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「光と影のカプリス 第130話(GS)」

クロト (2007-12-29 20:28)
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「……はっ!?」

 横島が目を覚ました時、彼の体はまだ湯に浮いたままだった。どうやら失神していたのはほんの数秒程度のことだったらしい。
 とりあえず体を起こすと、いきなり目の前が真っ暗になった。誰かに手でふさがれたのだ、と横島が察したとき、

「もう気づいたか、起こすまでもなかったな。目隠しをし直すから目をとじろ」

 というカリンの声が横から聞こえた。
 カリンは横島を起こそうとしたのだが、その前に彼が自分で目を覚ましたため、魔鈴と峯のハダカを見せないよう手で目をおおったというわけだ。
 横島としてはせっかくの2人のヌードが一瞬で終わってしまったのがまことに残念だったのだが、それでも心のHDDにはバッチリ保管できたことだし、ここでカリンの要求に逆らうのが得策でないことくらいは理解できる。おとなしく正座の姿勢になって、影法師娘のなすがままにバンダナの目隠しを受け入れた。
 すると今度は後ろから、両肩をがっちり掴まれるのを感じた。

(この気配は……魔鈴さん?)

 もちろん素っ裸のままである。だがそちらから伝わってくるおどろおどろしいまでの瘴気の前に、横島は煩悩チックな反応を返すことはできなかった。
 魔鈴の指に力がこもり、横島の肩をぎちぎちと締め上げる。

「横島さん……見ましたか? 見ましたよねぇ……」
「ひいっ!?」

 魔鈴のたおやかな指は成年男子もかくやという握力を発揮しており、横島は逃げることはかなわなかった。いやここで逃げれば事態はさらに悪化するばかりだと横島の生存本能は正確な判断を下しており、煩悩少年はできる限りの誠意を面に表して(魔鈴の位置からは見えないが)謝罪の言葉を申し述べた。

「は、はい、実にすばらしい乳、いえ! 見る気はなかったんですけど、あまりの美しさについ」

 といってもあまり謝罪にはなっていなかったが、なぜか魔鈴は指の力をゆるめてふふっと微笑んだ。

「そうですか、それじゃ仕方ありませんね。今回は特別に許してあげます」

 今回は主に峯が原因だからか、それとも女としてのプライドが満たされたからか、魔鈴はあっさり機嫌を直して横島の謝罪を受け入れた。そして今度は珍しいおもちゃを見つけた子どものような口ぶりで、横島の右手の中にあるオレンジ色の珠について訊ねてきた。

「ところで横島さん、その右手の珠みたいなのは何なんですか? 見たところ霊力の塊(かたまり)みたいですけど」

 魔鈴は実は好奇心の方もそれこそ子ども並みで、横島を簡単に許したのもそのいわくありげなマジックアイテムのことを聞きたいからだったし、そうでなければそもそもオールヌード状態で横島に手を触れようなんて思わない。まあ横島もすべては話せないがある程度は教えてやっても構わないことなので、魔女の怒りが解けたことにほっと安堵しつつ己の霊能についての説明を開始する。

「これですか? これは俺の霊能の集大成、煩悩玉です。俺が影法師出してても霊能使えるのはこれがあるからなんですよ」

 そこまで言ったところで横島は背後の気配の質が微妙に変わるのを感じた。いいかげん説明の仕方を改めた方がいいような気がしてきたが、口に出してしまったものはしょうがない。
 ただ例によって横島は、この新生竜珠にどんな機能があるのかまだ把握していなかった。今まであった天候制御とか飛行とかは彼自身の能力として昇華されているからなおさらである。まさかこんなに早く復活するとは思っていなかったし。
 しかしこういう時に頼りになるのが隣にいる影法師娘である。「カリン、分かるか?」と小声で訊ねると、少女は本日何度目かのため息をつきながら本体に代わって説明を始めた。

