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「光と影のカプリス 第118話(GS)」

クロト (2007-11-05 20:05)
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 カリンが試合中に明言した通り、横島は消し炭になっても生きていた。自前の再生能力と小竜姫のヒーリングであっさりと復活を果たす。
 しかし服までは元に戻らなかったので、横島はとりあえず修業場に置いてある功夫服を貸してもらってそれに着替えた。
 戻ってきた横島に百合子が心底あきれ返った口調で、

「まったくこの子は……親の前で恥ずかしいことするんじゃないわよ。ただでさえ三股なんて難しいことしてるのに、その体たらくじゃ先行きが心配だわ」
「……」

 まことにもっともな叱責である。横島は小突かれるかと思って首をすくめたが、幸い拳は飛んで来なかった。彼はついさっき盛大に燃やされたばかりなので、百合子もそこまでする必要はないと思ったのだろう。
 いや普通の親なら息子がパンツを覗いたくらいで丸焼きにされたら「やり過ぎだ」と怒るところなのだろうが、タマモを責める様子はまったくない辺りやはり並みの女性ではなかった。

「でもあんたが霊能者としてちゃんと修業してるってことは分かったわ。せっかく神様に稽古つけてもらってるんだから、これからも真面目にやるのよ」

 横島が今後GS的な仕事をするかどうかに関わらず、こうした「お稽古事」に打ち込んで技能を高めるのは良いことだ。受験勉強に時間をついやす必要がないのなら、大いに励んで心身を鍛えてもらいたいものである。

「わかってるよ。小竜姫さまの旦那さまになるのにただの人間のままじゃ格好つかねーからな」

 微妙に危ない発言だったが、まさかそれが「人間をやめる」という意味だなんて普通は想像できないから、百合子も特に疑問には思わなかった。
 なお横島は種族としてはすでに人間ではないのだが、彼が言った「ただの人間」というのはパワーとか能力についての事である。こちらはまだ人間の枠内にとどまっているので。

「そう、ならいいわ。
 ……そうそう小竜姫様。この際ですから忠夫の神社のことについてもお伺いしたいんですが」

 と百合子がもう1つの用事を思い出して小竜姫に向き直る。なにぶん突拍子もない話だったから、やはりこちらにも確認しておかねばなるまい。
 小竜姫は急に話題を変えられてちょっと驚いたような顔をしたがすぐ素に戻って、

「あ、そのことももう聞いてらしたんですか? ではいったん中に戻りましょうか。
 ところでもう1時半ですけど、お昼ご飯は食べて来られたんですか?」
「いえ、それはまだですけど……」
「そうですか、では話はご飯を食べながらにしましょうか。精進料理ですけど、それなりに自信はありますから」

 ということで、4人はいったん宿坊に戻ることになった。百合子はまさか神様に食事をふるまってもらう事になるとは思っていなかったので多少畏れ多かったりもしたのだが、ここまで来たら遠慮しても仕方がない。
 出てきたご飯は美味しかった。百合子がつくる物とは趣向が違っているが腕はいいと言えるし、何だかすごく滋養があるような感じがする。
 ふと室内を見回してみたが清掃はきちんと行き届いているし、料理や家事の分野でも文句なしに合格であった。

「―――で、妙神神社のお話でしたね。メドーサのことを聞いてらしたなら事情はわかると思いますけど、やはり僻地に閉じこもっているとどうしても情報にうとくなりますから」

 という前置きから始まった小竜姫の話は、百合子が先日息子たちから聞いたものと内容的にはほぼ同じだった。
 むちゃくちゃ風変わりな進路ではあるが、考えてみれば自分も夫も一般人ではあるが普通人ではないのだし、小竜姫の人柄(神柄?)も信頼できるから百合子は特にケチをつける気にはならなかった。

