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「『最強の』後継者その17(GS)」

ラッフィン (2008-01-31 00:29)
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「あら?ヒャクメ。修行を見てくれるってどういうことですか?」
「今回は修行者がいっぱいいるでしょ?しかも、すごい才能の人間がさ。だから、小竜姫はそっちに教えてあげなきゃね〜。基本的なことだったら、私でも教えられるしね〜」
「確かにそうですね・・・」

いきなり現れた親友の登場に驚いたものの、彼女の言っていることは正論であるために小竜姫は少し考える。才能で言えば、これは自分の勘になってしまうのだが、目の前にいるこの少年もかなりのものがあると思うのだ。それも下手をすれば今、修行を行おうとしている3人よりもずっと高い才能が。正直な話、そんな才能を自分の手で育ててみたいと思うのだが、あの3人を放ってそんなことは出来ない。
基本的なことだし、彼女に任せてしまっても問題はないだろう。ということで小竜姫は忠夫の修行を任せることにしたのだった。

「では、ヒャクメに任せます。横島さん、そういうことですので申し訳ありませんけどよろしく御願いしますね?」
「あ、はい!お構いなく!こっちこそ、姉さん達のことよろしく御願いします」
「ふふ。ええ、了解しました。では、また後ほど」

笑顔でそう答えて小竜姫は部屋を出て行く。そして、部屋には忠夫とヒャクメという小竜姫の親友だけが残された状態となった。

「んふふ〜♪早速始めるのね〜」

すっごい満面の笑みを浮かべながらヒャクメは宣言する。そんなヒャクメの様子に『大丈夫かな?』と内心かなりの不安を抱いている忠夫だったが、表には出さず『はい!』と元気に返事をする。まぁ、そんな努力もヒャクメの前には無駄なのだが。

「(かなり不安になってるわね〜。って、こんな軽くちゃ当然だけど。修行はちゃんとやるわよ。・・・修行はね)」

とヒャクメ。忠夫の不安を他所に修行は開始された。
そのヒャクメの思い通り、当初の予想を思いっきり裏切って、修行はかなり真面目なものになっていた。

「はい、さっきの霊力を集中することをイメージして。自分の右手に集中するのよ」
「はい!」

さすがに成長した忠夫はある程度までなら自力で霊力を練ることが出来るようになっていた。そこで、今度は以前に2度ほど出現させたことがある霊気の盾を自分の意思で出現させようとしていた。心眼を持ち、霊気の流れを読むことが得意なヒャクメがいてくれたことにより、どこで霊力が途切れているか、霊気の流れがしっかりしているかなどを的確に教えてくれるので、忠夫にとって非常にやりやすい環境であった。

「まだよ!右手まで霊気が流れてないわ!もっとイメージ、集中して!!」
「は、はい!」

ヒャクメとしても自分の教えたことを素直に実行・吸収していく忠夫を指導しているのは、普段下級調査官として働いている彼女にはとても新鮮で楽しいものであったために、忠夫の指導にもかなりの熱が入っていた。最初から、修行は真面目にやるつもりではあったのだが、これほどまでに熱心になってしまっているのはヒャクメ自身も驚いてしまうほどだ。しかし、この新鮮な感覚は離し難く、というか離す気はなく忠夫への熱血指導は続いていく。すると、忠夫の手のひらに光のモヤが現れて、それが徐々にしっかりとした六角形の形に固定されてきた。

「あっ!出せた。出せたよ!ヒャクメ様!!」
「まだ、安心しちゃ駄目よ!集中を切らさないで!」
「は、はい!」

初めて自分の意思で出現させた霊気の盾を見て、歓喜の声をあげた忠夫であったが、ヒャクメの鋭い声で気を引き締めなおす。そのおかげか、霊気の盾は不安定になることもなく、綺麗な六角形の形を保ち淡く発光していた。
そこでようやくヒャクメは柔らかな笑顔を浮かべ忠夫を褒めた。

