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「がんばれ、横島君!! 20ぺーじ目」

灯月 (2007-12-26 22:06/2008-02-03 02:01)
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「ふぅ〜、いい湯だなぁ」

「ああ、極楽ってやつだ」

広々とした露天風呂。
温かな湯に身を浸し、俺と陰念は溜まりにたまった疲れを出し切るように大きく息を吐いた。
温泉を囲む高い塀から見える山々が美しい。
まさしく心洗われる。
湯船の中で思いっきり手足を伸ばし、心底癒される。
湯煙の向こう空の青さに目を細めた。


がんばれ、横島君!!〜横島君と温泉地の死闘〜


それは、まったくの偶然だった。
いつも買い物をする商店街、年末によくやる福引。
福引券がたまったからやってみた。
それは、本当に偶然の幸運だった。

「一等賞〜! 大当たり〜!!」

がらんがらん。鐘が鳴る。
一等賞の温泉二泊三日ペアチケットを引き当てたのは。
生まれて初めてだ。こんなものが当たったのは。
それは嬉しい。本当に嬉しい。
問題は誰と誰が行くか、だ。
早速揉めた。
ルシオラちゃんは自分が俺と行くと言う。ルシオラちゃん曰く問題を起こさない人選、らしい。
俺が行くのは券を当てた者としての当然の権利。
当たり前だが、アシュタロスさんはそれに反対した。男と二人っきりの旅行なんてパパは許しませんよ! 泣き喚いた。
ちなみに勘九郎も反対。自分が俺と二人っきり水入らずで行きたいとか抜かしやがった。
ルシオラちゃんに沈められた勘九郎はどうでもいいとして、シロまで行きたいと言い出して。
シロの場合は十中八九食事目当てだろう。
パピリオちゃんも雪も同じように騒ぎ出し。
収拾が付かなくなった頃、一人傍観していたべスパちゃん。鶴の一声。

「お兄ちゃんと陰念が一緒に行けばいいんじゃないの?」

日頃最も疲れていそうな二人だから、体を休めるのにはちょうどいいと。
そして紆余曲折あって、なぜかそれで決定。
アシュタロスさんは三姉妹が俺と一緒で無ければどうでもいいし、勘九郎は何か言う前に全力で黙らせた。
同レベルで睨み合っていたパピリオちゃんと雪もそれで納得。
俺としては男と二人なんて悲しい旅行乗り気ではなかったが、騒いだとしても事態が悪化する事はあっても良くなる事は無いので大人しく承諾。
陰念も似たようなものだ。
そして予約を入れて、準備を整え出発。
温泉地はあまり聞いたことの無いマイナーな地名で。
朝から電車と新幹線を乗り継ぎ、さらにバスに揺られて山道を進み昼を過ぎてようやく着いた。
小さな町だが行き交う旅行客らしき姿も見られ、それなりに賑わっている。
町の入り口に看板。人骨温泉と書かれている。
誰のネーミングだ、誰の?
目的のホテル――というより旅館か――はすぐ見付かった。
思ったより大きくきれい。
陰念と良さそうな所だなーと話つつ、チェックイン。
男二人という事で、宿の人の視線が気になったけど。……勇気をもって無視!!
やましい事は何も無い! 勘九郎ぢゃないから。だからこそこそ人を指差さないでお願い!!
ちなみに俺はいつものGパン姿で、陰念は黒をベースにしたラフな格好。
男友達にしか見えないはずだが、陰念の顔の傷のせいで全てが台無しになっているような気がする。
なんて囁かれているかは考えないようにしよう。
案内された部屋は旅館らしく、典型的な和室。
チリ一つ落ちていない。窓からの眺めも最高だ。
夕食までにはまだ時間があるため、この旅館の自慢だとう温泉に入ることにした。

あ〜、いい湯だったぁ。
温泉を思う存分堪能しました。家の風呂とはやはり違う。
陰念と二人、日頃の疲れを落としさっぱりして部屋に戻ればちょうど夕食の時間。
器に盛られた美味そうな料理が所狭しと並んでいる。
山の幸と川魚がメイン。
仲居さんが料理について説明してくれるがその最中、内容が脱線し以前この旅館に出現した幽霊の話になった。
ひげ面のあまりに暑苦しい男の幽霊で。そいつのせいで客足が遠のいてひどく困ったのだとか。
そこで高名なゴーストスイーパーを呼んで、見事退治してもらったらしい。
まだ若いのに凄い人だったとか。
俺たちもゴーストスイーパー見習いだと言ったら驚かれた。
そうは見えないにしても、何だと思われてたんだろう? 考えない考えない。
料理は文句無しに美味かった。
…皆はちゃんとご飯食べたかな? シロとポチにもちゃんとご飯やったかな? あとパイパー。
喧嘩せずに仲良くしてるといいんだけど。
特にアシュタロスさんと勘九郎。俺がいないからって羽目外したりしてないよな?
う〜ん、ちょっと不安。
夜、敷かれた布団はくっついてはいなかった。幸いな事に。
平和に過ぎた旅行初日。
家に残してきた子供たちの事を気にしつつ眠りについて。
異変は――夜半に起こった。
がたがたと旅館全体が揺れる! 地震!?
飛び起きて周囲の確認。
大した揺れではなく、すぐにおさまったが。
なんだろうか、物凄く嫌な予感が……。
それは陰念も同じだったようで、難しい顔で窓を外を睨み付けてていた。
仲居さんが部屋の様子を確認しにきて。大丈夫だと答えたが。
とりあえず、明日陰念とこの付近を見回ってみようと言う事に決めて布団に潜り込んだが。
ルシオラちゃんたち、平気かな?
ここと東京じゃずいぶん距離があるし、影響は無いと思うけど。
朝一で家に電話してみれば、元気なルシオラちゃんの声。
地震は東京でもあったが、なんとも無いとの事。

