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「光と影のカプリス 第129話(GS)」

クロト (2007-12-25 19:06)
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 横島は駄神鞭とシメサバ丸と式神ケント紙(らしき紙束)と炎の狐をくるんだジャケットを真銀手甲をはめた手でかかえて歩きながら、ここまでに見つけたアイテムをどう処理するべきかを考えていた。
 正体不明の鉄棒と琥珀の文鎮とケント紙については、妙神山に持って行って小竜姫に鑑定してもらえばいいだろう。まさかお金は取るまいし、厄珍などよりずっと信頼できる。
 シメサバ丸は令子に渡せばいいと思う。あの依頼の後シメサバ丸が最終的にどういう扱いになったのかは聞いていないが、刃先をキヌが包丁として使っていた以上、令子が丸ごと引き取っていたと考えるのが自然だ。こんな危険な道具を手元に置いておきたくはないが令子の物だとしたら壊すのは怖いし、やはり持ち主に押しつけ、もとい返還するべきである。

(でも炎の狐はそーゆーわけにはいかんよなあ)

 炎の狐も元は令子が回収を依頼された品物なのだが、重要文化財で外交問題がどうのこうのという話があったから、今さら返したらややこしい事になりかねない。今回の事故の件も大っぴらになってしまいそうだし、魔鈴に相談して決めた方がいいだろう。
 そもそもこの箒が本物の炎の狐だという証拠もないわけだし、場合によっては彼女にあげてしまうという手もある。

(確か当時でさえ3本となかったっつー逸品なんだよな。そんな凄い物をあげれば当然大喜びするわけで、さっきも墨のせいとはいえ俺に迫ってくれてたし、これはもしかしたらもしかするかも……!)

 すでに婚約者がいる男とはとうてい思えない邪な妄想を繰り広げる横島。これで神様の端くれだというのだから世も末である。

(しかしあのタコ踏み潰しちまったのは惜しかったよなぁ。媚薬吐くと知ってたらぜってー生け捕りにするところだったのに)

 もっとも捕獲したところでカリンとタマモに処分されるのが関の山なのだが、横島忠夫という男にはそういうまともな思考回路は備わっていないので、

「チクショー、バカバカ、俺の馬鹿! なぜ俺は罪もないタコを踏み潰すなんて非道なことをしてしまったんだ!!」
「「……」」

 横島はタコを助けてどうするつもりなのか具体的なことは明言していないが、その顔つきを見れば考えていることは丸分かりである。腹を立てた女性陣を代表して、とりあえずカリンが炎のブレスを後頭部に吹きつけた。

「あぢぢぢぢぃぃっ!? な、何すんだいきなり!?」

 横島は炎上した髪の毛をあわてて手甲ではたいて消すと、くわっと振り向いて加害者に尋問したが返ってきたのは冷たいひと言だけだった。

「自分の胸に聞くんだな」
「……!?」

 横島は自分が問答無用で燃やされるほど悪いことをしたという覚えはなかったのだが、なぜか周りの女の子たちみんなが不機嫌そうにしているのでここは押さえることにした。
 とりあえず話題を変えてごまかそうと、ふと視界に入ったキヌに声をかける。

「そーだおキヌちゃん、シメサバ丸って美神さんのだろ。引き取ってくれるよーに言ってくれるか?」
「え!?」

 今までの流れとまったく違う話を突然振られてキヌはとまどったが、横島がいつまでもイジメられる(?)のも可哀そうなので話に乗ってやることにした。

「あ、そ、そーですね。うーん、でも私が勝手に預かっちゃうのも何ですから、美神さんに確認してから改めて返事するってことでいいですか?」
「そだな。おキヌちゃんにシメサバ丸持って帰らせるのも何だし」

 キヌがシメサバ丸に操られたら殺人犯になりかねない。可能性は低いと思うが、何も今日渡さなければいけない理由はないのだし、急ぐことはあるまい。

「じゃ、よろしくな。とゆーわけで愛子、元の世界に帰るまでこれおまえの中に入れといてくれ」
「え? あ、うん、わかったわ」

 刀だの箒だのを抱えっ放しでは戦闘に支障が出る。横島の依頼はもっともな事で、愛子は素直に頷いてそれらをくるんだジャケットを引き出しの中の異界空間にしまってやった。
 ……さて、そんなこんなでようやく先ほどの風呂場に戻ってきた一行であったが、やはり更衣室にバスタオルなんて気の利いたものは置いていなかった。