「ふぅ、成功よ。よく出来ました」
「ありがとうございます」
「ふふ、でもこれで終わりじゃないわよ?今度はこれを維持し続けてもらうからね?今度は出すことより厳しいわよ〜。覚悟はいいかしら?」
「はい!よろしく御願いします!」
「ん〜♪いい返事ね。じゃ、少し休憩を入れましょうか?長い時間やってたから、精神がまいってるはずよ」
「はい・・・・疲れた〜」
「ふふ、御疲れ様」

ヒャクメの許しを得た忠夫は霊気の盾を消すと、その場に腰を下ろしへたりこんでしまう。長時間の霊気を練る作業によって、まだ慣れていない忠夫は精神的に疲労が溜まっていたのだ。ヒャクメはそれを察知して休憩にしていた。このときばかりは自分の能力がありがたいと思ったヒャクメである。

「姉さん達は大丈夫かな?今は何やってるんだろう?」


キュピーン♪


忠夫のポツリと漏らした言葉。それは、今までの熱血指導をしていた尊敬できる師匠みたいだった彼女の気持ちを、いつものノリに戻してしまう悪魔の言葉になったのに忠夫は気付かない。

「んふふふふ〜♪ねぇ、忠夫く〜ん。私少し御願いがあるんだけど〜?聞いてくれる?」
「あ、はい。いいですよ。俺の修行を見てもらいましたから」

少しイタズラっぽい笑顔を浮かべているヒャクメに気付かずに忠夫は返事をしてしまった。その忠夫の答えにヒャクメは一層笑みを深める。そして、忠夫の耳になにやらコショコショと囁いた。


「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


その囁きはなんだったのか?忠夫の驚きようから察していただきたい。この後、その囁きが実行されることになるのだが、これが大変な事態になるとは、ヒャクメはある程度まで予想していた(爆)


「アンタ大丈夫?」
「・・・もちろんよ。アンタと違って私はそんなヤワじゃ、はぅ・・・
「やっぱりね。でも、それだけ強がっていられるんだから平気ね」
「うるさいわね!余計なお世話なワケ!」

忠夫の休憩中、令子と令子に肩を貸してもらったエミが部屋に戻って来た。どうやら、今日はエミが修行をしてもらっていたらしい。その後に続いて、前の二人のやりとりに片や苦笑、片や『仲がいいわね〜』と普通に微笑みながら、ショートカットの女性二人、小竜姫と冥子が入ってくる。

「あ、姉さん。修行は終ったの?」
「ええ、当然やり遂げて来たワケ」
「ギリギリでね」
「は?何いってんのよ。楽勝だったわよ!」
「この様で?」
「うっ・・・」

反射的に令子に言い返したエミであったが、今の自分の格好を言われると説得力がない。反論したいが事実なために言葉に詰まってしまった。そんなエミを見て楽しいのか令子は口を歪めて優越感漂う笑顔を浮かべているので、エミの不快度指数は急激に上昇していた。そんな二人の様子に慣れている冥子と忠夫はスルー、小竜姫はとめようとしたが冥子に『大丈夫よ〜。あれは軽いコミュニケーションだから』といわれたので渋々スルーすることに。

「そちらの修行はどうでしたか?」
「もちろん、順調よ!」
「本当ですか?横島さん?」
「なんで、信じてくれないの!?ちゃんとやったってば!」

ヒャクメの言葉を受けた小竜姫はすぐさま忠夫に真偽を問う。そんな親友の態度にショックを受けるヒャクメ。こんなときに普段のヒャクメの行いがわかってしまうのであった。
忠夫は小竜姫の問いに満面の笑みを浮かべて、修行の成果を見せつけた。

「ええ、これが修行の成果です」

キィイイイイイイン・・・・ブオン!

手のひらよりふた周りほど大きな六角形の霊気の盾が現れる。それを見た小竜姫は感心したように息をもらし、冥子はすごいすごいと目を輝かせてはしゃいでいる。

「どうよ!私の教えの賜物よ!」

自分の教え子の実力を見た小竜姫たちの反応が良かったので、先生であるヒャクメは鼻高々である。しかし・・・。

「すごいですね。横島さんには霊能の才能がありますよ」
「忠夫く〜ん。すごいよ〜」
「えへへ」
「え?私には何もないの?ちゃんと修行を見てたのに!!無視しないで欲しいのね〜!!」