「余震がくるかもしれないから、気を付けてねルシオラちゃん?」

「心配性ね、兄さん。平気よ。それより、兄さんがいるの人骨温泉でしょ?
そっちの方が震源地に近いってニュースでやってたから、兄さんこそ気を付けて」

逆に心配されて電話を切った。
ま、ルシオラちゃんたちが平気ならいいか。
朝食を平らげ、早速外へ。
町はそもそも対して大きくは無い。一時間とかからず一周できた。
地震の影響もそれほどなかったけれど、町の外れ。
崩れた小さな社。
何を祀っていたのかわからない。由来の書かれた看板の字はすっかり剥げてしまっている。

「なぁ〜んか……嫌な感じがしないか? 陰念」

「ああ、思いっきりな」

こう、地の底からじわじわと湧いてくるような。
なんとなく、山の方からきている気がする。
落ち葉を散らす山の色が、不吉に滲んで見えた。


登ってみたが、きつい。
ハイキング用の比較的緩いコースから登り始めて、陰念と相談し勘を頼りに進んでいるのだが。
どんどん人気の無いところへ! 元来た道はどこだ!?
これ帰れるんだろうか?
なんとかなるさと自分を騙しつつ、進むことしばし。
風に乗る、音。
山の空気に溶け込み損ねた、邪気。
陰念と頷きあって音の方へ、邪気の方へ駆ける!
いくらも離れていない場所。
誰かと何かが戦っている。
一人、金髪をポニーテールにした美人。?誰かと似ているよーな。
一人、いや一匹か? 妖怪だろう、頭から触覚だか葉っぱだかようわからんものを生やした女の形の、何か。
邪気を発しているのは明らかにあの妖怪の方。
金髪の方が何かに足を取られでもしたのか、僅かにバランスを崩す。
そこを逃さす、妖怪がばねの様に腕を伸ばした!
首を掴みぎりぎりと締め上げながら、その体を持ち上げてゆく。
このままだとあの金髪ねーちゃんが死んでしまう!
助けないと!!
横を見ればすでに陰念は臨戦態勢。
陰念が彼女たちの横へと回り込み、俺は手の中サイキック・ソーサーを。

「止めろぉ!!」

ソーサーを投げつけるとともにわざと声を張り上げ、注意を逸らす。
放たれたソーサーは着弾する前に片手で弾かれ、爆発するがそれでいい。

『何者だえ!?』

思った通り、妖怪は掴んでいた女性から意識を逸らす。
そこへ横から飛び来る陰念の装魔拳!!
直撃!!

『ギイィィィィィィィィィィィィィィィィアアァァァアッ!!?』

喉からほとばしる派手な絶叫。
ぼろぼろと。まるで枯葉のように、干からび崩れ散ってゆく。
随分あっけなかったが、それは不意を付いたからだろう。

「大丈夫ですか!?」

地面に膝をついたままの彼女の肩に手をかければ――

「触るな!!」

ばちん! きつく振り払われた。
ぎろりと睨み付けてくるその顔。
きつめの美人だが、やはり誰かに似ている。

「おい、どうした?」

考え込む俺に、陰念が声をかける。
俺が陰念に答えようと言葉を探している間にも、彼女はふんと鼻を鳴らしてさっさと背を向けてしまう。。
全身からぴりぴりとしたオーラを放っているが、どこと無く足元がおぼつかないのは先ほどの戦闘のせいか?
思った直後、ふらりとよろけた彼女を支えようと手を伸ばして一緒に転んだ。

「何やってんだよ?」

呆れ顔の陰念。
いやだって、見た目より体重が……。女の子には失礼だから言わないけど。
そして至近距離からその顔を見て、思い出す。
耳代わりのアンテナ。どこか作ったような表情。

「お前、マリアの妹のテレサか?」

人造人間のマリア。妹のテレサがいなくなって心配だと。そう言っていた。
無表情なのにひどく悲しそうで寂しそうで。
ついついテレサの特徴を聞き、見つけたら教えると約束していた。

