「し、しまったぁぁぁ!?」
横島は小竜姫と違って元は人間だから、より人間らしい姿になるため角(つの)を引っ込めておくことができる。しかし成竜になった彼女と同じくらい立派で長い角を1度見せてしまっては、今さら引っ込めたところで無かった事にはできないだろう。
しかしこんな大事なことを横島はともかくカリンまでが見落としていたとは、万ドジ殿の失敗誘発効果は切れ味を増す一方のようだ。
「あー、これはだな。戦いの中で編み出した俺の新しい霊能力、名づけて栄光のツノ……」
と横島はごまかそうと思ったが、考えてみればこの角自体には特別な力はないのでこの言い訳には無理があった。ヒーリング・パワーの源だとか何だとかこじつけられなくはないが、あまり適当な言い逃れをすると後でしっぺ返しが来そうな気がする。
判断に迷った横島が傍らの影法師娘を顧みると、少女は思いっ切り苦々しい顔つきで、仕方なさげに首を縦に振った。さいわいここにいるのはピートだけだから、話す時期が早くなっただけだという事なのだろう。
横島はごほん、と咳払いなどして一呼吸入れると、おもむろに自分の正体について話し始めた。
ちなみに角はもう引っ込め済みである。
「しょーがねーな、教えるからよく聞いてくれ。
こんな状況だから細かいことははしょるが、よーするに俺は竜神になったんだ。俺が前から小竜姫さまと同じオーラを使えてたのは知ってるだろ? それを極めて俺自身がドラゴンにクラスチェンジしたってわけだ。さっきのツノがその証拠だよ」
「……はあ?」
何だか斜め上にも程があるようなトンデモ話に、ピートは目を白黒させて硬直することで答えた。横島にとっては予想通りの反応である。
ただ百合子の時は海外に住んでいる母親だから「信じてもらえなくても困らない」で済ませたが、ピートは同級生の他人だからきっちり事情を説明して、いろいろ言い含めておかねばならない事もある。そのためには横島が竜神になったということを完全に信じてもらう必要があった。
「ま、口で説明するより見せた方が早いよな。こんなドラゴンだ」
といっても口頭での説明だけで納得してもらうのが至難なのは横島も自覚していたので、2人から少し離れるといきなり九頭竜の姿に変身した。
前触れもなく、体長6メートル強の巨獣がピートの眼前に出現する!
「う、うわああっ!?」
ピートは腰を抜かしてへたり込んでしまった。恐怖したのではなく単にびっくりしただけだが、しかしまさか本当にこんな芸当ができるなんて。
しかし横島はすぐ人間の姿に戻ると、尻餅をついたままのピートに手を伸ばして立たせてやった。
「これで信じる気になったか?」
「そ、そーですね……これはもー信じるしかないようです……」
青ざめた顔を微妙にひきつらせつつも、ピートは何とかそんな返事を紡ぎ出した。幻術か何かだという可能性もなくはないが、横島にはそこまでしてピートを騙す理由がない。彼は事実を言っていると見るべきだろう。
それに考えてみれば横島が本当に竜神になったのであれば、小竜姫が夕食を作りに行ったという件とか妙神神社の件とか、今までちょっと不自然に思っていた事も説明がつく。小竜姫とは同族になったことでより親しくなったのだろうし、性格に問題がありまくる横島を目の届くところに置いておきたかったのに違いない。
それにしても唐巣でさえ人間を超える気配などカケラもないのに、この煩悩少年があっさり神様になりおおせるとは。別に理不尽だとは思わないが、自分はまだまだ「人間」に対する理解が不足していたようだ。世界征服なんてバカな野望に迎合しなくて本当に良かった。
「といってもまだ成りたてだから、小竜姫さまとかにはとてもかなわんのだけどな。だからこのことは絶対秘密だぞ。
おまえにはいずれ言うつもりだったけど、今ここでバラすつもりは全然なかったんだから」
「え? あ……ああ、そうですね。わかりました」
ピート自身は初めから半吸血鬼として生まれたからまだいいが、人間として生まれた横島が神様になったなんて事が知れ渡ったらいろいろと騒がれるのは間違いない。それでも小竜姫並みの力を持っていればまだいいが、シメサバ丸や石像との戦いを見る限りまだ人間と大差ないレベルのようだから目立つのは避けた方がいいだろう。ああ、だから今まで自分たちにも秘密にしていたのか……。
「……って、そう言えばあの石像はどーなったんですか!?」
自分は戦っている最中に気絶したのだ、という事を今さらのように思い出して顔色を変えるピート。その迂遠(うえん)さに横島は少しあきれた口調で、
