横島とタマモが結界の中で向かい合うと、小竜姫が外から注意事項を示達してきた。
「横島さんはなるべく結界に頼らず他の方法で避けて下さいね。タマモさんは幻覚の術は使わないように」
これは横島が結界に閉じこもっているだけでは戦闘センスが磨かれないし、タマモの幻覚が効いてしまうとそれで試合終了になってしまうからである。また小竜姫自身が2人の相手をしないのは、得意な間合いが違いすぎるのでどうしても「追う小竜姫と逃げる横タマ」という展開になって見映えが悪いという理由だった。普段ならそれでもいいが、今回は百合子に披露するためのものなので。
横島には「タマモをどつき倒して勝つ」という考えはまったくなかった。しかし幸い、新技の麻痺のブレスは相手を傷つけずに制圧することができるので、これを当てて恋人をケガさせずに試合終了に持ち込むつもりである。
一方タマモは幻術を使用禁止にされたので、後は狐火か格闘戦で横島を肉体的に打ち倒す以外に勝つ方法がない。もっとも今の彼はなかば不死身みたいなものだから、狐火をぶつける事にさほどの気後れはなかった。百合子や小竜姫の前であまり手加減はできないし。
「というわけで、いくわよ横島。
えっと……五指狐火弾、だっけ?」
「微妙な改変してるんじゃねーっ!」
タマモが広げた右手の5本の指の先に生まれた小さな火の玉5つが横島めがけて空をはしる。横島はあわてて横に跳んで逃げた。
空を飛べばもっと楽にかわせるのだが、さすがに母親の前で「生身の体の」自分が飛ぶところを見せる事にはためらいがあったのだ。
つい半秒前まで横島がいた場所で狐火弾がぶつかり合って爆発し、金色の炎が派手な轟音をあげて空気を焦がす。
「うわちゃちゃちゃっ!? す、少しは手加減しろタマモ!」
飛び散った火花がうなじに落ちた横島が悲鳴をあげ、恋人の容赦なさを非難する。しかし狐娘はごく平然と、
「だってこれくらいしないと横島には効かないでしょ?」
「効きすぎじゃーっ! つーか死ぬわ!!」
まあ常人なら黒焦げになっていた事は確かなので横島の言うことも間違いではないのだが、それを聞いた百合子はさすがに心配になって隣の小竜姫に訊ねた。
「あの、小竜姫様。あんな炎が当たったら大ケガしてしまうのでは?」
結界で防ぐとしても受けそこなう事だってあるだろうし、そうなったらいくら横島が頑丈でも死にかねない。百合子がそう思ったのはしごく当然のことなのだが、その疑問に対する回答は逆隣から返ってきた。
「いや、大丈夫だ。あれくらいの炎なら直撃しても……火傷はするが、命に別状はない。横島の能力は支援とか防御とか回復に特化してるから」
「……」
一応は一般人である百合子にとっては信じがたい台詞だったが、「横島が死んだら私も死ぬ」少女が平気な顔で言い切る以上、本当にそうなのだろう。百合子はあっさり口出しをやめた。
むろん小竜姫もこの程度のことで試合を中止にする気はない。
「な、長引いたらマジで燃やされるな。ここは速攻で勝負を決めよう」
外野が止めてくれないので、横島は仕方なく自分でケリをつけることにした。
しかしただ正面から麻痺ガスを吹きつけるのはあまりに真っ正直すぎる。ここは自分らしく、フェイントの1つも入れてからにするべきだろう。
「だーーーーっ!」
横島はまずまっすぐ前に出て間合いを詰める、と見せかけて体を振って横に跳び、そのままタマモの横を走り抜ける。予想外の行動に驚いたタマモが体を向けて来たところで自分も振り向き、必殺のブレスを吹きかける!