「な!? なんで姉さんの事を! お前、姉さんの知り合いか!?」

言われた途端、身を翻し威嚇する。
まるで猫。
予想は当たったらしいな。

「マリアって、カオスのじいさんのトコのマリアか?」

「そう、妹がいるって言ってただろ?
テレサ、マリアが心配してたぞ」

「馴れ馴れしく呼ぶんじゃないよ、人間が!」

フシャ〜!! こちらを睨むその眼差しはまさしく猫。
ああもう、服があちこちぼろぼろになってるし髪だって枯れ葉なんかが絡まって汚れてるのに。
私は一人でも平気なんだと喚いているが。
そうは言ってもなぁ……。

「さっき妖怪に負けそうだったじゃねーか」

「あ、あれは…その少し油断しただけで! 別に人間の手助けなんていらなかったのよ!!」

強気の発言を無視して、俺と陰念。両脇から彼女をホールド。
そのまま山を降りる。
放せと暴れるが、人造人間のテレサが鍛えてるとはいえ人間の俺たちの腕を振り解けない。
やはり相当のダメージがあるのだろう。
テレサ本人はエネルギーが切れているだけ、充電したら…などぶつくさ言っている。
ちなみに、旅館に帰る途中。
俺が言わなかった一言を言っちまいました、陰念が。

「……割と重いな」

「姉さんよりは軽いんだよ!!」

顔面にテレサに拳がめり込んだが。
今のは明らかにお前が悪い。


旅館に着いて、さてテレサのためにもう一室借りようかと考えて。
足元が揺れていると気付く。

「この反応、さっきの!?」

テレサが叫ぶと同時、アスファルトがひび割れた!!
ゴボッゴボゥ! ゴボゴボゴボッ!!
足元から生え来る、何か。
先ほど倒した女の形のものと、虫の形のもの。
周囲から、悲鳴が上がる。
突然沸いて出てきた妖怪の姿にパニックになっているのだ。

「建物の中に避難して! 早く!!」

妖怪から目を放さず、声を張り上げる。
近くの旅館やホテル、店に逃げ込む人たちの姿を確認しつつ、じりじりと距離を取る。
陰念もすでに霊気を集中し、テレサもしっかりと妖怪を睨みすえる。
妖怪は、俺たちを睥睨し薄く笑う。

『先ほどは痛かったえ? 花を一輪摘まれてしもうて、なぁ?』

にたり。その表現が相応しい表情。
花って…さっきのアレか。植物の茎みたいなもので生えているという事は本体は地下か?
しっかしアレが花かぁ。

「趣味悪……」

ぽそっとした呟き。聞こえたのか陰念とテレサが同時に頷いた。
聞こえなかったらしい『女』は、やはり笑って言う。

『そこのカラクリ人形など何の足しにもならぬが、貴様ら二人はなかなかの霊力を持っておるなぁ?
地脈がとまって腹が減っておる。喜べ、この死津喪比女の養分にしてくれるぞえ。
おやり、葉虫たち!!』

号令一つ。
虫っぽい連中が、まさしく虫の様な鳴き声をあげ襲い掛かる!!
数はそれほどでもなく、力も花以下だが! こいつらしぶとい!!

「はぁ!」

「鬱陶しいんだよ!!」

陰念に装魔拳で殴りつけられ、テレサのマシンガンで穴が開く!!
なのに死なない。向かってくる。
ハンズ・オブ・ガーディアンで薙ぎ払い、その足元。視線が行く。
あ、そうかこいつら有線式だ。

「お前ら、足だ! こいつらの茎を狙え!!」

俺の言葉を受け、陰念とテレサ。二人行動は素早かった。
テレサのロケット・アームが敵を捉え、陰念の腕が一振りで茎を破壊する。
俺のソーサーが死津喪比女と名乗った花に命中し、逆上した隙をついてその醜悪に歪んだ顔面にニードル!
悲鳴を上げたその瞬間、その太い茎に――

ガボォウ!!

ハンズ・オブ・ガーディアンを叩き込んだ。

ぎしゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?

その姿に相応しいというべきか? 空を裂く断末魔。
花は、やはり先ほどと同じ。ぼろりぼろりと散ってゆく。
これで終わりってわけじゃないよな、絶対。
明日、帰れるかななぁ?

その後、怯える人たちに簡単な説明。
テレサは知り合いの妹。妖怪の正体は不明。俺も陰念もゴーストスイーパー見習いなので、明日にでも知り合いのプロのGSに連絡を取ってみると。
納得はしてくれたらしい。
やっぱりプロのGSと言うのは効いたな。
テレサは妖怪と戦った勇敢な女性と認識されたようだ。マシンガンとかはまぁ気にしない方向で。
俺たちの隣の一室、テレサを泊まらせてくれる事になった。
防水加工はされていないので風呂には入れないが、固く絞った布で体を拭くのはOKらしい。
来ていた黒い服は洗濯、浴衣に着替えてゆったり椅子に腰掛ける。
足に内蔵されていた電化製品用のコードが、部屋の隅に突き刺さっているのを無視すればまったく人間そのもの。
リラックスした風情の美女は、充電のために仕方なくここいるだけだと言い張っているが。
つけっ放しのTVをBGMに。呑めないのに淹れられたお茶はアロマ効果か?。
どうしてマリアたちの所に帰らないのか? 死津喪比女に襲われたのは何故なのか。
聞いてもお前たちには関係ない!と突っ撥ねる。
それでもしつこく食い下がれば、うんざり顔で答えてくれた。
霊体に対する反応を上げようと、霊波の強い場所を転々として偶然ここにたどり着いた。
死津喪比女には突然襲われて、テレサも理由など知らない。
マリアの所に帰らないのは……ノーコメント。
まぁ、無理やりにでも連れて帰るつもりだけどね。俺は。
死津喪比女の事は唐巣神父にでも相談しようと思っている。
あの人なら、喜んできてくれそうだし。
冥子ちゃんは、う〜んまだ無理かな?
そんな事を考えながら眠りにつき――翌朝、事態は一変していた。

