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「光と影のカプリス 第135話(GS)」

クロト (2008-01-24 20:15)
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 横島たちはアパートに帰りつくと、ふうーっと大きく息をついてこたつの前に座り込んだ。体のケガはここにつくまでに横島のリジェネレーションで治っていたが、精神的な疲労はそうはいかないのだ。
 1人まだ立っていたカリンがくすっと笑って、

「お茶でも淹れてくるからそのまま待っててくれ。ああ、ついでだから風呂も沸かして来るか」

 横島がついさっき修行と水道代の節約の一石二鳥になる技術を習得していたが、今やらせるのは酷だろう。カリンはくるりと踵を返すと、まず自動湯張りをセットしてから台所に向かった。
 ポットと急須と湯飲みを載せたお盆を持って再び居間に戻ると、横島とタマモにならってこたつの中に脚を突っ込む。

「まあ何にせよ、みんな無事でよかった。私たちはまた成長できたし、結果的にはいい探検だったな」

 カリンが湯飲みを横島の方に差し出しながらそんなことを言うと、タマモが小首をかしげて訊ねてきた。

「あんたたち、また何か技でも覚えたの?」
「ん? ああ、あの時はタマモ殿はいなかったな」

 とカリンが横島の肉体幽体化のことを教えてやると、タマモは「ふーん」と気のあるような無いような相槌を返した。実はよく理解できなかったからだというのは彼女だけの秘密である。
 そこでタマモは、横島とカリンがまだ知らない大事なことを思い出した。

(おキヌちゃんのことは……今は黙ってた方がいーわよね)

 横島にも関係のあることだが、当人に口止めされたから彼には秘密にしておくべきだろう。ただカリンには教えておかないと行き違いが起こるかも知れないが、それは後で彼女と2人きりになった時にすれば済むことだ。

「……タマモ、どーかしたか?」
「へ!? あ、ううん、何でもないわよ」

 他ごとを考えていたのが顔に出ていたのだろうか、訝しげに覗きこんできた横島にタマモはあわてて首を振ってごまかした。まったく、この男はおバカなくせに時々鋭いから困る。

「……そっか」

 横島は深入りはしなかった。タマモがキヌのことを考えるのをやめたので、「怪しさ」が感じられなくなったからだろう。
 すると今度はカリンがちらっと2人の顔に目をやって、

「ところで横島、確か明日はまだ何も予定は入ってなかったろう。タマモ殿とデートに行ってくるといい」
「へ? そりゃまあ、俺は別に文句はねーけど……どーしたんだ、いきなり?」

 自分とデートしてくれと言うのなら分かるが、なぜわざわざ他人とデートさせようとするのだろう。横島が疑問に思うのは当然だったが、カリンの回答は彼の2号さんにしておくのがもったいないほどの優等生的なものだった。

「いや、明後日から3日間妙神山だろう? その間はおまえは小竜姫殿を優先することになるわけだから、タマモ殿に寂しい思いをさせないようにと思ってな」

 要するに3日間あまり相手できなくなる分、明日しっかり仲良くしておけ、という意味である。本来なら三股かけている横島自身が解決すべき事柄だったが、恋愛問題のサポートも影法師の仕事のうちだと思っているのだろうか。
 横島はカリンの言いたいことは理解できたが、しかしそれでは当のカリンがあまりにも報われない。

「で、おまえはどーすんだ? 29日になったら親父とお袋が来るからデートはできんだろ」
「いや、私はあの城でおまえといろいろ共闘できたからな。もう十分満足だから、今年の残りはタマモ殿と小竜姫殿に譲ってもいいと思ったんだ」

 カリンは雪之丞のようなバトルジャンキーではないが、「能力を表現すること」が存在意義だから、それを本体兼恋人と存分にやれたことで満足していたのだ。ただ自分がまだまだ未熟であることも痛感していたが、それは口にしなかった。