「甘いわね!」
しかしタマモはその攻撃にほとんど遅れることなく、自分も口から狐火を吐き出した。オレンジ色の麻痺ガスと金色の狐火が2人の真ん中でぶつかり合い、お互いの体に届くことなく中和されて散っていく。
「な、読まれてた!?」
タマモの反応がやけに早かったことに横島が驚きの声をあげると、狐娘はあっさりと種明かしをしてくれた。
「だって横島が私を殴るとか蹴飛ばすとか、そういうケガしそうなことするわけないもの。あと残ってる技はそのブレスだけだから」
「タマモ……!?」
横島はタマモがそこまで自分を信頼してくれていたことに感動したが、これはタマモは彼の口元だけ警戒していればいいという横島にとって圧倒的不利な状況でもあった。だってタマモの方は平気で狐火を飛ばしてくるのだから。
「って、待たんかい! これじゃ俺に勝ち目ねーだろ、やり直しを要求するーっ!!」
具体的に何をどうやり直して欲しいのかは不明だが、ともかく横島はそう叫んでクレームをつけた。すると小竜姫がはあっと息をついて、
「別にそこまで悲観することはないでしょう。私は『なるべく結界に頼らず』とは言いましたけど、『まったく使ってはいけない』とまでは言ってないんですから」
「あ、じゃあ使ってもいいんスか?」
「ええ、構いませんよ。ただしその中に閉じこもってるだけというのは禁止ですからね」
と小竜姫は改めて強調したが、横島も百合子の前でそういう手を使うつもりはなかった。相手が小竜姫ならともかく、タマモにやったらただの小心者にしか見えないから。
しかしこれでは狐娘の火力に対してまだ不安がある。
「おーいカリン、俺の中に戻ってくれ。このままじゃたまらん」
横島は煩悩パワーを霊力に変えて竜珠に溜めておくというトンデモ技を持っているから影法師を出した状態でも霊力を扱うことができるのだが、それでも霊体を外に出したままで霊的格闘をやるというのが巨大なハンデである事は変わりない。彼の希望は正当なものだと言えるだろう。
「ふむ……?」
カリンが小竜姫の顔を覗きこむと、師匠にして恋人仲間の女神さまはこっくりと頷いて承認の意を示した。
カリンが横島の傍らに歩み寄って、
「じゃあ戻るが、百合子殿の前なんだからあんまり変な戦い方はするなよ」
「……努力はしてる」
横島が微妙に口元をひきつらせながらそう答えると、カリンも苦笑しながら本体の中に戻った。彼の外見には何の変化もないのだが、これで煩悩パワーに頼らずとも普通に霊力を扱えるようになったのだ。
「よし、待たせたなタマモ。じゃあ互いにケガさせないよー注意しつつ、正々堂々勝負しよう」
「んー、努力はするわ」
いろいろとアレなやりとりをしながらも、再び構えを取る横タマ。そんな2人の様子に、玉竜がお茶をすすりつつのんびりした口調で感想をもらす。
「ふむ。横島君はたとえ試合でも、小竜ならともかくタマモさんに手は上げられないか。思った通り女の子には甘いねえ。
でもその分を影法師を戻すことで補ってる辺り、けっこう戦い慣れしてるのかな?」
「今の狐火は人間に出せる火力じゃありませんでしたからねー」
ヒャクメもお菓子をほおばりながら、のんきな顔つきで相槌を打った。第1戦のときと違って、こちらの2人にも緊張感が思い切り抜け落ちてしまっている。
「じゃあ行くわよ横島。私も場数踏んで成長したとこ見せてあげる」
タマモがまず両腕を鳥の翼に変化させて飛び上がり、ついでご自慢のナインテールを長い鞭に変える。言うなれば人狐一体の単身Verというところか。
金色の鞭が9本、風切り音をたてながら横島の頭上に落ちてくる!
「のわあぁぁっ!?」
横島があわてて結界を張ると、鞭はそれに当たってバチバチバチン!と痛そうな音をたてた。ある特定の趣味を持った方々なら喜んだかも知れないが、残念ながら横島にそういう嗜好はない。
彼の結界はこの程度で破られたりはしなかったが、横島は何となくぞっとしてとりあえず横に走った。追いかけてきたタマモが再び振り下ろした鞭を今度は金縛りの術で止めると、鞭を止めたままでタマモの腿の辺りを狙ってブレスを吐き出す。
今止めた鞭にぶつければ確実に当たるのだが、彼にはそこまで巧緻な計算はできなかったようだ。おかげで今回も狐火で相殺され、鞭にかけた金縛りも破られて逃げ回るハメになった。
「情けないわねぇ。逃げるのは作戦のうちかも知れないけど、あの『怖いですー!』って言わんばかりの崩れた顔はどーにかならないのかしら」
「……タマモさんが男だったら、横島さんももっとまともに戦えるんですが」
小竜姫は百合子の感想がちょっと耳に痛かったのか、フォローらしき台詞を口にした。実際横島がその気になれば、今止めた尾をつかんでタマモを引きずり降ろすなり、あるいは竜気をまとって格闘を挑むなり出来たはずなのだから。
「なるほどねぇ。まああんな小さな娘を殴るよりはマシってとこかしら」
百合子はそんなDV(ドメスティックバイオレンス)野郎に息子を育てた覚えはない。これが空手や柔道の試合だったら話は別なのだが、必然性もないのに女性に暴力を振るうような男になっていなかった事には安堵した。
そんなやりとりの間にも試合は続いている。横島が落ちて来た鞭をゴキブリダッシュで回避し、追いかけて来たタマモの足に金縛りの術をかけた。
