インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始▼レス末

「二人三脚でやり直そう 〜第四十八話〜(GS)」

いしゅたる (2007-12-07 22:26/2007-12-07 22:49)
BACK< >NEXT

 ――GS試験一日目の夜――

 横島は、人工の明かりの一つもない石段を、一人で登っていた。

『……今更だが』

「なんだよ?」

 心眼がぽつりとこぼしたつぶやきに、横島は足を止めることなく反応する。

『よく、一人で来ようと思ったな?』

「まあ、美神さんは霊能力なくなってるし、小竜姫さまは迂闊に動けばメドーサに察知されるし、六道女学院の三人は危険な目に遭わせるわけにはいかねーし……俺しかいないだろ?」

『そもそも、何かを得られる確証などあるまいに。お前が犯す必要のない危険に身を晒すとは、珍しいな』

「そりゃそーなんだが、おキヌちゃんの大事に俺が動かなくてどーするって気もするしな。それに、何かを得られるかどうかは、行ってみないとわからんだろ……っと、見えてきた」

 見上げる横島の視線の先には、夜闇の中で黒ずんで見える門。そこには、三つの看板があった。
 明かりがないので看板の内容は見えないが、見えずともわかる。おそらく、三つとも『白龍』の文字が入っているはずだ。

「心眼、中に気配は?」

『ないな。正直、ビッグ・イーターの一匹や二匹いそうなものだと思っていたが……』

「ないならないで好都合。虎穴に入らずんば虎児を得ず……ってね」

 言いながら、門を開けて中に入る。
 すると――

「……なんだこりゃ?」

 目の前に広がっている光景を前に、横島は言葉を失った。
 そこには、地面のそこかしこが激しくえぐれていたり、植木が乱暴に折られていたりと、激しい戦闘の跡が残っていた。

『死骸がない……戦闘の片方は、やはりビッグ・イーターの可能性があるな』

 基本的にメドーサから生み出されるビッグ・イーターは、死んでしまえば無に還る。死骸など残りはしないので、この状況は確かにその可能性を示唆していた。

「ってことは、誰が戦ってたんだ?」

 見る限り、そこにあるのは戦闘の跡だけである。ビッグ・イーターは元より、それと戦っていただろう何者かも見当たりはしない。

『見る限り、建物のどこにも人の気配を……む?』

「どうかしたか?」

『そこ。建物の陰に、『何か』がいる』

「何か……って?」

『わからん。少なくとも、人間ではない』

 心眼の言葉に、横島はいつでも栄光の手を出せるようにし、警戒して心眼の示す方向を見る。
 と――


「なんだ……誰かと思えば、アンタかい」


 視線を向けた方向から、女の声がした。
 その声の主を見極めようと目を凝らして見てみれば、そこにいたのは――

「……テレサ?」

 左腕を失った満身創痍のテレサだった。


 横島は満足に動けないテレサを助け起こし、事情を聞いてみた。
 なんでも昨夜、おキヌのところに遊びに来たところ、ビッグ・イーターの群れに出くわして戦闘になったらしい。なんとか全滅させはしたものの、左腕を失い、弾薬も底を尽きてしまったそうだ。

「数が数だったし、牙の石化能力には気をつけなけりゃならなかったしで、ボディ自体よりも処理能力の方に過負荷がかかっちゃってね。回路の一部が焼き切れちゃったんだよ」

 動けなかったのはそのせいさ、と自嘲気味に締め括る。

「知恵熱みたいなもんか? 難儀な話やなー。カオスのおっさん、いーかげんな仕事してんじゃねーの?」

「まったくだよ。幸い、戦闘データは残ってるし、もっと処理能力と耐久力の高いメモリに交換するよう言ってやる」

 カオスのやっていることが科学的な見地から言ってどれほど高度な技術であるかも知らず、横島が無責任な感想を漏らした。テレサもテレサで、それをわかっていながら、無茶なことを言って同意する。
 そもそも、二足歩行すらやっとという現代の技術レベルからしてみれば、一対多の戦闘をこなすロボットのプログラムと処理能力など、実現しているだけでも凄まじいのだ。