「これは……何と言えばいいかな。横島の霊力源は自分の煩悩なんだが、これを持っていると他人が横島に向けた煩悩も霊力に変えることができるようになるんだ。いやスケベ心だけじゃなくて、普通に愛情とか友情とかでも可能なんだが……」

 その本質は「持ち主の霊的特性の強化」というものなのだが、現実の作用としてはそういう事であるらしい。横島はこれを聞いて「つまり奥さん増やせば増やすほどパワーアップできるのか!?」と目を輝かせかけたが、さいわい口には出さずに済んだ。
 しかし横島の煩悩を溜め込んでできた宝珠だけあって、何ともしまらない機能であった。ある意味唐巣が「我が友なる精霊たち」から力を借りるのと同様の技なのだが、何というか、格調の高さが違いすぎる。

「「……」」

 魔鈴も峯もいわく言いがたげな渋い顔をしていたが、カリンは別の見方も持っていた。何故なら竜珠のこの力は、一時的に他のモノに貸し与えてやることもできるからだ。

(武器なら破壊力を、祭具なら神聖さを、薬品なら薬効を高める、か……。この自由度の高さ、タダスケ殿の文珠に通じるものがあるな)

 もしくは如意宝珠の力の1つ、「欲しい物を何でも出す」の変形したものという解釈もできるだろう。もっともこんな力が完全になったらとても人里には住んでいられないが。
 カリンがこれを魔鈴たちに教えなかったのは、むろんGSの基本的な心得の1つ「能力をむやみにバラさない」を忠実に守ったからである。魔鈴たちは信用できても、何かの拍子でこのことを知ってしまった別の者まで信用できるとは限らないから。

(如意宝珠といえば文珠の力はまさに「願いを何でもかなえる」ものだったな。「栄光の手」は小竜姫殿が持ってる「竜の牙」に特徴が似ていたし、もしかしたら横島家には竜の血が混じってるのかも知れないな。竜は多淫という話も聞いたことがあるし……)

 もっともいくら竜神王や玉竜や小竜姫が仏道に帰依しているとはいえ、横島に仏が持つ宝具など似合わないことこの上ないのだが。
 そしてカリンがそんな物思いにふけっている間に、傍らの横島たちはまたおバカ話を再開していた。

「煩悩玉で煩悩を力に変えるって……まったくGSとして、いえ人として恥ずかしくないんですか?」

 峯はハダカを見られたことについては責任の大半が自分にあるため、こちらでウサ晴らしをすることにしたようだ。しかし横島もキヌや愛子ならともかく峯にこんなことを言われるのは不本意だった。

「やかましい、それを言うならおまえだって似たよーなもんじゃねーか。この百合っ娘どじ忍者!」
「だからそーゆー呼び方をしないで下さいって何度も言ってるでしょう! それから似た者扱いもしないで下さい」

 と峯は激昂したが、先ほどの失敗に鑑みて拳で反撃するのは控えた。第一まだ全裸のままなのだから、あまりこの男に接近しすぎるのは好ましくない。
 ちなみに魔鈴には一応謝罪済みである。
 そういうわけで峯がいったん沈黙すると、魔鈴がまた竜珠の話を蒸し返してきた。

「ところで横島さん、その煩悩玉ちょっとさわらせてくれませんか?」
「へ、マジっすか!?」

 魔鈴の申し出に横島は少なからず驚いた。他の人間は「煩悩玉」と言っただけで話を打ち切ってきたのに、まさか手に触れたいなんて望むとは。やはりあんな奇ッ怪なインテリアの家に住んでいるだけあって感性が普通と違う、もとい実に勉強熱心であった。
 しかし横島の竜珠は竜気で出来ているものだから、すぐれた霊感を持つ人間に触らせるのはよろしくない。