「何だ、これ?」

寝ぼけたままつけたTV。
臨時ニュースだとけたたましく伝えるキャスター。
ばらばらばらばら。煩いヘリの音。その合間に挟まるリポーターの緊迫した声。
東京が、東京だけが、奇妙な煙に包まれていた。
自衛隊が突入したとか、連絡が付かないとか。
そのうちテンションのあがったリポーターたちがこれで首都は大阪だ名古屋とか言い合い始めたが。
そんな事はどうでもいい!
ぎゃー!? 家は!? 皆は無事なのか!!

「うわぁ〜ん、ルシオラちゃんべスパちゃんパピリオちゃん〜〜!!」

「落ち着け、横島!!」

げぼし!
背後、鋭い蹴りの一撃。
防御など当然出来ず畳に倒れこむ。

「今ここで慌ててもどうにもならねーだろうが。この分じゃ電車も動かないだろーし歩きや自転車でも何日かかると思ってんだ?
それに、家には結界があるんだ。滅多な事にはなってないはずだ」

「結界って言ってもアシュタロスさんのだし、人生には絶対なんて無いんだよー」

「……お前なぁ」

陰念が半眼で睨んでくるが。だって心配なもんは心配なんだ!
仕方が無いだろう!?
廊下から聞こえる喧騒に他の泊り客たちがパニックになっているのだと知った。
仲居さんたちがそれを一生懸命抑えているだろう声も聞こえる。

「朝から何だい? 騒がしいね」

がらり。扉を開けて、やはり浴衣姿のテレサが顔を出す。
眠る事など無い人造人間なのに、低血圧っぽく見えるのは何故だ?

「ああ、ニュース見た横島がちょっとな」

「ふ〜ん」

それを聞き、つまらなそうに俺に目をやる。

「うう〜ルシオラちゃんべスパちゃんパピリオちゃんハニワ兵パイパーポチシロメドーサさんハぁピぃぃぃ……。アシュタロスさんは殺しても死なないだろうから放って置くとして雪と勘九郎も多分大丈夫。
嗚呼、冥子ちゃんおキヌちゃん鬼道に夜叉丸に神父愛子小鳩ちゃんマリアついでにドクターカオス。ピートは、まぁいいや」

「何て言うか、明らかに人外の名前が無いかい?」

「気にするな」

はぁ〜。わざとらしくため息をつくな陰念。
嗚呼、皆が心配だから早く帰りたい!

結論から言うと、帰れませんでした。

だってだって余震が何度も襲ってくるし電車は止まるし。タクシーだって当然無いし!
自転車で〜!!と強行しようとしたら陰念とテレサに体当たりで止められるし。
俺たちの泊まっている旅館は火山のふもとにあるおかげで耐震設計がしっかりしてるから、避難所になってるし。
怯えた一般ピープルを守らなきゃならないし。
ちなみに一人でどこかに飛んでいこうとしたテレサは即捕まえました。
あの下っ端怪人的デザインの葉虫とかいうのが思い出したように沸いてくるし。
身動き取れないのが現状。
それに家に電話しても繋がらないんだよー!!

「だー!! お前ら、うっとーしいぃー!」

ズビバ!! ズバズバーッ!!
俺の怒りを上乗せされ漆黒の爪が容赦なく敵を切り刻む。
本日三度目の襲撃、撃破完了。
深呼吸一つ。
俺はそびえる山に視線を移す。
昨日はわからなかった。だが今ははっきりと感じる。
あそこだ。あの山から邪気が噴出している。
多分、死津喪比女の本体だかなんだかがあそこにいるんだろう。
葉虫はおそらく俺たちの足止め。
俺たちがここを離れたら、きっとこの旅館にいる人たちを皆殺し。
あーもう! ジレンマ!!
それでも、少しだけわかった事。この地方の古い言い伝え。
昔々死津喪比女と言う恐ろしい妖怪が暴れまわった。死津喪比女は火山を噴火させたりやりたい放題。
困った人々は人柱を捧げそれを封じたとか何とか。
それで、理由は知らんが復活したんだろうな。死津喪比女。
って、そんな事わかってもどうにもならない!!