「もっとも表向きには、あくまでこの修業場とは無関係ということにしますけれど」

 と小竜姫が付け加えたのは、妙神神社が妙神山修業場の出先機関だなどと知れ渡ったら、神様とのコネクションを求める人たちがわんさかやって来るだろうし、あるいはメドーサのような連中に目をつけられるかも知れないからだ。やはり表面的にはただの田舎神社ということにしておくのが賢明だろう。
 一部のGSはすでに知っているのだが、彼らはそれを吹張するような性格じゃないからまあ問題あるまい。

「そうですね。私もその方がいいと思います。
 ……息子のこと、よろしくお願いします」

 百合子としても息子がそういう方向で注目されるのは嫌だし、小竜姫の方針に異論はなかった。神族側の都合もあるのだろうが、息子の立場にも配慮してくれるのは有り難いことである。
 そういうわけで妙神神社の件も無事円満に話がついたのだが、百合子は先ほどから何か首すじにむずがゆいものを感じていた。具体的にはかって村枝商事に勤めていた頃によく感じた、遠くから自分を見つめる視線。
 まああの頃のと違って嫉妬とか反感とか、あるいは憧れとか羨望といったものは無かったから今まで放置していたのだが、やはりこのまま帰る気にはなれなかった。

「あの、小竜姫様。つかぬことを伺いますが、この修業場に不審者が入るというようなことはあるのでしょうか?」

 すると小竜姫はきょとんと首をかしげて、

「不審者、ですか? いえ、ここは正門以外は結界で守られていますから、そういう者はまず入れませんけれど」

 妙神山修業場に張られた結界は非常に優秀で、たとえ瞬間移動でも事前に許可登録を受けた者以外ははじいてしまう。まあそうでなければ神魔族相手では用をなさないから当然なのだが、この結界を突破できるのは神魔族全体でも最高クラスのパワーを持った存在、もしくは転移・隠行・結界破りなどに特化したごくわずかな者たちくらいのものなのだ。
 従って不審者がここに入る1番簡単な方法はどうにかして鬼門をだまくらかす事なのだが、そういう者がいたならばとっくの昔に何らかの行動を起こしているはずである。小竜姫自身は何も感じていないし、今ここに不審者がいるとは思えなかった。

「そうですか、それならいいんですけれど」

 百合子は確信があったわけではないのでそれで済ませてしまったが、「不審者」たちの方はそうはいかなかった。泡を食ったヒャクメがおろおろして騒ぎ出す。

「あ、あの人私たちに気づいたのかしら!? ピンチなのねー、もし私が覗いてたってバレたら瘴竜鬼、もとい小竜姫にシバかれるわ」

 何げにかなり失礼なことをほざいていたが、玉竜は大人らしくそこは聞かなかった振りをして、ついでに自分の見解を述べて安心させてやった。

「いや、彼女はおそらく視線を感じただけだと思うよ。私たちがここにいる事まではわからないはずだ。
 しかしこの勘の良さ、これが『村枝の紅ユリ』とかいう綽名の由来なのかな?」

 と玉竜にはまだ余裕があったが、ヒャクメの方はそれでもまだ安心できなかったようで、

「それじゃ、遠視は中断した方がいいんでしょうか?」
「いや、今すぐやめるのは逆に誰かが見ていたことを証明しているようなものだよ。もうしばらく続けて、向こうで何かアクシデントでもあった時にした方がいい」

 さすがに玉竜は西域取経の旅でさまざまな経験を積んだだけあって、とっさの判断力もなかなかのものであった。しかし彼も娘の成長度についてはまだ把握しきれていなかった。

(……不審者は確かにいないでしょうけど、でも、「不審でない者」なら居てもおかしくないですよね)

 メドーサの手下とか、そういう敵性存在はいないと思う。しかし敵意も危険もないけれど今日ここに来る動機はあって、しかもそれができる人物に小竜姫は1人だけ心当たりがあったのだ。

(ヒャクメですね! あのデバガメ娘、今日は来ちゃダメだって言ったのに)