「ということは、やっぱり……?」

 峯が少しだけ青い顔で呟く。そう、彼女と魔鈴は目隠しをしてもらってとはいえ、日本一の好色野郎横島忠夫と全裸で混浴という試練に挑むことになったのだった。
 どこかでニヤソと邪笑を浮かべた黒い影に気づくこともなく……。


 それから15分ほど後、浴槽には熱いお湯がなみなみと満たされていた。
 広い湯船は7〜800リットルほどの容積があろうかと思われたが、美(少)女2人と混浴ということでテンションが上がりまくった横島にとってはさしたる難業ではなかったようだ。空気中の水分を根こそぎ搾り取っては換気するという作業を繰り返すこと数百回、みごとに肩までつかれるだけの水をチャージしてのけたのである。
 それをずっと狐火で加熱していたタマモもお疲れさまであったが、やはり横島の技の方が際立っていた。

(確かに凄いと思いますけど、誉めるとか尊敬するっていう気分にならないのはどうしてでしょうねぇ……)

 魔鈴のそんな呟きは、たぶん横島以外の全員が思っていたことであったろう。これこそ風雨を操る竜神の力そのものなのだが、まことにもって不届きな使い方である。
 カリンはこんな事をして正体を疑われないかと少しはらはらしたが、考えてみれば横島の外見は変わっていないのだから、九頭竜の姿を見せでもしない限り彼と竜神を結びつけて考える発想など出るはずがない。実際魔鈴たちはそういう見方はしていないようなので、カリンは内心でほっと胸を撫で下ろしていた。

「さ、準備オッケーですよ魔鈴さん! 心ゆくまでしっぽりとつかっていって下さい。この俺が誠心誠意、真心をこめて三助(銭湯で風呂を沸かしたり客の背中を流したりする男のこと)をしますんで!」
「……遠慮しておきます」

 ひと仕事終えてとってもいい笑顔で振り向いてきた横島に、魔鈴はいろいろと脱力しながらそう答えると、服を脱ぐために愛子の机の中に入って行った。しかし横島はそのつれない反応にもめげず、今度は神野と遠藤の方に顔を向けて、

「せっかくだから君たちもどう?」

 と白い歯をキラリ光らせて誘ったが、2人は軽くスルーした。神野たちは白濁液を浴びていないから風呂に入る理由はないし、それよりこれから万が一の警戒という名目で、更衣室でピートといちゃつく予定なのだ。バカに付き合っている暇はなかった。
 キヌと愛子は浴室のすみで魔鈴と峯の服を洗濯する係である。戦闘で役に立てなかったからということで、愛子がみずから立候補したのだ。キヌは魔鈴と峯にちょっとだけ、ほんのちょっとだけ胸の奥で嫉妬したりもしたのだが、まさかここで自分も全裸で湯につかると言えるほどの勇気も破廉恥さも持ち合わせていなかったので、おとなしく愛子の手伝いという任務を拝命していた。
 タマモは洗った服を乾燥させる役である。ナインテールの鞭をハンガー代わりにして下から狐火で炙れば乾かすのにさほどの時間はかからないというわけだ。

「くくぅっ、まさか本当にこんな所で混浴できるなんて……タダちゃん感激っ! 生きてて良かった……!」
「バカ言ってないでさっさと服を脱げ。脱ぎ終わったらバンダナで目隠しをするからな。あとシャツを腰に巻いておけ」

 胸の前で両拳を震わせて感動にひたる横島に、カリンが機械的な声でそんな指図をした。実はカリンはアポートで家からバスタオルを取り寄せようとしたのだが、真銀手甲ほど大事にしているものではないのできれいにイメージすることが出来ず、持って来ることができなかったのである。
 ただこうするとシャツが濡れてしまうが、後で狐火で乾かしてもらえば済むことだ。魔鈴たちの目に股間や尻をさらすよりはずっとマシだろう。

