インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始▼レス末

「がんばれ、横島君!! 19ぺーじ目」

灯月 (2007-11-21 00:01/2007-11-22 00:23)
BACK< >NEXT

「よ〜こ〜し〜ま〜くぅ〜ん!!」

ずどどどどどどどどぉん!

はい?
聞き覚えのある声。聞き覚えのある轟音。
振り向いた直後――盛大に轢かれました。
何だこの人身事故!?

「元気だった〜? 横島君〜」

ええ、元気でしたとも。
ついさっきまでは!!


がんばれ、横島君!!〜横島君と貧乏神〜


「駄目でしょう、街中で式神なんか出したら!?」

「あ〜んごめんなさい〜、横島君〜」

学校からの帰り道。
珍しくタイガー、ピートと一緒に帰っていたら、式神とともに突っ込んできた六道夫人に轢かれました。
そのせいでピート・タイガー両名がどこぞに吹っ飛ばされたけれど、あの二人なら心配ないだろう。
丈夫だし。
式神全部出てるから周りの人たち思いっきり怯えてます
とりあえず反省の色が見えない六道夫人には正座してもらいました。その場で。

「アスファルトの〜正座は〜、足が痛いわ〜〜」

「泣いた振りしてもごまかされませんよ?」

「そんなぁ〜っ」

黒服の男たちがはらはらしながら様子を窺っているが、式神たちに言って威嚇させているので近付けない。

「どうして〜式神たちは〜横島君の〜言う事を〜、優先するの〜〜!?」

アンチラにしゃげしゃげと脅されながら、困り顔のおばさん。
確かに式神たちは俺の言う事をちゃんと聞いてくれるけど。
それは多分人望とか人間性とかの問題なんじゃないかなー?

「それで、ホントに何しにきたんですか?」

呆れて問えば、仕事を頼みたいのだと。そんな言葉が返ってきた。
だったら、もっと普通に来て下さい!!
なんでこー無駄な演出が好きなんだ、この人は?
いつまでもここにいると通行の妨げになるので、六道さんの屋敷に行く事になりました。
相変わらず馬鹿でかいところだなぁと思いつつ、通された一室。
おばさんがいつもののんびりとした口調で話し始める。
とある少女に憑りついた貧乏神をどうにかして欲しい、と。
仕事の依頼人は、俺の学校の校長・教頭含めた教師一同らしい。
とても健気な少女がいるのだが、貧乏神が憑いているせいで学校に通えないらしい。
それでも彼女は己の境遇を恨む事無く前向きに生きている。
その姿に感銘を受けた校長たちは、何とかしてやりたいとお金を出しあいGS協会へと依頼。
そしてそれがおばさんの耳に入った。
依頼主が俺の高校の校長で、興味をそそられそれを受けた。
でも、この仕事よく考えると冥子ちゃんには物凄く不向き!
で、俺に持ってきたと。

「いーんですか、そんなテキトーで?」

「臨機応変に〜対応しないと〜、今のご時世〜苦労するわよ〜?」

もう十分苦労してます!!
そんな魂の叫びもどこ吹く風。
それじゃ〜これが資料ね〜と渡された薄っぺらい紙切れ一枚。

「横島君なら〜きっと出来ると〜、おばさん信じてるわ〜」

のほほんとしたセリフに見送られて、帰路に着く。
ご飯を作ったり掃除をしたり。
家事が終わって一息ついて、ようやく貰った資料をゆっくり読む時間が出来た。
住所氏名と、写真。簡単な家族構成と、現状。
花戸小鳩ちゃんね。三つ編み、おっとりした可愛い顔立ち。いまどき珍しいくらいの清楚オーラを写真でもわかるほど放っている。
あ、写真の後ろに何かが小さく写ってる。これが貧乏神か?
貧乏神のせいでかなり生活が苦しいらしい。借金もあるとか。
住所は、俺が前住んでいたボロアパート。
もう引き払ったからなぁ、俺は。
さて、どうしたもんか?
貧乏神の祓い方なんて正直知らんぞ。
とりあえず明日直接本人の所へ行ってみるか。

「あら、兄さん。何見てるの? ……ねぇ、この人、誰?」

「ルシオラちゃん。え〜っと、この子はねー」

ソファの後ろ、ひょいと覗き込んできたルシオラちゃん。
眉根を寄せて、写真の小鳩ちゃんを指した。
なんか機嫌が下降していってるみたいなので、ゴーストスイーパーとして除霊に行く相手だと手早く説明。

