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「光と影のカプリス 第128話(GS)」

クロト (2007-12-20 19:22/2007-12-25 18:05)
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「うーん……こっち側から聞こえてきたよーな気がするな」

 男性陣+1の3人の中で、悲鳴の発生源の方向を把握できたのは横島だけであった。さすがに煩悩魔人の二つ名を欲しいままにしているだけのことはある。
 彼が指差した方向は、ちょうど石像を投げつけたため崩れた壁の向こう側であった。だから3人が行こうと思えば行けないことはない。
 しかしそれが最善の選択かどうかについては考慮の余地がある。

「ふむ、確かそちらは女性用の扉があった方向だったな。ならさっきの声は魔鈴殿たちだという可能性もあるが……」

 横島もカリンも声の主を特定できるほどはっきり聞こえたわけではないので、すぐそちらに向かおうという判断にはならなかったのだ。仮に魔鈴たちの声だったのだとしても、横島たちが行けば彼女たちをペナルティに巻き込んでしまう恐れもあったし。

「そうですねぇ……でももし本当に魔鈴さんたちが襲われてるのなら助けに行かなきゃいけませんね」
「だなぁ……今から探しに行って間に合うかどーかわからんけど、無視ってわけにもいかんか」

 そんなわけで3人は悲鳴の主を助けに行くことにしたのだが、そのとき突然横島の後頭部を長い棒のようなものが強打した。

「ぶっ!?」

 なす術もなく床に突っ伏す横島。しかし持ち前の不死身スキルですぐ起き上がって左右を見回してみると、どこかで見たような覚えがある木の柄の庭箒が宙に浮いていた。

「こ、これってまさか……『炎の狐』!?」

 いつだったか掃除当番をサボろうとした時に突然飛んで来て、今と同じように自分の後頭部にダイビングヘッドバッドをかましたあげく、勝手に空に連れて行って「音の壁」に体当たりさせてくれた迷惑アイテムである。
 もしかしてこいつも番人なのかと横島は思ったが、もう攻撃するつもりはなさそうなので違うようだ。

「じゃ、これがあの石像が守ってたお宝ってことなんかな?」

 何しろ人間1人を乗せて音速まで加速できるのだから、「宝」と呼ばれる資格は十分にあるだろう。もっとも屋内ではその高性能も無用の長物だし、またどこかに連れて行かれたら困るので横島は無視して立ち去ろうとしたのだが、箒はいつの間にか横島の手の中におさまっていて彼の体を勝手に自分の柄の上に座らせた。

「……って、またかー! 俺はおまえに乗る気なんかねえっつーのに!」

 横島のそんな抗議も日本語では通じるはずもなく、炎の狐は彼を乗せたまま高速ダッシュし始めた。

「だーっ、降ろせぇぇぇえ!」

 すっかり動転して叫び散らす横島。さすがに「これは夢だ」と思い込もうとするほど血迷ってはいなかったが、冷静さを保つのは無理だったらしい。
 しかし当事者である横島は意識する暇もなかったが、炎の狐が向かったのは石像が投げつけられて開いた穴の方だった。カリンがはっと目をみはって、

「む、もしかして魔鈴殿たちのところに連れて行ってくれるのか!?」

 どのみち横島を放っておくわけにはいかない。カリンとピートはあわてて床を蹴ると、炎の狐を追って全速力で飛んで行くのだった。


 峯はうかつにもタコが真上まで迫っていたことに気づいていなかったが、魔鈴の尊い(?)犠牲によって腕を絡め取られる前にその存在を発見することができた。

「このォッ、よくも……!」

 と峯は怒りをこめて触手を叩きつけたが、敵もさる者、8本の足のうち天井に張り付くための2本以外の6本を重ねることでその強烈な打撃を受け止めていた。いやこの状況なら峯が触手を振り回して来るのは当然のことで、彼はその読みに従って最適な対応をあらかじめ用意してあっただけという見方もあるだろう。
 峯の触手は素手による攻撃としては中堅GS以上の威力があるのだが、タコとはいえリーダー格ともなるとやはり違うようだ。受けた6本の足のうち4本を素早く広げて、峯の触手に巻きつける。

「くっ、しまった!」

 触手は額から伸びているものだから、これを巻き取られるとフットワークが大幅に制限されてしまう。タコはそれをさらに確実にしようとしたのか、残る2本の足を伸ばして峯の腕に絡めようとしてきた。

