横島たちは空を飛んで濠(ほり)と壁を乗り越え、城の中庭に着地した。城の建物は石造りで、古ぼけてはいるが頑丈そうに見える。
ただ奇妙なことに、建物の中に入る扉は2つあった。扉の上にマークが描かれており、どうやら左側が男性用で右側が女性用という事らしい。
「うーん、やっぱり何が何だかわからんな……魔鈴さん、どーします?」
マークの指示に従えば、左側が2人で右側が8人というアンバランスな人員配置になってしまう。横島としては総勢10人もいてピートと2人きりというのは避けたいところだった。
しかし魔鈴はそこまでの差があるとは思っていなかった。
戦うことになるかも知れない相手がオートマタ(自動からくり人形)ならば死霊術や幻覚術は効かないし、愛子は初めから非戦闘員で魔鈴自身も道具がないと実力を発揮しきれないタイプだ。つまり女性陣の戦力は実質4人半でしかないのだ。
横島とピートは実戦慣れした本免許持ちである事だし、このくらいの差なら指示に逆らう危険を冒すこともないだろう、と魔鈴は判断した。
「いえ、ここは素直に指示通りにしましょう。下手に無視すると何が起こるか分かりませんから」
「そうっスか……」
横島は魔鈴の決定に異論をさしはさむほどの気力や知力は持っていないのだが、カリン抜きで謎の城に侵入する勇気も持ち合わせていなかった。先頭の影法師娘に向かって、自分の中に戻ってくれるよう依願する。
「……そうだな。さすがに霊力なしで城の探索をするのは無謀か」
実際は竜珠に竜気をためておく機能があるから「1人分」の霊力はあるのだが、本来の状態に比べて非常に不利であることは否めない。カリンが抜けても女性陣はまだ大勢いるのだし、横島の中に戻っても戦力的な問題はなかろう。
だがそこに峯が反論を唱えた。
「ちょっと横島さん、自分の都合で女性を危険にさらそうっていうんですか? 男らしくありませんよ」
「そっちはまだ7人もいるだろーがっ!」
峯の冷たい眼差しに横島は野獣のような咆哮で答えた。キヌと愛子はあまり役に立たないかも知れないが、それでも5人いればこちらより強いだろう。
魔鈴とは多少見解が違っていたが、これは横島にはまだ自分を低く見る傾向が残っているからである。
「……まーそんなに不安なら、おまえがこっちに来ても構わんけどな。パンドジニウムっていうくらいだから、きっとあのとき以上のドジが見られるに違いない」
「見せるかあああっ!!」
今度は峯が絶叫して足元の小石を投げつけたが、横島はさっとかわした。ダテに小竜姫の修行を受けているわけではないようだ。
「ま、まあまあ2人とも落ち着いて下さい。横島さんたちはたった2人なんですから仕方ないと思いますよ」
とキヌが峯の肩をおさえて仲裁に入る。その発言はもっともなことで、カリンが横島の中に戻ることにこれ以上の反対意見は出なかった。
そしてそれが済んだら男女別になって城に入ることになるのだが、魔鈴が女性用の扉に手をかけようとしたところで遠藤が止めに入った。
「あ、ちょっと待って下さい。こういう所のドアには罠が仕掛けてあったりしますから、私のキョンシーに調べさせてみます」
どうやらこの娘、この手の読み物やらゲームやらに造詣が深いようである。ジャケットの内ポケットからお札を取り出すと、そこから身長40センチほどの宙に浮かぶキョンシーを4鬼呼び出した。
本当は千鶴にやってほしいところなんだけどねー、と思いつつも口には出さなかったのは、もし本当に罠があって解除に失敗したらシャレで済まないからである。
「それじゃあんたたち、あのドアに罠が仕掛けられてないかどうか調べてきてちょうだい」
「キィッ!」