「うがぁー!!」

「喚くな横島!」

思わず。天を仰いで叫んだ俺。視界の端に映る何か。
そちらの方へ目を凝らし。
ぎょっとした。
へろへろふらふら。頼り無く飛んでいるのは冥子ちゃんの式神――シンダラ!

「シンダラぁっ!?」

俺の叫び。その声が届いたのか、偶然か。
シンダラが落ちた。
ひび割れたアスファルトの上、力無くもがいている。

「おい、大丈夫か!? しっかりしろ」

駆け寄って、抱き上げる。
クェ〜クェ〜。弱々しく鳴いて擦り寄ってきた。

「っお前!? ぼろぼろじゃないか、どうしたんだ! 冥子ちゃんは!? どこから飛んできたんだ」

「横島、そいつ?」

陰念の問い。
あー、そういや、知らなかったっけ?
冥子ちゃんの式神だと説明。
それを受けて、今度はテレサが聞いてきた。
式神がどうして式神使いから離れているのか。
何かあったんだろうか冥子ちゃんに? 東京を包むあの煙と関係が?

「何かあったんだな、シンダラ」

頭を撫でれば、足で掴んでいたものを差し出される。
それは棒状で金属製の――

「ライフル?! シンダラこれをどう……」

「シンダラ!!」

俺の問い、遮って響く男の声。
向うから長髪の男。オープンカーから駆け寄ってきた。
その後ろ、車に残った巫女姿の女の子。あれ? あの子の顔……。
陰念もなぜか微妙な顔をしている。

「見付けた、こんな所に!」

息を切らし、身にまとっている高そうなスーツにはあちこち泥が付いている。
戸惑う俺たちに構わず、胸を撫で下ろしている。

「あの、あなたは?」

「僕はICPOの西条と言うものだ。そのライフルを渡してくれないか?
それはとても重要なものなんだ!」

ICPO。ピートがいつか言っていたオカルトGメン!
西条さんにライフルを差し出して、聞く。
何がどうなっているのかを。
もしかしたら東京の出来事に関係があるのかもしれないし。
ややためらっていたようだが、教えてくれた。
封印された死津喪比女が蘇り地脈に根を張った事。地脈を通じて東京まで延び、花粉で覆ってしまったと。
アレは煙じゃなくて、花粉か。
このライフルの弾は死津喪比女を殺せる呪いのかかった特別製らしい。

「あ、あの冥子ちゃんは、皆は……無事なんでしょうか?」

「今のところは。だが、急がないと間に合わなくなる!
僕はもう行かなくてはならないが、君たちは…」

「ここに残ります。避難してきた人たちを守らなきゃなりませんし。
西条さん、お願いします。死津喪比女を倒して下さい……!!」

俺の言葉、背を向けた西条さんは片手を上げて――

「任せたまえ」

なんか、気障な人だなぁ。
でも、これで何とかなりそうだな。

「あの西条っての、ミスんなきゃいいけどねぇ」

「テレサ……」

彼女に苦笑を返し、複雑な顔をしている陰念に気付く。
どうかしたのかと聞いても、首を捻りながらなにやらうんうん唸るだけ。
陰念は置いといて。シンダラを休ませるためテレサに頼んで旅館に運んでもらおうとした瞬間。 
世界が、揺れた。

ゴ…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ………!!

今迄で一番激しい揺れ。旅館が、崩れる!?

「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!?」

轟音が響き、そして――。
いたた。頭打った。
え〜っと旅館が崩れて…少し気を失っていたらしい。
陰念たちは、旅館の人たちは無事か?
ごそごそ起き上がったら、すぐ傍でギギィと鳴き声。
シンダラは無事だったか。
テレサもコンクリートを蹴りどかして、ピンピンしている。
その近くには陰念の姿もある。
聞こえる呻き声や悲鳴は…やはり崩壊した建物の下敷きとなった人たち!
無事だった人の方が少ない。
早く助けないと!
急いで瓦礫をどけようと駆け寄る俺。背後からテレサの鋭い一声。

「横島、来るよ!!」

足元から膨れ上がる邪気。こんな時に!

『ふふふふ。はーはっはっはっはっはっはっ!
くたばってなかったのかえ? 運がいいのう』

哄笑と共に現れる死津喪比女。花、数十以上。
大群!

「お前が地震を起こしたのか! 何でこんな事しやがった!?」

人の命など何とも思っていない相手。言っても無駄だろうけれど。

『小僧、先ほどわしを殺せる厄介なものを男に渡したのう?
これはそのお仕置きだえ? 大人しくしておれば良かったものをなぁ。あの男にも仕置きが必要だえ』

こいつ、どこかから見てたのか! 西条さんも危ない?!