 まあそれはともかく、横島はテレサに肩を貸してそんな会話をしながら、白龍会の寄宿舎の中を歩いていた。
 目的はおキヌの部屋。テレサが場所を知っていたので、迷うことなくその扉の前まで到着する。

「……お、おじゃましまーす……」

「なにカタくなってんのよ」

 テレサがツッコミを入れるが、それはそれ。これが他の女性の部屋なら、遠慮するどころか誰かが止めるより先に突撃するところだが、ここはあいにくとおキヌの部屋である。彼女と他の女性とで取るスタンスの違いが、横島の言動一つにも見て取れた。
 そして、扉をくぐって中に入る二人。

「……誰もいない、か」

「まあ、期待しちゃいなかったけどね」

 ぼやきながら、手探りで部屋の明かりのスイッチを探し、入れる。闇に包まれていた部屋が蛍光灯の明かりに照らされ、その詳細な姿を見せた。

「手荷物をまとめた様子はないわね……ん?」

 そこで、テレサが部屋の一点に注目した。横島も、その視線を追う。
 そこは、部屋の中央、カーペットの上。そこに、まるで気付いてもらうのが目的であるかのように、一つの小さな物体が無造作に置かれていた。

「これは……!」

 横島がそれを拾い上げる。
 彼が拾い上げた物。それは――

「雪之丞のプテラノドンX!? なんでこれがおキヌちゃんの部屋に……!」

「え!? それって、おキヌちゃんのじゃなくて雪之丞のなの!?」

 驚く横島の言葉に、テレサも目を丸くする。

「「ま、まさか……」」

 そして二人は、その表情のまま目を見合わせ――

「「雪之丞のヤツ、おキヌちゃんの部屋に私物を置くような関係にーっ!?」」

 おーまいがっ!とばかりに頭を抱え、絶叫する二人。
 だが――

『…………たわけ。そんなわけあるか』

 そんな二人の様子に、心眼が冷めた声でツッコミを入れた。

『落ち着いてよく霊視してみろ。わずかに霊気を帯びた何かが内部に入っているのがわかるだろう? これがここにあるのも不自然だし、何らかのメッセージである可能性は高――』

「おのれ雪之丞っ! あのムッツリスケベ、よりにもよっておキヌちゃんを汚すなんて、神が許しても俺が許さーんっ!」

「グチャグチャのミンチにしてやるわ! 首洗って待ってなさーいっ!」

『聞けよおまいら』

 無駄にヒートアップする二人が心眼ビームによって強制的に黙らされるまで、それほど時間はかからなかった。


 そして一方、メドーサの方は――

「あーっはっはっはっはっは!」

 ホテルの一室で、腹を抱えて笑い転げていた。

「お前に授けたその魔装術、私が昔、暇潰しのお遊びで開発した、霊力をほとんど使わない特別製だけど……思った以上に似合ってるじゃないか! いったいどこの戸○呂弟だい、あんた!」

「自分で授けておいて、そこまで笑うことないでしょう!?」

 あまりと言えばあんまりな反応に、思わず悲鳴じみたツッコミを入れてしまうのは、メドーサの目の前にいる早乙女華。

「というか、これは魔装術と言うよりむしろ……マッソー術ではありませんか!?」

「ぶっ! ちょ、何そのネーミング! ハマりすぎじゃないかい! おま、マジ最高だ……も、もーダメ……あーっはっはっはっ!」

 ツボに嵌ったのか、なおも笑い転げるメドーサ。彼女の眼前の華は、もはや明らかに人類の限界を超えた筋肉で全身を肥大化させていた。

 ――合掌。


   『二人三脚でやり直そう』
      〜第四十八話 誰が為に鐘は鳴る! 二日目・1〜


 ――明けて翌日、GS試験二日目――

 ざわざわ、どよどよと、人々の喧騒が武道館に穏やかに満ちる。
 受験生は元より、運営スタッフ、観客など、そこを訪れる人間は様々だ。そしてその全てが、試験の開始を今か今かと待ちわびている。
 その中心たる試合会場にいるのは、一回戦を勝ち抜いた64名の受験生。この中から、本日最初の試合を勝ち抜いた32名が、GS資格を取得できる。
 自然、参加者のまとう空気も、ピリピリとした緊張感に――