キョンシーたちはあまり気乗りはしないようだったが、命令に逆らうつもりはないようで、すーっとドアまで飛んで行くと鍵穴を覗いたり手に持った短刀でドアのノブをつついたりし始める。
やがて器用に短刀でノブをひねってドアを押し開けると、遠藤のそばに戻って来た。
「キィッ、キキキ、キィーッ!」
横島たちには彼らが何を言っているのか見当すらつかなかったが、遠藤には理解できるようだ。どうやら彼女の心配は杞憂だったようで、ドアに鍵はかかっておらず罠の類もなかったらしい。
その報告を聞いた魔鈴がほっとした顔を見せて、
「そうですか、良かったです。それじゃ中に入りましょう」
と改めて前進の指示を出す。もしドアが魔法で施錠されていたり危険な罠が仕掛けられていたりしたら方針変更もありえただけに、引率者としては一安心という所であろう。
「それじゃ横島さんもピートさんも気をつけて下さいね」
「はい、魔鈴さんも気をつけて。タマモのことよろしくお願いしますね」
魔鈴と横島はそんなやり取りをかわした後、それぞれのドアの中に入って行った。
横島とピートが男性用のドアをくぐって城内に入ってみると、そこは薄暗いロビーのような場所だった。なぜか壁に松明(たいまつ)が灯っているので真っ暗ではない。
正面には2階に続く広い階段があり、その左右の脇にはこの1階の奥の方に続いているだろう扉があった。出入り口の類はそれだけで、女性用のドアがあった位置とはつながっていないようだ。
「うーん、南武の幽霊屋敷行った時のこと思い出すなあ。あの時ほどイヤな感じはないんだけど、変なお宝なんかどーでもいいからさっさと玉座とやらに行って帰りたいな。つーかこの部屋が何で女子禁制なんだ?」
「横島さん、何か言いましたか?」
煩悩少年の独り言が聞こえたらしく、きょろきょろと周囲の様子をうかがっていたピートが声をかけてきた。
「え? あ、いや、何でもない」
横島が気を取り直してそう答えたところで、突然ロビー全体にジリリリリーン!と非常ベルが鳴り始める。さらにその次の瞬間、2人が立っていた床がかぱっと開いて下に落ちてしまった。
「な、何で!?」
「うわあっ!?」
慌てふためく2人だが、それでも警戒していただけあってすぐに飛行能力を発動して空中で静止する。しかし2人が元の場所に戻ろうとするよりも早く床は閉まり、そしてどこからか鳥のような形をした何かが飛んできた。
数は5羽ほどで体長は30センチくらい、簡易式神のような感じがする。これが魔鈴の言っていたオートマタなのだろうか。
「クケーッ! るーるヲ守ラヌ不埒者ハ懲罰ダ!」
「何!? ひょっとしてカリンのことか!?」
「僕たちが入ってくる所を見ていたんでしょうか!?」
どうやら魔鈴の判断は正しかったようだが、まさか体内で休眠状態にある影法師までカウントされるとは。横島は心の中で悪態をついたが、今は身を守るのが最優先である。
カリンを呼んでいるヒマはない。横島は襲って来る鳥(?)に向かって金縛りの術をかけた。
「ピート!」
横島は5羽すべては止められなかったものの、2羽までは動けなくすることに成功した。結界を張って残り3羽の嘴(くちばし)攻撃を防ぎつつ、傍らの半吸血鬼に援護を求める。
「はい!」
ピートがそれに応えて両手からダンピール・フラッシュを放つと、固定されていた2羽があっさり破壊された。攻撃力も大した事はないようだし、さほどの強敵ではないようだ。
残りの3羽も同じ手順で撃破すると、横島とピートはまず周囲を見渡した。どうやら石造りの地下室のようで、隅の方に戸棚らしきものがあるが、それ以外はオートマタの城らしく生活臭がまったく感じられない無骨な部屋である。