『ついでじゃ、この周辺の人間皆殺しにし、わしの養分としてやる。ありがたく思うがいいぞえ』

こ、この野郎!!
さっきから聞いていればどこまでも身勝手な!
だいたい俺はさっさと東京に、家に帰りたいんだ! 子供たちが心配だし、冥子ちゃんも危ないっぽい。
今この状況は本意じゃないんだよ。怪我人もたくさんいるし、早く助けなきゃいけない人たちもいっぱいだし。
やることは沢山なんだ! それをそれを…こいつのせいで!
むしろ今の状況全部こいつのせいだ!
そーだそーだ。とりあえずここにいるやつら全部ぶっ潰せば少しは楽になるよな。そうだよな!
それに怪我人救助のためにもこいつらは片付けたほうがいい。
よし決めた。潰す。

「陰念、テレサ! やるぞ!!」

「しかたねぇな!」

「命令するんじゃないよ、人間風情が!」

陰念は短く答え、装魔拳をまとい。テレサは不機嫌に吐き捨てながらも腕から聞こえる機械音。
俺は目の前、造りだしたニードル十本。
行け!
飛来するニードル。同時に駆け出す俺。
細いニードルを軽々弾く死津喪比女たち。だが、内一体の死角から迫る俺。
黒い輝きを放つ手が振るわれる、が、それは寸前でかわされ触覚のような部分を灼き裂いただけ。
人間ごときがと哂うその花、真後ろからテレサの強烈な拳。
他の花と花との隙間を縫い、人造人間特有の正確さで放たれた攻撃。
的確に俺の目の前の花の腹部に大穴をあける。
驚愕に歪むその花には、俺のソーサーを叩きつけ止め。
陰念が花に囲まれている、助けないと!
足裏に霊気を集中。これ、まだ上手く出来ないんだよなぁ。
俺を取り巻く花を間を駆け抜けて、陰念へと向かい――
がくん!
転ぶ。なんだ、何が?!
足に巻きつく葉っぱのような。死津喪比女の触覚!?

『ほほほ。どこへ行く気だえ? わしと遊んでおくれでないかえ?』

ひたりと哂う花。
くそう。テレサも花に囲まれている。
分断させて殺す気か。。
哂う花。腕を振り上げる花。触覚で斬りかかる花。花の群れ。

「邪魔だぁ〜!!」

ニードル。ソーサー。突き刺し破裂し、黒い腕で薙ぐ。薙ぎ払う!
跳び来る腕を触覚を避けてかわして、それでもかわしきれずに脇腹を抉られて。
まだ霊波放出系の攻撃をしてこない分、ましだろうが。
飛んでくることには変わりない。
薙いで、避けて、失敗して吹っ飛ばされて。ソーサーを爆裂させて。茎を斬り飛ばして。
キリが無い。

「さっきから鬱陶しいんだよ、レーザービーマー!」

「ち、全然減らねぇ!」

テレサと陰念の声。光と爆音。
そう、弱気になるわけにはいかない。
家に帰るためにも、西条さんが死津喪比女を倒すまでここの人たちを守るためにも。
だから、負けるわけにはいかない!

[まったくもってその通りだぜ、兄弟!
あーんな脳みその代わりにおが屑が詰まってるような妖怪に負けるのは、俺もぞっとしないねぇ]

脳内に響く声。魔眼の声。湧き上がる歓喜。

[悪ぃ悪ぃ。死んじゃいなかったんだがよ、表に出られるようになるまで時間がかかっちまった。
俺がいるなら百人力。やるぜ兄弟!]

おうよ!
足裏に馴染みの感覚。
たぁん! 一蹴りで俺の体は軽がる宙に浮く。
向かうのは陰念。死津喪比女たちの頭を踏み台に、跳ねる!

「陰念、無事か〜!?」

傍にいた花一輪を霊気をまとったままの足で蹴り飛ばし、尋ねれば。
俺の顔を眺めた陰念は、一泊置いた後なぜか酷く驚いた。

「横島、お前目が…!?」

目? 心なし首を傾げた俺、響く少々申し訳なさそうな魔眼の釈明。

[あ、それ俺のせいだ。まぁあとで説明するからよ。
今はほれ、さっさとあの人造姉ちゃん助けてやんな]

確かに、テレサが一番苦戦しているようだ。
陰念にいけるか?と問えば、しっかりとした頷きが返ってくる。
揃って周囲の花を突き飛ばし、殴り飛ばしてテレサの下へ。
陰念に聞いたように無事かと聞けば、テレサは助けなんていらなかったと強気に叫ぶ。
いや、だから。体の方は無事みたいだけど。髪はほどけてるし、服も破れてますが?

[意地っ張りなのは仕様か個性か。仕様なら造ったじーさんマニアック!]

たぶん個性じゃないのか?
それより、魔眼こいつらの弱点とかわからないか?
陰念、テレサ。三人背中合わせに迎撃中。

[んー、妖怪つっても基本が植物だから火が有効だと思うがよ。
こいつら倒せるほどの火力、用意できるか? 今]

う、それは…。
あ、でも確かマリアの装備にはあれが。姉妹なテレサはどうなんだろう?