「あら、いいオ・ト・コ♪ 次の対戦相手は私なの。どう? 試合が終わったら、二人っきりでお食事でも♪」

「ヒィィッ!?」

 ……ピリピリとした緊張感に……

「ふはぁーっはっはっはっ! 喜ぶがいい、ピートよ! この父が、愛する息子の為に苦手な日光を我慢し、応援に駆けつけてきてやったのだぞ!」

「誰が喜ぶか! 今すぐその帽子とマントを取って灰になりやがれこのボケ親父!」

 ……緊張感に……

「そこのグラマラスなおねーさん! 緊張していらっしゃるようですね! ボクが緊張で凝り固まった体を全身くまなくマッサージしてあげましょう!」

「セクハラで訴えるぞこの野郎!」

「へぶろっ!」

 …………。

 ……そんなもの関係ない受験生も若干名いるようである。
 ともあれ――GS試験二日目、その長い一日が幕を開けた。


(さーて……どうしたもんかね)

 試合場となるコートの数は3×3の9。それぞれで最初の試合が行われる中、横島は一つの試合場の前で、自分の出番が来るのを待ちながら、しきりに考えを巡らせていた。
 昨夜、横島とテレサが見つけた雪之丞のミニ四駆――その中に入っていたのは、くしゃくしゃに丸められたメモ用紙だった。


『物に霊波を帯びさせるなんて小細工、やったことないから上手くいってるかわからんが……とにかく、これを横島か横島の関係者が登見してくれることを祈る。時間がないから手短に書くが、今、俺たちはメドーサに人質を取られ、強力させられている。人質の居揚戸』


 メモ用紙に書かれていたのは、それだけだった。最後の『戸』とは、居場所の『所』の字の書きかけだろう。メモ用紙が丸められていたことから見ても、相当に時間ギリギリの切羽詰った状況で書いていたのがわかる。
 なお、誤字もいくつか見受けられたが……それも、おそらく焦っていたためだろう。横島は雪之丞の名誉のため、そう考えることにした。
 そして、それを運営委員会に提出すれば、白龍会とメドーサの繋がりを示す絶好の物的証拠になる。筆跡鑑定をすれば、雪之丞が書いたものであることもわかり、彼に情状酌量の余地が十分あることも証明できるだろう。
 だが――メモ用紙の内容にある『人質』の二文字が、それをためらわせた。白龍会を失格にするのは簡単になったが、だからと言ってすぐにそれを実行すれば、人質の命は危ぶまれる。

(人質……か。オーソドックスだけど、おキヌちゃんには効果的だろーなー。あの子なら、絶対見捨てられないだろ。ったく、メドーサの奴……)

 無論、メモは美神や小竜姫にも見せた。美神は合点がいったという顔をしたが、小竜姫はメドーサのやり口に憤慨していた。
 現在は美神が会場の警戒に当たり、小竜姫がメドーサやビッグ・イーターの気配を探して捉えられている人質の捜索に出かけているのだが、土地勘がない上に人質の居場所に関してはノーヒントなのだ。小竜姫には悪いが、彼女が人質の居場所を突き止めるのはまず無理だろう。

(雪之丞の奴が人質の居場所まで書き切ってくれてりゃなー)

 そうは思うが、相手にも都合があったのだろう。たったあれだけ残すことすら、困難だったに違いない。
 何か、人質の居場所を特定できる方法はないか? 横島はない知恵を振り絞り、その方法を考える。