しかし特に危険そうには見えなかったので、2人はとりあえず床に降りることにした。空を飛ぶのはけっこう霊力を消費するから、必要がなければ地上に降りていた方がいいのだ。
そして2人が部屋の中央に着地した直後、いきなり背後から人の声が聞こえてきた。
「うむ、よいぞよいぞ……2人がかりとはいえ、5羽を秒単位でしとめるとは歯ごたえがありそうな奴!」
「んあっ!?」
ついさっきまで人の気配なんて無かったのに。横島とピートは心臓が飛び出しそうなほどびっくりしたが、それでも歴戦のGSらしくばっと前に跳んで距離を開けつつ、空中で反転して声の主と向かい合う体勢で着地する。
2人の手前4メートルほどの位置に、女が1人立っていた。切れ長のややキツそうな瞳が印象的な美人である。
白い長襦袢、あるいは浴衣寝巻のような服を赤い帯でしめていたが、激しい運動の直後なのか単にだらけているだけなのか胸元と裾が盛大にはだけていて、無駄なほど大きく形も良い乳房が半分くらい露出しており、太腿も脚のつけねまで見えそうになっていた。
「おおっ、美人!?」
女は出現タイミングといい発言内容といいはっきり言って怪しいのだが、横島は間抜けにも警戒感のカケラすら持たなかった。まずは名前でも聞こうかと前に出ようとしたところで、ピートがその手首をつかんで止める。
「ちょ、ちょっと横島さん、このひと絶対怪しいですよ。ほら腰に刀差してますし」
「おおっ!?」
言われて初めてそのことに気づいた横島があわてて1歩退く。こんな所で武器を持って徘徊している以上、単なる迷子でないのは明らかなのだ。
しかし敵だとも言い切れない。横島とピートがとりあえず相手の出方を窺っていると、女はなぜかひどく驚いた様子で眼をぱちくりさせた。
「おおっ、少年……お主は確か、横島とかいう除霊屋ではないか?」
「へ? おねえさん、俺のこと知ってるんスか!?」
横島も意外そうに素っ頓狂な声をあげる。どこかで見たことがあるような気がしなくはないが話をするのは初めてのはずなのに、なぜこの女性は自分の顔を知っているのか?
「さては俺の除霊を見てファンになったとか、そーゆーのですか?
いやー、モテる男はつらいっスね。とりあえずその立派な胸にサインでもしましょーか」
バカ丸出しの駄弁を並べる横島だったが、むろんこれは事実とはほど遠い大カン違いである。女はやれやれと肩をすくめて、
「むう、鞘に収まっておっては分からぬか。ほれ、こうすれば覚えがあるだろう」
と刀を抜くと、半ばくらいで折れてしまった刃、いや鍔(つば)の刀身側を横島の方に向ける。刃の方は折れている以外は特に不審な点は見られなかったが、鍔には何と人間のような眼と口がついていた。
横島がはっと眼を見開き、反射的にその鍔に指を突きつける。
「て、てめえシメサバ丸か!? おキヌちゃんに平和利用されてるはずなのに何でこんなとこに……って、もしかしてこのねーちゃんもてめえが操ってるのか!?」
彼は1度この妖刀に操られてひどい目に遭っているのだ。声が刺々しくなるのは当然のことであった。
だがシメサバ丸はごく平然と、
「いや、あの娘が持って行ったのは人間でいえば脚の方に過ぎぬ。確かに痛手だったゆえしばらく眠っていたが、それゆえあの女除霊屋も拙者が成仏したと思ったのであろうな。
それからこの女は人間ではない。紙で作った式神を拙者の念波で動かしておるだけだ」
とずいぶん饒舌に解説してやったのは、横島たちに除霊されるのが嫌だからではなく、誤解されたまま戦うのを避けたかったからである。彼(?)は人斬りマニアだからいずれ2人とも斬るつもりでいるのだが、どうせなら強い相手と正面から正々堂々戦いたいという武人的な気質も持っているのだ。