ヒャクメの叫びは誰も聞いてくれなかったとか。哀れである。


――修行最終日――

無事にパワーアップを終えた令子達は霊力制御の修行を行っている。それを見ているのは小竜姫ではなく、ヒャクメである。では、小竜姫は何をやっているのか?というと、忠夫に修行をつけているのだ。

「はい、そのままの状態を30分は維持してね〜」
「「「はい!」」」

修行前に同じことをやっていたら、きつ過ぎてすぐにバテていたであろう量の霊気を放出しているのだが、今は結構つらいと思うくらいである。修行の成果がこんなにもすごいとはさすが妙神山の修行だと改めて自分達の行った修行のすごさを実感する令子達。
彼女達の霊力はすでに人界ではトップクラス。下級の神族、魔族に匹敵するほどである。その霊力に若干驚いたヒャクメであったが、己の責務を果たして今度こそ小竜姫に認めさせるのだと真面目に指導していたのは秘密である。
一方、忠夫と小竜姫のほうはというと。

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

「145!146!147!」

一振りの木刀を振り下ろし、決められた動作を繰り返している忠夫と、それを見守る小竜姫という図が成り立っていた。今度は基本的な体術というか、剣術の修行を行っているようである。ただし、純粋に剣術の修行かというとそうではなく、体に霊力を纏わせての素振りであるためにしっかりと霊能の修行にもなっていた。

「横島さん、素振りに気を取られすぎて霊力のほうが疎かになってますよ」
「は、はい!」

さすがに疲れが溜まって来た忠夫は素振りを続けようと腕のほうに集中したために霊力のほうが疎かになってしまったようで、バランスが崩れてきている。そこに小竜姫の叱咤がとんで気を引き締め直す忠夫がいるのであった。

「(何かいつもと違いますね)」

忠夫の修行を見ていた小竜姫の感想である。それはそうだろう。今まで小竜姫が見てきた者達は自分の限界を乗り越えようとしてくる者達なのだ。ようは霊能である程度まで熟練を積んだ者達であったために、忠夫のように若い人が来ることが少なかったのだ。その上、今のように基礎からやることはない。それがまるで自分が忠夫の師匠になっているような感覚を感じさせ、それが新鮮な感覚になっていたのであった。ふいに、小竜姫は自分が弟子だったころを思い出すのであった。

「(私も横島さんと同じことをやってましたっけ)」
「198!199!200!!小竜姫様!終わりました〜」
「御疲れ様です。では、少し休憩をしましょう。その後に実戦形式でさっきやったことをやってもらいます」
「わかりました〜」

疲れた〜とばかりにその場に座り込む忠夫の姿に微笑む。

「(なんだか、可愛いですね。弟を持つとこんな感じなのでしょうか?)」

そんなことを考えていた小竜姫だが、気付けば充分な休憩を取った時間になっていた。それに気付くとなんだが、恥ずかしくなり顔が赤く染まる。今まで考えていたことを吹き飛ばすように首をブンブンと振って気持ちを切り替えると修行を再開させようと忠夫に声をかけた。

「では、横島さん。そろそろ再開しますよ」
「はい!」
「さきほどやったことを思い出してかかってきなさい」
「わ、わかりました!」

手に木刀を握り締めた小竜姫は正眼に構えながら、忠夫に言う。たったそれだけで小竜姫の纏う雰囲気が一変し、忠夫はその雰囲気に呑まれ少しどもる。本気ではないとはいえ武神である小竜姫の気迫に、まだまだ素人の忠夫が耐えられるはずもなく動けなくなってしまっていた。

「どうしました?打ちにきなさい!」
「うわああああああああああ!」

小竜姫は最後に少し気迫を強めた。すると、弾かれたように忠夫が斬りかかって来る。しかし、それは完全に気迫に呑みこまれてしまい、ただやみくもに打ち込んできただけであった。