「あー、これはすごく大事なものなんで、人にさわらせるのはあんまり……」
「さわらせてくれたら代わりに私の胸を」

 なので横島は断ろうとしたのだが、魔鈴が何やらものすごい好条件を出して来たためあっさりと前言をひるがえした。

「お好きなだけどーぞっ!!」
「さわらせてはあげませんけど、魔法教えてあげますから」
「ぶぷっ!?」

 竜珠を手渡すため魔鈴に向き直ろうと90度ほど体をひねったところで好条件がブラフに過ぎなかったことが判明し、全身の力が抜けてバランスを崩し湯の中で転倒する横島。魔鈴もいじわるだが横島も間抜けであった。

「あああっ、ごめんなさい。大丈夫ですか!?」
「待て魔鈴殿、あなたは今裸なんだから横島には近づかない方がいい」
「え? あ、きゃあああ!」

 横島を助け起こそうとしてカリンに自分が全裸であることを指摘され、あわてて胸を手で隠して跳び退く魔鈴。その背中が峯にぶつかり、2人いっしょに足を滑らせて湯の中に沈んだ。

「あああ、何をやっているんだ2人とも!?」

 まあ転んだといってもお風呂なので大事にいたるようなことはなかったし、竜珠のことがうやむやになったので横島にとって(今のところは)ラッキーな展開であったが……。


 一方更衣室では、ピートと神野と遠藤が見張りと称した雑談にかまけていた。
 実はピートにとってはあまり望ましい状況ではなかったのだが、事情を考えればやむを得ない。そして少女2人の巧みな話術によって、除霊現場を見学させるという約束が取り付けられようとしていた。

「でも僕の独断では返事できませんから、先生に許可をもらってからということで……」

 とピートは最後のあがきを試みたが、神野と遠藤にとってこれはむしろ望むところであった。何故なら後で返事するためには連絡先を知らねばならない、つまり電話番号の交換ができるからだ。
 さっそく神野がポケットから携帯電話を取り出したが、それと同時に通路に出る方のドアがぎいっと音をたてて開いた。

「……ッ!?」

 3人とも世間話に興じていたとはいえ一応は警戒中だっただけに、すぐその音に気づいて体ごと向き直った。今この状況で通路側のドアが開くとしたら、それは「宝の番人」の襲撃という可能性が1番高いのだから。
 しかし彼らの予想に反して、その視線の先に人影らしきものはなかった。

「……?」

 3人は一瞬空耳かと思いかけたが、それが間違いである事はすぐ認識できた。何故なら確かに閉めたはずのドアが50センチほども開いていたし、その隙間からは身長30センチくらいの、女の子がままごと遊びに使う人形がぞろぞろ歩いて入って来ていたからだ。

「モ、モガちゃん人形!?」
「これは……付喪神か、それとも式神の類か!?」
「ってゆーか数多くない? 少なく見積もっても100個はあるわよ!?」

 異様な事態に3人はとりあえず身構えはしたものの先制攻撃をかける気にはなれず、まずは相手の出方をうかがう事にする。すると人形たちはそれこそ呪いの人形じみた不気味な声色でしゃべり始めた。

「うふふ……思った通りお風呂に入ったわね……」
「見張りを残すなんて……けっこう小知恵が働くみたいだけど……」
「まずはこの3人に……人形になってもらいましょう……!」

「……ッ、こいつらやっぱり敵か!」

 ピートが嫌悪をにじませた声で叫んだ。
 人形の声はみんな同じ声色で、どの人形がしゃべっているのかの見当はつかない。だが彼女(?)たちに自分たちへの害意があるのは明らかだった。
 しかし人形たちの言葉からすると、さっきのタコは彼女たちが用意した仕掛けのようだ。墨で汚れて風呂に入るのを見越して、裸になっている所を襲うという作戦かと思われた。
 ただ魔鈴たちが風呂に入れたのは横島とタマモの特殊な霊能力があってのことで、もし2人がいなければ自分たちは風呂に入らずそのまま出口を目指していたところなのだが、やはり人形だけにそこまでの思考力はないという事なのだろう。