「テレサ、ミサイルとかあるか!? こいつらの弱点は火だ!」

「……あることはあるけど、あと二発くらいしか」

それだけでは仕留められないと、言外に。
くそう、万事休すか。
他に何かないかと思考を巡らせ、手近な花一匹を切り裂いた。
囲む花の数か花なかなか減らず、名案も浮かばない。
そんな中、それは唐突に起こった。

『ぐぎゃあぅ!?』『ぐうぅぅ!』『あああああっ?!』

花が、次々と音を立て崩れてゆく。枯れてゆく。
これは一体? もしかして、西条さんが言っていた死津喪比女だけを殺す呪い?
かろうじて残っているのも、もはや元の五分の一以下。
そしてその花も、体にひびが入り始めている。

「いまだ、テレサ! 撃てぇ〜!!」

「だから指図するなって言ってんだろ!」

それでもその右足、かちりと金属音。次いで、小型のミサイルが発射された。

ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!

たった二発で、それでも充分すぎる爆発。
俺と陰念。爆風で地面をごろごろと転がってしまった。
ぐ、格好悪い。

[兄弟、まだ終わってねぇ! 逃げようとしてる奴がいるぜ?]

何!? 慌てて魔眼の示した方。振り向けば。
ぼろぼろになってなお、地面に潜り込もうとしてる花一輪。
死にかけているが、見逃すわけにはいかない。行かせるか!
がしっとその花の触角を掴み、魔眼が霊力を腕に集中させて腕力を強化してくれる。
体のあちこちにひびが走っているにもかかわらず、凄い力で土の中へ逃げ込もうとする。
強化された力でも持ちそうに無い。
と、不意に負担が軽くなった。
陰念とテレサもそれぞれ死津喪比女を鷲掴んでくれていた。
これなら、いける!

「おらぁ!!」

気合一発。ズボだとかボコだとか。間抜けな音とともに死津喪比女を引き抜いた。
途中で切れた妙に太い茎。陸に上がった魚のように苦しげにのたうつ死津喪比女。
その花に、俺は爪を振り下ろした。
高い絶叫。崩れてゆく体。
これで終わった、かな?
大きく深呼吸して、気付いた。その、朽ちた跡に何かが残った。
胡桃のような硬い殻を持つ、何か。

「何だ、これ?」

拾い上げて、今はそれより人命救助が先と思い出し瓦礫と化した元旅館へと駆け出した。


大変でした。ものすっごく大変でした。あの後は。
テレサのパワーがあるとはいえ、瓦礫に埋まった人の数は多く。
救急車の数も足りなくて。なんか、今更ながら死津喪比女って凄かったんだなーと実感。
幸い死者は出なかったけれど。東京では被害が出たとTVが……。
この騒ぎで電話線とか全滅だったし、連絡取れないし。
シンダラは元気になって冥子ちゃんの元へ帰っていった。
見送って。俺も早く帰りたいよーと喚いて、駆けずり回って。
温泉地の人たちに感謝されつつ。
なんとか二日後。電車に揺られて東京に戻ることが出来ました。
今、家の目の前。
嗚呼、懐かしき我が家よ!!

「ただいまー!! 皆ぁ、無事だった怪我してないちゃんとご飯食べてうぼげっ!?」

「兄さんの馬鹿ぁ! 心配したのはこっちよぉ!!
大丈夫だったの連絡もないし嫌な予感はするし東京は変な花粉が覆うし外出ちゃ駄目って言われるし兄さんの事だからまた変な事に巻き込まれてるんじゃないかってその女の人誰なのー!?
兄さん何してたのよぉぉぉぉぉ!!?」

ドアを開けた途端ルシオラちゃんのきつい体当たり、いやいや再会の抱擁。
後ろに続くべスパちゃんたちも心配そうな、ほっとしたような複雑な顔。
ルシオラちゃんはテレサをむむっと、不審な表情で眺めている。
一人増えて帰ってきたら、そりゃーそうだろうなぁ。
いやまぁ、何というか。
説得したと言うか。
マリアが心配してるんだから一緒に来なさい!と、無理やり連れ帰ってきたと言うか。
陰念も説得してくれたし。
うん、そーゆー事をリビングで正座しながら説明してるわけで。
すまんテレサ、巻き添えで正座。
死津喪比女の事は軽〜く当たり障りのない程度で。
最初に口を挟もうとしたアシュタロスさんは、黙ってなさい!とのルシオラちゃんの一喝で大人しくしている。

「それで、その死津喪比女って妖怪に襲われたりして大変だったのね?」

むぅっと拗ねた顔のルシオラちゃん。ホントに心配してたのに…。ぽそっと呟かれて謝るしかない。

「姉さん、もういいじゃない。お兄ちゃんだって反省してるし。それに不可抗力でしょ?」

「そーでちゅよー。お兄ちゃんは人助けしたんでちゅよ。もう許してあげるでちゅ!」

べスパちゃんの助け舟。便乗するパピリオちゃん。
シロやハニワ兵も、それに同意。
それを受け、ルシオラちゃんはもうとため息。

「事情が事情だから仕方ないけど。ちゃんと反省してね?」

「はい、ホントごめんなさい」

深々頭を下げて、開放。
買ってきたお土産、ようやく取り出せました。
ええ、しっかり買ってきましたよ。町の人たちの好意でもらった品も沢山ありますが。
よくある温泉地の名前が付いたクッキーやお饅頭、カステラなどありきたりな品。
人骨温泉のマスコットじんこつ君なる手ぬぐい持ったユーモラスな骸骨がプリントされたタオル、キーホルダー。
特に変わったものは無かったけれど、喜んでくれたらしい。
……そこの犬二匹、饅頭を奪い合うんじゃありません。いっぱいあるんだから。
ほわんほわんと和んだ空気。
ルシオラちゃんも機嫌が直ってよかった。
この子の機嫌を損なうのが、実際一番怖い。
数日振りの我が家、疲れた体を休める俺に突き刺さるあの声。
そう、雇い主様!