「そこで寝てるぞ。竜の姿になれば体格は互角だからな、手足を咬んで投げ倒してやった」
「そ、そーですか」
ピートとしては色々と納得いたしかねる所もあったが、終わってしまった事を追及しても仕方がない。それよりもっと大事な質問がまだ残っていた。
「それで……竜神になったという事は、もしかして寿命がすごく長くなったりもするんですか?」
もしそうなら、ブラドー島出身者以外では初めての「同じ時間を生きられる」同性の友人である。その期待のこもった眼差しに横島はごくあっさりした口調で、
「そだな。小竜姫さまは人間の50倍くらいなんだけど、竜神族は生まれによって寿命が違うらしいから俺はもう少し短いかも知れん。ま、それでも人と神……いや、神と神との禁断じゃないラブラブ生活をエンジョイするには十分な時間だがなっ!」
訂正、とてもお下劣な口調で答えた。
「……そ、そーですか」
ピートはもう激しく力が抜けまくっていたが、それでも何とか脳みそを奮い立たせて考えてみると、横島の言葉からは重大な事実が読み取れた。まず彼は本当に小竜姫とくっついているらしい事と、その寿命がおそらく自分とほぼ同等らしい事である。ピートは700歳で人間の17歳相当だから、人間の50倍かそれよりやや低いと思われる横島とはまあ同レベルと言っていいだろう。
こうなると彼の被保護者の狐娘のことも気になるが、こちらは自分がここで聞くことじゃなさそうなので触れなかった。
「……それなら僕とだいたい同じくらいですね」
ピートはここで何かもう少し気の利いたことを言いたかったのだが、うまい言い回しが思いつかなかったので断念した。横島にあまり親近感や好意を示す台詞を言うとホモ野郎と勘違いされかねないので。
「ところで、他にこのこと知ってる人っているんですか?」
「ん? ああ、カリンとタマモと小竜姫さまとヒャクメと、あとはおふくろだな。
……おまえにバラしたんだから、愛子にも機会を見つけて話さんといかんな」
正確にはあと1人、小竜姫の父の玉竜がいるのだが、彼のことを明かすと話が大きくなるので横島は口をぬぐった。
「そうですね、愛子さんもこっち側の人ですし。
でもおキヌさんには言わないんですか?」
ピートが言った「こっち側」というのは無論、人外だとか寿命が長い存在という意味である。そういう意味で、ピートは愛子やタマモには他の級友たちへの友情とは別種の連帯感を抱いていた。
「おキヌちゃんか……確かにおキヌちゃんにだけ隠したままってのはあんまりいい気分しねーけど、おキヌちゃんは『こっち側』じゃねーし、おキヌちゃんに言うと美神さんにもバレそうだからなあ……」
と横島は何かをはばかるような低い声で答えた。今の彼は真っ向勝負なら令子にも美智恵にも勝てるのだが、そういうこととは別の次元で元女王様には畏怖を感じているようだ。
むろんいずれは知られてしまう事なのだが、せめて一人前と言えるだけのパワーを手に入れるまでは隠しておきたいと思っているのである。
「……そ、そーですか」
ピートもそう言われては「1人だけ仲間外れは可哀そう」などといい子ぶったモラルを説くことはできなかった。自分が横島の立場だったらそれが出来るかと問われれば、答えは「No」だったから。
「ま、まーそーゆーわけだから、このことはトップシークレットってことでよろしくな」
と横島が強引に話を打ち切ると、今まで黙っていたカリンが唐突に会話に割り込んできた。
「ところで横島、真銀手甲を持って来たから着けておけ。またいつ敵が出てくるか分からんからな」
「……はあ?」
本当に唐突な提言に横島は目を丸くした。手甲を持って来たってどうやって、と思ったが少女の手の上には確かにあのミスリル製の防具が乗っている。
「テレポートの能力がレベルアップしたから、アポートもできないかなと思ってな。これがあればシメサバ丸も石像ももっと楽に倒せたと思ってやってみたんだ」
アポート(APPORT)とは「物品引き寄せ現象」という意味である。テレポートの反対で、遠くにある物を自分のそばに瞬間移動させるという超能力だ。ただし何でもかんでも持って来られるというわけではなく、カリンの場合は「在り処、居場所を認識できるモノ」しか引き寄せられない。また発動に多少の時間がかかるため、たとえば目の前の敵が振り回している武器を奪うとか、どこにいるか分からない人物を召喚して助けてもらうといった使い方は無理だった。
(しかし瞬間移動系の術はけっこう消耗が大きいようだな……これは妙神山に行く方法も考え直さないといけないかもな)