「まっ、マズ! 香澄、サポートお願い!」
「えええっ!? む、無理よそんなの!」

 峯はあわてて友人に援護を乞うたが、遠藤の方もそれどころではないようだった。自分が相手にしている3匹目と互角に張り合うので精一杯なのである。
 攻撃を食らった時のダメージがあまりにもでかそうだから、たとえ友人のためとはいえ戦力を割きたくないというのもあった。友人といってもクラスが別だから特に親しいという程ではないし。

「薄情者ーっ!」

 などとわめきつつも迫り来るタコの足を拳で払いのける峯だったが、その上の方でタコが再び墨の充填を終えたことに気がついてしまう。いや見過ごしてしまうよりはマシなのだけれど……。

「あああっ、大ピンチ!?」

 またあのイカくさい粘液を浴びるのか、と峯は真っ青になったが、その直前に白い光線が空を走ってタコの頭部を貫いていた。

「魔鈴さん!?」

 峯が喜色に満ちた表情で振り向く。思った通り、そちらには何故かちょっと頬を赤くほてらせながらも強い意志と怒りをこめた視線でタコを睨みつける現代の魔女の姿があった。どうやらキヌと神野の気つけで意識を取り戻したようだ。
 しかし今回の一撃は急所を外していたようで、タコは機能停止までには至らなかった。とはいえ峯1人にかかずらわっているのは危険だと判断してくれたらしく、彼女の触手を放していったん後ろに下がっていく。

「あ、ありがとうございます。助かりました」
「いえ、元はと言えば私のせいですから」

 峯の謝辞に魔鈴がそう答えたのは、建前ではなく本心からのものである。直接的にはさっき気絶してしまったのが原因だし、そもそもソリにかける魔法をもっと堅牢なものにしておけばこの城に来るハメにならずに済んだのだ。
 である以上、この少女たちを無事元の世界に帰すことについては最大限の努力を払わねばならない。魔鈴は改めて決意を固めると、再び指先に強烈な魔力を集め始める。

「―――ああっ、あれはもしかして魔鈴さんたち? って、止まれ止まれ止まれーーー!!」
「……え?」

 だがその立派な覚悟も、突然通路の奥の方から出現した、座った姿勢で宙に浮いたまま高速接近してくる謎の男の悲鳴で中断されてしまった。

「よ、横島さん!?」

 魔鈴も峯も一瞬思考が停止してぽかんと口を開けてしまったが、当然そんな大きな隙を「4匹目」が逃がすはずもない。ちょうどさっき充填を終えていた分を一気に放出する。

「きゃうっ! ……っぷ、ごっくん」
「ぷあ! ……んくっ、ぷ」

 開けた口の中に正確に射ち込まれた粘液を、魔鈴と峯はつい反射的に飲み込んでしまった。何てことだ! 毒物ではないと思うが、とてもやっかいな事になりそうな予感がひしひしと霊感を刺激してくる。
 しかし飲んでしまったものは仕方がない。次に取るべき行動として横島とタコのどちらに注目するべきか魔鈴も峯も迷ったが、煩悩少年はその数秒足らずの時間で戦闘圏内に到達していた。
 よく見ると横島は自力で飛んできたのではなく、長柄の箒に乗って飛んでいたようだ。しかも自分の意志でではなく、箒が勝手にこの場所に彼を運んで来たかのように見える。
 箒が唐突に停止し、横島は勢い余って前方に放り出された。

「止まるなら止まるで少しずつ減速せんかい、あほーっ!」

 という横島の苦情は彼が空中で舌を噛んだために中断されたが、炎の狐の行動はむしろ大手柄といえるものだった。横島の右足が着地した時に遠藤が戦っていたタコを踏み潰した上、彼がたたらを踏んだ先には魔鈴がいてその豊満な胸の間に顔をうずめるという望外の幸運に恵まれたのだから。
 なおここで彼の名誉のために申し述べておくが、これは決してわざとではない。確かに横島は自力で空を飛べるが、まだ不慣れなのでこんな突発的遭遇をうまくさばき切るほどの技量を持っていなかったというだけのことである。