「2人とも浴室の中へ!」

 ピートはフェミニストだから、横島がすでに入っているとはいえ女性が入浴中の部屋にいきなり入り込むなどという無作法はできない。しかし神野と遠藤なら問題ないから、まずは2人を魔鈴たちと合流させて身の安全を確保させることにしたのだ。

「は、はい!」

 ここは妙な強がりやスケベ根性を起こしている場面ではないし、魔鈴たちに敵襲を知らせるという役目もある。神野と遠藤はおとなしく頷いて、後ろの扉を開けて浴室に駆け込んだ。しかしそのわずかな会話の隙をついて、人形たちがピートめがけて一斉に跳躍してきた。

「うわあああっ!?」

 そのホラーチックな光景にピートはおぞ気をふるったが、さすがに現役のGSだけあって体がすくんで動けなくなるというような事はなかった。即座にバンパイアミストを発動し、霧のかたまりとなって天井に移動する。
 天井に仰向けに寝そべるような体勢で霧化を解除した。

「ここまではジャンプできないだろう。くらえ、ダンピール・フラッシュ!」

 とピートが両手から霊波弾を連射すると、満員電車のような密度で迫って来ていた人形たちはよけることもできず次々と破壊されていく。しょせんプラスチック製だけに、半吸血鬼の攻撃に耐えられるほどの頑強さは持っていなかったようだ。また彼に向かって行こうとする人形がいないところを見ると、天井まで飛び上がるほどの跳躍力もないらしい。
 しかし彼女たちは総勢数百という大群であり、ピートに撃破されたのはその5%以下であった。残りはすべて浴室の中に入って行ったため、ピートにはこれ以上打つ手はない。

「くっ、数が多すぎる……!」
「くすくす、あなたは中の人たちを人形にしてからゆっくり遊んであげるから……それまでそこで待ってなさいね」
「くっ、おのれ……!」

 人形のあざ笑うかのような口ぶりにピートは唇を噛んだが、やはり彼には女風呂に侵入する度胸はなかった。


「ま、魔鈴さーん! に、人形の大群が襲って来ましたー!」

 と神野が注進するまでもなく、彼女と遠藤の背後に数え切れないほどのモガちゃん人形が迫って来ているのが魔鈴たちからもはっきり見えた。タマモや愛子はびっくりして腰を抜かしたが、さすがにカリンは一瞬の躊躇もなく湯から飛び出して迎撃に向かう。

「待てカリン、出るな!」

 しかし横島はなぜかそれを押しとどめると、むしろ嬉々として左手で目隠しをずらし、敵の位置を見定めると右手を湯面をこするような形で前に突き出した。

「くらえ、横島サイキック津波!」

 普通なら湯面を手でこすってもちょっと水がはねるだけだが、やる者が水神ともなれば話は別だ。高さ1メートルほどもある大波がうねりを上げ、人形たちに襲い掛かった。

「……っ!?」

 人間の大人ならどうという事もない攻撃だったが、人形たちにとっては身長の3倍以上ものビッグウェーブである。その進路上にいた数十体が抗うすべもなく飲み込まれ、浴室の壁に叩きつけられた。
 今の横島がつくれるレベルの水流や突風で直接敵を傷つけることは難しいが、押し流すとか吹き倒すとかなら十分できる。まして身長30センチの相手なら、今やったように壁にぶつけてダメージを与えることも可能なのだった。
 ちなみに「敵を傷つけるのは難しい」というのは霊力の問題ではなく、それを扱う技量の問題である。たとえば現実のウォータージェットよろしく、両手の間にすくった水を0.1ミリの隙間から110マイトの霊圧をかけて噴出させれば人体くらいなら切断できるだろうが、そこまで器用な芸当が今の横島にできるわけがなかった。というかそういう技術が存在することも知らなかったりする。
 それはともかく、