ちなみに「紙で作った式神」とは式神ケント紙のようなものを使って作ったという意味であって、シメサバ丸に式神製作の心得があるという事ではない。横島が風水盤事件の時に「偽横島忠夫」を作ったのと同じである。
「むう……」
横島が眉をしかめて小さな唸り声をあげた。どうやら邪悪な妖刀から美女を助けてねんごろに、という野望はついえ去ったようだが、まだ疑問はいくつかある。
「で、何でこんなトコにいるんだ? つかおまえ女だったのかよ」
シメサバ丸はその質問を聞くと急に面倒そうな表情を浮かべた。どうやら横島たちは何も知らずにここに来たらしいと察して、そこまで説明するのがわずらわしくなってきたようだ。
しかしここで説明をやめて「もはや問答は無用!」と斬りかかるのも面白くない。
「ここは間抜けな使われ方や壊れ方をした霊具が集まる場所なのだ。拙者も気がついた時にはここに居たゆえ、誰が拙者を持って来た、あるいは呼び寄せたのかは分からぬが。いわゆる『神隠し』というものかも知れぬな。
式神が女の姿をしておるのは、単に拙者の昔の持ち主の姿をそのまま写しただけのことだ。1番念じやすかったのでな」
とここまでは親切に解説してやっていたシメサバ丸だが、そろそろ我慢ができなくなってきていた。この面白そうな獲物を早く斬りたくてうずうずしてきたのだ。
「とゆーわけで、もう良かろう。斬る斬る斬る斬る斬る斬るーーーっ!!」
シメサバ丸が操っている式神が刀を振り上げ、まずは横島めがけて襲いかかる。
「いいわけあるかーっ!」
「うわあっ!?」
いくら横島が霊能者として成長したとはいえ、真剣で斬りつけられればやはり怖い。恐怖に顔をひきつらせながら横っ跳びに逃げ走る。ピートもあわてて空中に舞い上がったが、横島はなぜか地上にとどまったままだった。
「うーむ、何てけしからん揺れ具合だ……さてはブラジャーつけてねーな。美神さんでもあんなにぶるんぶるん揺れねえからな」
どうやら式神の胸の揺れを鑑賞するためにあえて飛ばなかったようだ。
むろんシメサバ丸がその隙を逃すはずはなく、素早く間合いを詰めると横島の側頭部を狙って横薙ぎに斬りつける。だが横島はさっと身を低くしてその一閃をかわした。
「おおっ、至近距離だと迫力が違う……それに裾の方もかなり怪しいな。もしかしてパンツも穿いてねーってこともあり得るかも……!」
その見事な回避が乳と太腿を間近で眺めるためというのがいかにも彼らしかったが、いつまでも素手の敵を素手の間合いに入れておくシメサバ丸ではない。横島のあごに膝蹴りを入れてダメージを与えると同時に距離を取り、煩悩小僧を脳天から股間まで真っ二つにせんと刀を振りかぶる。
「待てっ、そうはさせないぞ!」
だがその腕にピートが空中からエネルギー波をたたきつけて妨害する。唐巣の指導や雪之丞との組み手で吸血鬼の能力と神聖なエネルギーを同時に扱えるようになっていた彼のパワーは相当なものになっており、式神は腕をはじかれて体勢を崩した。
「うぬ、そういえばもう1人いたんだったな。おのれ、いいところで……!」
「だあああっ!」
ピートはフェミニストの部類に入るのだが、妖刀につくられた式神にまで遠慮するほど教条的ではない。一気に片をつけるべく、全力の霊波弾を連射する。
「くっ、なかなかやるではないか!」
まともに食らったら危ない。シメサバ丸はいったん横島への追撃をあきらめ、数歩ほど後退する―――と見せていきなり横にダッシュした。その勢いのまま壁に向かって跳躍し、さらにその壁を蹴ってピートと同じ高さまで跳び上がる!