「おおっ、これはもしかして魔鈴さんの乳……!?」

 といってもそれに気づいた時点ですぐに離れず、それどころか抱きついたままさらに顔を深くうずめているようでは名誉も何もあったものではないのだが……。
 しかしその被害者である魔鈴が怒るどころか、頬をさらに赤くして煩悩おバカをうれしげに抱き返したのはどうしたことだろうか。
 横島の髪をやさしく撫でながら、

「もう、横島さんったらがっつき過ぎですよ……いけないヒトですねぇ」

 とその右手をとってみずからの乳房に当て、左手は少年の肩の上に置いてゆっくりと壁に押しつける。
 潤んだ瞳で横島の目をじっとみつめて、切なげな熱いため息をついた。

「でもうれしいです。はあっ、横島さぁん……」
「なっ、何で何で何で!?」
「ど、どーなってるんですか!?」

 脈絡もなく煩悩少年に迫り出した魔鈴の姿に、タマモやキヌたちは驚倒した。いったい何事が起こっているのか!?
 当の横島も平手打ちか肘鉄でも食らうものと思っていたところにこの大サービスだから、もう顔中にはてなマークを浮かべて呆然としていた。それでも右手はしっかり魔鈴の胸を揉み続けているあたりが横島だったが(注:手甲は煩悩効果で取り外し済みである)。
 魔鈴の顔についた白い粘液からイカっぽい臭いがしてくるが、そんなことはもうどうでもよかった。

「いいですよ、私を全部あげちゃいます。でもその前に、私にも横島さんを食べさせて下さいね。
 うふふっ、いただきます……」

 魔鈴は湿った声でそんなことをささやくと、横島の方にそっと顔を寄せていった。まずはキスからというつもりのようだ。
 当然ながら横島に抵抗する意志も力もあるはずがない。だがその可憐な(いつわり)唇が魔女のエジキになる直前、2人の顔の間に何者かの手が割って入っていた。

「そこまでーーー!」

 イカくささに耐えて突貫してきたタマモである。いかに邪臭がきつかろうと、目の前で恋人の唇を他人に奪われるなど許せるわけがなかった。
 もっとも幻術使いであるタマモの目には、今の魔鈴は何かの作用でトチ狂っているだけだという事も分かったから、

「さっさと正気に戻りなさいっ!」

 という魂の叫びとともに、魔鈴の顔をつかんで強烈な幻術を打ち込んだ。

「きゃ!? ……ううん、あ」

 魔鈴は一瞬びくっと体を震わせると、立ちくらみでもしたかのように手のひらでこめかみの辺りを押さえてよろめいた。しかしすぐしっかり床を踏みしめて体を起こし―――顔じゅうに縦線効果を入れて立ちすくむ。

「あああーっ、わ、私ったら何てことを!? ごっ、ごめんなさい横島さんっ!!」

 魔鈴は正気に戻りはしたものの、それまでに自分がしていた事はしっかり覚えていたらしい。煩悩少年の胸倉をつかんでがくがくと揺すりながら平謝りする。
 しかし普通謝るときに胸倉を揺すったりはしないわけで、正気には戻っても冷静さは失われたままのようだ。横島が美女にスキンシップされて不快に思うはずがないし、今は暢気に謝罪などしている場合ではない事もすっぱり頭から抜け落ちてしまっているのだから。
 ちなみに魔鈴が横島に迫ったのは、当然ながらタコが吐いた墨を飲んでしまったせいである。お約束の催淫効果というやつだ。
 魔鈴はそのことに気がついていたが、それで責任逃れをしようとしない辺り良き魔女を自認するだけあって立派なものである。

「んぐがっ、べっ、別に怒ってないんで揺すらないで下さい魔鈴さん!」
「てゆーかそれどころじゃないでしょ!?」
「え!? あ、は、はいっ!」

 しかし横島とタマモの突っ込みで今度こそ我に返ると、あわてて峯たちの方に向き直った。だって自分が呆けていた間も、彼女たちは戦いを続けていたのだから。
 ―――と魔鈴は思ったのだが、彼女の目に映ったのはこれまたキテレツ極まる桃色魔境であった。最後に残った「4匹目」のタコが黒焦げになって床に転がっているのはいいとして、そのすぐそばで峯がカリンの後ろから赤い触手で自分ごと縛りあげ、あまつさえ右手で影法師娘の腰を抱き左手は乳房を揉みしだいていたのである。