「ちょ、ちょっと待ってよカリン。いくら何でもそんなこと言われて、『それじゃお言葉に甘えて』ってゆーわけにはいかないわよ」

 カリンの申し出はタマモにとって有り難いものと言ってよかったが、だからといってそのまま受け入れることはできなかった。むしろさっき助けてもらった礼として自分が引っ込んでるのが順当なのではないだろうか。
 ただそれを素直に言うと妙な譲り合いになってしまいそうなので、タマモはちょっとひねりを入れて、

「それに私寒いの嫌いだし、明日はここでゴロゴロいちゃいちゃしてればいいと思うんだけど。もちろん3人で」
「……そうか。フフッ、親切はしておくものだな」

 カリンとしてはタマモにここまで言われたなら自説にこだわる理由はない。満足したとは言ってもやっぱり嬉しいのか、わずかに口元を緩める。
 しかしすぐその端をくいっとゆがめると、本体の方に顔を向けて意地悪な笑みを見せた。

「それと横島。あの鉄の棒と『炎の狐』は小竜姫殿へのお歳暮にするからな。外に持ち出しちゃ駄目だぞ」
「何いぃぃっ!?」

 横島は明日の予定はデートでもごろ寝でも良かったが、魔法の箒の使い道を勝手に決められては困る。あれは魔鈴にプレゼントしてフラグゲットする予定だったのだから。
 カリンはむろん横島の計画のことはとっくの昔にお見通しで、だからこそお歳暮にするなどと言い出したのだが、今はあえてそれには触れず、涼しい顔で反問した。

「小竜姫殿にはひとかたならぬ世話になったし、来年もいろいろ世話になるだろうからな。これくらいの贈り物は当然だと思うんだが、それとも何か他に用途があるのか?」
「……」

 そう言われると横島はうぐぅの音も出ない。いかに自分の元に飛んで来たものだとはいえ、まさか恋人に向かって「他の女にプレゼントする」なんて言えるはずもなかった。魔鈴には恩義どころか貸しがあるくらいなので、カリンの言うお歳暮という手もダメである。
 などと横島が苦悩していると、カリンが突然ついっと立ち上がって竜珠を貸して欲しいと言ってきた。

「……? いいけど、何に使うんだ?」

 今カリンが煩悩を霊力に変えてもする事はないだろう。横島はそう思ったのだが、影法師娘には別の存念があるようだった。

「いや、あの時は大勢の前だからああ言ったが、これの本当の機能は『霊的特性を強化する』というものなんだ。だから私が使うと、単純に霊能のスキルが上がるという効果になるんだ。
 ……こんな風に」

 とカリンが言い終えた瞬間、少女が着ていた服に銀色の甲冑がつく。令子の影法師がつけていた鎧よりややシンプルな感じのデザインで、腰には西洋風の長剣も吊られていた。
 今日の夕方まではお色直しはいったん横島の中に戻らないと出来なかったのだが、つまりこれがスキルアップの効果という事なのだろうか。
 カリンが剣を抜いてかざして見せながら、

「武器や防具もつくれるようになるんだ。まあ元が服だから、デザイアブリンガーほどの威力はないんだがな」

 それに霊視や瞬間移動系のスキルも上がっているから、いろいろと役に立つこともあるだろう。たとえば例の鉄の棒も今なら解析できそうだったし、竜珠は持ち主以外のモノの強化もできるという事も説明しておくべきだったが、クリスマスイブにそこまで突っ込んだ霊能話を始めるのも何なので触れなかった。
 そもそもこうして着替え芸を見せたのも、これを使ってやる事があったからなのだから。

「……それで、だ。せっかくの聖夜なんだし、プレゼント代わりにサービスでもしようかと思ってな」

 と武装を解除して、今度はメイド姿に変化する。紺色のロングスカートタイプで、カチューシャや白いエプロン、黒のストッキングといったオプションも完備していた。

「おおっ、強気っ娘メイド!?」

 思わず身を乗り出して凝視する横島。本物は令子のおともで六道家に行った時に1度見たことがあるだけだから、服装だけのえせメイドでも感激だった。
 そう、自分は今まさに漢のユメ、メイドさんのご主人様になったのだ!