「……そだな。目隠ししといてアレ丸出しってのも恥ずかしいし」

 横島はカリンの言葉で急に理性が戻ったらしく、ゆるんだ頬を少しだけ引き締めていそいそと服を脱ぎ始めるのだった。


「はああ、横島さんが用意したお湯とは思えないほどいい気分……生き返るわぁ」
「峯さん、そういう言い方は良くないですよ……でもほんとにいいお湯ですねぇ」

 峯と魔鈴はほこほこと湯気をたてる温かい湯に肩までつかって、思わず鼻唄が出そうになるほどゆるゆるになっていた。どうやら湯をつくるときに横島の竜気とタマモの妖気が絶妙な比率でブレンドされて、霊験あらたかな霊泉になっていたらしい。わずか1メートル先という至近距離に煩悩魔人が混浴中という危機的状況にいるとは思えない極楽トンボぶりだ。

「ふうっ……」

 魔鈴は少しのぼせて来たのか、峯のそばから離れると縁に腰を下ろして下半身浴の態勢になった。足先で子どものようにぱしゃぱしゃと湯をかき混ぜつつ、顔をこすって肌にこびりついた白い粘液をはがしていく。
 腕が上下に動くたびに、その豊満な乳房もたぷたぷと揺れているのがたまらなく蟲惑的だ。いかにも重そうだがそれでいてすごくやわらかそうで、なのにボウル型で前方に突き出た綺麗なラインはお見事だった。
 令子やエミなどに比べると全体的に肉付きが良い感じだが贅肉がついてるという程ではなく、やさしい性格とあいまって上品な色気が湯気といっしょに立ち昇っていた。何とも眼福な光景である。

「……」

 峯はそのさまを横目でちらちら眺めていたが、特段の関心はいだかなかった。今はカリン一筋だから他の女に興味はないし、まして当人の前でそんな素振りを見せるわけにはいかない。想いがかなう確率がどこぞの決戦兵器の起動率より低いことは承知だが、それをまた自分から下げる理由はなかった。
 その峯の肢体はまだ若い分青い固さが残っているが、霊的格闘のトレーニングで鍛えられたしなやかさとみずみずしさを兼ね備え、胸はぱんと張っていて腰はきゅうっと引き締まり、お尻から太腿にかけたラインも自然な曲線を描いている。ベタなたとえで言うなら「カモシカのような」というところか。「ふうーっ」と息をつきながら両手を組んで真上に伸ばすと、濡れた白い肌から湯のしずくがぽたぽたと滴り落ちてまた湯船に還っていった。
 一方横島の方は意外にも(?)おとなしく湯船につかって座っていたが、口の中ではぶつぶつと世迷言をほざいていた。

「フオオオオ……魔鈴さんと千鶴ちゃんの姿は見えんが、気配は感じるぞ! そう、マッパの美女と美少女の湯に濡れた肌の熱さと艶やかさをな!」
「……そういうことは思ってもいいが声には出すな」

 と隣のカリンが疲れた声で突っ込みを入れる。彼女は水着姿―――といっても普段のボディスーツから腕と脚の部分を削っただけのような素っ気ないデザインだったが、横島の犯罪行為を封じるためなのかしっかりと腕を組んで、おまけに軽く胸を当ててやったりもしていた。なるほどこれなら煩悩魔人もおとなしくしているだろう。

「でも何かさっきから右手が熱いんだよな。もしかして煩悩パワーが紋章にたまってるのかな?」

 横島は目隠しをしているから見ることはできないが、彼の手の甲の紋章はいまや手を貫通して手のひらにまで浮かび上がっており、じんじんと痺れるような熱い痛みを持ち主に加えていた。どうやら彼が魔鈴たちに飛び掛らずに済んでいるのは、紋章が余剰エネルギーを引き受けてくれているからのようだ。

「そうみたいだな。やはり煩悩玉の復活は近いようだが……無理につくろうとしなくていいからな。あせって変なものが出来たら元も子もない」

 カリンがそんなことを言ったのは、タダスケから「文珠を急いでつくろうとしたら爆発したことがある」という話を聞いていたからだ。文珠と竜珠は別物だが、「霊気をかためて珠状にしたもの」という点は同じだから多少慎重になっているのである。現に1度壊れているし。
 横島もその辺りには異論ない。というか今の彼の最大の関心は、いかにしてこの目隠しを取っ払ってもらうかにあった。