「なんですか!これは!!私はそんな打ち込み方を教えた覚えはありませんよ!」

戸惑うことなく木刀を払い落とすと、忠夫を腕で突き飛ばす。忠夫は元いた場所まで突き飛ばされて、仰向けに倒れた。小竜姫はそんな忠夫に構わず言い放つ。

「さあ、もう一度きなさい!」
「う、うおおおおおおおおおおおおおおお!」

その小竜姫の問いに忠夫は斬りかかることで答えた。声の威勢はいいのだが、打ち込みはさきほどからほとんど変わっていない。それを許すほど修行は甘くないのだ。

「さっきと全然変わってません!気を引き締めなさい!」
「は、はい」
「ほら、もう一度!」
「たあああああああああ!!」
「どこが変わってますか!!」

また、同じことを繰り返す。それは幾度も繰り返された。何度も、何度も。何度も。
それでも、忠夫は立ち上がり向かっていく。それでも、小竜姫の声が飛ぶ。それでも、木刀は弾かれ自分は突き飛ばされる。それでも、木刀を弾き突き飛ばす。
こんなやりとりを延々と繰り返していた。
だが、内容は少々変わり始めている。それは、二人の動きであった。

「はっ!」

カツゥン!

「そうです!その踏み込みです!」

何十回目の打ち込みだろうか?ようやく、忠夫も慣れたのか小竜姫の気迫に呑みこまれるようなことはなくなり、動きも硬さが取れスムーズになり、さきほどやっていた型通りに打ち込むことができてきた。今では、何合か打ち合うこともできている。
やればやるほど、動けば動くほど忠夫の動きはどんどん鋭さを増していく。

「(もう少し動き出しましょうかね)」

忠夫の予想以上の成長スピードに小竜姫が今までよりもさらに動きをよくさせようと考えていたときである。そんな小竜姫よりも先に忠夫の動きが変わった。

「ちぇりゃああああああああ!」
「甘いですよ!」

力強く踏み込み、渾身の上段からの振り下ろし。小竜姫は、今日何度もやっていたようにそれを剣で弾こうと腕を振る。

「おりゃぁああ!」

がっ!

小竜姫の腕が振られた瞬間、忠夫は踏み込んだ足に渾身の力を入れて前へ飛び出そうとする体を強引に止める。それと同時に蹴り出し後ろに少し飛んだ。とそこに、前へつっこんでいたら忠夫の剣を構えている腕があったであろう場所を小竜姫の剣が通過していった。すかさず、忠夫は止めていた剣を振り下ろす。見事な引き面である。普通の人ならこれで決まっていただろう。しかし、忠夫が今相手をしてもらっているのは普通ではないのだ。

スカッ

「あれ?」
「いい攻撃ですが、まだまだです」

ポカン!

「きゃん!?」
「残念でした」

振り下ろされた剣の下にはすでに小竜姫はいなく、気付いたら頭を叩かれていた忠夫でした。

「では、ここまでにしておきましょう」

忠夫が頭を叩かれ修行は終了したのだった。そこにちょうど、修行を終えたのかヒャクメ、令子、エミ、冥子が現れる。姉3人の顔には笑顔が浮かび、修行がうまくいったことを物語っている。何故かヒャクメもどうだ!といわんばかりに笑顔なのだが、大方自分の仕事が満足にいったために小竜姫に何か言ってもらいたいのだろう。
それは次の台詞で証明されるのだった。

「ふふふ、どうよ?彼女達はしっかりと自分の霊力を制御できたわよ!さっすが私ね!」
「あ、ご苦労様。でも、制御できたのはあなたの力じゃなくて、美神さん達の努力の成果よ。あなたはそれをちょっとだけ手伝っただけじゃない。そんなに自慢することじゃないわよ」
「むっ!」
「まぁ、あなたがしっかりと仕事したことは認めてあげますよ。いつもこうだといいんですけどね」

そんなヒャクメに苦笑しながら小竜姫は言い返す。言ってることは正しいのだが、もっと評価してもいいんじゃないか?私は仕事をきちっとやったのだし。少なくとも仕事はいつもキチっとやってることは認めなさい!それでは私がいつも仕事をサボってるみたいではないか。と不満気なヒャクメは例の作戦を決行することを決めた。ちなみにヒャクメは仕事はサボってはないが、暇になるたびにこちらに遊びに来ている(しかも割りと頻繁に)ので小竜姫にしてみたら、仕事をしているようには感じられないのだが。そんなことは知らないヒャクメはちらりと忠夫に目をやると、その視線に忠夫も気付く。その一瞬で二人の間にはアイコンタクトでの会話がなされ、ヒャクメはニヤリと、忠夫は肩をガックリと落としどよんとした雰囲気を纏う。彼らの間ではこんな会話がなされていた。