 と――

「横島選手! 横島選手はいないか!」

「あ……」

 眼前の試合場の審判が大声で自分を呼ぶのに気付き、横島は顔を上げた。考え込んでいる間に前の試合が終わったらしく、自分の出番が来ていたのだ。

「すんまへーん」

 へこへこと頭を下げながら、慌てて試合場の中に入る。
 そして横島は、既に待っていた対戦相手の方に視線を向け――

「……あれ?」

 思わず、目をしばたかせた。


 そこにいたのは――緊張した面持ちのタイガー寅吉だった。


「……横島サン。ワッシには守らなければならない約束があるケンノー。何が何でも、勝たせてもらいますケン。覚悟してツカサイ」

「…………」

 不退転の覚悟をその表情に宿らせるタイガーを前に、さすがの横島もふざけた言葉は投げかけられなかった。


「相手はアイツか……」

 一方、観客席。
 試合を観戦している魔理は、横島の対戦相手を見るなり顔をしかめた。
 一緒にいるのは、美神、かおり、愛子。うち美神は、「やれ横島ー! 負けたら殺ーすっ!」と井桁を浮かべながら大声で檄を飛ばしている。
 それを横目で見る魔理は、心中複雑だった。「勝ち上がってアタシらに土をつけた実力を示せ」などと言ったものの、ここでいきなり横島と当たるとは思っていなかったのだ。

 あんなことを言った手前、ここで「負けろ」などと言うのはさすがに――


「…………ま、いっか」


 と悩みかけたところで、魔理はあっさりと思考放棄した。難しいことを考えるのは苦手な子なのだ。
 となると、次に出てくる言葉は当然――

「行け横島ーっ! 事務所のリベンジだ! ぶっ・殺・せぇぇぇぇっ!」

 横島と対峙するタイガーが、目の幅いっぱいの涙を流した。


「行け横島ーっ! 事務所のリベンジだ! ぶっ・殺・せぇぇぇぇっ!」

「…………」

「えーと……」

 観客席の方からそんな声が聞こえた途端、いきなりタイガーの気迫が、空気が抜けたようにプシューとしぼんでいった。
 そして、そのまま目の幅いっぱいの涙を流し始めた彼を見て、横島は今さっきとは違う意味で、投げかける言葉を失っていた。

「……そうですケンノー……ワッシは仇敵ですケンノー……同僚の横島サンを応援して当然ですジャー……」

「まあ、対戦相手の俺が言うのもなんだが……頑張れ?」

「うう……」

 タイガーの涙の量が増えた。


 ――同じ頃、会場の一角では――

「雪之丞、私たちの試合はもう少し後よ」

「どうする、勘九郎? 見ておきたい試合はあるか?」

 雪之丞と勘九郎の二人が揃い、周囲を見回しつつそんな会話を交わした。

「私は……そうね。あのコなんていい男だと思うんだけど」

「そういう基準はどうかと思うが……確かに、いい動きをしているな」

 勘九郎の視線を追い、雪之丞がその先の試合場を見る。二人が視線を向けている試合場では、既に試合が始まっていた。
 注目しているのは、そのうちの片方である式神使い――