横島の結界が使えないと飛行中の向かい風がかなり強くなるから、横島はともかくタマモにはきついだろう。なら視界が広くなる高空に行って長距離テレポートを連発すればいいかと思っていたが、数回程度ならともかく10回も20回も繰り返すのはきつかった。まあ素直にゆっくり飛べば済むことなのだが……。
もちろん学校にカバンを持たずに行って着いてからアポートで取り寄せるなんてぐーたらな要求には応じないつもりである。
「そ、そっか。何かよく分からんけどありがとな」
とジャケットをいったん下に置いて手甲を着けながら礼を述べる横島。彼にはカリンが説明したことは半分くらいしか理解できなかったが、これを着けておけば例の紋章を魔鈴たちに見られずに済むのだ。紋章は用がない時は消しておくこともできるのだが、霊力を高めた時に突然現れたりする恐れもあるので、隠せるのなら隠しておく方が賢明であった。
いつもながら本当によく役に立ってくれるありがたい分身である。帰ったら体でお礼をせねばなるまい。そういえば今日はイブだったし。
「……さて、それじゃそろそろ移動しようか。上に行くかこの階を探索するか、どちらにする?」
カリンが横島とピートの顔を見渡してそう提議したとき、遠くから女性の悲鳴が聞こえたような気がした。
謎の轟音を耳にした魔鈴たちはとりあえずそちらに向かってみることにしたのだが、浴室を出ようとしたところで愛子が壁を指差しながら訊ねてきた。
「魔鈴さん、この意味ありげな絵って何なんでしょう?」
机娘が指差した壁の一角には、ドラゴンとヴァンパイアとロック鳥らしき幻獣たちが絡み合う絵が描かれていた。それぞれの顎には何かをはめ込むための窪みのようなものがある。
「うーん、何でしょうねぇ? 絵や壁自体に魔力は感じませんが、この窪みにしかるべきモノを入れれば何かが起こるのかも知れませんけど……」
だが今はその「しかるべきモノ」がない。しいて挙げるなら峯が持っている赤い珠だが、1つだけでは多分何も起こらないだろう。
「そうですね。すいません、手間取らせてしまって」
「いえいえ。それじゃ行きましょうか」
ということで魔鈴たちは風呂場を出て音源の方に向かったのだが、その途中で通路の壁際にタコの干物が3匹ほど吊るしてあるのが目に留まった。
「タコ……何でこんなとこに? ヨーロッパ人ってタコ食べたかしら。てゆーかこの城って人間自体いないのに何で?」
六女組の3人はそんなことを言って訝しみながらも、先ほどの経験に鑑みてうかつに触るようなことはしなかった。だが今回はこちらから手を出すまでもなく、タコは風もないのにふわふわと揺れ始めると、まるで大量の水を吸い込みでもしたかのように膨張して襲い掛かってきた!
「な、何で!?」
「気持ち悪ーい!」
峯たちはびっくり仰天して反射的に後ろに跳ぶことしかできなかったが、攻撃目標になっていなかった魔鈴はタコたちの頭にアルファベットと数字からなる文字列が刻印されていることに気がついていた。
(あ、あれはもしかして、プロフェッサー・ヌルの人造モンスター!?)
プロフェッサー・ヌルとは中世ヨーロッパに彗星のように現れた天才的錬金術師で、ある地方領主をたぶらかしてパトロンにし、もらった金で怪物をつくっては周辺を略奪していたと言われている。しかしそれこそ彗星のようにすぐ行方知れずになってしまったので、その技術が後世に残ることはなかったのだが……。
ちなみにこのタコは初期段階の実験作で、シュミを優先したせいかあまり実戦の役に立たなかったので廃棄されたものである。しかし魔鈴にはそこまで分からないから一瞬学術的な興味がわいたものの、良き魔女として邪悪な錬金術師の遺物を放置しておくわけにはいかなかった。
「これはモンスターです! 遠慮はいりませんからやっつけちゃって下さい」
だからこの指示は彼女にとって当然のものだったが、これは逆にタコたちが攻撃目標を切り替える動機になることでもあった。魔鈴の言葉にではなく向けられた敵意に反応して、一斉にぎょろりと魔鈴を睨みつける。
3匹が同時に口から大量の墨、いや白く濁った粘液を吐き出した。
「……ッ!」
魔鈴はこの攻撃をかわせなくはなかったが、そうすると後ろにいるキヌに当たりそうだったので、やむを得ず腕を上げて顔だけをガードする。
当然粘液は腕と服に当たったのだが、特に痛みは感じなかった。どうやら酸とか腐食液とか殺傷力のあるものではなかったようだが、タコの墨(?)なのにやたらイカくさい香りがするのは気のせいか……?