「似合うか?」

 とカリンがスカートをつまんでくるっと回転してみせる。横島はむはーっと鼻息を荒くして飛び掛からんばかりだったが、そこでなぜ少女が突然こんなサービスを始めたのかに思い至った。

(もしかして、「炎の狐」のお代がわりって事なんかな?)

 しかし小竜姫に贈り物をするためだけにここまでするというのはちょっと解せない。あるいは自分が魔法の箒を何に使おうとしていたか分かっていて、魔鈴への点数稼ぎをやめさせる代償ということなのだろうか。普通なら怒って当然のところを、逆にご奉仕してくれるとは!

「……横島、どうかしたか?」
「へ? あ、いや、何でもない」

 不意に顔を覗きこまれて、横島はハッと我に返った。
 カリンの思惑は分かったが、それを口にしたらお互い気まずいだろう。ここはあえてそ知らぬフリして、サービスとやらを有り難く受け取るのが吉だと思う。箒の方は残念だが仕方がない、男らしくすっぱり諦めよう。

「……うん、激しく似合ってるぞ。つーわけでさっそくサービスを、いやむしろ俺がサービスする!」

 と横島はダイブしようとしたのだが、その直前に背中に不自然な重みがかかったため跳びそこねた。何事かと首をひねって見てみれば、これもメイド姿になったタマモが自分の背中に抱きついているではないか!

「面白そーだから私もやってあげるわ、横島。
 ……じゃなくて。ご・しゅ・じ・ん・サ・マ、って言うのかしら?」

 とウインクした狐娘は放胆にも19歳Verになっており、服のデザインもカリンのものよりラフで胸元が開いていたりミニスカだったりと横島のスケベ心をもろに撃ち抜く凶悪な代物であった。

「ふむ、タマモ殿もその気になったのか。ならこの際、横島……ご主人様が妙な気を起こさぬよう、2人で搾り取っておくとしようか」

 カリンがニヤリと唇の端に小さな笑みを浮かべ、ついで横島の唇に軽くキスする。その台詞と行為と、そして後ろにいる傾国の美女のカラダの感触と甘い匂いに、横島のさして強くもない理性はごくあっさりと消失した。

「面白ぇ、絞り取れるもんなら絞り取ってみやがれー!」

 ぐわーっと咆哮してタマモの腕をふりほどき、ついで2人を両手でがばっと抱きすくめる。

「やれやれ、相変わらずデリカシーのないやつだな……」
「きゃー、ご主人サマに襲われるー」

 とか言いつつも、カリンもタマモも逆らおうとはしなかった。


 夜が明けてまぶしい太陽が昇っても、ご奉仕モードはまだ続いているようだ。
 横島はまだメイド姿のままのカリンに膝枕してもらいつつ、カーペットの上に寝っ転がっている。タマモもメイド服を着たまま、ただし14歳Verで横になって頭を横島のお腹の上に乗せていた。
 脚はこたつの中に突っ込んで、規則的なかわいい寝息を立てている。

「すぅ……横島……」

 狐娘のそんな言葉は、本当の寝言なのかそれとももう起きていて演技で言っているのか。横島にはよく分からなかったが、とりあえず少女の髪をやさしく撫でることで応えてやった。
 やがてタマモは目を開けたが、まだ寝ぼけているのかもそもそと四つん這いでこたつからはい出してきたかと思うと、横島の腕を枕にしてその体に抱きついた。
 また寝息を立て始めたが、本当に眠っているのかどうかは不明である。