『ふふふ、見てなさい小竜姫!横島さん、例の作戦決行よ!』
『えっ・・・やっぱ、やめましょうよ』
『駄目!やるのよ!!』
『でも〜』
『じゃないと、あなたの恥ずかしい過去をバラすわよ?』
『一生懸命やらせていただきます!!』

ヒャクメを相手にしては秘密なんて全て筒抜けのようなものである。そんな彼女との言い合いではただの人間である忠夫に勝ち目があるはずもなく、忠夫はヒャクメの言う例の作戦とやらをやらなければならなくなったのであった。
そうとは知らない小竜姫は令子達に向かって修行の完遂を言い渡している。

「それでは、美神さん、小笠原さん、六道さん。あなた達は無事に修行を終えました。今後、これに怠けることなくより一層の成長を願います。では、これにて修行を終了いたします。御疲れ様でした」
「「「ありがとうございました(〜)」」」

修行の終了を宣言した小竜姫のところにヒャクメがさっきの笑顔を浮かべたまま近づいていく。

「小竜姫」
「どうしたの?ヒャクメ」
「ちょっとはな・・・あっ!!
「きゃっ!」

小竜姫に話しかけようとしたヒャクメがわざとらしく躓いてしまい、前にいた小竜姫を突き飛ばす格好になってしまった。突然のことで小竜姫も対応できず、後ろに突き飛ばされ倒れそうになる。だが、そこは受身をとりダメージを最小限にしようと小竜姫は冷静に考えて実行に移そうとしたが、その機会は訪れることはなかった。なぜなら、突き飛ばされた小竜姫の後ろには何故か忠夫がいたために、小竜姫が倒れる前に背中から抱きとめ倒れるのを防いだからである。その際に二次災害を防ぐためしっかりと片手を腰に回し、もう片方の手は小竜姫の手を優しく握り締めているのはデフォだ。
思っていた衝撃がこず、逆に暖かで包み込むような感触を受けた小竜姫は状況を理解するのに時間がかかった。

「怪我はないですか?小竜姫様」
「え?あ、はい」
「それは、よかった。あなたのような美しい人が俺の目の前で怪我をされるのは本意ではありませんからね」
「(カァ〜///)」

いつの間に忠夫は例の技を繰り出すためにあの凛々しい雰囲気を纏っていて、最後ににっこりと笑いかけていた。しかも、修行の成果なのか忠夫からは僅かに霊気が放たれていて、それは言葉にも左様し、あたかも言霊のように力を得ていたり。
そんな忠夫にこの甘いシチュエーションに慣れてない小竜姫が抗えるはずもなく、忠夫の腕の中で顔を真っ赤に染めて固まり気絶するのであった。ただ気絶する間際、忠夫の視線から逃れるために顔を俯けられたことはさすがといって置こう。そんな小竜姫の様子にヒャクメは作戦成功した嬉しさと思ったとおりのリアクションに大爆笑。

「ひゃ〜く〜め〜・・・」

気絶から回復して状況を理解した小竜姫は、忠夫からそっと開放されると大爆笑して呼吸困難に陥っている親友に対して地獄の底から出てきた鬼のようなオーラを纏い迫る。ヒャクメの顔が瞬時に引き攣ったのは仕方ないことであろう。

「うわ〜!ごめんなさ〜い」
「待ちなさ〜い!!」

二人の長い追いかけっこが始まった。
一方、忠夫のほうも令子、エミから怒られている。しかし、怒っている本人の顔は怒りとは別で少し頬が赤くなっていたりするが、忠夫がそんなことに気付くはずもない。

「「あの技は禁止って言ったでしょうが〜!!!」」
「ご、ごめんなさい・・・」
「そうよ〜。忠夫く〜ん、どうして私に使ってくれないの〜?」
「「そういう問題でもな〜い!!」」
「私ならいつでも大歓迎よ〜」
「「人の話を聞け〜〜〜!!!」」