「鬼道政樹……か。見たところ、気負いもなく油断もない。かなり出来そうだな」

「雪之丞みたいに戦いを楽しむタイプでもないみたいね。特に表情を変えるでもなく、淡々と試合を運んでるわ……って、あら? 一撃で終わっちゃった」

「勝利の喜びもなし、か。まあ俺でも、あの程度の奴に勝ったところで、嬉しくもなんともないがな」

 それだけ言って、雪之丞は興味を失ったとばかりにきびすを返した。

「どこ行くの?」

「横島の試合だ。今の俺たちにとって、もっとも注意しなければならない相手だからな」

「……そうね。『あの方』と因縁のある人間の一人……初めて会った時はただのひょうきんなコだと思ってたけど、人は見かけによらないものねぇ」

 雪之丞の後ろについて歩きながら、勘九郎はそんな感想を漏らした。
 やがて二人は、おキヌ、陰念と合流する。

「……おい、雪之丞」

「ん?」

 陰念が、雪之丞の近くに寄り、小声で話しかけてきた。

「例のアレのことだが……」

「……俺とお前で用意した、あのメモのことか?」

「ああ」

 内容が内容なだけに、雪之丞も陰念に合わせて小声で返すと、彼は小さく首肯した。

「……やばくないか?」

「ああ、やばいな。まさか、あんなことになるなんて……ギリギリで人質の居場所を書けなかったのが、不幸中の幸いだったな」

「とはいえ、下手に動かれたらこっちがやばいぜ。どーすんだよ?」

「どーもできねーよ。俺たちに出来ることは、アレが横島やあいつの関係者に見つかったり、あまつさえ人質の居場所まで突き止められないよう、祈るだけだ」

 陰念の問いに、雪之丞は苦虫を噛み潰したような顔で、そう答えた。
 だが――彼らの祈りもむなしく、そのメモは既に、横島たちの手に渡っていたのだった。


 場面は再び、観客席――

「あらぁ? 令子、こんなとこで何してんの?」

「っ……!? この声……!」

 横島の応援をしていた美神だったが、背後から聞き慣れた声が聞こえ、振り返る。
 そこには――

「エミ……!」

「え……!?」

「エミ……もしかして小笠原エミ!?」

 美神がその名を呼び、魔理と愛子が驚いて振り返り、初対面のかおりは突然のビッグネームの登場に困惑する。
 だが彼女はそんな六道女学院の三人には目もくれず、美神に挑発的な視線を向けた。

「もう霊能者じゃないおたくが、ここに何の用なワケ? 目障りだからいなくなって欲しいわねぇ?」

「なんですって……!」

 ニヤニヤと笑い、挑発的な言葉をかけるエミ。対する美神は、悔しそうに歯噛みし――やがて、ふんっ!とそっぽを向く。

「こっちは仕事で来てんのよ! あんたなんかに指図される謂れはないわ!」

「あっそう。今のおたくに何の仕事が回されてるのかは知らないけど、せいぜいボロが出ないようにすることね?」

「うっさい!」

 エミを視界に収めず、そう怒鳴った。直後、エミの言葉に何事か気付き、横目で彼女に視線を送る。

「……その口ぶりだと、私が霊能力失ったことを吹聴したりしてないみたいね?」

「必要ないワケ。すぐにみんな知ることになるから」

「あー言えばこー言う……」

 言って、ため息をついて試合の観戦に集中する。その様子を見たエミは、つまらなさそうな……というか、物足りなさそうな視線を美神に向けた。

「で、試合は……ああ、ちょうどうちのタイガーが、おたくのとこの横島と戦ってるところね」

 そして彼女は試合の方に注意を向け、わざわざ美神の隣に陣取った。

「ふん。あの腐れ虎が横島クンにボコボコにされる様子、しっかり見ておくのね」

「その言葉、そっくりそのまま返すワケ。タイガーは勝つわよ」

「何言ってんだか……横島クンは、あいつの能力知ってるのよ。幻覚なんか、わかっててそうそう簡単に引っ掛かるわけないじゃない」

「あんな薄給で雇ってるわりには、随分持ち上げてるわね? 何を考えてるんだか知らないけど、素直に相場通りの給料を……って、もう意味ないわね。おたく、廃業も時間の問題だし」

「さーどーだか」

 嘲るような物言いに、しかし美神は不敵に笑う。

「強がりもその辺にしときなさい? 見苦しいだけなワケ。ま、おたくが廃業したら、従業員はうちが適正な給料で有効利用しとくから、安心しときなさいな」

「言ってなさい……っと、試合が始まったわね」

 試合場の方では、美神の言葉通り、審判が試合開始の合図をして横島とタイガーが構えた。そして、タイガーがさっそく例の虎人の姿になった。
 精神感応を使う時には必ずあの姿になる。つまり、横島は今まさに、精神感応を受けたところだということだ。

「横島クン! しょせん幻覚よ! 気をしっかり持ちなさい!」

「ふふん……」

 美神が大声を張り上げている横で、エミが不敵に笑う。
 ――そして――


「ぎゃあああああああっ!」


 横島の絶叫が響き渡った。

「「「「……っ!?」」」」

 美神たち四人が目を見張る。試合場では、横島が両手で頭を抱え、襲い来る苦痛に身悶えていた。
 ハラハラと試合を見守る六道女学院の三人を尻目に、美神はバッとエミの方に顔を向ける。