 とあっさり「不審者」の正体を看破する。
 修業場の構内はそれなりに広いので、隠れてこっそり遠視するだけならいくら小竜姫でも彼女の気配や居場所を感じられなくてもおかしくはない。まあしらみ潰しに探せば見つけることは可能だろうが、せっかく百合子が流してくれたものをわざわざ荒立てる理由はなかった。
 何せ未来のお姑さんなのである。はしたない所を見せるべきではないだろう。
 ちなみにこれは小竜姫の感覚が百合子より鈍いということではない。いわば「武神」と「ビジネスウーマン」の差であって、もし隠れていたのがメドーサや犬飼ポチなどであったなら小竜姫の方が先に気づいていただろう。
 というわけで小竜姫は今は知らない振りをすることにしたのだが、多少表情が不快げになることまでは止められなかったようだ。

「小竜姫さま、どうかなさったのですか? そんなに眉をしかめて」

 百合子にそう指摘されて、あわてて顔の筋肉から力を抜く。

「え!? あ、い、いえ、何でもありません」

 まったく信憑性のない台詞ではあったが、百合子は「そうですか」と相槌を打っただけで深入りするのは避けた。未来の嫁とはいえ初対面の、まして神様の裏方事情に首を突っ込むのはいささか不躾というものである。
 そして百合子はお昼を食べ終わって一服すると、早々に辞去することを申し出た。
 すると小竜姫がちょっと残念そうに、

「え、もう帰られるんですか? 何でしたら泊まっていってもらっても構いませんのに」

 小竜姫の見るところ百合子はその辺の武芸者などよりよほど肝が据わっている上に頭も良く、人間としては相当できる部類に入るようなのでもう少し話をしたかった。それにせっかくだから横島の子どもの頃の話でも聞いてみたいと思っていたのだが、百合子には百合子で長居できない事情があったのだ。

(あのヒトを放っておいたら、ロクでもないことしかしないからね……)

 要するに大樹が浮気する、ということである。自分の管理下にある内はある程度許容できる、といっても浮気されて嫌なことには変わりないのだ。

「そうですか。ではまたお時間のある時にいらして下さいね」

 というわけで百合子は息子たちを連れて小竜姫の名残惜しそうな別辞を聞きながら妙神山修業場を後にしたのだが、なぜか門の前でカリンが飛行機(?)の姿になろうとするのを押しとどめると、少し歩いて鬼門たちからは見えない岩陰まで移動した。

「……? 母さん、急いでるんじゃないのか?」

 と訝しげに訊ねてきた息子の襟首をぐいっとつかみ上げ、ドスの効きまくった眼光と声色で糾弾する。

「忠夫、あんたねぇ……あんたの年頃だったら親に隠し事するのはむしろ当然のことだと思うけど、言わなくていいことと言わなきゃいけないことの区別くらいはつけなさいよ。小竜姫様と恋仲だとは聞いたけど、結婚まで約束してただなんてあんたひと言もいってなかったでしょ」

 そのせいで百合子は恥をかいたし、会話のペースも向こうに握られてしまったのだ。婚約自体にケチをつける気は毛頭ないが、その辺のケジメはきちんとつけておかねばなるまい。

「反省しときなさい」

 横島は岩壁の埋め草になった。


「もうおかしな隠し事はないだろうねぇ? 実はもう1人彼女がいるとか」
「あうう……」

 常人なら入院間違いなしのダメージからわずか数分で回復した横島だが、今度は空気が液体金属にでもなったかのような重たいプレッシャーを浴びていた。
 言うまでもなく、百合子の殺気まじりの訊問によるものである。そう、もはや彼女の問いは質問なんて生易しいものじゃなくなっていたのだ。さすがに拷問の域には入っていないが。
 何しろ横島は妖怪と分身と神様と三股かけている上に、その中の1人とは婚約までしていたというはちゃめちゃっぷりなのである。いきなり隠し子に出て来られたりしても困るし、この際だから洗いざらい白状させておかねば安心してナルニアに帰れないというものだ。
 隠し事をしていたという点ではカリンとタマモも同罪だったが、百合子は2人を責める気はなかった。カリンに対してはまだ娘と認知していないし、タマモに至っては初対面の他人なのだ。そんな相手に重大な秘密を簡単に明かせという方が間違っている。

(あうう……ど、どーしてこんなことに!?)