「そだな。ところで水をつくってる間にこんな芸を覚えたんだが、ちょっと見てみてくれるか?」

 と横島が右腕の肘から先を湯面から出して指をぱちんと鳴らすと、その腕の周りに白い濃霧が沸き出し始める。たちまちのうちに直径20センチほどの霧の柱が出来上がり、少年の腕はまったく見えなくなってしまった。

「もちろんこっちからも見えなくなるんだけど、俺の霊能力でつくったものだから気配はむしろ感じやすくなるからな。逆に相手は霊的にもジャミングされちまうってわけだ」

 横島がさっき「魔鈴と千鶴の姿は見えないが気配は感じる」と言っていたのは、こういう仕込みがあったからのようだ。いつもながらえろ方面にかけてはよく頭が回る男である。

「ま、しょせんは霧だからちょっと風が吹いたらすぐ飛ばされちまうんだけど」

 と軽く手を振って小さな風を起こし、あっさり霧を吹き散らす。天候制御の技を最初に使ったのは氷室神社でカリンのスカートをめくった時がはじめてだが、用途はともかく技量の進歩は著しかった。

「……なるほど、目くらましとか逃走に使うと便利そうだな。覚えた契機はアレだが、やっぱりおまえは並じゃない。よくやったな」

 とカリンが本体兼恋人の意外なスキルアップに目を細めていると、その当人が不意に軽い調子で、

「だろ? でも直接見ないとやっぱコントロールしにくいんで、ちょっと目隠し外していーか?」
「それはダメだ」

 1秒とかからず即答するカリン。横島は霊能関係の話から攻めればガードが甘くなるかと思って回り道をしてみたわけだが、やはり風雲カリン城の守りは堅かった。
 まあ当然といえば当然なのだが、そこに峯が声をかけてきた。

「カリンさん、水着姿でその人にくっついてたら襲われますよ。こっちでお話しませんか?」

 石鹸や手ぬぐいの類がないから背中の流しっことかは出来ないが、うまくやれば裸の付き合いくらいには持ち込めるかも知れぬではないか。といって自分からカリンの方に近づいたら横島がいるので、ここは2人を引き離すのが良策というものであった。
 しかしついさっき弄ばれたばかりのカリンがそれに色よい返事をするはずがなく、

「いや、私が離れたらこの男が何をするか分からん……いや、分かり切ってるからな。峯殿はそちらで魔鈴殿と仲良くしててくれ」
「いや、俺もそこまでは落ちてねーから。たまには女の子同士で話しててもいーぞ」

 などと横島が妙に理解ある発言をしたのは、むろんカリンが離れたら事故を装って目隠しを外そうという邪悪な意図があるからである。媚薬(?)の効果はもう解けているから、峯もそう非常識な真似はしないだろうし。
 ただこれで口をつぐんでおけばいいものを、つい本音を吐いてしまうのが横島の横島たる所以であった。

「そしたらなぜか目隠しの結び目が解けて、百合っ娘はともかく魔鈴さんのマッパが拝めるからな!」
「百合っ娘はともかくって何ですかー!」

 煩悩少年の失礼極まる放言に、どじっ娘忍者は反射的に突っ込みの右ストレートを入れていた。峯は横島に好意を抱くどころかお邪魔虫くらいにしか思っていないのだが、百合呼ばわりされた上にこうも露骨に差をつけられればやはりむかつく。
 それはまあ年頃の乙女として当然の心情ではあったが、問題はここが万ドジ殿であったことだ。峯の拳は横島が首を傾けたことで標的を外し―――目隠しにかすって上の方にずれされた。

「……え?」
「おおっ!? つ、ついに魔鈴さんと千鶴ちゃんのハダカが!?」

 横島がくわっと目を見開いて歓喜の叫びを上げる。いまや彼の眼球には縁に腰掛けた魔鈴の美しい裸体と、上半身を湯面から出した峯の揺れる乳房がくっきりはっきりと映っていたのだ!