「……ご主人様を抱き枕にするとは、何という不良メイドだ」
「あははは、可愛らしくていいじゃないか」

 カリンが横島の頬を撫でながらそうとりなしてやると、横島も別に本気で不快に思ったわけではないらしく、腕を曲げてタマモの頭を抱いてやった。

「んー、まあおまえがそのぶん完璧メイドしてくれるんならそれでいーけど」

 などとたわけた台詞をほざきつつ、カリンの腰の後ろに手を回す。その手が少女のやわらかいヒップを撫で上げると同時に、横島は額を拳骨でどつかれた。

「痛ぇ!? くぉら、メイドがご主人様に暴力を振るうとは何事だ!」
「ん? いや、大事なご主人様が性犯罪でしょっ引かれたりしないよう、教育しているだけだが」
「……」

 あまりにも正鵠を射すぎた突っ込みに横島は黙るしかなかった。いや横島とて誰かれ構わず尻を撫でるほどアホじゃないつもりなのだが、いかに相手が恋人メイドとはいえ無許可でわいせつ行為を働いてしまった直後では弁解の余地がない。
 もっとも横島もカリンも、相手が本当に怒っているわけではない事くらいは承知している。横島は手を戻すと、今度はカリンの頬に伸ばしながら、

「……でもありがとな。おまえとタマモがいてくれるおかげで、毎日ホントに幸せだから。いや、Hできるからっつーわけじゃないぞ? じゃあHは要らんのかって言われたら困るけど」

 横島の台詞の前半はまことに立派だったが、後半はしょせん煩悩小僧であった。しかしまあ正直は一応美徳であるわけで、カリンも横島の手をそっと握って、やわらかい口調で返事をかえす。

「……そうか。そう思ってくれてるのならすごく嬉しい。
 私もおまえと一緒にいられることが幸せだから」
「―――」

 少女の言葉と手のひらの暖かさが、その発言内容が事実であることを明白すぎるほどに裏づけていた。そしてこれほどの好意に対して横島がどう応えればいいか分からず一瞬口ごもったところへ、胸元の辺りから第3者の声が割り込んでくる。

「私も幸せよ、横島。あったかいし美味しいし楽しいし退屈しないし、何より安心できるから」
「何だ、やっぱり起きてたのかタマモ」

 横島が(顔は動かせないので)目線だけ向けてそう訊ねると、狐娘はこっくりと頷いた。

「うん。ほんとはもう少し寝たフリしてるつもりだったけど、何かうれしいこと言ってくれたから私もお返ししとこうと思って」

 と横島の腕枕から離れて、今度はその胸板に顔をうずめる。
 横島はうつ伏せで自分に抱きつく形になったタマモの背中をそっと抱き返してやったが、なぜか少女は不思議そうに顔を上げた。

「あれ、何か反応が普通じゃない横島。絶対お尻なでてくると思ったのに」
「おまえは俺を何だと思っとるんじゃー! つかそこまで言う以上、覚悟はできてるんだろうなあ!?
 ガキの姿だからって許すほど俺は甘い男やないでーッ!」

 横島がカリンの手を振り払って、不埒な金髪ロリメイドに懲罰を下さんと躍りかかる。タマモは「きゃー、ご主人様にまた襲われるー♪」とわざとらしい悲鳴を上げたが、それ以上抵抗する素振りは見せなかった。

「やれやれ……」

 カリンがため息をつきながら頭をかいたが、それは横島にもタマモにも聞こえていないようだった。


 その翌朝、横島たちは朝食を食べ終えるとすぐに妙神山に行くための支度を始めた。
 横島の結界がなくなったためあまり速く飛ぶわけにはいかなくなったので、そのぶん早く家を出なければならないのである。
 今回は2泊3日なので着替えの類も必要だ。3人が改めてリュックの中身を確認していると、不意に電話の呼び出し音が鳴った。

「はい、もしもし横島ですが……え、小竜姫さま!?」

 意外なことに、電話の主は彼が今まさに訪問しようとしていた相手であった。年も押し詰まったので同盟者である朧と神無に挨拶するため下界に下りてきたのだが、そのついでに横島たちを迎えに行こうと思ったらしい。
 正確には、挨拶の日取りを横島たちが妙神山に来る日に合わせたのであるが。こうすれば小竜姫の瞬間移動で横島たちも妙神山に連れて行けるので、3人の往路にかかる時間を省けるのだ。
 ちなみに小竜姫が直接横島宅を訪問せずわざわざ朧たちの家の電話を借りて連絡したのは、以前横島に「当分俺の家の方に来るのは避けていただけると嬉しいです」とお願いされたことをちゃんと覚えていたからである。