 百合子のその圧倒的なプレッシャーの前に、横島はまともに口を利くことすらできない。してみれば百合子のこのやり方は「しゃべらせる」には実は不適当な方法だったかも知れないが、そこにカリンがやれやれと肩をすくめて仲裁に入った。

「まあ気を静めてくれ百合子殿、そうケンカ腰では横島も話がしづらいだろう。
 隠し事は実はもう1つだけある……もっとも女性関係のことじゃないが」

 どうやらカリンはこの機に何もかも明かしておこうと思ったようだが、それは事前の打ち合わせには入ってなかったことらしく、横島はがばっと身を起こした。

「ちょ、ちょっと待てカリン。それはまだ言わない予定で……ハッ!」

 横島は台詞の途中であわてて口を手でふさいだがもう遅い。それはカリンの言葉が事実だと白状しているようなものだった。
 もっとも黙っていたところで結果は同じだっただろう。百合子が改めて息子の顔をギロリと睨みつける。

「ひいっ!?」

 その凶悪無比な眼光にたじろいだ横島がずざざざざっと後ずさる。これから明かされる秘密に対してあまりにも情けなさ過ぎる姿だったが、カリンは今度も百合子の腕を引いて止めてやった。

「まあ待ってくれ。私が口火を切ったんだ、私から話そう。
 ところで百合子殿は小竜姫殿がおいくつなのか知っているか?」
「え!? ……そうねえ、20歳くらいに見えたけど、それがどーかしたの?」

 唐突な質問に百合子は首をかしげたが、それでも素直に思ったことを回答すると、影法師娘は百合子が想像もしなかったことを並べ立ててきた。

「いや。私も細かくは知らないが、もう1千歳くらいになるそうだ。つまり人間の50倍くらいの寿命があると推測できるわけだが……逆に言うと、小竜姫殿から見れば私たちはわずか50分の1の時間しか生きられない短命な種族なんだ。
 そんな彼女が、ただの人間を『彼氏』ならともかく『夫』にしようと考えるだろうか?」
「……そういえばそうねえ」

 百合子は今までそんなこと考えてもみなかったが、言われてみればその通りである。小竜姫の見た目が人間そっくりだからと言って、寿命まで人間と同じであるべき必然性はない。何しろ神様なのだから。
 まあ寿命が長い生物は行動のテンポもゆっくりだという話もあるから、時間感覚としては同じなのかも知れないけれど。
 ただこの時点では百合子はまだカリンの言わんとすることは分からなかったが、彼女の次の話で理解はできた―――もっとも、信じられはしなかったのだが。

「つまり横島は小竜姫殿と同じ寿命を持っているんだ。
 横島と私が竜気を扱えることはこの前話したと思うが、それを極めて自分自身を竜神に転化させたんだ。だからこそ小竜姫殿ほどのひとが結婚する気になったというわけだ」
「……つまりこのバカが神様になったってこと? あなたが嘘つきだとは思ってないけど、さすがにそれは信じられないわよ」

 カリンの話は一応筋が通ってはいたが、しかしあまりにも荒唐無稽(こうとうむけい)すぎる。おそらく本当の隠し事をごまかすためにこんなヨタ話をしているのだろうと百合子は見当をつけたのだが、影法師娘は自説にしつこくこだわってきた。

「いや、嘘じゃないぞ。確かに今は人間と変わらないが、近いうちに霊力は人間の限界を超えるし、寿命の件も本当だ。
 横島が妙神神社の宮司になるのは、そういう存在が街中にいるといろいろ面倒事が起こるから人目のないところに引っ込もうという意図もあるんだ」
「……」