「はっはっはっはっは。無事で良かったね横島君! 死んでなくてなによりだよ!!」

このおっさんは……。終わった話題を持ち出すな!
またルシオラちゃんの機嫌が悪くなる!!

「東京にまで根を伸ばせるほど力を増していた妖怪相手に良く生き残ったものだよ。賞賛に値するね!
あの類の妖怪は地脈から力を得ることで色々と影響力を持つようになるからね! ま、核となるものさえ破壊すればそれで済むのだが。
いやいやそれにしても本当に頑張ったよ。下手したら死んでいただろう相手に!」

嗚呼、だからルシオラちゃんへの説明には死津喪比女の強さはぼかしてたのに。
厄介な相手だったとしか、言わなかったのに。
まったくもって、このおっさんは……。
空気呼んでください。本気で。それくらいの芸、覚えてくれ!!
いや無理か。アシュタロスさんには高等テク過ぎますか。
案の定。ルシオラちゃんから燃え立つような激しくも恐ろしいオーラが!

「…………どういう事なの、パパ?」

地の底からわき上がるような、声。
ルシオラちゃんたら、普段の美声が台無しだー。

「うん、ほら数日前東京が正体不明の煙に包まれただろう。あれの元凶さ、死津喪比女は。
ここまで伸びてくるほど育っていたようだが、それで限界だろう。
それでも人間相手には充分脅威でね、色々被害が出たようだよ」

雇い主様、今こそ捧げます。この言葉。
口は災いの元。

「あの煙、そうだったの? 大した事無いって言ったくせに。兄さんだって何の危険も無いとか言っときながら――」

あ、そろそろくるなこれは。
すでにハニワ兵は避難準備済み。べスパちゃんはうんざりした顔。パピリオちゃんもあ〜あと言った表情で。
戸惑うシロはポチが咥えて庭へと連れて行く。
陰念も俺の方を見て何かを確認するかのように力強く頷いて。
一人事情をまったく飲み込めないテレサを陰念に託し。
俺はその場に、シャレにならない魔力が渦巻き始めたリビングへと一人残り。
そして――数秒の後、大爆発。
いや実際何か物理的な爆発があったわけでなく。
ルシオラちゃんが、マジ切れしたと言うだけで。
え〜っと、今日が俺の命日ですか?
ごめんなさいルシオラちゃん。
アシュタロスさんを足蹴にしながらの説教はきついですルシオラちゃん。
あ。控えめな、ささやかな抗議の声を上げる父親をかかとでぐりぐりした。容赦ないね!

「兄さん!」

ぎっ! そんな音がしそうなほど鋭く睨むルシオラちゃん。
あうあう、なんでしょうか?

「今度からは、ちゃんと、隠し事しないで、素直に、何があったのか、教えてね?」

「イエッサー!!」

反射的に敬礼。
ルシオラちゃん本気の本気で怒ってる。

[下手に隠そうとするからだぜ、兄弟。女心は複雑なんだよ。
ま、これから色々勉強していきな]

魔眼……。そーします。
しばらくルシオラちゃんが不機嫌なのは覚悟しないとな。
ちなみに、魔眼。本格的に出てくると、俺の左目変化します。
猫みたいな瞳孔の金色の目に。
お守りがないから左手にはもう出られない。眼という繋がりを使い、左目に出ることで安定させた、らしい。
陰念が驚いたのはそれが原因。
ま、いいけどさ。それくらい。魔眼、無事だったし。
そんなこんなで日も暮れて。
数日はルシオラちゃんだけでなく、心配してくれた皆の相手で忙しくって。
それでも無事帰ってこれた事への喜びをかみ締めて。
だからすっかり忘れてました。テレサの事。


完璧に居候と化したテレサの存在に疑問を抱いたのは、それから一週間以上後の事でした。


続く


後書きと言う名の言い訳

長引く風邪を引いたり、色々予定外の事が起こりうだうだやってる今日この頃皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回不調も不調、絶・不・調☆です。
死津喪比女との戦闘シーン書きつつ、違うんだこんなものじゃないんだ!初めから書き直したいだがもう間に合わない!!と唸りながら書いてました。
テレサ出したかったんです。ここの西条さんと横島君は仲悪くないんです。
一見ルシオラ>横島君ですが、実はまだまだ横島君>ルシオラです。
書いた本人が一番不満でがっくり。
次だ! 次回リベンジさせて下さい!!(土下座)
では、ここまで読んでくださった皆様。ありがとうございました!!

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