「決まった! さあ魔鈴さん、今のうちにタマモたちの後ろに隠れ痛ぅっ!?」

 と見事に敵の足止めを果たしたところで振り向き、魔鈴に後ろに下がるよう促そうとした瞬間、横島は頬に手厳しいビンタをくらって再び顔を正面向きに戻させられた。

「な、何しやがる? つーか誰だ!?」
「こっち見ないで変態!」

 と叫んだのが峯だったところを見ると、横島をビンタしたのは彼女の触手だったようだ。なるほどこれなら彼に接近せずにひっぱたくことができるが、ついさっき手に入れたばかりの能力をみごとに使いこなしているのはさすがに実技首位というところか。

「誰が変態じゃ! せっかく守ってやってるのに」
「守ってくれるのならちゃんと前見て戦って下さい。ほらまだ敵はいっぱいいますよ!?」

 峯はそう言いつつも、横島の後ろから触手を彼の顔に巻きつけて煩悩魔人が振り向けないよう拘束する。基本的にケンカは嫌いな横島がなぜ自分からカリンを止めてまでして先陣を切ったのか、峯にはその真意が手に取るように分かっていたのだ。

「なっ、何すんじゃこの百合っ娘! 顔動けんくされたら魔鈴さんのハダカが見れん、もといヤツらの攻撃をよけれんだろーが!」
「横島さんなら大丈夫でしょう。魔鈴さん、今のうちに下がって下さい!」

 つまり戦いに参加するには当然視界を回復する必要があるわけで、横島はそれを口実にして目隠しを外し魔鈴や峯の裸を見るという悪謀をくわだてていたのである。残念ながら途中で阻止されてしまったが。
 そして問題児2人が口論している間に、人形たちはGSたちの戦闘圏内に入ってきていた。

「横島も峯殿も遊んでいるとケガするぞ!」

 カリンは2人をそう叱りつつ、上から炎のブレスを吹きつけようと空中に舞い上がったが、そこでプラスチックを燃やすと有毒ガスが発生することに気がついた。

「ちっ、面倒な……! タマモ殿、あなたも狐火はダメだぞ!」
「ええっ!?」

 タマモが驚いて硬直したがカリンはそちらには目もくれず、床の上に降りると竜気の爪を出して格闘の態勢に入った。だが人形たちはすぐには襲いかかって来ず、壁に沿って横一列に広がり始める。
 人形たちは数が多いので、ドアのそばに固まっていると全員が中に入れないからだ。少人数で攻撃しても勝てないと見極めて、全員が浴室に入り終えてから一斉に攻撃しようと考えたからでもある。
 その部隊展開の最中、人形の一体が横島たちに話しかけてきた。

「あら、あなた……ひょっとして下男のタダオ君!?」
「誰が下男じゃ! ……って、ん? 俺のこと知ってるってことは、ひょっとしておまえ美神さんが持ってたモガちゃん人形か!?」
「そうよ。あの時は新入りに裏切られたせいで祓われたけど、今度はそんな凡ミスはしないわ。まじめに働いたら雀の涙くらいのご褒美はあげるから、安心して人形になるといいわ」
「なるかーっ! ったく、誰だよこんな物騒な人形蘇らせたのは」

 全くその通りではあったが、令子の人形は前回の失敗に学んでいるらしく、彼女がどこにいるのかは横島にもカリンにも分からなかった。
 しかしまあそれならそれで、全員まとめて叩きのめせばいいだけだ。

「くらえ、サイキックダブル津波!」

 横島が今度は両手で湯を押し出すと、さっきの倍の幅を持つ高波が人形たちに襲い掛かった。霊波弾の類と違って面的な攻撃だから、通常の体術でこれをかわすのは不可能だ。
 しかし人形たちはばばっと飛び上がると、壁を蹴って三角飛びの要領で横島が放った波を飛び越えた!