「というか、女としてすごくまずいような気がします!?」
理由もなく魔鈴がそんなことを叫んだ傍らで、タマモも鼻をつまんで吐きそうな顔になっていた。すぐれた嗅覚を持つ犬神族だけに、悪臭の方にも敏感なのだろう。
実はわりとよく知ってる臭いに近かったのだが、見知らぬタコが出したモノだと思うととても不快な感じがしたのだ。
「魔鈴さんもタマモちゃんも大丈夫ですかっ!?」
もしかして毒ガスの類なのだろうか。キヌがあわててヒーリングの態勢に入ったが、幸いそれは早計のようだった。
「ええ、何とか。でもおキヌちゃんと愛子さんと神野さんは早く下がって!」
「わ、私も下がるからー!」
魔鈴が非戦闘員組に退避を呼びかけたのに便乗して、タマモもこそこそっと後ろに下がった。彼女の火力なら一撃で3匹とも黒焦げにできるのだが、すでに前衛組が格闘戦の間合いに入っているので大規模な支援射撃はできないのだった。それならなるべく離れていたい。
「このォッ!」
峯が新技の赤い触手を出し、ただ本数では負けているので鞭のようにしならせて叩きつける。同時に遠藤もその後ろからキョンシーを出して援護に向かわせた。
触手が実物の鞭さながらの威力で先頭のタコの頭を打ち叩くと、タコは声にならない悲鳴をあげてべしゃりと潰れた。だがそれで死んでしまったわけではなく、叩かれた勢いでまた口から粘液を吐いて来る。しかしそんなものをむざむざと食らう峯ではなく、さっとサイドステップして回避した。
「くっ、タコのくせに!」
たかが食材の分際で、実技首位である自分の攻撃に耐えるとは。どうやら硬くはないが柔軟な身体構造を持っているようだ。
一方遠藤が操るキョンシーたちは2番目のタコを標的にしていたのだが、8本の足に阻まれて胴体への接近ができないでいた。たまに足をナイフで切りつけたりもしているのだが、そちらの方もなかなか柔軟でダメージを与えるまでには至らないのだ。
廃棄品とはいえ、やはり天才がつくった品だけのことはある。
「それなら私が!」
と邪臭から立ち直った魔鈴が指先に魔力を集め、渾身の魔力ビームを打ち出した。これはさすがに威力が段違いで、3匹目の眉間をみごとに貫通して絶命、いや機能停止させる。
タコたちはさっきの女戦士ほど近寄っては来ず動きも鈍いので、ビームなら攻撃に使えるのだった。
「よし!」
この威力の魔力を溜めるのには多少の時間がかかるのだが、それは峯と遠藤が足止めしてくれている限り問題ない。
これならいける、とやや表情を緩めた魔鈴だったが、その右足首に何かが巻きついたと思った瞬間、思いっ切り引っ張り上げられていた。
「きゃあぁぁあ!?」
魔鈴が反射的にそちらに顔を向けると、「4匹目」のタコが吸盤で天井に張り付いていた。そこから気づかれないように足を伸ばして、魔鈴が攻撃し終わった直後の隙を狙っていたのである。
このタコの足には1本で人を持ち上げるほどの筋力はないのだが、ゴムに似た性質を持っているので「吊り下げる」ことはできるのだった。
今や魔鈴はちょうど森の中で足くくりの罠にかかった冒険者のごとく逆さ吊りにされていた。ミニスカートが災いしてアダルティな黒のパンツが丸出しになっていることに気づくと、あわてて両手でスカートの裾を押さえて隠す。横島がこの場にいなくて本当に良かったというところか。