「それでですね。もし良かったら帰る前に街で遊んで行きたいなと思ったんですけど」

 要するに節約できた時間を使ってデートをしようという事だ。さすがに再修業を満点以上で卒業しただけあって、やる事にそつがない。
 横島もその意をすぐに察して、

「あ、はい、俺はもちろんOKっスよ。カリンとタマモにも話しますんでちょっと待ってて下さい」

 と受話器を手で押さえて傍らの2人に事情を説明する。カリンはデートより修行の方が良かったが、師匠がこういう方針では致し方ない。素直に了承の返事をした。

「私も別にいいわよ。あ、でも今小竜姫さんって先生のところにいるのよね。じゃあ私も挨拶に行きたいから、そこで待ってるように伝えてくれる?」

 タマモが「先生」と呼んだのは朧と神無のことである。彼女は現在もお揚げ料理を習いに朧寿司に通っているので、2人は当然タマモが敬意を払うべき「先生」という事になるのだった。しかし小竜姫に対してさえ「さん」付けしかしないタマモが「先生」と呼んでいる辺り、朧と神無の料理の腕はよほど凄いものであるようだ。

「ん? ああ、そだな。わかった」

 横島としても朧と神無はいずれ共に戦うことになるかも知れない、しかも美人なので挨拶に行くことには異存ない。小竜姫も断る理由はないので承知した。
 横島が電話を切って立ち上がり、出発の意を示す。

「じゃ、行くか。あ、でもこの荷物どうする?」

 着替えとか「炎の狐」をデートに持って行くのは無粋だが、デートが終わってから取りに帰るというのも何だか間が抜けているような気がする。しかしこういう事については、成長した影法師娘が実に頼りになった。

「ああ、それなら問題ない。きちんとまとめておいてくれたら、私がアポート(物品引き寄せ現象)で持って来られるから」
「おー、その手があったか。おまえってホントに頼りになるよな」
「ああ、どう致しまして」

 恋人に称賛されてカリンは嬉しそうに微笑んだが、横島はその笑顔を見てちょっと気になることができた。

「そう言えばさ。俺たちが2人とも竜神になっても、おまえが俺の『霊格や霊力を取り出して形にしたもの』ってゆーのは変わらないんだよな。てことはおまえが俺の中に戻ったら、俺もテレポートとかアポートとか使えるんかな?」

 少なくとも今試してみたら、まったくできなかった。
 横島は影法師を出した状態でも天候制御や飛行能力を使えるが、それは以前の竜珠が彼自身の力として昇華されたのと、彼の肉体が幽体になったからだ。それでもテレポートはできないのは、やはりこれらの力は普通の霊能力とは別という事なのだろうか。カリンは天候制御はやれないようだし。
 すると少女はまるで生徒の良い質問を喜ぶ教師のような表情を見せた。

「そうだな。私が戻ってる間なら、練習すれば使えるようになるはずだ。ただおまえの特性から考えるとそういう事は苦手そうだから、素直に私に任せてくれればいいと思うが……」

 横島の竜身は九頭竜とヒドラの合いの子みたいなもので、だからこそ以前の竜珠は天候制御とか自動再生といった機能を習得していったのだろうが、それならESP系の術は不得手だろう。どのみち影法師が出ている間は使えないのだし、いつでも使える天候制御や陰陽術を伸ばす方がいいと思う。
 ちなみにカリン自身は「星竜」という謎の特性で、成長すると霊能と関係ない世界にまで突入するらしい。

「そだな。じゃあ任せるから、しっかり本体のサポート頼むぞ」

 横島は修行や努力はあまり好きじゃないからか、それともさほどの興味があったわけではないのか、あっさり話を打ち切った。テレポートとアポートは非常に悪用しやすい能力なのだが、横島はそこまで悪党ではないようだ。