こっちはこっちで大混乱に陥っていたりする。そのときの忠夫の内心では、『あのとき小竜姫様顔を真っ赤にしてたもんな〜。相当お怒りだったに違いない。後で謝っておかないと』と思ったり。その後、謝りにいった忠夫だったがそこでまた一悶着起こってしまう。これは別の話。ともかく!
令子達の妙神山での修行は無事に終了したのであった。


――六道邸――

令子達の修行が終って数日後、六道冥奈の元に一本のビデオテープが送られてきた。差出人の名前が『ハンドレット・アイ』と明らかに本名ではない名前になっており、どこから送られてきたのかも不明ではあったのだが、そのビデオには『最重要事項』と書いてあり、冥奈の勘が『絶対に見るべし!』と告げていたのもあって、早速見てみることにする。そして・・・。

「フミさん、すぐに車を用意しなさい」
「かしこまりました。して、どのようなご用件で?」
「六道秘密会議を開きます。メンバーをそろえなさい」
「かしこまりました。20分でお呼びしてまいります」
「5分で呼びなさい」
「かしこまりました」

一礼をして部屋を出るフミを見送った冥奈は受話器を取り、どこかへと電話を掛け始める。六道秘密会議とは一体?そして、そのメンバーとは誰か?バレバレではあるが、ここではふせておく。
電話を掛け終えた冥奈は無言で部屋を出て行った。誰もいなくなった部屋では、一台のTVが二人の男女がキスをしている姿を写したままとまっていたそうな。


――ある暗闇に包まれた部屋――

ここには今、四人の人物がいる。そのうちの一人、六道冥奈が残りの3人を見回し宣言した。

「では、これから第92回六道秘密会議を開きます。本日集まってもらった理由を話す前に同志に見てもらいたい映像があります。というのも、これが本日集まってもらった理由なのです。この映像を送ってくれたのは誰か?ということに関しては不明ですが、そんな小さなことはどうでもいいです。とにかく見てください」

送り主はどうでもいいと断言する冥奈。もしかしたら、産業スパイかも知れないのにそんな危険すらもこの映像を前にしたらどうでも良くなるらしい。一体どんな映像なのだろうか?

「ほう、それほどまでに重大なことなのかね?」
「あなたほどの人物がそれほどまでに断言する映像・・・非常に気になるな」
「ええ、それを見てからでも結論を出すのは遅くないわね。まわしてちょうだい」

集まった3人も冥奈の言葉に反対せずに冥奈の後ろに現れた巨大スクリーンに目をやった。その集まった3人とは、言わずとしれた人物である。
一人は、冥奈の夫であり、現在六道グループを経済面で支えている人物だ。もう一人は、その六道グループにヘットハンティングされて以来、数々の大きな契約を取ってきてすでにNO,2の地位を不動のものとした凄腕サラリーマン、横島大樹。最後の一人はその大樹の妻であり、村枝の紅ユリと恐れられた元SOL(スーパーオフィスレディ)でGMの称号を持つ横島百合子である。
彼らの視線の先では、その問題の映像が流れようとしていた。

『忠夫く〜ん』
『冥子姉さん?』

それは妙神山での当事者+1しか知らない逢瀬現場の詳細を映したものであった。すでに一度見ている冥奈は笑顔を見せて落ち着いている様子であったが、初見である他三名は驚愕の表情を浮かべ固まっていた。
それから、映像は流れ冥奈が見せたかった問題のシーンに差し掛かる。

『ありがとう。答えを見つけられたよ』
『ぽ〜////』


ちゅっ


そして、忠夫が部屋に連れ込まれたところで映像が終った。映像が終ったのに四人はしばらく無言で佇み、重い沈黙が訪れる。
最初に沈黙を破ったのは百合子であった。それを皮切りに大樹も六道夫妻も沈黙を破る。

「ふ、ふふ、ふふふ、フフフフフフフフフフフフフ・・・」
「く・・・くっくっくっく。わははは、は〜はっはっはっはっはっはっはっは・・・」
「ふは、ふははははははははははははは・・・」
「クス、ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ・・・」