「見習いなのに? 一人で?」

あああ、その視線痛い! やめてー、そんな目で見んといてー!!
なんもやましい事はないんや〜!!
なぜかおかしな罪悪感を感じている俺を尻目に、考え込んでいたルシオラちゃん。
声を上げ、ポチとシロを呼んだ。

「兄さん、行くんならポチとシロも連れて行って。一人だと何かあった場合危険でしょ。
いーい? 絶対絶対一人で行っちゃダ・メ・よ?」

「……はい」

その迫力に、頷く以外出来ませんでした。
あ、シロも腰が引けてる。
なんだかわからんが巻き込んで悪いな、お前ら。
とりあえず、まだちょっと怯えてるシロは撫でておこう。

翌日。学校が終わってから、小鳩ちゃんのところへ。
いきなり訪ねるのは失礼だなーと思い、途中でお菓子の詰め合わせを買っていく。
でっかい狼とその背中に乗るちっこい仔狼を従えて歩く姿はひたすら目立つ。
ああ、恥ずかしい。
たどり着いたボロアパートの前。
さて、小鳩ちゃんはいるだろうか?
二階、表札の花戸の文字を確認。
チャイムなど当然あるわけも無いので、ノック。
数回ドアを叩いた後、向こう側から控えめな声。

「はい、どなたですか?」

顔を除かせたのは、写真の通り清純そうな女の子。

「あ、初めまして。横島と言います。ゴーストスイーパー見習いなんだけど、その君に憑いている貧乏神の事で……」

「ええ!? 待って、待って下さい!! 貧ちゃんを退治しないで下さい! 貧ちゃんは大事な家族なんです!!」

涙ながらに訴えられました。

「だ、大丈夫だから落ち着いて。別に退治しようってわけじゃ」

うん、絶対退治しなくちゃならないとかじゃないよな? 依頼は何とかしてくれってだけだったし。

「退治、しにきたんじゃないんですか?」

「一応依頼は受けてるけど、今日は話を聞きに来たんだ」

「そうですか。よかった」

ぐぅ〜。
ほっと力を抜いた小鳩ちゃん。途端聞こえた大きな音。
腹の虫か、これ?

「ええ〜と、つまらないものですが。どうぞ」

そっと差し出したお菓子詰め合わせは、横から飛来した何かに強奪された。

『菓子やー!! こらうまいこらうまい!!』

「あああ! クッキーチョコレートマシュマロ!! 何年ぶりかしらー!? 小鳩、早く食べないとなくなりますよ!?」

明かり一つ点いていない部屋の中、お菓子をむさぼる影二つ。
病弱そうな?女性と、ラテン系な格好のおそらく貧乏神。
小鳩ちゃんが恥ずかしそうに俯きながら、母と貧ちゃんですと紹介してくれた。
獣のよーにお菓子を平らげているその姿を見るに、家が貧しいのは貧乏神だけのせいじゃないよーな。
立ち話もなんですからどうぞと、上がらせてもらう事に。
ポチはこの狭いアパートではでかすぎるため玄関で待機。
シロは俺の膝の上。
依頼の事は小鳩ちゃんも初耳らしい。
という事は、校長どもめ。本人の意思を無視して勝手にやったな。
気持ちはなんとなくわかるが。
今バイトさせてもらっている店にそれらしい人が来た事は、小鳩ちゃんも記憶していた。
なんで貧乏神に憑り付かれる事になったのか聞けば、小鳩ちゃんでは無く貧乏神が答えた。
小鳩ちゃんのひいじーさんがとんでもない悪徳高利貸しで、無理やりにでも金をむしり取るやり方をして財産を築いた。
でもそのせいで罰が当たり巨大な貧乏神が憑りついて、しかも被害者の恨みの念で強化されひいじーさん本人が亡くなった今も花戸家にくくられている。
貧乏神的には小鳩ちゃんのような良い子を苦しめたくは無いのだと。

「貧ちゃんも昔に比べれば、ずっと小さくなってきているんです。後二、三年で年季が明けるらしいんです……。
それに子供の頃からずっと一緒に暮らしている貧ちゃんは私にとって、とても大切な家族なんです。ですから、どうか祓うなんてしないで下さい!」