「ああ、任せておけ」

 カリンがどんと胸を叩いて請け負う。そして横島に続いて外に出ようと踵を返しかけたが、

「いや、この服のままじゃまずいな。横島、着替えるから竜珠を貸してくれ」

 まさかメイド服のまま出歩くわけにはいかない。タマモにも注意しようと思ったが、狐娘はとっくの昔に普段のブレザー風の服に着替え終えていた。タマモにとってお揚げ道の師への挨拶というのは相当重要な行事らしい。

「……うー、まあしゃあねーか」

 横島としてはメイドさんを従えて街を歩くという素敵イベントも体験してみたいのだが、自分たちが人間ではなかったり同棲してたりするという立場上、注目を浴びすぎるのはよろしくない。仕方なく影法師娘に竜珠を渡すと、少女は普通のセーターとスラックスという面白みのカケラもないありきたりの服に着替えてしまった。
 カリンは恋人の残念そうな表情を見てフフッと小さく微笑むと、

「財布は持ったな? じゃ、行こうか」

 と最後に部屋のすみに置いてあるリュックを一瞥(いちべつ)してからその場を後にした。


 ―――つづく。

 相変わらずここの横島君は幸せです。邪魔する人はいませんし、奥さんズが仲いいから修羅場とかありませんからねぃ。
 ではレス返しを。

○cpyさん
 魔鈴さんもやっぱり女性でありました。あれで体型がよくなるわけではないのですがw
 未亡人のあの人の本格登場はもう少しお待ち下さいー。

○あきさん
 うーん、そうですか。筆者としては煩悩少年に突っ込みを入れてくれる貴重なキャラなのですが。

○三田さん
 はじめまして、楽しんでいただけてるようで嬉しいです。
 今後ともよろしくです。

○凛さん
 は、横島君たちも家に帰って一息ついてるところであります。横島君なのでやることは1つしかないわけですがー。
 グラヴィトンのことはまさにその通りなんですよねぇ。令子さんも頭に血が上っててそこまで気が回らなかったんでしょうな。
 でも彼は護衛してくれる味方がいればかなり強いと思うのですよー。

○Tシローさん
>体重
 まったくですな。痩せすぎも良くないですし。
>グラヴィトン
 相手も悪かったですしねぇ。でも今後は静かに暮らせそうな気がしますw

○ぞらさん
 ご意見ありがとうございます。
 パンドジニウムには特定の支配者や主催者がいるのではなく、「類は友を呼ぶ」ような感じで引きつけられてくるのだという設定でした。また城の中でドジが増えるのも、そういう方向性の魔力が働いているせいだとしています。パンドジニウムという名前もその現象から付けられたものです。
 シメサバ丸については確かにそういう解釈も成り立つのですが、原作で令子が着ていた鎧は外からは見えないものでしたし、肌を露出していた部分を狙えば折れずに済んでいたわけで、その辺りがドジに認定されたとしました。
 ……のですが、やはりちょっといいかげんな設定だったかも知れませんね。今後とも精進します。

○炎さん
 合コン編は原作では2話で終わっていたんですよねぇ(ぉ
 炎の狐は奥さんズに没収されましたw

○紅さん
 ねぎらいのお言葉ありがとうございますー。
 グラヴィトンは自分では動けないので、生き残るためには口先の技も重要なのですよーw

○Februaryさん
 ねぎらいのお言葉ありがとうございますー。
 グラヴィトンには体重を増やさせるしか能がありませんから、相手が誰だろうとこれで勝負するしかないのですよー。もちろん重力場で自分が動くなんて器用なことが出来るはずもありません(酷)。
 横島君がああいう状況でボケるのは、もう宇宙意志的なお約束ですからねぇ。むしろ心の奥では突っ込まれるのを期待してたかも知れませんな。もちろんドジ城でなくてもやるでしょう(酷)。
>「話し合い」で解決
 お互い紳士淑女ですからねぇw