「こっ、こらぁ峯殿、何を考えてるんだ! 気をしっかり持て」
「大丈夫ですよ、敵はもういないじゃないですか……はあっ、あったかくてやわらかくて気持ちいーです」

 ここで魔鈴たちが見ていなかった経過を説明すると、まず横島がタコを踏み潰したおかげでフリーになった遠藤が「4匹目」を攻撃にかかり、さすがに劣勢を感じた彼が逃走を試みたところで、横島に続いてやってきたカリンが金縛りの術で動きを止めたのだ。
 で、峯と遠藤に状況を確認したところタコは敵だと分かったので炎のブレスで焼き払ったのだが、その直後にさりげなく背後に回った峯に触手を巻きつけられてしまったという次第である。まさか皆の前でいきなり実力行使に出るなどと普通は考えないから、カリンがあっさり縛られたのは無理もないと言えるだろう……。

「み、峯殿、い、いい加減にしないと怒るぞ……んっ」

 とは言ったものの赤い触手はなかなか丈夫で、おまけに峯に抱きすくめられている状況では振りほどくのは無理だった。竜モードになれば峯の体も触手もはじき飛ばせるだろうが、そこまでするのは気が引ける。
 しかしそんな中途半端な心情では叱る声にも迫力がない。当然愛の羅刹と化した峯が恐れ入るはずもなく、逆にますます興奮して少女を愛撫する手の動きを激しくした。左手は乳房の先端をこねくり回し、右手はさわさわと太腿を撫でつつ股間に侵入する機会を窺っている。
 ちなみに遠藤は友人の突然の奇行に驚いて目を丸くしている―――というか、興味津々といった様子で見守っていた。口出しするつもりは全くないようだ。ピートもすでに追いついていたが、おろおろするばかりで効果的な対応策は考えつかないらしい。

(んぅっ、し、しかしどうしてこんな……? 峯殿の顔にかかってる白い液体と関係あるのか!? ……っくぅ)

 そんなことを考えたカリンがふと辺りを見てみると、横島もまた白濁液を顔にしたたらせた魔鈴に迫られていた。彼が割って入って来ないのはそういう理由からだったようだが、どう考えても普通なら有り得ない光景である。
 これで峯の奇行の原因は明らかになったが、さてどうやって彼女を正気に戻すか……。

「……ッ、きゃう!?」

 その瞬間、カリンは胸の先に痺れるような刺激を感じた。峯が指でぴーんと弾いたのだ。あまつさえ触手の片方を乳房に巻きつけ、右手は破廉恥にも内股まで潜り込んで来たではないか。
 ここでカリンは穏便に済まそうという気を捨てた。

「いい加減にしろっ!!」

 ―――がつんっ!

 峯は鼻っ柱に渾身の頭突きを、足の甲に全力の踏みつけをくらって痛みのあまりうずくまって悶絶した。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 正気に戻った峯は、いかにも不機嫌そうに腕組みして唇を曲げているカリンに向かってひたすら頭を下げていた。鼻血がまだ止まってなくて口元まで赤く染まっているのがちょっとお間抜けぽかったが、そんなこと気にしてはいられない。
 媚薬(?)にやられてのこととはいえ、まさか無理やり、それも人前であんな真似をしてしまうとは。確かにいい思いはしたが、それで嫌われてしまったらもうお先真っ暗だ。
 カリンはやれやれと重たいため息をついて、

「わかった、もういい。しかし峯殿もGS志望なら、もう少し注意深く行動するようにな。妖毒の類は場合によっては命に関わるんだから」

 たとえば地下鉄にいた妖グモが持っていた遅効性の毒などがいい例である。魔鈴と峯が浴びた液体は霊的な毒性は持っていないことを今霊視して確かめたが、いつもそうであるとは限らないのだ。

「はっ、はい! き、肝に銘じますです……!」

 カリンはどうやら許してくれたらしい。峯はひときわ深く頭を下げたが、そこに遠藤がちょっと腰が引けた面持ちで訊ねてきた。

「ところで千鶴、あんたってひょっとして百合だったわけ? 魔鈴さんは横島さんに迫ったんだから、あんたはピートさんに迫るのが順当だと思うんだけど」
「そんなわけないでしょ!? みんなタコのせいよっ!!」