しかしこれでは身の守りはおぼつかない。仲間の仇だとばかりに大量に吐きつけられてきた生温かい液体を、魔鈴は顔面にもろに浴びてしまった。
「ひゃんんっ! ぷぁ……ど、どーして顔にばかり……!?」
それでも別に痛くもかゆくもないのだが、何かこう汚されてしまったような気がして激しく気力が萎える。
「魔鈴さん!」
タマモは後ろに下がっていたがこれは放置しておけず、ナインテールを鞭に変えて長く伸ばすと同時に先端を鋭くとがらせ、タコの足にぐさぐさと突き刺して力ずくで引きちぎる。そしてささえを失って落下し始めた魔鈴の体を残りの鞭で受け止めると、とりあえず自分のそばまで引き寄せて床に降ろした。
「えっと……だ、大丈夫?」
「けほっ、けほ……え、ええ。少し口に入っちゃいましたけど平気です」
おっかなびっくり、といった面持ちで訊ねたタマモに、魔鈴は口元を拭いながら気丈に答えて立ち上がった。実際肉体的なダメージはまったく受けていなかったから。
しかし魔鈴がわずかに戦線を離れた間に、峯と遠藤はさらに不利な状況に追いやられていた。どうやら天井にひそんでいた「4匹目」がリーダー格だったようで、彼が参戦したことでパワーバランスがタコ側に大きく傾いたのである。
「でもこのくらいでっ!」
またしても顔を狙って吐き出された粘液を峯はきっちり見切ってかわしたが、それはフェイントに過ぎなかった。やはり足元に伸びていた足に左足首を絡め取られ、くいっと引っ張られて床に尻餅をついてしまう。
「痛ぁっ! ……っく、この!」
幸い峯はパンツルックだったから魔鈴のように下着をさらすハメにはならずに済んだが、この状況はきわめて危険だ。峯は触手に全霊力をこめると、自分の足をからめたタコの両目めがけて容赦なく槍のように繰り出した。いや、1本はタコの頭に巻きつけて固定した上でもう1本を突き刺す、という念の入れようである。
触手がタコの目にずぶりとめり込み、機能停止して動かなくなった。だがタコの最後っ屁とでも言うべきか、最後に吐き出したありったけの粘液が峯の顔面を直撃する。
「んぷぅっ! こ、こいつらいったい何がしたいのよ……」
逃げるための煙幕あるいは目潰しだというのならさっさと逃げ出せばいいものを、まさかこちらを弱らせて動けなくしてから捕食するつもりなのだろうか?
だとするとこの墨(?)には毒があるかも知れない。峯はとっさに口の中に入った分を吐き出すと同時に、足首にからみついた足をほどいて立ち上がった。
その立ち上がる動きの隙をついて、いつの間にか峯の真上に移動していた「4匹目」が4本の足を同時に伸ばして峯の両腕を捉えにかかる。だがその目論見はすでに魔鈴が看破していた。
「えいっ!」
魔鈴が魔力をこめた指先を天井に向け、必殺のビームを放とうとした瞬間―――「4匹目」が先手を取って墨を吐き出してきた!
「きゃあっ!?」
大量の白濁液で視界が真っ白に染まり、思わず悲鳴を上げる魔鈴。動きを読まれていたのはこちらだったか、などと自分の未熟さを悔いる暇もなく、再び顔いっぱいにツーンと臭う粘液をぶっかけられて目を回してしまった。
「ちょ、ちょっと魔鈴さん、ここで気絶なんてマズ過ぎるんじゃ!?」
「だ、大丈夫ですかー!?」
「……」
魔鈴は体の方は転ぶ前に神野とキヌに抱き止めてもらえたが、意識の方は飛んで行ってしまったままのようだ。よほどショックが強かったらしい。
果たしてリーダーを失った女性陣の運命やいかに?