 それでも百合子が信じる気になれずに少女をうさんくさそうに見つめていると、カリンはふうっとため息をついて横島の方に顔を向けた。

「横島、どうする? まあ信じてもらえなくても困らないといえば困らないんだが……」

 すると横島はむしろラッキーといったような表情を浮かべて、

「んー、ま、仕方ねーんじゃねーか? 俺たちはちゃんと言ったんだからもう後ろめたいことはないわけだし」

 と信じてもらう努力をあっさり放棄した。
 横島が九頭竜の姿を見せれば否応なしに信じてもらえるだろうが、カリンが言った通り今の彼は人間並みの力しかないから、それをやるメリットは何もないのだ。もともとこの事を言うつもりはなかったのだし、たわ言ということで流してもらっても別に不都合はない。
 むろんいずれ真実は明らかになるのだが、ちゃんと本当のことを言った以上咎められる筋合いはないのだから。

(この子たち、どういうつもりなのかしら……?)

 百合子は勘や洞察力は十人前くらいあるから、息子たちが嘘は言ってないと断言できる。しかし素直に信じるにはあまりにも非常識すぎる話だった。
 といって具体的な証拠を出させるとか、あるいは小竜姫に確認するというのは好ましくない。それは息子の言葉の真偽を自分の頭で判断する意志を放棄したということで、親としてはなるべく避けたい行為である。

(ま、いずれ事実は明らかになるわけだし……一応信じてあげるって辺りが落としどころかしらね)

 横島たちの今の様子を見る限りでは、竜神になったというのがたとえ事実でも当面の生活に問題はないようだ。なら今ここでくどくど追及することはなかろう。
 しかし竜神に「なった」という以上、息子はすでに人間ではなくなったという事なのだろうか。まあ魔物とか怪人とかになるよりはずっといいが、これは親としてどう解釈すべきなのだろう。神様は一応人間より尊いという事になっているから、むしろ褒めてやるべきなのだろうか。親に無断で勝手なことをとも思うが、どうも実感が湧いて来ないので具体的にどう反応すればいいのかは分からなかった。
 まあ次に会う時にはすべてがはっきりするはずだから、そのとき考えても良かろう。

「……そう、わかったわ。
 じゃ、そろそろ帰りましょうか。カリンさん、あの姿になってくれる?」
「え? あ、ああ」

 横島もカリンもタマモもこれほどの重大発言を百合子が本当に軽く流してしまったことに驚いたが、それはそれで助かる話である。百合子の気が変わらないうちにということでさっそくカリンが竜モードになると、横島とタマモはさっさとその上に乗り込んだ。
 ついで百合子が横島の後ろに座り、横島がここに来た時と同じように結界を張るとカリンが加速・上昇し、やがてその姿は妙神山からは見えないところまで遠ざかった。
 こうして、横島は無事(?)三股と進路と竜神化を百合子に公認してもらえたのである。


 一方そのころ、修業場では。玉竜とヒャクメが宿坊の一室で正座させられて小竜姫のお小言をくらっていた。

「まったく、今日はここには来ないようにとあれほど念を押したでしょう! それに父上まで一緒になって覗きだなんて、いったい何を考えているんですか」

 玉竜が持って来た隠形結界は小竜姫といえども見破れない代物なのだが、それでも見つけ出す方法はあった。
 やり方は単純で、竜の姿になって構内をうろつき回ればいいのだ。結界に防御機能がついてなければ押し潰される前に姿を見せるだろうし、ついていればぶつかった感触で分かるだろう。竜の姿になっても理性を保てるようになったからこその捜査手法である。
 結界は一応防御機能もついていたが、体長60メートルの竜に体当たりされて無事でいられるほど頑丈なものではなかったので、玉竜とヒャクメはあっさり白旗を上げて結界を解除したというわけだ。