 峯はふんがーっと鼻息を荒げて叫んだが、半分は嘘である。カリンに迫ったこと自体は確かにタコのせいだが、迫る相手にカリンを選んだのは峯自身の本性なのだから。
 だが半分は本当だ。峯がそこに意識の重点を置いて咆哮すると、遠藤も本気で疑っていたわけではないらしく、

「そーよねぇ。まーどっちにしても、六女青史がまた1ページ増えたことには変わりないんだけど」
「増やさんでいいっ!」
「やめてくれそれは……」
「そう?」

 峯とカリンが心底嫌そうな顔を見せたが、遠藤はあまり気にかけていないようだ。一方魔鈴たちの方もタコ墨関係の話題を終わらせたようで、カリンたちの方に近づいてきた。
 横島もいることだしお互いタコ墨の話を再燃させたくはなかったので、まずは別れてからここに来るまでの経過を説明し合おうという事になったのだが、横島はさっきから峯が片手を胸元に置いたまま下ろそうとしないことに気がついた。

「千鶴ちゃん、さっきから手上げっ放しで何やってんだ? 疲れるだろ」
「名前で呼ばないで下さい! さっきの戦いで服を裂かれたから、横島さんに下着を見られないように隠してるだけです」

 何というつれない返事であろうか。横島は悲憤を面に表して叫んだ。

「何甘いこと言ってんだ、そんなことで悪霊と戦う仕事が務まると思ってんのか!? しょーがねー、せっかくだから俺が今から羞恥心に耐える根性を鍛えてやる。さあ早くその手を下ろせ、ハリー!ハリー!ハリー!」
「誰が下ろすかーーーーっ!!」

 横島の意見はある意味正しかったが、目的ははなはだ間違っていたので峯は同意しなかった。必殺のダブル触手ウイップで煩悩バカの脳天を打ち据える。

「痛え!? いきなり何しやがるこのどじっ娘百合忍者!」
「変なアダ名で呼ばないで下さい!」
「……その辺にしておけ」

 横島と峯は見方によってはすごく仲良さそうにも見えたが、放っておくとうるさくて会議に差しつかえが出る。両名に最も影響力があるカリンが低い声でたしなめると、さすがに横島も峯も場所柄を思い出したのか、肩をちぢこめておとなしくなった。

「じゃあまず私たちの方から話しますね。あの扉の先はロビーみたいな場所になってたんですけど、まず1階を軽く見て回ろうっていうことで探索を始めたんです」

 と魔鈴がハンカチで顔を拭いながら女性陣側の経緯を話し始める。横島はその途中で出た「お風呂」という単語に一瞬目を光らせたが、さっきカリンに叱られたばかりなので騒ぐのは止めておいた。

「ふうむ、竜と吸血鬼と巨鳥の絵に赤い珠か……そう言えば向こうには竜の形をした琥珀の文鎮があったな。『赤』が吸血鬼のことを指してるとすると、宝石をもう1つ見つければ何か起こるのかも知れないな」

 カリンが軽く首をかしげて呟く。別に宝探しに来たわけではないが、この城の構造の手の込みようを考えれば、壁画の向こうに隠し通路があるといった事もありうる。事情が許すなら3つ目の宝石を捜すのも悪くない選択だろう。
 だがその前に男性側で起こったことも説明せねばならない。横島やピートに任せると余計なことまで喋りかねないので、カリンは自分で話すことにした。
 その途中で、峯が横島に嫌味ったらしい視線を向ける。

「ほら、やっぱりカリンさんを連れて行ったせいで罠にかかったんじゃないですか。えらそーなこと言っといてその判断力のなさ、せっかくの本免許が泣きますよ!?」
「うるへー、影法師までカウントされるなんて予想できっか! つか文句言うならブラジャー見せろ」
「何でそーなるんですか!?」
「……静かにしろ」

 またしてもいがみ合う横島と峯をカリンがため息をつきながらたしなめる。しかし峯が言ったことはカリンたちもさっき考えていたことで、これからカリンがどちらにつくべきかは悩ましいところだった。
 だがここは素直に、リーダーの判断に任せるべきだろう。
 ゲタを預けられた魔鈴は難しい顔で首をひねって、