暗い部屋の中で目だけが不気味に光って怪しい笑いを発する四人。他の者が見たらドン引き間違いなしの光景である。だが、本人たちはいたって真面目だ。

「で、冥奈。これからどうするわけ?このまま黙ってみてるだけってわけじゃないでしょ?」
「もちろんよ。これは好機よ!一気に畳み掛けるわ!」
「ほう、断言するってことはすでにプランは考えてあるということですかな?」
「もちろんですわ」
「して、そのようなプランを考えているのだ?我々も最大限の協力をさせてもらうが」
「ええ、MTM計画・・・作戦名『SDGS』よ」

それから四人は入念な作戦会議を行い、その会議は深夜まで行われたという。しかし、そのあまりに充実した会議だったのか、会議を終えた後の四人には仕事をやりきったという充実感が満ち溢れていたという。そして、最後の台詞は・・・。

「「「「栄光を我らの手に!!」」」」


あとがき

原点回帰!ラッフィンです!

さて、前回の感想で忠夫の必殺技が出た〜という感想をもらいましたが、あれは必殺技ではありません。冥子との間ではあれがデフォです!つまり地です。

今回はフミさんが出ましたが、それだけです。暴走はありません。
フミさんは普段は仕事をきっちりこなす万能メイドなのですが、忠夫が絡むと途端に暴走キャラになってしまうのです。以上!

さて、次回予告!

妙神山を降りた忠夫達はそれぞれ元の生活に戻る。冥子達は一人前のGSとして独立するために働き、忠夫は普通の高校生として学校へ。
そんなとき、忠夫はまた事件に巻き込まれるのだった。

そして、MTM計画の『SDGS』とは?最強の二人の謎の計画が忠夫に襲い掛かる!!
果たして忠夫達の運命は?
こうご期待!!


レス返しです。

Tシロー様

はい、ヒャクメの作戦炸裂です!忠夫君が新たにパワーアップして帰ってきた!!
GM達によって一歩どころか3歩4歩と前進しそうですが、応援してあげてください。

PS、とりあえずこれを書き上げたいと思いますw


ハヤト様

はじめまして。

ヒャクメはでオチ・・・盲点だったwww
フミさんの起用法ですが、参考にさせていただきます。ギャップ萌えですか・・・そしたら、またメインヒロインはフミさん?って意見が続出しそうな感じがしますが、それもいいかも(爆)

トチ狂った感想、大いに結構!私の作品を楽しんでもらえれば幸いです。


HEY2様

まさか、神様の住まいでヤッt(仏罰)など出来ません。覗きの女神もいることですしw
今回、その女神様の作戦が炸裂しましたw


カシス・ユウ・シンクレア様

糖分は補充されましたか?え?そこまで甘くない?もっと甘くしなきゃ駄目?
わかりました。努力しましょう(ぇ

さて、ご質問なのですが、小竜姫を訪れるのは修験者が主。つまり純粋に修行しに来た人達だけですので、忠夫のような展開にはならなかったのが、一つ。もう一つが修行をするときには修行に集中しているので雑念を感じないのが理由です。


DOM様

はい、今回はその鈍感なデリンジャーでしょうwww
至近距離での技、ただし、周囲への影響も出てしまいましたが・・・。
ダ女神様の作戦勝ちですねwあとでフルボッコですが、勝負に勝って試合に負けたって感じでしょうか?


にょふ様

そうですね。暴走フミさんの人気はこの作品のキャラでは一番かもしれませんしw
暴走キャラ書くのって楽しいですから、もうしばらくしたらまた出したいですw


内海一弘様

ヒャクメの逆襲!タイトルをつけるとしたらまさにこれでしょうねw
最後の展開はともかく・・・。

姉の動きにGM達も動き出す・・・。原点回帰でございますw


シシン様

>一緒に寝る寝ないはギャグで(ry
つっこまないで!私も言われて気付いたんだからwww

意識せずに目標を目指す→目標に向かって男の顔を時折見せる→女性それを見て益々ドッカン→最終兵器(フミさん)堕つ?

今のうちに糖分の補給を済ませてください。近いうちにまた甘くなるかもしれませんw

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