。そこには怒った表情のルシオラ。
「ルシオラ?」
「いい加減!目を覚ませ!!」
「おぐっ!」
 私のテンペルンを的確にヒットする右拳。
 ……いい右を持っているじゃないか……ルシオラ……。


「ハァハァ……!あ、危なかったわ!もう少しで、私のファーストキスが……」
 お父さんは時々、寝ぼけて起こしに来る人間を美智恵さんと勘違いして抱きしめてくる。
 それだけ、幸せな夢を見てるんだろうけど、起こす側の人間にはたまったもんじゃない!
 大体、抱きしめるってどんな夢を見てるのよ!不潔!!
 そこで、私は気付く。
 思いっきり殴り飛ばして、ベッドから転がり落ち、気を失っているお父さんを……。
「お、お父さぁぁぁぁん!!」


「う〜む、顔が痛いな」
 左頬をさするお父さん。
 ごめん、やりすぎたわ。
 と、そこで時計を見る。
 七時半……。
 ゲッ!やばい!!
 ここから、学校まで歩いていったら遅刻!走るしかないじゃない!!
 私は、ご飯をかきこむ!
「こらこら、ルシオラ。女の子がはしたないぞ」
 お父さんがとっととおきないからでしょ!!
 食事完了!
「ベスパ!学校に行くわよ!!」
「ベスパちゃんなら、先にいくっていってまちたよ?」
 ……お姉ちゃんを待っていてくれてもいいじゃない……。


「いってきまぁぁぁぁぁぁす!」
 私は、玄関を飛び出ると、学校を目指し全力疾走する。
「よぉ!ルシオラじゃないか!お前も遅刻組みか」
 そんな私に併走しながら、声を掛けてくる男の子。
 頭に赤いバンダナを巻き、ちょっと悪がき風な顔の作り。
 最近、私と同じクラスに転校してきた横島君だ。
「ちょっと色々あってね……」
「そうか」
 そういうと、彼は右手に持っていた食パンを口に押し込み、左手に持っていた紙パックの牛乳でそれを流し込む。
「横島君って……器用よね」
「日課みたいなもんだからな」
 日課って……。
 身に着けたくない特技だと私は思った。


「はぁ〜、朝から疲れたわ」
 何とか遅刻せずに教室に入ると、丁度担任の先生が入ってきてホームルームが始まった。
 そして、ホームルームが終わると同時に、私は机に突っ伏した。
「ルッシーが遅刻ギリギリなんて珍しいわね?」
「本当にね」
 友人が声を掛けてくる。
「うん、まぁね……」
 私はため息混じりに、友人に答える。
「そんなルッシーに朗報です!なんと、一時間目の体育は長距離走で〜す!!」
 どこが朗報よ……。
 朝から疲労困憊の私にとって、それは死刑宣告と同じに聞こえた……。


 授業も終わり、あとは掃除をして帰るだけ。
「よっしゃぁ!かえるでぇ!!」
「ちょっと!横島君は掃除当番でしょ!!」
 ホームルームが終わると同時に、ランドセルを背負う横島君。
「教室そんなに汚れてないやん」
「ちゃんとやるの!!」
「断固拒否!!」
 そういうとダッシュで教室を出て行く。
「逃がさないわ!」
 私は近くにあったモップを掴む。
 ターゲットロック!ファイア!!
 私はモップを横島君めがけて思いっきり投げる。
 モップは風を切り裂き、横島君の後頭部にヒット。
「ぶぎゃぁ!!」
 横島君は変な悲鳴をあげ、その場に倒れる。
「フッ、私から逃げられるとお思い?」
 私は横島君のランドセルを掴んで、引きずりながら教室に戻った。


「はぁ〜、今日は疲れたわ……」
「ルッシーお疲れ」
「ルッシーのところはお母さんいないからねー」
 私は掃除を終え、友人達と下校している。
「お父さんが、もうちょっときちんとしてくれたらいいんだけど……」
 私はため息を一つ付く。
「ほらほら、ため息をつくと幸せが逃げちゃうぞ♪」
「そうそう」
「あー、明日は普通に過ごしたい……」
 友人達が、がんばれって感じで私の両肩に手を置く。
「それにしても、ルッシーと横島君って漫画みたいよね?」
「あ、それは私も思ったわ」
「は?」
 私は友人達の言葉に首をかしげる。
「いっつも迷惑かけているけど、底抜けに明るい男の子と、しっかり物で世話焼きの女の子が恋人同士になるのってお約束よね〜」
「うんうん」
「何言ってるのよ!私は、ああいうタイプは嫌いなの!もっと真面目で、頭が良くて……」
「はじめはそういってるんだけど、最後は……」
「あんたたちねぇ!!」
「うわ!ルッシーが怒ったぁ!」
「逃げろー!!」
「まてぇ!!」


 晩御飯を作り、妹達をお風呂に入れ、私は宿題を片付ける。
「ふぅ、今日も疲れた……」
 私は電気を消して、ベッドにもぐる。
「横島君かぁ……」
 確かに底抜けに明るくて、誰にでも気軽に話しかけて、誰からも好かれている。
「確かに一緒にいて楽しいんだけど……」
 ちょっと二人で並んで、歩いている場面を想像してみる。
 一緒に映画を見たり、遊園地にいったり、きっと楽しいかもしれない……。
「わわわ……!な、何想像してるのよ!!ひ、昼間あの二人が変なこと言うから、変な想像しちゃったじゃない!!」
 私は頭まで布団を被ると、そのまま深い眠りに付いた。


あとがき
 今回は長女ルシオラちゃんの一日ということで……。
 ルシオラもベスパもパピリオも、人間として暮らしているのできちんと学校に行っています。
 それにしても、今回はベスパ分が足りないなー(オイ

レス返し
風来人さん
 初めまして、これからもよろしくお願いします。

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