「え!? う、うーん、そうですねぇ……確かにカリンさんにこっちに来ていただければ私たちは心強いですし、横島さんとピートさんもペナルティは受けなくて済むんでしょうけれど……」

 しかしさっきのタコのように、何の脈絡もなく襲いかかってくる連中もいる。男性側にそうした敵が現れたとき横島が霊力を満足に使えないのでは非常に不安だ。
 実は横島はついさっき肉体の幽体化を果たしたから影法師抜きでも一人前の霊力を扱えるのだが、魔鈴はそれを知らないからこう考えるのは当然の流れだった。

「じゃあいっそ、みんな一緒に行動しましょうか。ペナルティはあるかも知れませんけど、全員で当たれば対処できると思いますし」

 魔鈴はある程度の反発は覚悟の上でこの提案をしたのだが、意外にも反対論は出なかった。この城で再度離れ離れになったらちゃんと再会できるかどうか不安があったし、女性陣にはさっきのタコの恐怖がまだ残っていて、むしろ女だけで行動することの方が怖かったのだ。

「じゃ、決まりですね。さっそく行きましょうか。
 それにしても残念ですねぇ。あのお風呂にお湯が張ってあったら体を洗えたのに……」

 顔に受けた粘液は念入りに拭き取ったものの、臭いはまだ残っている。できるなら今すぐシャワーを浴びたいのだが、風呂に湯が入ってなければどうしようもなかった。
 だから魔鈴の台詞の後半は単なるグチでしかなかったのだが、耳ざとくそれを聞きつけた横島がニヤリと口元をゆがめる。

「水だったら俺が何とかしますよ。混浴にしてくれたらですけど。
 俺も汗かいたんで風呂入りたいなって思ってたところですんで」

 何しろついさっき実験を済ませたばかりである。もっとも彼がつくれるのは「水」であって「お湯」ではないのだが、カリンかタマモに頼めば適温まで加熱できるはずだ。
 しかしこの提案はあまりにも相手の足元を見すぎである。魔鈴が不愉快そうに柳眉を吊り上げると、横島はびくっと身をすくませて弁解を始めた。

「いや! 俺の霊力源は煩悩なんで、風呂に入れるくらいの水をつくろーと思ったらそれくらいの見返りがないと力が出て来ないんです」
「……」

 そう言われて魔鈴は考え込むような表情をつくった。どんな原理で水をつくるのかは知らないが、数百リットルもつくろうと思ったら相当の霊力が必要だろう。無償でやれというのは確かに酷な話かも知れない。
 魔鈴がついっと皆の顔色を見渡してみると、これまた意外なことに中立派の者が1番多かった。まず愛子、ピート、神野、遠藤は被害がなかったため一緒に入る気はないから、「また煩悩おバカの発作が出た」くらいにしか思っていないし、タマモとキヌは想い人の助平っぷりを不快に感じはしたものの、魔鈴の惨状を見れば止める気にはなれないというところである。
 しかし魔鈴が次に目を合わせた峯は、最も強硬な横島糾弾派であった。

「ちょっと横島さん、女の弱みにつけ込むなんてどこまで卑怯なんですか! そんなことばかりしてるから煩悩魔人とかヨコシマ星人とか言われるんですよ」

 風呂に入りたい気持ちは峯も魔鈴と同じなのでその舌鋒に容赦はなかった。だが美女との混浴がかかった横島がこの程度の攻撃に屈するはずもない。

「やかましい、誰もおまえは誘ってねーだろ! 嫌なら来なくていーから、そのイカくさい液を顔につけたまま家に帰るがいい!」
「くくくっ、どこまでも卑劣な……!」

 勝ち誇る横島と唇を噛む峯。いろいろとアレな光景だったが、最後にカリンが肩をすくめて、

「横島の見張りは私がしよう。少なくともあなた方を襲うようなことはさせないと約束するが……どうするかはそちらで決めてくれ」
「……」

 カリンが見張る、と聞いた魔鈴と峯はだいぶ気持ちが揺らいだようだ。しかしこの煩悩おバカにヌードを見られるのは非常に嫌なので―――。
 最終的に、風呂場にバスタオルの類があればよし、無かったら横島には厳重な目隠しをして入ってもらう、ということで話がついたのだった。