うう、そんな潤んだ目で……。
なんか胸が痛むなー。
それにと、小鳩ちゃんのお母さんが付け加える。
神の端くれである貧乏神を攻撃すると、その霊力を吸収して逆に強力になってしまうと言う。
う〜ん、ホントに下手な手出しはできんなぁ。
でも小鳩ちゃんは良い子だし。貧乏神も悪い奴じゃないし。何とかしてやりたいし。
うんうん悩んでいる俺に、小鳩ちゃんが優しく微笑む。

「気にしないで下さい。今まで他のゴーストスイーパーの方もどうにも出来なかったんですし。
それに貧乏なんて、貧乏なんて…小鳩へっちゃらです!」

『小鳩、泣いたらあかん! 泣いたら負けや!!』

「そうね、お日様に笑われちゃうわ」

『銭の花は白い! せやけどその根は血のように赤いんや〜!!』

「貧乏に負けたら本当の貧乏になっちゃうもの!!」

……一昔前の昼ドラのよーな。
こー、崖の上に立って夕陽を指差すのが似合うノリと言うか。
どうにも出来そうに無いので、今日は帰る事に。
唐巣神父の教会が近くにあるので、ちょっと寄ってみる事にする。
神父なら何か良い方法を知っているかもしれないし。
日が暮れて人間の姿になったシロと手を繋ぎ、教会に向かう。
ポチは狼のまま、三本足で器用にひょこひょこと歩きながらついてくる。
例の首輪は、人間モードになったときはチョーカーっぽく変化する。わざわざそういった術をかけたらしい。
そんな面倒な事をするくらいなら、素直に外せばいいのに。
アシュタロスさんにはアシュタロスさんなりのこだわりとか美学とかあるらしい。実にどうでもいい。
教会、相変わらずボロ…いやいや年月を感じさせる。
中から神父の朗々とした声と強力な霊気。
もしかして、除霊中か?
邪魔しないように、こそっと扉を開けて中を窺う。

「逝きたまえ、ピート君! バンパイアハーフ・ハリケーン!!」

「ひい〜〜〜ぃい!?」

「止めの、聖書の角アタァーック!!」

ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

ばたん。
神父は忙しいみたいだから、また今度にしよう。

「……よ、横島殿。 今のは一体?」

「気にするな、シロ!」

そこはかとなく青い顔で聞いてくるシロを抱き上げて、早足で家に帰りました。
俺は何も見なかった!


「ほう、貧乏神かい? なかなか厄介だね」

俺の話を聞いたアシュタロスさんは、楽しそうに紅茶をすする。
知識の無い俺がいくら考えたところで名案が浮かぶわけ無いので、アシュタロスさんに相談してみたのだ。

「ま、私ならば貧乏神ごとき簡単に消し去れるが。それは君の望むところではないのだろう?」

「ええ、貧乏神はいい奴でした。あいつがいなくなったりしたら小鳩ちゃんも悲しむし。
祓ったりせずに、貧乏神を無力化できるような……そんな方法ありませんかね?」

「無い事も無いがね」

「あるんですか、ホントに!?」

「その程度、私の溢れ出る知識に含まれていないと思ったのかね?」

いや、まー。アシュタロスさんだし。
正直あんまり期待していなかったんですが。
アシュタロスさんはふふんと鼻を鳴らし、自慢げに続ける。

「簡単といえば、簡単だがね。ある試練を受けるのさ。
成功すれば貧乏神から開放される。失敗しても死ぬ事は無いが、ね……。
試してみるかね? ま、君なら大丈夫だろうけど」

「はい!」

そして、次の日。居候二匹を連れて、再び小鳩ちゃんの家へ赴いた。

『試練を受ける、やと?』

「ああ。それに成功したらお前は小鳩ちゃんから離れるんだろ?」

『……試練の内容は知ってるんか?』

「いや。俺も人に教えてもらっただけだし」

アシュタロスさんも、内容を知っている者は挑戦権を失うのが掟だと言って教えてくれなかった。

『わいはええんや。試練を受けさせても。せやけど一つ問題がある』

「何だ?」

『この試練は貧乏神に憑り付かれてるもんだけしか受けられへん。わいは花戸家にくくられてる。お前は花戸家のもんやない。つまりお前は試練を受ける権利を持っとらんのや!!』

う゛!? しまった、それは盲点だった!

「なんとかならないのか!?」

『……方法はあるで? お前が小鳩と結婚すればいいんや!!』

は? え、け、結婚?