「おおっ、人形のくせに頭ええ!?」
「ほほほっ。私は令子ちゃんの霊能力で魂が宿ったんだから、下男の浅知恵を2度もくらうほど間抜けじゃないのよ」
「む、ムカつくーーー!」

 人形ごときに嘲弄された横島は怒りに拳を震わせたが、この技は湯を大量に湯船の外に出してしまうため多用はできない。さてどうするか、と横島が次の手を考え始めると同時に、人形たちは二手に分かれて左右の壁に沿って走るような動きで彼の背後の魔鈴たちの方に駆け出した。どうやら水中にいる横島は後回しという事らしい。

「心配はいらないわ。ちょっと魂を抜き取って閉じ込めるだけだから……!」

 と令子の人形がいちいち宣言しているのは、彼女が人間の魂を肉体から抜き出して人形に封じ込めるためには、まずその旨を当人に知らせた上で気絶させるか、あるいは降参させる必要があるからだ。眠っているうちに近づいてこっそり魂を抜き取る、なんて高度な技は持っていないのである。

「させるか!」

 カリンが横島から見て右側のスペースに移動し、跳躍して組み付いてきた人形をその鋭い爪でなぎ払う。ブレスが使えないとはいえ格闘技術も一流だけに、あっという間に5体10体の人形が燃えないゴミと化して辺りに散らばった。
 しかしいくらカリンが強くても両側を守ることはできない。必然的に左側は神野と遠藤が受け持つことになる。

「実際に付喪神になってるのはごくわずかで、残りはそいつらに操られてるだけみたいね。ってことは幻術は効かないか……」

 ならば普通に霊的格闘で1個ずつ破壊していくしかない。神野はそっちはあまり自信はないのだが、タマモやキヌや愛子、それにまだ裸の魔鈴が後ろにいる以上それでいくしかなかった。

「そうね、魔鈴さんの服が乾くまで何とかねばるしかないわ」

 遠藤もそう相槌を打ってファイティングポーズを取った。
 彼女のキョンシーは「自分より小さい敵多数」と戦った経験がないので、今回は使わずに自分自身で戦うつもりなのだ。魔鈴が服を着て戦線に復帰したらすぐにボスを探してあのビームでやっつけてくれるだろうから、それまで頑張ればいいわけだし。
 しかし神野と2人だけではいかにも心もとない。遠藤は湯船の中にいるもう1人の級友に応援を求めた。

「ちょっと千鶴、いつまでも横島さんとじゃれてないで手伝ってよ。忍者は裸が1番防御力強いんでしょ? 隠れてることないじゃない」
「ゲームと一緒にしないでよ!!」

 峯は魂からの咆哮でその妄言に応えた。確かに重いフルプレートより身軽に動けるレザーアーマーの方が有用ということはあるが、いくら何でも全裸は論外だろう。というかどこのAVだ。

「ちぇっ、つまんないの」

 遠藤が本当につまらなさそうに舌打ちしつつ、人形たちに向き直る。さすがに本気で峯の参戦を期待していたわけではないようだが、こんな気の抜けた態度で魂を抜き取る付喪神とやり合って大丈夫なのであろうか……。


 ―――つづく。

 クリスマスの話だったのに年内に終わりませんでしたorz
 新生竜珠は文珠ほど便利ではありませんです。というか文珠持ったら他の能力ほとんど要らなくなっちゃいますしねぇ。
 ではレス返しを。

○ロイさん
>煩悩玉
 筆者もここまで早く復活するとは思ってませんでした(ぉ
 妙神神社ができる頃には能力が108個くらい付いてるかも知れませんな。
>おキヌちゃん
 中途半端な状況でいるよりは幸せということで……あうorz