 ―――つづく。

 弁解はしません、でも後悔も反省もしません(ぉ
 ではレス返しを。

○電子の妖精さん
 えろは良いものです。えらい人には(以下略)。

○あきらさん
 さすがにピンクは無理でしたorz

○ねこさん
 ドジ城の魔力のせいということでひとつご容赦を(^^;

○cpyさん
 触手君は今回もがんばってくれました。ピンクまではいけませんでしたがorz
 魔鈴さんは大人なので、小娘たちとは違ってアダルトな色気で勝負なのです(誰と?)。

○いしゅたるさん
 ヌルはああいうヤツなので、えろいモンスターもつくってたと思うのですよー<マテ
 横島君がおキヌちゃんに竜神化のことを話す気になるのは、令子さんと張り合える自信がついた時ですかねぇ。いやこれじゃずっとダメっぽいしどうしたものか<マテ
>ハプニング
 うーん、エピソードの結末はともかく、途中経過では予想外の障害もいろいろ起きてたと思うのですが、このSSは基本的に主人公幸せ物語なので、あまり重たい苦労は出しづらいのであります。
 というかおキヌちゃんに白濁液は浴びせられませんでした(^^;

○Tシローさん
>おキヌちゃん
 横島君がいくら強くなっても美神親子にかなうとは思えませんからねぃ。難しいところであります。
>白い墨の絵
 筆者もとても見たいです!(`・ω・´)
>成分が違うらしいっすね
 イカ墨はスパゲティとかに使いますけどタコ墨は使いませんものねぇ。
 今回の墨は料理に使ってもOKなやつでした(ぇー

○遊鬼さん
>うっかり
 早く城から出ないとさらにマズい事になりそうなのですが、横島君なので邪なことばかり考えてます(ぉ
 小竜姫さまとのことは秘密じゃないので教えてもいいのですよー。ハーレムは作りにくくなりますがw
>女性陣
 魔鈴さんも峯さんもさらに汚されてしまいました。絵になったらとても嬉しいですな(ぉぃ

○鋼鉄の騎士さん
 あくまで墨なのですが、別の理由で15禁になってしまいました(ぉ
 ピートは仰る通り感慨深いでしょうなぁ。出番が増えるかどうかは別ですが(酷)。

○風来人さん
 魔鈴さんは大変好きなキャラクターなんですが、ドジ城のせいでこんなことになってしまいました<マテ
 ほんとトラウマにならないといいですねぇ……魔法料理店でタコ使ってるかどうかは知りませんが(^^;
>カリンの進化
 もうバリバリです。めざせセ○リュートなのです。
>おキヌちゃん
 横島君サイドに行く方法はあるでしょうけど、でもそれはつまり人間やめるってことですからねぇ。横島君とのためだけにとなるとなかなか難しいものがあると思うのですよ。あの横島君でさえちょっとは葛藤したわけですし(ぉ

○Februaryさん
>魔鈴さん
 さらにご愁傷様になってしまいましたorz
>ピート
 もともとバラす対象でしたからねぇ。それほど問題はないであります。
>分かれた直後の絵っぽいのは気のせいですか?
 む、言われてみれば確かにそんな解釈もできますな。しかしこれは違う意味なのですよー。詳細はまだ秘密ではありますが。
>そんなんだからここに送られるんだ
 まったくですなw

○あきさん
 はて、原作にそんな設定ありましたでしょうか?
 猿神は「この歳になると手加減して戦うのはキツい」と言ってますし、メドーサやヌルは見た目中年ぽいです。それに不老となると数が増える一方ですから、やはり神魔族にも加齢の要素はあると思います。

○KOS-MOSさん
 墨はあくまで墨なのですよー。飲んだらえっちな気分になっても墨なのですw
 横島君にとってはラッキーイベントでしたけどww
>ピートへの説明
 話しやすい相手ですからねぇ。これが令子さんやおキヌちゃんだったらこうあっさりとはいきませんでしたけれど(^^;
>結界消失で移動手段に影響が出るとは
 結界って本当に便利な技だったです。