「貧ちゃん、どういう事なの?!」

「な、なんで……」

「駄目に決まってるでしょ〜〜〜〜〜!!!」

どばぁん!!

声とともに窓が開き飛び込んでくる影!
スカーフを頭からかぶり、サングラスとマスクで顔の大半を隠した見るからに怪しい女性…いや女の子。

「け、結婚なんて何言ってるのよ!? みせーねんでしょ、高校生でしょ!? 駄目! 駄目ったら駄目なの!! 兄さんが結婚なんて、絶対認めないんだから!!」

あー、やっぱりこの子。

「ルシオラちゃん?」

「はう!? や、違うのこれはその、心配で! だから…別に跡を尾けたわけじゃなくてね、あの……」

顔を真っ赤にしてあうあうと言い訳を探すルシオラちゃん。
俺が宥めようとするより先に、小鳩ちゃんが微笑みかけた。

「ふふ。好きなんですね、横島さんの事が」

「はへ?」

空気が凍った。時が止まる。
好き? 好きって、ルシオラちゃんが俺の事を? へ? え?
あ、ルシオラちゃん。さらに赤くなった。
って、あれ? この反応は、もしかして本当にそうなわけか?
あああ、なんだ顔が熱い! ついでに体温も上がってるぞ、俺!!
ちらりとルシオラちゃんの様子を窺うと、泣きそうな表情でぶんぶん首を振っている。

「いや、違うの! 違うのよ?! だってだって兄さんは家族で…その大切だけど、家族だから! そう家族なの!!
だから心配するのは当然よね! だって家族だもん! ねっ!」

必死に家族だと訴えるルシオラちゃん。
そ、そうだよなー。家族として好きなんだよなぁ。あははは。
残念とか思うな俺! ルシオラちゃんは大事な妹です!!
小鳩ちゃんはいまだあわあわしているルシオラちゃんに、やはり優しい笑顔を向けたままそうですかと頷いた。
それからしばらくして、よーやく俺とルシオラちゃんは落ち着いた。
貧乏神が言うは、何も本当に結婚しなくても良いらしい。
儀式的なもので構わないと。
でも一応『結婚式』は必要なんだよなぁ。
それが出来そうなのは、唐巣神父のとこしか思いつかん。
昨日の今日で正直気は進まないが。背に腹はかえられん。
教会に向かい、事情を話せば唐巣神父は俺の頼みならと喜んで引き受けてくれた。
指輪はルシオラちゃんが用意。
高価なものではなく、子供のお小遣いで買えるようなおしゃれ用のやつだ。
そしてなぜか教会にあったウエディング用のヴェールを小鳩ちゃんが着けて、準備完了。
初めピートが熱心に俺にヴェールを着けるよう迫ってきたが、神父とともに沈黙させた。
いまだ床でのたうつピートを心配しているのが鬼道一人だけというのが、愉快。
そしてそんな弟子二人をすっぱり無視して、神父がさっさと式を進める。
俺たちの前に立ち、形式上の誓いの言葉を口にする。

「病める時も健やかなる時も……」

形式だけとは言っても厳かな雰囲気。
ルシオラちゃんの痛〜い視線をざくざくと受けつつ進行される。
嗚呼、帰ったらこれ絶対怒られる。
そして、指輪交換。
瞬間、全身を包む空気が変わったような。いや、感覚でしかないのだが。
う〜ん、この感じ貧乏神のと似てる。
ふよふよ浮いていた貧乏神を窺えば、鷹揚に頷いたから成功なのだろう。
うん、ここまでして駄目でした…だったら俺ホントにルシオラちゃんに怒られるだけじゃ済まないよ。

「うし! 試験を受けるぜ、貧乏神!!」

「兄さん、大丈夫? 無理しないでね」

「横島さん…本当にありがとうございます。ここまでして下さって。小鳩、嬉しくて……」

「ルシオラちゃんも小鳩ちゃんも心配しないで。絶対成功させるから!」

そして皆が見守る中、貧乏神に向き直る。

「準備はええな。いくで……!」

貧乏神が、首から提げていたがま口を開く。
その中に入っていたのは――宇宙?
俺は勢いよくその中に吸い込まれ、そして意識がぷつんと途切れた。


気が付くと、まるで知らない場所。
どこだろうかと辺りを見回しても、真っ暗でよく見えない。
いや、光はある。
三つの扉と宙に浮く窓。
足元の道も三つに分かれ、それぞれの窓へと伸びている。
それ以外には何もない。どれかへ進めということか。
何でこんな所にいるんだ俺は?
さっきまで確か…あれ、何してたっけ。思い出せない……。
何か、やらなくてはならない事があったような?
え〜っと、何だっけ? あの扉を開けば何かわかるか?
ふらふらと、扉の一つに近付く俺の脳内。
よく知る声が響く。

[ちょっとタンマだ、兄弟! 適当に開けると後悔するぜ?]