「きゃーーーーっ!」

 それに気づいた魔鈴がかん高い悲鳴を上げると同時に、両手で胸を隠して突っ伏す。一方峯は胸を隠したのは右手だけで、左手は固く握られて顔の後ろまで引かれていた。

「変態ーーーーっ!」

 渾身の霊力をこめたコークスクリューパンチが横島の鼻面を直撃する。どちらかといえば八つ当たり気味な行為だったが、まあやむを得ない反応だろう。

「んぎゃっ!?」

 絶景に気を取られて無防備だった横島の頭部が後ろに倒れ、体ごとのけぞって湯の中に飛び込む。気絶してしまったらしく、ぱしゃーんと上がった波が湯面に落ちた後も、煩悩少年は仰向けになって湯に浮いたままだった。
 「煩悩」2文字が中心部に浮かび上がったオレンジ色の珠を右手に握りしめながら。


「横島君、元気ねえ……この状況でよくやるわ」

 横島たちの乱チキ騒ぎを横目で見ながら、愛子は深いため息をついた。確かに今は遊んでていい時間かも知れないが、こんな怪しい城の中でよくあんなストレートにスケベ根性に走れるものだ。
 もしかしたらただの煩悩バカではなく、紙一重突破した天才なのかも知れない。

「……そうね」

 タマモも額の右半分に縦線効果を下ろしながら同意したが、ふと周りを見渡して何かに気づいたような表情を浮かべた。もしかしてこの状況、キヌに引導を渡すいい機会なのではないだろうか。

「仮にも神様が彼女になってくれてるのに、まだ不足があるのかしら」

 キヌの方に顔は向けず、しかしはっきり聞こえるくらいの声で言い放つ。キヌはおとなしめで内向的な方だから、面と向かって「横島には彼女がいるのだから諦めろ」なんて攻撃的な台詞を叩きつけるような事をしなくても、神様相手に略奪愛に走るような無謀な真似はするまい。

「……え、それってほんとですか?」

 タマモの予想通り、キヌはこの話題に食いついてきた。まあ当然の反応なのだが、愛子の方は逆に聞いてない風を装って、無表情に魔鈴の上着を洗う手を動かしている。

「んー、ほんとよ。ほらちょっと前に小竜姫さんが横島の家にご飯つくりに行ったって話があったでしょ。ただの雇い主と従業員の関係だったらそんなことしないわよ」

 なるべく何気ない表情で、単なる世間話であるかのようにタマモは言った。自分もキヌも横島のことはただの保護者や友人としか思ってないとでもいうかのように。
 キヌは恋仇だが良い娘だし同じクラブの友人だ。だから必要以上に傷つけずに済むよう、タマモなりの配慮でそんな演技をしているのだった。

「……そう……ですか」

 キヌは心持ちうつむいて、肩をかすかに震わせている。目尻に光る涙がにじんでいるのがタマモの眼に映った。

「おキヌちゃん……もしかして横島のこと好きだった?」

 はなから分かっていた事ではあったが、話の流れ上今初めて気づいたかのように訊ねるタマモ。するとキヌはちょっとびっくりした様子で顔を上げて、

「……え!? あれ、私、泣いてるんだ……?」

 胸の奥がしくしく痛むこの感情は何なのだろう。いや知識としては知っている、これは失恋というやつだ。
 そうか、やっぱり氷室キヌは横島忠夫が好きだったんだ……。
 横島といっしょにいるだけで気分が良くて楽しい感じがして、そうかと思えば彼が他の女性に飛び掛ったりナンパしたりすると理由もなく不愉快な気持ちになったり。はっきりそうだと自覚していたとは言いがたいが、やはりこれは恋愛感情であったのだ。

「そう……ですね。うん、そうだったんだと思う……」

 しかしそれに気づいた時が破局の時だったとは。初恋はかなわない、と何かの本で読んだことがあったが、自分にも当てはまるとは思ってなかった。
 横島や小竜姫を恨むという気持ちにはならなかった。確かに苦しくはあるけれど、それを他人にぶつけるのは間違いだと、その「苦しさ」が告げているような気がしたから。
 さすがに今すぐ立ち直って、いつも通りの笑顔を見せるという気分にはなれないけれど。

「……横島さんには内緒にしておいて下さいね。好きだと気づく前にフラれちゃってたなんて知られたら恥ずかしいですから」

 キヌは少しかすれた声でそう言うと、頬につたったひと筋の雫をぐっと拭ってかいがいしく洗濯仕事に戻るのだった。


 ―――つづく。

 おキヌちゃんフラグにケリつけましたです。横島君のおバカ混浴の直後にやるのもどうかと思いましたけど(^^;
 横島君は珍しく特訓で(ぉ)新技を身につけました。新生竜珠の力は次回、今年中に上げられるといいですねぇ。
 ではレス返しを。