―――つづく。
タコが吐いてるのはあくまで墨であることを特にお断りしておきますw
ではレス返しを。
○滑稽さん
>横島くんがらしすぎてもう・・・orz
ありがとうございますw
横島君てば進歩するときは一気に進歩するやつですからねぇ。たまには地道な修行で成長するというのもあっていいかと思うんですがー(ぉ
○cpyさん
完全竜神化には年単位の時間がかかるはずだったんですが、あっという間に成し遂げてしまいました。まさに規格外w
ピートには説明しましたが、このドジ城で秘密を隠し通せるかどうかは不透明ですなw
○通りすがりのヘタレさん
>「思いっきり(以下略)」
あとはもう少し露出度が高ければ言うことないのですがねぃ(ぉ
>男難の相
スキル:人外キラーは男にも有効みたいですからねぇ。みんなに慕われて結構なことでありますww
>ピート
ドジ属性ゼロというほど隙ナシではないと思いますが、横島君や峯さんに比べれば無いようなものですからw
でも仰る通りこの城で目立ったらドジかますのは確実ですから、脇役に徹した方が幸せでいられそうな気がします。
>祝福の風を送りつつ
ありがとうございますv
○ばーばろさん
パンドジニウムに来るのはあくまで「霊具」ですから普通の悪霊とかは居ないんですが、それでもネタは結構あったりしますw
石像は愛する人の手で逝けたのですから幸せ……なわけないか(ぉ
今回は女性陣出しましたのでー!
○とりさん
>間抜け
取り残された方が幸せなんじゃないかという気がふつふつと(^^;
>ピート
こんな危険な場所で仲間割れはまずいので、やむを得ず白状いたしました。
おキヌちゃんにはまだ教えない方針のようですが、この城で秘密を隠し通せるかどうかは分かりませぬ。
知った時にどんな態度に出るかは難しいものがありますが……。
○アラヤさん
確かにあの古代中国石像はいろいろとインパクトありましたからねぃ。また思い出して笑ってやって下さいませw
>神様終わったって
ひどい(笑)。
○KOS-MOSさん
>竜神化
これで実は霊能に目覚めてから1年経ってない、というのが書いた本人ながら信じられません(ぉ
ピートにはバラしちゃいましたが、彼はGS界きっての善人ですので大丈夫でありましょう。
○sinkingさん
今回もドジで突っ走っております。
>パンドジニウムで最高の恩恵
それに見合った試練は受けてますけれどw
○whiteangelさん
>周りの人
角や紋章が出っ放しというのはさすがに可哀そうなので、引っ込め可能ということに致しました。
ただし本文で書いた通り、霊力を高めると勝手に出て来る危険性はありますがw
>石像
その辺はパンドジニウムの神秘の力でということで(ぉ
○遊鬼さん
今回も合流は果たせず……本当に進行遅いですorz
横島君の角は成竜状態でありますー。神通力も持ってますし。そのせいで目立ってバレてしまったのですがw
○風来人さん
自分の影法師で霊力回復……これぞまさに夢の永久機関?<マテ
>石像
横島君と関わってしまったばっかりに……南無。
>煩悩閃
そういえば今の横島君ってドラゴンですし、煩悩マークはあの紋章と同じような機能持ってるんですよねぇ。彼の立ち位置はポッ○だったはずなのに、いつの間に勇者なんかに(ぉ
横島君が煩悩ビームを撃てるようになるかどうかは先をお待ち下さいませー。
>万ドジ殿
長居すればするほど影響が強くなりそうで怖いですw
○紅さん
横島君の成長の速さには書いてる本人すら驚かされます(ぉ
いつみんなにバレるかは……ねたばれ禁止でありますー。
○スカートメックリンガーさん
>煩悩の力を拳へと追いやり支配した!
いあ、支配したと断言するのはまだ早いかとw
>「愛じゃないでしょー!」
受けましたww まさにその通りですな。
>手の甲
原作では横島君は霊能力を全部右手から出してますからねぃ。ここでも煩悩玉は右手から出してましたので、紋章は右手につきました。
額だとバンダナですぐ隠れちゃって面白くないですし(ぉ
栄光の手は使えた時期もありましたが、自慢の煩悩玉に変わったので仰る通り現在は持っていませんですorz
○Februaryさん
ご祝辞ありがとうございますw
触手プレイはそもそも普通の女の子だとサイズが違いすぎ……いや横島君のことだから、9本の舌を器用に操ったりするのだろうかw
>横島がパワーアップしていなければ命は無かった?
いあ、ここの横島君は前回の本文で書いた通り胴体が真っ二つになっても死にませんです。
そんな人シャバには住んでられないでしょうけどw
>こういう所が「可愛い」と感じた私は末期かもしれない
いあ、結構メジャーっぽいと思いますですよ?
>いやその前にまずは額に
その位置はあまりにも可哀そうなので止めてあげましたw
○読石さん
>能力強化とマヌケっぽいマイナス
戦闘で経験積んでレベルアップはRPGの基本ですからねぃ。
ここがドジ城じゃなかったらまともな成長できてたところなんですがw
>横島君て矢っ張り人外だったんだぁ
ひどいw
確かに人間だった頃から人外ではありましたが!