魔眼。どうしたんだ? お前、大丈夫なのか。

[あ〜、まぁな。まだ本調子じゃねえが、この空間のおかげだろ。
ここは貧乏神の超空間。机妖怪の愛子が造り出す世界の上級版みたいなもんだ]

貧乏神…? ああ、そうだ。知ってるぞ。すごい重要だったはずなんだけど。

[思い出せないのはこの空間のせいだ。そうなってんのさ、気にすんな。
さて兄弟、こいつは試練だぜ。何で三つもあるかしらねーが、あの扉のうち一つどれでも好きなのを選ぶんだ。間違うと大事だが、兄弟なら正しい答えを選べるはずだぜ。
俺は答えを教えてやれねぇ。頑張りな]

正しい答えを選ばなかったらどーなんだよ?
聞いたけれど、答えはない。
悩んでいても仕方がないので、窓に近付き、中を覗き込む。
中にいたのは、俺?
でかいシャンデリアの下、立派なソファに腰掛けて。
執事らしい壮年と何やら話している。嗚呼、むかつくくらい余裕の表情。
二つ目の窓。
ハンズ・オブ・ガーディアンを振るい悪霊をバッサバッサと薙ぎ払っていく俺。
ゴーストスイーパーとして正しい姿なんだろうな。
けど、容赦の無さが気になる。う〜ん……。
三つ目の窓。
う! これは……!!
ぼろぼろの部屋、つぎはぎだらけの服。痩せてみすぼらしい顔!
ごほごほと咳き込みながら内職を片付けている俺と小鳩ちゃんと、ルシオラちゃん!?
なんでルシオラちゃんが!!
いやいや俺だけなら貧乏だっていい! 耐えられる!!
でも女の子が、ルシオラちゃんが。小鳩ちゃんにもあんな生活させるわけにいかないだろ俺ぇ!!
金持ちな俺もゴーストスイーパーな俺もどうでもいい!!
女の子一人幸せにできない俺なんぞ滅んでしまえぇ!!
激情にかられ、扉を開けて――光が溢れた。

「うわぁあ!?」

ばべし!
床に叩きつけられる体。
何が起こったのかさっぱりわからず、周りを見ると驚いた顔のルシオラちゃんたち。

「兄さん、良かったぁ!」

「わうんわうん!!」

駆け寄ってきたルシオラちゃんと顔をなめまくってくるシロ。
ああ、そうか俺試練を…!
そうだ、貧乏神は?
そちらを振り仰げば貧乏神は光り輝き、それが収まった後にはなぜかファラオみたいな格好していた。

「やったでー! 生まれ変わったんやー!! わいは、わいは福の神になったでぇ〜!!」

へ? 福の神? どういう事だ。

「貧乏神と福の神は表裏一他の存在なんだよ。横島君が貧乏神の試練に打ち勝つ事が出来たから福の神になったんだよ」

穏やかに笑う神父。
てことは、もう小鳩ちゃんは貧乏神に憑り付かれていないわけだから――依頼成功!

「ありがとうございます、横島さん! どうお礼を言ったらいいのか、小鳩…小鳩……」

「気にしなくていいよ、小鳩ちゃん」

潤んだ瞳で見つめてくる小鳩ちゃんににこりと笑いかける。
まぁ富を授けると言った福の神が出したのが十円玉一つだけだったというオチはつくが、とにかく一件落着。
その後、微妙に不機嫌になったルシオラちゃんに引っ張られるようにして家路に着きました。


「ほう、やはり成功したかね。横島君の事だから、正しい答えを選ぶとわかっていたよ」

アシュタロスさんに報告すれば、さも当然だというように頷かれた。
ソファに座して笑っている父親に、ルシラちゃんが問いかけた。

「ねぇ、パパ。もしその試練に失敗してたら兄さんはどうなってたの?」

ああ、そういえば。俺も失敗した場合はどうなっていたのか知らないな。
魔眼も教えてくれなかったし。
ふわさっと髪をかきあげ語るアシュタロスさん。

「ははは、失敗していたらどうなっていたかって我が娘よ。
ずばり! 永久に貧乏神に取り付かれる事になるのだよ!!
まー、横島君の事だから何の心配もしていなかったけどね」

はっはっはっはっはっはっ!
朗らかに笑い続けるアシュタロスさん。
いや、あのー……後ろ! 後ろ、ルシオラちゃんが怒ってる!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!と擬音が付きそうなほどの怒気が、オーラが!