「なっ、はっ、速い……!」
「ちぇすとぉぉーっ!」
シメサバ丸の行動の意外さと素早さに、ピートは回避運動が間に合わなかった。とっさに頭部を両腕でかばったが、なぜか斬撃の痛みはやって来なかった。
「うお、ギリギリだったな……とりあえず離れろピート!」
そう、横島が式神の足に金縛りの術をかけて動きを止めていたのだ。そのため式神は空中でバランスを崩し、ピートに刃を届かせることなく落下していたのだった。
即席にしてはなかなかのコンビネーションだったが、シメサバ丸とてこの程度で負けを認めるほどヤワではない。やはり地上にとどまっている横島から先に倒そうと、再び地を蹴って間合いを詰めてくる。
「は、速ぇ……!?」
どう見てもかって自分が操られた時より数段速い。横島がそう驚いている間に、シメサバ丸は刀の間合いに入っていた。
速い理由は簡単である。横島の時は彼が体を操られることに抵抗したのに対し、今シメサバ丸が操っている簡易式神には抵抗の意志がまったくない。その差が如実に現れているのだった。
式神が刀を真っ向から振り下ろす。だがその必殺の一撃は、横島があらかじめ張っていた結界に阻まれて彼の体には届かなかった。彼が逃げようとしなかったのは、初めからこれで受け止めるつもりだったからである。
もっともその動機は「ちょっとでも長く式神の乳と太腿を見るため」といういたって低劣なものであったが。何しろさっき式神が着地した時など、下からの向かい風で襦袢がはだけてパンツが見えたくらいなのだから!
しかし横島もいつまでものん気してはいられなかった。確かに彼の体に刃は届かなかったが、結界は切り裂かれてしまっていたからだ。鍔が結界に当たったからそこで止まったものの、もしシメサバ丸が折れてなかったら横島は斬られていたであろう。
「おおっ、もしかして危なかった?」
横島が冷や汗を流しながらつぶやく。そう言えばこの結界は打撃や浸透といった攻撃には強いが、切断や刺突などにはやや弱いのだった。
だがこの体勢は横島にとってチャンスである。今式神に麻痺のブレスを吹きつければ、シメサバ丸は行動不能になるだろう。
横島はさっそく口の中にパワーを貯め始めたが、それより早く式神が帯の背中側から左手で棒のようなものを引き抜き、思い切り結界にぶち当てていた。
「い、痛ぇぇぇ!?」
腰を横薙ぎにぶっ叩かれたような衝撃に、横島はもんどり打って床に倒れた。結界は破られてない、にも関わらず痛みはやってきたのである。
「な、何で!? ってうわぁぁぁ!」
二刀流になった式神が横島を追いかけて跳躍し、連続斬りを繰り出してくる。横島はあわてて身を起こすと、得意のゴキブリダッシュで逃げた。
「な、何でだ……? さてはあの棒、何かのマジックアイテムか……?」
理由はそれしか思い浮かばない。結界破り属性の武器なら、竜珠の結界を素通りして、あるいは結界への打撃を本体に転嫁させる形で横島自身にダメージを与えることもできるかも知れないのだ。さすが霊具が集まる城だけあって、まともに役立つ道具もちゃんとあるらしい。
……と横島は思ったのだが、正解は少し違う。彼はまだ気づいてないが、シメサバ丸が持ち出したこの棒こそ、最初に魔鈴が言及した「駄神鞭」なのである。「駄目な神サマを打ち据える、竹のような節がついた鉄の棒」という意味で、ダメダメな竜神である横島に対しては有効すぎる武器なのだ。もっともシメサバ丸は横島の正体に気づいたわけではなく、単に切断が通じないなら打撃でやってみようと思っただけの事なのだが……。
「うむ、こちらの方は効き目があるようだな。拙者自身で斬れぬのは残念だが、まずはこれで弱らせてくれる!」
「いやじゃーーっ!」
さっきまでの余裕をきれいさっぱりとかなぐり捨て、脱兎のごとく逃げ回る横島。結界を消せば駄神鞭からのダメージ判定エリアは狭くなるのだが、そうするとシメサバ丸を防げなくなってしまう。はからずも訪れた大ピンチに、横島は目の色を変えて恐慌した。