○whiteangelさん
 ヌルはかなりマッド入ってますからねぃ。こっちがメインというのは当たってるかも知れませんなw

○山瀬竜さん
 ねぎらいのお言葉ありがとうございます。
>横島君を人類の範疇に入れて考えちゃ駄目ー!
 この辺り、やはりピートはまだ人間を理解できてないようですなw
 しかし横島君とは今後さらに仲良く……なれるといいのですが、彼はモテる男には厳しいですからねぇww
>ヌルが魔族だって誰もしらないから『人造』モンスターなんて言われてるんですね
 そうなのですよー。中世編ではバレるまでは人間のフリしてましたからねぇ。
 今回のタコはあくまでシュミの産物なので、戦闘力は度外視されてたんでしょうな。何がしたかったのかは、漢なら分かると思うのです<超マテ
>横島君の煩悩がフルチャージされそうな絵
 彼のことですから嫉妬に燃えそうな気もしますが、今回はそうなる前に美味しいイベントに会ってしまいました。横島君のくせに(ぉ

○ロイさん
 ギャグとシリアスの転換の上手さが原作の魅力の1つだったと思うのですが、実際にやってみると難しいですな<マテれ
>彗星の如く行方不明になったのも〜〜〜
 確かにそれはありそうですな。きっとそうでしょう!

○通りすがりのヘタレさん
 激励のお言葉ありがとうございますー。
>女性陣ルート
 横島君は素直にエロスを喜ぶのか、嫉妬に燃えて怒るのか……被害者が奥さんズだったら怒るんでしょうけど、他の娘だと判断が難しいですな。今回はそんなこと気にならないほどのグッドイベントが発生しましたがw
>ピート
 長命種だけに、孤独のつらさはひとしおでしょうからねぇ。

○紅さん
>非エロでもこの展開はありですなw
 ありがとうございますww
>横島
 彼の場合、自分がやるのでなければ憤慨しそうな気もしますがw

○読石さん
>ピート
 そうですねぇ、来た先がここでなければ長命種の友人なんて出来なかったでしょうし。うーん、ここはその辺りの友情話でも書くべきなのだろうか。
>魔鈴さん
 すいません、今回も不幸でした(o_ _)o
 でも埋め合わせイベントは用意してますのでー!

○クロさん
 ユッキー魔族化……性格的にも技の外見的にもハマってますけど横島君は嫌がりそうですなw

○ばーばろさん
>ピート
 横島君は斜め上が常態なので、常識人の彼がついてくのは大変なんでしょうねぃw
>「神様」のステータス
 うーん、元がゲーム猿に小隆起さまにダ女神ですからねぇ。カリンが入った分はプラスでしょうし、大差ないような気がします(酷)。
>ぐっじょぶ〜〜
 ありがとうございます(笑)。
 臭いについては横島君も卑劣な形で言及しましたw
>魔鈴さん
 今回も汚してますが、これも愛すればこそですから!(ぇ
 というかそんなにイカを強調しなくてもw
>「クチがすべる」
 カリンにはけっこう警戒されてますw

○UEPONさん
>テレポート
 カリンはジェネラリストですから、その道のプロにはかなわないということですな。セイリ○ートの域に達したらもう好き放題なんですがー<マテ
 デスラー戦法……使えると強そうですなあ、小竜姫さまに勝つ日も近いかも。でもゲート・オブ・バ○ロンってどうやって武器を飛ばしてるのか分からないんですよね(ぉ
>タコたちは風呂へ誘導する為の罠?
 むう、何て鋭い!
 ええ、決してお風呂のシーンを書くために墨を吐かせたわけじゃありませんとも。
>タマモ
 パワーが強くて制御力が甘いですから、攻撃はどうしても大味になっちゃうんですよねぇ。横島君やカリンと組む時はうまくコンビネーションプレイができるんですが、初対面同然の相手ではこんな風になってしまうのでありました。

○トトロさん
 ピートは原作でも「美形ってそのケが」ってささやかれてましたからねぇ。
 高校に入って何ヶ月も経ちますので、そろそろ自分が他人からどう見られてるか分かる頃だと思うのですよw
>「竜神に求婚したホモ吸血鬼」
 お互い長命種だけに、75日程度じゃ消えそうに無いのが激しくイヤですなw

○滑稽さん
>ヌル
 いあ、むしろこれが彼の本性かとw
>鬼も(略
 ひどいww

○tttさん
 むう、筆者は意識してなかったのですが、やはりあれはダ○のイメージが強いようですな。紋章が右手に行ったことにはちゃんと意味がありますので、先をご期待下さいませー。

   ではまた。

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