○ばーばろさん
 峯さんは反省したのか、今回は横島君の足を引っ張る側に回ってます。カリンを押し倒すところまで行くかどうかは不明ですがw
 魔鈴さんは大人なので、横島君のことは寛大に許してくれました。これはひょっとしてフラグ……いや大人の女性がそんな簡単に落ちちゃいけませんよねぇ。
 おキヌちゃんはやむを得ないところでありました。まあ仰る通りおキヌちゃん入れると愛子が可哀そうですし、おキヌちゃんヒロインな話は他にたくさんありますしヾ(´ー`)ノ

○通りすがりのヘタレさん
 おキヌちゃんには失恋を乗り越えて成長してほしいものでありますorz
 横島君は煩悩のおかげで順調に成長中です。むしろ煩悩以外では成長できないと言うべきかも(ぉ
 美神事務所への復帰はまず無いでしょうねぇ。でも新生竜珠は道具使いとの相性がいいので、バレたら令子さんの勧誘意欲が高まるかも知れませぬ。

○Februaryさん
 横島君が目隠しを外した状態で峯さんは全裸……ヤバ過ぎるシチュエーションになりました。
 竜珠復活は我ながら早かったです。性能はアレですがw
>パラダイス
 筆者的にもかなり妬ましいですw

○cpyさん
 お風呂の話はまだ続いてますので、ぜひご堪能下さいませ<マテ
 横島君の角は第127話にある通り、バッチリ大人の角でありますー。神通力も持ってますし。
>今回でクリスマスの話の大切なところは終わったのかな?
 1つは終わりましたが、もう1つ残っておりますです。

○遊鬼さん
 は、仰る通り実にパラダイスですよねぇ。魔鈴さんはバスタオルなしですし(ぉ
 筆者に絵心があれば自分で描いてるところなんですがー。
>「必要は発明の母」
 まさにその通りですな。
 それが一応報われてるのがこのSSの珍しい所であります(ぉ
>おキヌちゃん
 せめて失恋を糧にして、より魅力的な女性になってほしいものですなorz

○アラヤさん
 横島君の煩悩は手錠外したり霊力になったりと何でもアリですからねぇ。このくらいは朝飯前って感じです<マテ
 魔鈴さんはぜひ今後ともがんばってほしいものであります。
>水を操る能力
 仰る通り使いこなすと強いのですが、横島君はろくでもない事ばかりに使いそうですなw

○紅さん
 ドジの城というのはむしろ横島君にとって有利な戦場なのかも知れませんw
 おキヌちゃんはついに脱落してしまいましたが、横島君ばかりが男じゃないさorz
 魔鈴さんは天然さんだけに逆に動きが読みにくいです(ぉ

○スカートメックリンガーさん
 お誉めいただきありがとうございますー。基本的には主人公幸せ物語なのですが、あまりいい事ばかりでもつまらない、というか横島君らしくないですからねぇ(酷)。
 水を使った技は今後もいろいろ出したいものです。

○風来人さん
 横島の湯……主人が番台に出て来さえしなければ繁盛しそうですねぇ。でも子宝だけは無いと思うのですよー、むしろカップルは別れさせられるというかw
 横島君が美神事務所を辞めたのは令子さんのせいではないのですが、時給3桁ではいずれカリンとケンカは避けられないのでむしろ平和的に済んでよかったのかも知れませぬ。
>おキヌちゃん
 そうですねぇ。黒キヌ様だけは避けたいものですがw

○読石さん
 煩悩玉は使い方次第で大変役に立つのですが、持ち主が横島君なのでとても不安ですw
>余剰の煩悩がトコロテン方式で
 実情はそんなものだったかも知れませんなぁ(酷)。
>おキヌちゃん
 そうですねぇ、普通の女の子では身が持たないでしょうし<マテ

○Tシローさん
>煩悩玉
 相手とシチュエーションが珍しかったですからねー。しかし竜の至宝も横島君にかかるとやたらお手軽になってしまいます(ぉ
>おキヌちゃん
 深みにはまってからよりはマシだと思うのでありますよーorz
 愛子も話は聞いてたので、慰めてやったりするかも知れませんねぇ。失恋は恋愛の裏表、つまり青春の一大ファクターなわけですし。