○whiteangelさん
 横島君が人外に好かれるというのは1巻の時点で判明してましたからねぇ。炎の狐なんかかなり遠くから会ったこともない横島君めがけて飛んで来たわけで、並みの好かれ方じゃありませんですよw
>混浴
 横島君派手にやっておりますw

○cpyさん
 結界があれば炎の狐を使いこなせるかも知れなかったのに、このもったいなさ加減が横島君ぽいと思います(酷)。
 目隠しは外れましたけど、この状況で18禁は難しいです(^^;

○Februaryさん
 赤信号は何人いても渡ってはいけません、というか群れてる方が危険かも(^^;
 炎の狐は原作だとスペイン語で命令する必要があるようです。自分の意志があるので、霊能者でもただ念波を送るだけじゃ動かせないかも知れませぬな。
>流石15禁・・・ 最高です!!!
 ありがとうございます(笑)。
 魔鈴さんと峯さんにとっては本当にやっかいな事になりましたw
>ヒトのふり見て我がふり直せ
 GS的には「人のことは何とでも言える」というのが正しいかとw

○スカートメックリンガーさん
 お風呂書きました(ぉぃ
 煩悩は仰る通りがんがんチャージされてますので、いきなり煩悩玉復活まで行ってしまいました。
>とことん裏目裏目な男です
 まあ横島君ですからねぇ(酷)。
 炎の狐をどうするかはいろいろ考えてる模様です。タマモは……箒に性別はなさそうなので大丈夫な気がします(^^;

○通りすがりのヘタレさん
 横島君と面識がある人外はまだ出ますので、楽しみにしてて下さいませー。普通の愛情じゃないことは確定ですし(酷)。
>ヌル特性軟体生物
 横島君の手に渡らなかったのはまことに幸運でありました。
>このまま魔法の箒を魔鈴さんにあげちまえ横島君
 本当に邪な理由であげてしまいそうで困ったものですw

○ロイさん
>峯さん
 確かに彼女が開き直ったら怖いですねぇ。寮に入ってたりしたら恐ろしいことになりそうですw
>きっと彼女も霊力源が煩悩だと言い張る日がくるはず!!
 それじゃ横島君の妹確定じゃないですかw
 寮追い出されて横島君のアパートに住まわされたりして(ぉ
>横島君
 彼の行動原理とパワーの源が実によく分かる展開になりました。
 ピートや六女っ娘たちの前でピンクは無理でしょうけど(^^;

○紅さん
>峯さん
 タコのせいだと言い張ってはおりますが、本当のところはどうだか分かりませんです<マテ
 18禁は無理でしたorz

○遊鬼さん
 お気遣い頂きありがとうございます。
 当然のように入浴シーンなわけですが、横島君はようやく再会した女性陣にもうやりたい放題ですw
 筆者もごっくんな魔鈴さんとか横島君に迫る魔鈴さんの絵が見たいです。誰か描いてヾ(´ー`)ノ

○ばーばろさん
>蛸の製作者がヌルだからかっ
 おお、上手いですな。座布団1枚です<マテ
 媚薬の効果は切れましたが、横島君が合流したので何とかなるでしょう(ナニ
>魔鈴さん
 やはー、確かに最初の頃は本命っぽかったんですが、四六時中いっしょにいるタマモンには勝てませんでした。
 もともと横島君に対してわりと好意的ではあったので、ここで再びフラグが……立つかなぁ(^^;
>炎の狐
 横島君の悪謀がうまく行ったためしは少ないのですが、どうなることやら。
>ポロンの連発
 まずは1発やっちゃいました。いいのか自分(ぉ

○風来人さん
 お誉めいただきありがとうございますー。
 魔鈴さんは天然ですが大人なので、妖しく迫るのも良いものだと思ったのでありますよー。彼女が第4夫人になれば横島君は喜ぶでしょうけど、先客を納得させるのは難しそうですな(^^;
 峯さんの横島君化は本人がそばにいるせいで影響受けてるのかも知れませんねぇ。早く帰らないと本当に妹認定されそうですw

○Tシローさん
>いいぞ、もっとやれ(w
 ではお言葉に甘えて<マテ
>炎の狐
 今のところ横島君の所有物ですが、魔鈴さんはもらわない方がいいかも知れませんw
>横島が幸せ
 求める者には与えられる、というやつでしょうか(ぇー