○whiteangelさん
 話し合いといいますか貢ぎ物の献上といいますかw
「炎の狐」は、小竜姫さまの物になったら一応横島家の一員ということになりますかねぇ。

○ばーばろさん
 ようやくクリスマスが終わりましたが、年が明けるのはまだ先になりそうです。
>16回でも楽しく〜〜〜
 どうもありがとうございますー。いろいろイベントがありましたが、どれもこれも必要なものばかりでしたので。
 仰る通り、六女組にはいい経験になったことでしょうねぇ。峯さんはヒドい目にも遭いましたけどw
>魔鈴さん
 天然ゆえの攻撃力、恐るべしであります。
「炎の狐」イベントはつぶされたようですが、まだまだ楽観はできません(ぇ
>グラヴィトンの方が鬼門の二人より上だと???
 あの重力芸は使い方次第で超強力になりますから。
 今の横島君だと、鬼門なんて空中からの麻痺ガスであっさり倒せちゃいますしw
>ポーカーフェイスで煩悩を送ってくれた女性
 そこはあえて書かない部分ということで、読者様の想像にお任せしておりますですヾ(´ー`)ノ
>楽しい冬休み
 はい、ばっちり妙神山に行きますですよー。その前に人界でのデートが入る辺り横島君も幸せ者ですが。

○遊鬼さん
 ダイエットがんばってくださいませー。
 グラヴィトンはうまく立ち回れば強いと思うのですが、ケンカを売る相手を見定める目はまったく持ってませんからねぇ。古代人に崇められてたせいで自己認識が甘いのかも知れませんな。

○通りすがりのヘタレさん
 ねぎらいのお言葉ありがとうございますー。
 グラヴィトンは令子さんの般若面で恐怖を味わいまくりましたからねぇ。その点から見てもラスボスに相応しかったのです(ぇー
 タマモも格闘ができないわけではないのですが、霊力と身体能力の比較で見るとやっぱり魔法使いタイプですね。まあ見せ場はお風呂で十分ありましたしw
>魔鈴さん
 もし横島君がグラヴィトン倒してたら本当に見せ場ナシでしたからねぇ。ダイエットの効果には疑問もありますがw
 ドジっ娘疑惑は峯さんともども深まる一方ですな(酷)。
>グラヴィー
 女の子だったら確かにいい綽名だと思うんですが(酷)。

○チョーやんさん
 グラヴィトンは最後に引率役に花を持たせるために出て来たと思っていただければー、というか一応扉のカギ持ってたのは彼ですからw
>盛り上がり
 魔鈴さんが剣抜いて駆け出すシーンはビジュアル的には格好よかったと思うですよー。ビジュアル的には(ぉ
>次回からの展開
 小竜姫さまですよ、小竜姫さま(ぉぃ

○山瀬竜さん
 グラヴィトンは自分では動けませんからねぇ。目の前まで迫られたらあとは口八丁しかありませんからw
 仰る通りそんな方だからこそドジ城のラスボスになってしまったわけですが(酷)。
 被害はまあ……目に見えるものはなかったということでw
>体重
 そうなんですよねぇ、令子さんも気づいてないようですがw
 令子さんや峯さんは格闘タイプなので運動量多そうですからまだいいですけど、おキヌちゃんや魔鈴さんはヤバそうですな。
 正月にぜんざいとか食っちゃ寝してたら(以下削除)。
>小竜姫様分
 ご安心下さいませー、筆者もそう思っていたところですから(ぇ

○KOS-MOSさん
 毎度お誉めいただきありがとうございますー。
 ドジが致命的なレベルになる前に脱出できて何よりでした。
 女性陣は当然何にも気づいてません。気づいた時が楽しみですな(ぉ

○ロイさん
>相手を自重で潰す
 はい、彼も敗北に学んで成長したのです。
 自分の姿を隠しておくという事も学んでたら勝てたのですが、そこはドジ城に来るキャラだということでw
>体重−1Kgのささやき
 はい、体脂肪率はそのままということに気づかないくらいにw
>魔鈴さん
 妙神山には来ませんが、出番は作りますとも!