考えてみればシメサバ丸は令子ですら1度は逃げたほどの強敵なのだから、そう簡単に勝てるはずがないのだ。
「ええい、逃げるな! いざ尋常に勝負せんかっ!」
「やかましい、素手の相手にエモノ2本も持ち出して言う台詞かっ!」
横島の抗議はある意味正当だったが、妖刀であるシメサバ丸には無効だった。煩悩少年の背後から跳躍して、刀と鞭で十文字斬りを放つ。
「んぎゃっ、痛ええ! け、結界の上からなのに何でこんなに痛いんだ!?」
「よ、横島さん、大丈夫ですか!?」
ピートは意外な成り行きに呆然としていたが、はっと正気に戻るとあわてて横島のそばまで飛んで行った。とりあえず足止めに霊波弾を数発撃って、シメサバ丸の連撃をストップさせる。
「た、助かった……ピート、あいつ思ったより強えぞ」
「そうみたいですね……横島さん、こうなったらカリンさん呼ぶしかないんじゃないですか?」
男女別の指示を破った事はもうバレているのだから、隠していても仕方あるまい。なのに横島がいまだにカリンを呼ばないのは、彼女がいたらあの美人式神の胸や太腿を鑑賞するのにかまけて戦闘に手を抜くなんて許されないからだろう。
しかしそれも勝つ余裕があっての話である。2人がかりで押され気味なのだから、斬られる前に呼んだ方がいいと思う。
「あ、ああ、それはそーなんだが……おわあっ!?」
「うわっ!?」
と横島とピートが左右に分かれて跳びすさったのは、シメサバ丸が2人の作戦会議を邪魔するかのようにその真ん中に躍り込んできたからだ。
「横島さん、やばいですよホントに!」
刀が首すじにかすって切り傷をつくったピートが気弱そうな声で叫ぶ。聖と魔の力を同時に使えるようになっても、性格はあまり変わっていないようだ。
だが彼よりも弱気な性格であるはずの横島はなぜか鼻の下を指で押さえて、両目を異様にギラつかせていた。かなり闘志を燃え立たせている様子である。
どうやら跳び下がった拍子に、何かピンク色の突起物が見えたせいらしいのだが……。
「―――関係ねぇ。俺はこいつを脱がす、ただそれだけだ!
吠えろよ俺の煩悩玉!」
「……。横島さんってストッパーがいないと本当に好き放題ですねぇ……」
とピートがいろいろと感慨のこもったため息をついている間にも、横島の霊力はぎゅいんぎゅいんと凄い勢いで上昇していく。これなら勝てるかも知れない、とピートは希望的な観測を持ちかけたが、それと同時に横島が間抜けっぽい声をあげた。
「あああっ、結界が消えた!? つーか張れなくなってる!? 何で、どーしてじゃ!?」
駄神鞭で何度も打たれたせいか、それともドジ城の呪いなのか。わざわざ言わでものことを言って自分の弱体化を知らせてしまった横島に、シメサバ丸が歓喜の声をあげて飛びかかった。
―――つづく。
ますます斜め下ですが、シメサバ丸自身は男性、あるいは無性かと考えております。むしろ男だからこそ女の姿を鮮明にイメージできるんじゃないかと(ぉ
シメサバ丸が鞘に収まってる状態で前を見ることができるかどうかですが、できるという事にしておりますー。できないと例えば刀を振り上げたら相手が見えなくなっちゃいますし。
ではレス返しを。
○Tシローさん
>バンドジニウム
聖域というか、来てはいけない魔域なんですが、それでも来てしまうのがどじっ娘のどじっ娘たる所以であります。
でも今いるメンバーは冥子ほどの破壊力は持ってないので、たぶんそんな危険なことにはならないかと。
>魔鈴さん
横島君はラヴしたがるかも知れませんが、仰る通り壁は厚いですなw
○電子の妖精さん
>オカズ
だって横島君ですし!
○通りすがりのヘタレさん
無意識にやったことで罰くらうのは横島君も不本意でしょうけど、今回は意図的に悪事を働いたので更なるお仕置きもありそうですw
パンドジニウムはまだ序盤なので、この先も複数の人物がドジをかます予定です(ぉ
>峯さん
今は級友たちの前なので、あまり突っ走った言動はできないのですよー。それさえなければ反動で(中略)なのですが!