○Tシローさん
ドジのおかげでパワーアップ……いや、煩悩の城でなくて良かったのかも知れませぬな(ぉ
>大樹からもう一つの「煩悩」の紋章を受け取って
確かにあの親父も紋章持ってるかも知れませんけど、2つも持っちゃったらもう手がつけられませんがなww
○山瀬竜さん
>読めませんよこのラインナップは
読みを外せたようで嬉しいです(ぉ
今回もさらに斜め下にかっ飛ばしてみました!
ちょっとだけ不安ですが(^^;
>方向性まで間抜けになっていないのが救いかと
うーん、確かにそっちまで間抜けになってたら悲惨でしたねぇ。横島君もちょっとはシリアス属性持ってるおかげでしょうか。
九頭横島君って……怖すぎますがな(^^;;
>腐女子思考
ピートもさすがにその域まで踏み込むのは避けたようです。
素質はあるのかも知れませんけどー!<超マテ
○炎さん
>普段はきえているのかw
24時間出っ放しということにしようかとも思いましたが、それはあまりに可哀そうなので消しておけるという事にしましたw
○ieiさん
は、レス下さる皆さまのおかげでついに完全竜神化まで行きつきました。
真銀手甲はちゃんと出番ありますですよー!
○ロイさん
黒キヌちゃんは筆者の手に余る恐るべきキャラですから(^^;
しかし仰る通り白キヌちゃんのままでは劣勢……難しいところですな。
>戦闘後にバレるとは
ま、横島君ですしw
ピート1人だったのでバラすことにしましたが、これが最後のバレだとは言い切れませんです(ぉ
○エのさん
>いかにもドジ城送りになりそうな存在がw
むしろ候補が多すぎて困るくらいで(ぉ
しかし原作に出たものばかりにすると令子さんが悪者みたいな扱いになりかねないので、今回はこんな感じで攻めてみました。
>竜珠に人としての肉体を保存してるんじゃなかったっけ?
竜珠は横島君の精神が入ってたところで、肉体は竜珠経由で動かしてたという状況でした。
で、前回竜珠が壊れると同時に肉体が幽体になりましたので、精神をそちらに戻すと「幽体が皮をかぶったような存在」になるわけであります。
○とろもろさん
>もしかして、同族嫌悪?
同族というか恋仇というかw
しかし思考回路はかなり似てるので、長く付き合えば良きライバルとして仲良くなれるかも知れませんね(ぇ
>アレが最後の古代中国石像〜〜〜
確かにただの彫像ですから、直せばまた出て来れるわけですがw
>ピートにバレかける竜神化!
こんな簡単にバレてて先行き大丈夫なんでしょうかねぇ(ぉ
○内海一弘さん
ご祝辞ありがとうございますw
横島君の頭ではごまかすのは無理でした。
合流……き、きっと次こそはorz
○鋼鉄の騎士さん
>最近横島なのに幸せすぎるから
この城に来てからかなり痛い目に遭ってるような気がするんですがw
まあ彼女が3人もいる分、原作に比べればデフォで桁違いに幸せなんですけど!
○UEPONさん
>マリア
居ないんですよねぇorz
まあ今回については居なくて良かったといいますか(^^;
>決め台詞、小竜姫さまからクレーム来ないんですか?
本人の前でやったら怒られると思いますけど、今は居ませんから。
言われたくらいで行動が改まるとも思えませんが(ぉ
>美神さんはお金・エミさんはピートで霊力上昇するから
そういえばそうですねぇ。まあこの2人も非常識者の部類に入ってるわけですが、1人だけじゃないとなると安心して使えますね<マテ
>タマモちゃん19歳ver
こんな大勢の前では無理ぽいですorz
女の子は他に大勢いますし(ぇ
>それなんてスーパーロボット?w
王道というやつであります!!
>「皆! オラに煩悩をわけてくれ!」
吹きましたwww
このネタは使わせていただくかも知れませんですー。
>風盾
むう、ネ○まネタは分からないですな。
まあ無理して時速100キロ出すこともないので、いろんな方法を適当に組み合わせて行くんでしょうなぁ。
>ピート
1番問題がない相手ですが、問題は仰る通り彼だけで済むかどうかという点ですな(ぉ
ではまた。