「面目ない、実に面白そうな話だったのでつい好奇心が刺激されてね」
「そうそう、私ってば好奇心のカタマリだから」
「反省が見られませんよっ!?」

 小竜姫がぴしゃりと2人の駄弁をさえぎると、玉竜とヒャクメはカメのように首をすくめて縮こまった。小竜姫ははあっと深いため息をつくと、

「まあ2人とも悪いことをしていたという自覚はあるようなのでこれ以上は言いませんが、代わりに新しく考案した修業コースの実験台になっていただきます」
「じ、実験台!? そ、それはむごいのね小竜姫ー!」

 ヒャクメが泣きそうな顔で悲鳴をあげたが、小竜姫はスルーした。

「いえ、父上とヒャクメはそうして座っててもらえばいいんです。ただほんのちょっと、天井からヒモで石やら剣やらを頭の上に吊り下げるだけですから」
「そ、それはちょっと危ないんじゃないかな小竜!?」

 玉竜も真っ青になったが、小竜姫は眉ひとつ動かさなかった。もともと彼女は主筋である天龍童子にさえ容赦なくおしおきする女丈夫なのだから、今さら父親だからといって遠慮などするはずがない。

「ヒモは丈夫ですからケガの心配はありませんよ。あくまで不動心を養う修業ですから。
 ただ初めてのことなので高さの調整に失敗して頭にかすってしまうかも知れませんけど、そこは大目に見て下さいね」
「見られるわけないだろう!?」
「ないのねー!」

 玉竜とヒャクメが納得できないのは当然だったが、小竜姫はやはりスルーした。

「じゃ、すぐ準備しますから座ったままでいて下さいね」

 と見た目だけは普段通りの態度のまま、小竜姫は部屋を出て行った。
 そのあと玉竜とヒャクメがどうなったかについては、語る者がいないため真実は闇の中である。


 ―――つづく。

 今回のテーマは「自業自得」でした。
 あと文中で小竜姫が体長60メートルと描写されてますが、これは大人になって霊力が上がったことによるものです。
 ではレス返しを。

○遊鬼さん
 横島君はああいうヤツですからねぇ。最後までカッコよく決めちゃいけない星の下に生まれついてるんですよ、きっと(酷)。
 ハンディキャップ戦であそこまで粘れたこと自体は立派なものなのですがー。
>タマモ
 は、彼女も日々努力しておりますから。
 技がネタに走ってるのは彼氏のせいですけどw
>百合子
 原作でも令子にシバかれる横島君を一応は心配してましたからねぇ。
 その後自分が率先してシバいてましたが(笑)。

○紅さん
 は、横島君も奥さんズにしごかれてレベルアップしているのであります。オチ担当なのは変わらないので最後はああなってしまうのですが(酷)。

○cpyさん
 や、ネタを受けていただけて嬉しいです。
 横島君はあの大魔道士と並び称されることが多い男ですからねぇ。このSSでは火力は担当できないのですが(ぉ
>防御系の術者
 そうなのですよー。原作でも文珠の《防》とか《護》とか、重要な局面で役立ってますからねぇ。
 いずれはチームプレイでの活躍も描きたいものですな。

○ロイさん
>五指狐火弾
 はい、その禁呪法です。それを恋人に使う辺りタマモン容赦ありませんw
>GM
 今回はわりと自分のペースで行けたと思うのですよー。竜神化のことも話させましたし(笑)。
 しかし横島君がアレでは怒る前に素直に信じられないというのが妥当かなぁとw
 玉竜とのバトルは残念ながら勃発しませんでしたが、代わりに娘にお仕置きされるイベントが発生しましたw

○アラヤさん
>小竜姫さま
 はい、いつの間にかすごいヒロインになってしまいましたw
>マーラ様
 そう言えば竜神界は仏教系でしたねぇ。なら横島君もそういう神様になれるかも知れませんな。
 お笑いの神様とどっちが向いてるかってとこですねーw