○紅さん
お褒めいただきありがとうございますー。原作と違和感ないと言っていただけると安心しますです。
この城はそう簡単には突破できないので、過程をじっくりお楽しみ下さいませー。
○KOS-MOSさん
毎度お褒めいただきありがとうございますです。
>駄神鞭
覗きの神さまや昔の姫様にとっては最悪のアイテムでありましたw
○風来人さん
魔鈴さんは原作でも結構悪気なしにトラブル起こしてましたからねぇ。ドジっ娘の素質大いにアリでしょう(酷)。横島君はそんなところで働いて……大丈夫そうですなw
>横島君
もともと不死身ですものねぇw
>峯さん
策を練ってパーティに参加したかいがあったようですが、せっかくのクリスマスなんですからもう1歩踏み込みたいところかも知れませぬ。
>愛子に全員収納してもらって
1番安全なやり方ですけど、きっとみんなそれじゃ面白くなかったかとw
○whiteangelさん
>横島君
しょっぱなから突っ走っておりますが、オチを担当できるかどうかは未定ですw
○遊鬼さん
>横島君役得
しかしお返しを反故にされてますから、本当に役得かどうかは難しいところであります。
筆者もやってみたいですがー!
横島君がおキヌちゃんを抱っこする展開は、カリンが指示者である限りないでしょうorz
>宝の番人
1番手はかなりの強敵ですが、その分お宝もグレート……とはいかないのがGS美神であるような気が致します(ぉ
ちなみにヒャクメさんは関わっておりませんw
○ばーばろさん
>小隆起さま
大丈夫、ミニスカで攻めれば横島君は気にしませんw
>魔鈴さん
相手がピートなら穏便に済ませたんでしょうけど、横島君ですからねぇ。日頃の行いって大事ですな。
>別のゲームにしちゃいましたか
原作にはフィールド探検型のゲームに行く話がありましたが、あえてダンジョン攻略型にしてみました。
>カリンたんから当たってきましたか
無意識だからこそヒットしたわけですなー。サトリと木こりの話みたいなもので。
魔鈴さんは掃除と料理は達人以上ですから、仰る通り花嫁修業の先生には最適ですし。というか本当に花嫁修業なのか?(ぉ
>女性陣に襲い掛かる白いスライム&粘性触手
なぜ色が指定されてるのかはともかく、実に素晴らしい展開ですな<超マテ
果たして横島君はこのシーンになるまでに合流することができるのか!?(笑)
○スカートメックリンガーさん
駄神鞭は本当にいいおみやげになりそうですww
カスラムとか城の主とかは、先をお待ち下さいませー。出て来ずに終わるという魔展開もあり得ますが(ぉ
○cpyさん
>魔鈴の除霊
横島君のことですから、毎日ご飯つくって掃除してくれとか言い出しそうで怖いですww
>宝の番人
いあいあ、そう簡単に退治できるほど甘い連中ではありませんですよー。
特に横島君の場合はw
○Februaryさん
>ここでソリが墜落するのは必然だったんですね
類は友を呼ぶとはまさにこのことなのです。
>いなきゃ話は続かない
ああっ、そんな実も蓋もない事を(w
>白かった頃の姫様っぽい御方
強敵と見るべきかザコと見るべきかww
>星龍刀可愛いです
は、筆者もお気に入りなのでありますよー。
ちなみに現在のカリンの姿は、3巻で成長した後の姿になっております。
○チョーやんさん
>RPG
上記の通り、原作であった話に沿ったエピソードなのでありますよー。
リアルだという点が違うだけで(ぉ
>ココの魔鈴さんは美神さんとまだ会ってないんでしたっけ?