○風来人さん
 煩悩を送ったのが誰なのかについては上記参照ということでー。
>タマモとピート
 まあ魔鈴さんや峯さんほどの被害は無かったですし、当人はさほどの不満は抱いてないと思われます。
 愛子はわらしべイベントということで別枠でしたし(何が)。
>横島君の体重
 言われてみればその通りですな。本当に煩悩一直線なヤツですねぇ(;>ω<)

○meoさん
 体脂肪率も体型も変化はないですねー。痩せたと思って大食いすると当然前より太りますな。
 でもグラヴィトンがだましたわけじゃないんですよね。彼ウソは言ってませんしw
 令子さんは現在も継続中です。

○鋼鉄の騎士さん
 魔鈴さんフラグは着実に進行中ですが、やっぱりツメは甘いです。まあこのSSには西条がいないのであせる事はないのですがー(ぉ
>グラヴィトン
 でも彼にはこれしかありませんしねぇw

○読石さん
>峯さん
 筆者もまさかあんなシーンを書くことになるとは思ってませんでした(ぉ
>魔鈴さんのフラグ
 横島君ってそういうヤツだと思うのですよー。
 今回も意図的なフラグ立ては挫折しましたw
>グラヴィトン
 次に出る時はどんな策を練って来るのか楽しみです<マテ

○内海一弘さん
>炎の狐
 小竜姫さまに献上されてしまいそうですが、彼女がどう扱うかはまだ分かりませぬ。果たして横島君にとって都合のいい事は起こるのか?(ぉ
>竜神化
 今のところは問題ないのですが、バラす相手が増えてくるとどこからほころびが出るか分かりませんからねぇ。
>体重
 真実に気づくのはいつの日か(ぉ

○UEPONさん
 デートが終わったら妙神山の話を書く予定ですー。小竜姫さまにお話することもありますし。番外編は……確かにそうなんですよねぇorz
>100kg
 うーん、この辺りは当人が言ってるように「煩悩パワーの不足」と思っていただければー。令子さんの所にいたときは彼女のボディコン姿で常に補充できていたわけですしw
>魔鈴さん
 確かに実年齢よりは子どもっぽい感じありますが、横島君に比べればずっと大人なので、同い年の相手のような感覚にはならないかと。仮にも個人事業主ですし。
 それでも人外キラーには弱いかも知れませんがー<マテれ
>絶対やると思ったので
 だってやらないわけにはいきませんでしたから!
 でも予想を越えられて良かったです。
>本体の意向を完全には無視できないみたいですね
 まったくですねぇ。
 横島君甘やかすとロクなことにならないと思うのですが(ぉ
>軽くなった分動きのキレが良くなってそうです
 それはありそうですね。人間同士の格闘だと軽いのは不利な面もありますが、悪霊相手なら問題なさそうですし。
 油断して大食いしなければの話ですがー(ぉ
>おキヌちゃん
 確かに現場を見たとか当人に直接言われたとかじゃありませんから、やっぱり諦め切れないという感情が出て来る可能性はありますねぇ。
 その辺りは先をお待ち下さいませー。もしかしたら何も起こらないかも知れませんがorz

○萌えさん
 はじめまして、今後ともよろしくお願いします。
 カリンは体重「ほぼ」ゼロですね。ひょっとしたら数グラムくらいはあるかも知れません。
 人並みの体重になったら確かに格闘では有利ですね。ただ横島君の中に戻ったときにヒドい事になるので、やはり避けた方が無難だと思います(^^;

○tttさん
 は、グラヴィトンの呪いはここでは「足し算方式で増えていく」ものだと設定しております。本文中で「上乗せ」という言葉で表現したつもりだったのですが、やはり説明が足りなかったかも知れませんねorz

   ではまた。

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