○Februaryさん
 横島君とタマモでは真剣勝負なんて望む方が間違ってますからw
 彼は今回もお仕置きされました。
>某ダ女神様を生贄に?
 パパは結局逃げられませんでしたw
>「味わわせる」
 ネットの辞書だと「味合わせる」だったのでこちらを採用したのですが、日本語って難しいですよねぇorz

○KOS-MOSさん
>横島君
 雪之丞戦ではいいこと何もなかったですから、それに比べればマシという所でしょうかw
>横島もタマモもいろいろと技がふえてますね
 はい、修業の成果が出てきております。
 問題はこれをフルに使わせるほどの強敵があんまりいないということで(ぉ

○通りすがりのヘタレさん
 横島君がきちんと締めて終わるなんて、天が許しても(中略)ですから(酷)。
>煩悩が全てを台無しにしているという
 しかしシリアスな横島はGSとして存在価値がないわけですから、世の中難しいものですよねぇ。
>GM
 そうですねぇ、息子が丸焼きになったのに平気な顔してるって、よく考えたらすごいですな<マテ
 黙ってたのは、単に叱る場面が今回に持ち越しになっただけでありますー。
>覗き魔ーズ
 作戦は完遂できましたが、しかるべき報いは受けましたw

○178さん
>フィンガー・フレア・ボムズ
 横タマは着々と大魔道士の域に近づいております(ぇー
>死亡届偽造
 うーん、100年先となると世の中がどうなってるか分かりませんから不透明であります。本物の神様として認知されれば戸籍とかタマモの保護資格なんて問題にならないでしょうし。

○ヴォイドさん
 楽しんでいただけてるようで幸甚であります。
 五指狐火弾は改変済みなので、何発撃っても寿命が縮むなんて不都合なことはありません(ぉ
>エロエロ痺れブレス
 いあ、嫌がる女性に無理やりなんて非道なことはしませんですよ?
>隠してあるエロ本
 もうすでにカリンとタマモに処分されてますからw

○whiteangelさん
 オチ担当って可哀そうですよねぇwww

○Tシローさん
>タマモ
 保護者にかなり毒されてきておりますw
>横島
 煩悩&ギャグ担当の宿命であります。哀れ(涙)。
>ヒャクメ
 うっかりはしませんでしたが、そもそも覗きに来たこと自体が間違いでしたw

○ばーばろさん
>小竜姫さま
 いあ、そこまでヨゴさなくても(^^;
>「連〇のモ〇ル〇ーツは化け物か」
 実はそうしたかったんですが、それだと意味が正確に伝わらないかなと思って泣く泣く断念したのであります(o_ _)o
>パンツに目が行って動きを止めるとは
 もう条件反射になってますからねぇ。原作のGS試験編でも似たようなことやってますしw
 でも折檻はナシでした。鬼の目にも涙とはこのことでしょうか。
>玉竜さま
 だってこのひと好きで経典もらいに行ったわけじゃありませんし(爆)。
 唯一の活躍シーンでも女に化けて不意打ちとか企んでましたからねぇ。けっこう俗っぽい方なんじゃないかとw

○とろもろさん
 横島君の煩悩は本人を救うこともあれば地獄に叩き落すこともある諸刃の剣なのであります。
 原作だとひどい目に遭うケースの方がはるかに多いのですがーw
 ちなみに将来的には煩悩魔竜と綽名されることになるようです(ぉ
>九尾狐炎弾
 今のタマモなら有るかも知れませんねぇ。そこまでしなかったのはせめてもの情けというやつでしょうか。

○風来人さん
 横島君は戦闘スキルは相当アップしたのですが、おバカっぷりはまだまだ残ってるようで困りものですw
>ロリ
 横島君としてはあくまでタマモが恋人だからと主張したい所でしょうけど、信じてもらえるかどうかは微妙ですなw