○とりさん
>煩悩玉
 本当に早かったなあと筆者でさえ思いますw
 横島君が使うとアレですが、カリンならまともに使えそうです。
 石化の魔眼は人界では治せないのでさすがに(^^;
>おキヌちゃん
 彼女の性格ではあの場で堕ちるのは無理がありましたorz
 でも煩悩魔窟に迷い込まずにすんでむしろ幸せだと思うのですよ(ぉ
>魔鈴さん
 大人の余裕であっさり許してしまいました。困ったものです(何
>黒キヌルート
 いあ、それだけは(汗)。

○鋼鉄の騎士さん
>おキヌちゃん
 そうですよねぇ、悪竜の生贄になるより普通に暮らす方がずっといいと思います<マテ
>煩悩玉
 しょせん悪竜ですからねー。王道的ヒーローの真似はできませんでしたw

○XINNさん
 なるほどー、なかなか面白い発想ですねぇ。
 毎年108個できるのに、大晦日で綺麗さっぱり無くなる……実に横島君らしいです(酷)。

○トトロさん
 そうですねえ、相方が横島君ですからタマモたちは今後も苦労しそうです。
 でも確かに愛子の時もタマモがフラグクラッシュしてたんですよねぇ。これも第1夫人の務めなのか?(ぉ

○KOS-MOSさん
>煩悩玉
 このネーミングこそが早期復活のカギだったような気がしてきましたw
 仰る通り霊能の域を越える日も近そうですな。
>おキヌちゃん
 ありがとうございます(o_ _)o

○山瀬竜さん
 ねぎらいのお言葉ありがとうございますー。
>ポロリもあるよ
 ここが1番重要なアピールポイントですよね<マテ
>横島君
 ユッキーみたくまともに戦う人じゃありませんからねぃw
 このSSだとガチは影法師がやってくれるので、尚更からめ手方面のことばかり考えてます。
>峯さん
 思いっきりアウェーの地ですからねぇ。しかも相方が横島君ではエロ方面にドジるのもやむなしでしょう。
 でもそれで横島君が成長するとしたら、むしろ彼にとって貴重なパートナーという見方もできるかもw
>おキヌちゃん
 は、1日も早く立ち直ってほしいものであります。

○whiteangelさん
>横島君
 しかもついに目隠しを外してしまいました。
 魔鈴さんがピンチです!(ぉ
>峯さん
 彼女も実技首位としてそれなりに体面があるのではないかと。

○あきらさん
 横島君はますます煩悩道を爆走中です。
 彼のことだからすぐ転ぶと思いますけど、何度でも立ち上がるのが彼の恐ろしい所なのです。
 炎の狐はたぶん人の姿にはなれないかと。奥さんズが許しませんから(ぉ

○UEPONさん
>五神合体
 それじゃますます化け物じゃないですかw
>トランクスの方が良くないですか?
 うーん、トランクスはいたままお風呂に入るのもどうかと思うです。
>番外編に出てきた風呂の湯も同じような霊泉なんですか?
 おそらくはそうでしょうな。水道代も節約できますし。
>媚薬
 それじゃ横島君が幸せすぎるじゃないですかw
>おキヌちゃん
 すでに現代人になっちゃってますし、ライバルは神様ですからねぇ。2号という考えは出なさそうです。
>美神さん視点
 うわあ、そんないかにも有りそうなことを(笑)。
 もしかして令子さんが横島宅に怒鳴り込む修羅場を書けと?(ぉ

○内海一弘さん
 は、いつの間にか130話にまでなってしまいました。これもみなさまの応援の賜物であります。
 おキヌちゃんは女性週刊誌とか読むみたいですし、やはり妾という発想にはならなさそうです。
 幸せになってくれると良いのですがー。

   今年の更新はこれでおしまいであります。それでは皆さま良いお年を。

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