「だ・か・ら! どーしてそういう事を言わないの!?
兄さんも、どうしてちゃんと聞かないの!? パパはその場のノリと勢いだけで生きてる人なんだから、言いたい事だけ言ったらそれで満足しちゃうんだからね!
自分で最後まで確認しないと駄目じゃない!!」

うわぁ、さすがルシオラちゃん。よく見てるー。
あ、避難してるベスパちゃんパピリオちゃん+ハニワ兵も全くその通りだという風に頷いてる。

「聞いてるの、兄さん?!」

「はい! ちゃんと聞いてます。以後気を付けますっ!!」

思わず正座!
ルシオラちゃん、怖い。
俺の返答にルシオラちゃんは、ならいいわと小さく笑う。
それからおもむろにアシュタロスさんに向き直り、一喝。

「パパ! いつもいつもどうして一番大切な事を言わないの!?」

「い、いやしかしだねパパは横島君なら大丈夫だと信用していればこそ!
そ、それにだね、ルシオラ! ルシオラこそ横島君の事を信じていないのかい?!」

「……前にも言ったと思うけど、信用する事と心配する事は別物よ?
それにパパの事だもの、もし失敗したらどうするのか?なんて絶対考えてないでしょう」

「うぐ!?」

あ、図星かおっさん。
ルシオラちゃん、ものすご〜く呆れた顔ではぁ〜っとそれは深い深いため息をつく。

「どうしてそう馬鹿なの? パパって」

これでもかと言うほど実感のこもった一言。
言われたアシュタロスさんはぴしりと硬直。たっぷり一分の後、ぶるぶると震えだした。

「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」

嗚呼、家を飛び出してしまった。

「パ、パパぁ!?」

慌てたべスパちゃんが呼び止めようとしたけれど、遅く。
その背はすでに遥か遠くに。
そんなにショックでしたか、アシュタロスさん。
でも反論できませんよ!? 事実ですから!!

「パパ泣いてまちたねー。情けないでちゅ!」

パピリオちゃんの言葉に同意するのは、でっかい黒いのとちっさい白いの。
同情すらしてもらえませんか、アシュタロスさん。
だから、日々の行いが自分の立場を悪くしていってるんですって。
果たして、アシュタロスさんがそれに気付くのはいつになるのか。
一生気付かないよーな気もするけどな。
なんか疲れたので六道さんへの報告は明日にしよう。
あー、アシュタロスさんも迎えにいかないとな。
放置しててもいいんだけど、そうしたらいつまでも帰って来そうにないし。
本当に、なんて手のかかる大人だ!


アシュタロスさんは保護者というより反面教師だなぁと、しみじみ思いました。


続く


後書きと言う名の言い訳

初心に帰ってみました。ナニがって、長さ。最近むやみやたらと長くなってますので。
貧乏神登場、でも速攻で片が付きました。ヤマはどこですか?
相談するあたり横島君は無意識にアシュ様を信用してますが、アシュ様の日頃の行いがアレなため横島自身も気付いてません。
書いてる最中に次回の人骨温泉編のネタの方に頭が逝ってしまい、なんかこんな感じに。
中途半端だね☆ わかってます♪
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました!!

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭


名 前
メール
レ ス
※3KBまで
感想を記入される際には、この注意事項をよく読んでから記入して下さい
疑似タグが使えます、詳しくはこちらの一覧へ
画像投稿する(チェックを入れて送信を押すと画像投稿用のフォーム付きで記事が呼び出されます、投稿にはなりませんので注意)
文字色が選べます   パスワード必須!
     
  cookieを許可(名前、メール、パスワード:30日有効)

記事機能メニュー

記事の修正・削除および続編の投稿ができます
対象記事番号(記事番号0で親記事対象になります、続編投稿の場合不要)
 パスワード
    

G|Cg|C@Amazon Yahoo yV

z[y[W yVoC[UNLIMIT1~] COiq COsI