死津喪編やフェンリル編で一緒に仕事しておりますですよー。
今回の話が魔鈴さんフラグなのかどうかは……まさにねたバレ禁止事項でありますm(_ _)m
>アイテム
ドジはありますが、先々まで引きずるような不幸というのは多分ないかと。
>虎
は、おそらく空耳だと思うですよー。
○れじぇむさん
そして横島だけが瓦礫の下敷きになるわけですね?(酷)
○読石さん
ここの横島君は大変幸せですが、たまには不幸も味わってもらわないと原作の扱いからあまりにも逸脱してしまうので(酷!)。
竜珠についての言い訳……難しいところですねぇ。
>魔鈴さん
無欲の勝利というやつであります。いや勝利と言っていいのかどうかは分かりませんけどw
>宝
買い取ってもらえるかどうかがちょっと疑問ではありますがw
○ロイさん
激励ありがとうございますー。
>横島君
まさに仰る通りですねー。あの状態で何もせずに済ませる横島なんて横島だと認めません(ぉ
>宝の番人
1番手は強敵を出してみました。次からはただの変なやつとか間抜けなやつとかになりそうな気もしますがー!
○tttさん
モチーフっぽいゲームはありますが、話の展開自体は純オリジナルにする予定でありますー。
○山瀬竜さん
>万ドジ殿
よりドジ属性が強い者が勝利を得る……やだなあそんなバトルw
まあ墜落がどじっ娘2人の責任なのは確かでしょうな。
>ダンジョンRPG+忍者=全裸
いあ、そういう発想はありませんでしたけどw
確かに峯さんは前科もあることですし、大いに意欲がかきたてられる所ではあるんですがー!<超マテ
>横島君
ストッパーがいないと全然ダメですw
魔鈴さんが別行動中で良かったと言えば言えるんですが。
○とろもろさん
>属性要素(ドジ)が倍加すると言う幻の空間
は、まさにその伝説的ゾーンであります。
今は野郎ばかりが出張ってますが、女子パートになったらドジを描く予定ですのでー!(ぉ
なお魔鈴さんはどじっ娘だと筆者は信じております。
>ドジッ娘属性を強化する触媒元素
一部ですごい人気が出そうですねえw
○HALさん
>汎過殿
萌えとギャグが混在する伝説の聖地、あるいは魔境とでも言いましょうか(ぉ
>RPG
次回辺りで分かる人には分かるネタが出る予定であります。
いあ、分からなくても読むのに支障はないのでご安心下さいませー。
>43話の伏線
うわぅ、またしてもそんな昔の話を覚えてて下さってるとは。
しかしパンドジニウムの中でそんな悠長なことするのは危険のような気がします。
一緒に仕事すればもっと落ち着いて会話する機会もありますしねぇ。
○UEPONさん
>聖夜っぽさ
そこはそれ、お宝=クリスマスプレゼントということでー!
>ピートが女性苦手っぽい理由
うーん、これだけ挙げられると本当に納得できちゃいますねぇ。そのケがあるかどうかは別としてw
確かカトリックの神父は独身でなきゃいけないはずですし。
>掃除と料理で浄霊
悪霊の強さにもよると思うんですよ。タフなやつは建物全部を神殿なみにしないと成仏しないけど、ザコだったらその部屋をちょっと綺麗にすれば成仏するとか。
>神棚や仏壇等を設置
本物を見分けるのはかなり難しそうですし、仰る通り高いですしねぇ。風水の方がまだ安上がりで済みそうですな。
確かに小竜姫さまならそういうことにも詳しそうですが……さてさて。
○びょびさん
さすがにク○ーク・ケ○トの域に達するのは無理ぽい……というか人類滅んじゃいますがー!w
○鋼鉄の騎士さん
は、女性陣のドジは気合入れて書く所存であります。
やっぱりちょいえっちな方向の方がいいですよねぇ?<マテ
○ななしさん
はじめまして、お褒めいただきありがとうございます。
長いので読むのは大変かも知れませんが、今後ともお付き合いくださるとうれしいです。
>横島が変身
たとえば横島が舌でセクハラするとかセクハラするとかセクハラするとかですか?(ぉぃ
ではまた。