「エミ……! タイガーは横島に、何の幻覚を見せているの!?」

 その質問に、エミはふふんと勝ち誇った笑みを浮かべ――


「マッチョダンディの酒池肉林」


「……そりゃ、私でも悲鳴上げるわ」

 自信満々に返ってきた答えに、美神は頭が痛くなる思いがした。


 ――そしてその頃――

「あーん! 寝過ごしてしもうたーっ!」

 一晩の寝床として利用したネットカフェから、慌てて飛び出してきた一人の少女がいた。
 満足にセットもしていない髪を手櫛で整えながら、土地勘もない地を走る。

「まったく、なんでウチがこんな苦労……! それもこれも全部、転校したっきり連絡の一つもよこさん横島が悪いんや! 会ったら絶対、一発殴っちゃる!」

 ぐっと拳を握り締め、決意を固める少女――夏子。

「横島の……アホンダラァァァッ!」

 走りながら絶叫する夏子は周囲の視線を集めまくってたが、そんなことは当の本人は気にもしていなかった。


 ――あとがき――

 書き上げてみればおキヌちゃんの台詞が一つもなし。はぅ。
 あと、手紙の誤字はユッキーの誤字なので、作者的にはわかっててやってます。

 ではレス返しー。


○1. スカサハさん
 ワルQ姉弟はノっていられる間はいいのですが、一歩間違えると滑ってしまいそうで怖いですw 夏子は、本格的な出番はもう少し先です。

○2. 秋桜さん
 状況は、もうとっくに原作とはかけ離れたものになってしまっているようで。おキヌちゃんの天然は、3回戦以降までお待ちをー。

○3. Tシローさん
 服だけなら違和感ないでしょうけど……お面がなぁw

○4. 山の影さん
 夏子の転校は予定してませんが、転校に説得力を持たせるネタがあればやるかもw でもご都合主義的な展開は好きじゃないので、9割がたその心配はないでしょう。九能市さんは、経緯はともかく最後はまともなやられ方したので、八つ当たりはないんじゃないかなー。

○5. Februaryさん
 タイガー、今回から出番です。負けてフェードアウトってパターンは予定してませんので、次回を乞うご期待。夏子はアグレッシブな女の子ですw

○6. 117さん
 初レスありがとうございます♪ おキヌちゃんを取り巻く問題の帰結は、今後の展開をお待ちくださいw そちらの作品も、再開を楽しみに待たせていただきます♪

○7. ながおさん
 癒されてくれるなら、作者としては僥倖ですw でも今回、登場はしたけど台詞一つない……orz

○8. エのさん
 一応、横島のセクハラは、画像的にはタックルしたり締め技やられたりしてるだけなので、スケベ顔さえ映らなければ大丈夫ですw おキヌちゃんの2回戦以降の相手は……今後の展開をお待ちくださいw

○9. Mistearさん
 天然というか、微妙にドジっ娘が入ってる感じかもw

○10. とろもろさん
 ユッキーは株上げてるとか、そんなんじゃないんですけどねー。別におキヌちゃん争奪戦に参加したりする予定はありませんw そして夏子は、出番の少なさを行動力で補うキャラになる予定ですw

○11. 鹿苑寺さん
 もちろん、正ヒロインですよー。むしろ、正ヒロインだからこそのあの扱いとでも言いましょうか。やっぱり主役格キャラには、それなりの試練を乗り越えてもらうのが少年漫画の王道だと信じてますので♪ そしてそれを乗り越えた後には……フフリ。


 レス返し終了ー。では皆さん、次回49話でお会いしましょう♪

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭


名 前
メール
レ ス
※3KBまで
感想を記入される際には、この注意事項をよく読んでから記入して下さい
疑似タグが使えます、詳しくはこちらの一覧へ
画像投稿する(チェックを入れて送信を押すと画像投稿用のフォーム付きで記事が呼び出されます、投稿にはなりませんので注意)
文字色が選べます   パスワード必須!
     
  cookieを許可(名前、メール、パスワード:30日有効)

記事機能メニュー

記事の修正・削除および続編の投稿ができます
対象記事番号(記事番号0で親記事対象になります、続編投稿の場合不要)
 パスワード
    

G|Cg|C@Amazon Yahoo yV

z[y[W yVoC[UNLIMIT1~] COiq COsI