○山瀬竜さん
 横島君にもたまには主人公らしくぴしっと決める所も書いてあげたいと思う事もあるのですが、なかなか筆がそういう方向に進みません(酷)。
 なので脳裏に鮮明に映るとまで言っていただけると非常に物書き冥利につきます<マテ
>一貫してひたすら地味に生き残ることに特化していくのは横島君らしくていいと思います
 ありがとうございますー。もともと彼は好きでGSになったわけじゃないですし、ヘタレで臆病なやつですからねぇ。こういう方向に進んでいってもおかしくないと思うのですよー。
 仰る通り、素手での防御技能ならもう人類最高クラスっぽいです(笑)。
>デタント的には〜〜〜
 マイトが2桁や3桁のうちは問題ないでしょうけど、4桁になるとあまり好き勝手するわけにはいかないかも知れませんねぇ。
 でも道真公みたいな立場なら問題ないような?
>もちろんみんなアフロになっただけかと
 女の命をアフロなんかにしたら横島君生きて帰れませんがな(笑)。
>『無限の煩悩』が荒野でなくて武道館だったら!と
 すばらしい!<マテ
 こっちの方が横島君らしくて良かったですねぇ。

○読石さん
 横島クオリティはもはや呪いの域に達してるかも知れませんなぁ(涙)。
>タマモさんの幻術の原理
 ありがとうございますー。でもそんなことくらいにしか使わないからこそ親しまれるのかも知れませんね。

○内海一弘さん
 横島君は強くなってるのは確かであります。内面は……ちょっとは成長しておりますよー、そう、あれは女の子に花を持たせたんだと考えれば(爆)。

○鋼鉄の騎士さん
 あれは条件反射だったので、親が見てるとか師匠が見てるとかいうのは関係ないのです。
 仰る通りどっちみち感動フラグなんてありませんしーw

○チョーやんさん
 ども、お体はお大事にー。
 小竜姫さまは大人になりましたから、GMとだって渡り合えるのです!
>横島クン、ずっとアホの子のターンでオワタ
 いあ、彼も結構がんばっていたのではないかと(^^;
 今のタマモの連続攻撃をしのぎ切るなんて、並みの技量では出来ませんから!
 まあGMにはかなわないわけですがw

○UEPONさん
>霊気、霊力
 うーん、確かにそれはあるんですが、霊気→竜気はともかく、霊力とか霊圧とかいう単語には対応する妥当な言葉がありませんので、状況によってはこういう風に書かせていただいてます。
>オレンジ色
 いあ、横島君の竜気は独自じゃなくてあくまで小竜姫さまのと同質なので、オレンジ色で正しいのですー。そうでないと煩悩全開(小竜姫Ver)もできませんし(ぉ
>いや本気で逃げてるからこそ敵も油断するとゆ〜ものかと思います
 は、実戦ならまさにその通りだと思います。
 でもあの場の百合子さんから見るとあまりにも情けない顔だったというわけで。
>今回のオチの部分でも同じセリフを違う意味で言ってそうですね
 ひどい話ですよねぇw
>「リュー」ver
 んー、それはどんなものなのでしょうか?
>髪の毛使うと身外身の術みたいですね
 タマモがさらに修業したら出来るようになるかも知れませんねぃ。横島君が喜ぶかも(ぇ
>嫁候補
 こう見ると横島君ってモテてますねぇ……。
 魔鈴さんは寿命問題も何とかなりそうですが、まだ現在の奥さんズ&GMという厚い壁が残ってますしなかなか難しそうであります(o_ _)o
>「踊るGS」に出演
 横島君はすでに映画に出演した経験がありますから、案外うまくやれるかも知れませんねぇ。
 美形の引き立て役は嫌がりそうな気がしますがーw
>小竜姫様成神おめでと〜ございます
 や、痛み入りますです。体形は……いつかいいこともあるさ(ぉ

○HALさん
 横島君は基本がおバカでヨゴレのオチ担当なので、いつまでもいい思いをしてばかりではいられないのであります。南無。
>戸籍上の妻の座
 そうなんですよねぇ。でもこの先魔鈴さんのところでバイトすれば大いに希望アリなんですが、問題は奥さんズ(以下略)。

   ではまた。

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