○チョーやんさん
 お久しぶりです。とんでもない展開はいつものことですので<マテ
>横島クンのお仕置きメニュー
 いあ、彼が主張したように何百リットルもの水をつくるのは大事業なので、ご褒美がなければ無理なのでありますよー。
 それでも目隠しは受け入れてますので、彼にしては控え目に済ませた方かと(ぇー
>出張
 お仕事がんばって下さいませ(o_ _)o

○ポチさん
 魔鈴さんは人気ですねぃ。筆者も好きなキャラなのでありますがー!
 ピートパパはたぶん無関係であります。

○山瀬竜さん
 お気遣い恐れ入ります(笑)。
 魔鈴さんの第4夫人化はともかく、出番増は実現したいところですねぃ。
>横島君がかじられると思った私は幾分マシでしょうか?
 これはこれで面白い展開かも知れませんねぇ。どこをかじられるかにもよりますがw
>混浴のチャンスを逃してなるものかという気概がひしひしと伝わってきます
 横島君の煩悩の凄さを描けていたなら幸甚であります。
 登場人物が多いのでピンクはなかなか難しいのですがorz
>実は六女では衆知の事実だったら
 それは何といいますか、かける言葉も見つかりませんな(^^;

○鋼鉄の騎士さん
 魔鈴さんは横島君とは歳の開きがありますからねぃ。そう簡単に落ちてはくれないようです。
>横島の幸運のパラメーター
 彼本人の幸運というよりは、奥さんズの愛の賜物と思っていただければ(ぇー
 今回も差し引きはプラスでした。

○とりさん
 おキヌちゃんはこういう結末になりましたorz
 魔鈴さんと峯さんはがんばってます。場所が場所だけに出番ない方が幸せのような気もしますが。
>「まぁ横島だし」で納得できちゃうw
 手甲を外すくらい、原作で見せた芸の数々に比べれば軽いものでしょうからねぇww

○KOS-MOSさん
 ヌルはマッドですから、作りたいものを作るのに道徳や世間体なぞ気にしませんのです<マテ
>横島君の幸せ
 いろんなSSで不幸を味わってる彼ですから、たまには普通に幸せなSSがあってもいいと思うのですよー。
 でも反動は魔鈴さんと峯さんがかぶってるような気がします(ぉ

○トトロさん
 は、峯さんはさっそく災い転じて福となすミッションを始めましたが、ここはドジ城なのでこんな結果になりました(酷)。

○読石さん
 横島君がうかつなのはいつもの事ですしねぇ(ぉ
>ユリっ子への危機感
 タコのせいということで納得しちゃってるぽいですな。忍者に隙を見せるとは困ったものですがどうなることやら。

○HALさん
>魔鈴さん
 横島君以外に視界にいたのは峯さんと遠藤さんですからねぇ。ただのお客さんの女の子よりはマシだったというだけかも知れませぬw
 横島君が落とせるかどうかは先をお待ち下さいませー。落とせても奥さんズが納得するかどうかは別ですがw
>ロコツに正体見せるような真似
 こんな感じになりました。秘密を明かされた者ですら簡単には信じなかったくらいですから、知らない人が正体に気づく可能性は非常に低いと思われますです。

○UEPONさん
>竹箒
 確かにそうですな、ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。
>タコ
 自分でつくったモンスターに嫉妬したという線も考えられますな。
>横島君の援護射撃
 いあ、カリンは恋人ですからこういう方面での援護はしないですよー。単に魔鈴さんと峯さんに同情しただけではないかと。結果的に援護になってるのはあくまでドジ城のせいということで(ぉ
>魔鈴さんの家の風呂を使う案
 すぐ帰れるならそれでもいいんですが、この先どれだけかかるか分からないので横島案を受け入れたものと思われます。
>襲う以外は保障してませんね
 煩悩モードの横島君を完全に抑え切るのは至難ですからw
>魔鈴さんのフラグ
 彼女も「こっち側」ぽいですし、わりとあっさり立ちそうな気もしなくはないのですが、ここはネタバレ禁止としておきますですー。
>おキヌちゃん
 仰る通り出し抜かれ済みでありましたorz

○tttさん
 峯さんがギャグキャラなのは最初からのことですから(酷)。

   ではまた。

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