「きゃあっ!?」
狐娘が空中でよろめいたところで、横島が地上からブレスを吹きつける。少なくとも口から吐く狐火では防げないタイミングだったが、タマモはぱっと右手を開くとその先に狐火の板をつくり出して麻痺ガスを受け止めた。しょせん麻痺ガスも狐火も軽くて速度も遅い粒子なので、衝撃力とか貫徹力とかいった物は持ち合わせていないのだ。
「えいっ!」
タマモがその狐火の板を横島めがけて放り投げる。横島は破術でそれを吹き散らしたが、その間に腕を上下させて飛ぶのに疲れたタマモが地上に降りてきて対戦相手に話しかけた。
「ずいぶんねばるじゃない、横島。初めて会った頃と比べたらもー別人みたいよ」
それは仮にも九尾の狐である自分の力が通用しないことへのいまいましさと、保護者兼恋人の実力と成長を頼もしく思う気持ちがないまざった複雑な口調だった。
タマモ自身も猿神の修業や妖気制御トレーニング、それに何回かの実戦を経て大きく成長したつもりだったが、横島は不恰好に逃げ回りつつもまだ1発もくらっていないのだ。むろん全力で攻撃したわけではないが、それにしてもすごい防御技術である。
「いや、おまえの方こそ前やった時とは比べもんにならんくらいだぞ。具体的にゆーとそろそろ試合止めにしてほしいくらい」
だがそれは横島の方も同じだった。
彼が言う「前やった時」というのは夏休みの修業の時のことである。あの時もタマモと対戦したが、火力も戦闘技術も段違いだ。保護者としては安心だが、痴話ゲンカなどでは絶対使ってほしくない。
そしてそれとは別に、横島にも一応、形だけながらも男のメンツというものがあった。
「だがタマモ、俺も保護者としてそー簡単に負けてやるわけにはいかん! 見ろ、これがわざわざカリンを呼び戻した理由だっ!」
その割には別の恋人の力を借りようとしているのがいかにもヘタレっぽかったが、まあ横島だから仕方がない。
横島の全身からオレンジ色の炎のようなものが噴き上がり、オーラの鎧となって凝固する。
「あ、それ……確かブラドーの時と毒グモの時にやった技ね」
「おお、よく覚えてたな。そう、こうすれば防御力が上がるだけじゃなくて、カリンにサポートしてもらうこともできるよーになるんだ」
横島は2回しか見せたことがない技をタマモが覚えていてくれた事に気を良くしながら自慢げにそう言ったが、しかし現実はそこまで甘くはなかった。彼の脳裏に聞き慣れた声が憮然とした口調で話しかけてくる。
「いや、あくまでこの姿を維持しててやるだけだからな。術で援護まではしないぞ」
「えー、何でだよ。おまえは俺の一部なんだから、サポートしてもらっても他人の助太刀ってことにはならんだろ」
「形としては確かにそうだが、実質的には2人がかりだからな」
とカリンは言ったが、あるいはすでにサービスしすぎになっていたかも知れない。いまや横島の姿はオーラをまとっているというより人の形をした竜とでも呼ぶべきものになっていて、硬い鱗はもちろん鋭い爪、おまけに立派な尻尾までついているのだから。
この分ならシロが使ったような固形型の霊波刀ならつくれそうな感じだが、今はカリンはそれをやる気はないようだ。
ただ横島のこの姿は一般人から見ればひどく異様なものに映るのも確かである。百合子が驚きに眼を見開きながら小竜姫に訊ねた。
「小竜姫様、忠夫のあの姿はいったい……!?」
「あれですか。あれは霊気を念で硬くして鎧みたいにまとっているんですよ。あれなら狐火をくらってもダメージはだいぶ減ると思います」
もっとも魔装術や小竜姫が令子の試練で使った影法師化とは違うから、スピードやパワーなどは上がらない。いやカリンがその気になればできるのだろうが、まとうのが横島では何をしでかすかあまりにも明らかだからあえてやらないでいるのだろう。
「なるほど、そうですか……いろいろとご指導いただいたみたいですね」
なるほどカリンが言った通り、本当に息子の能力は防御方面に特化しているようだ。その鎧が竜のような姿なのは、やはり師が竜神だからであろう。逃げたり避けたりするのは素で得意みたいだし、親としてはありがたい指導方針だった。
しかし小竜姫はその謝辞にかぶりを振って、
「いえ、あれは横島さんとカリンさんが自力で会得した術ですよ。横島さんの素質にはいつも驚かされてます」
とむしろ誇らしげに答えた。むろん彼女が指導してきた基礎トレーニングあってのことではあるが、そんなことを自慢する気はさらさらないのだ。
横島が改めてタマモに向き直って、試合再開を宣告する。
「それもそだな。んじゃ正々堂々、1対1で続きだタマモ!」
「……まあ、どっちでもいいけど」
タマモが腕の変化を解き、代わりに9本の鞭で体を囲うようにして横島と対峙する。あの硬そうな鱗の鎧を鞭で叩いても自分が痛いだけだろうが、彼の手足をからめ取る役には立つはずだ。
「じゃ、いくわよ!」
とタマモが再び五指狐火弾を発射すると、横島も今度は逃げ切れず結界で受け止めることになった。結界は火球そのものは止めたもののそれが放つすさまじい熱波までは遮断しきれず、中にいる横島に砂漠のような暑気を味合わせる。
「熱ちちちちっ!?」
これはたまらん、と結界を解除して後ろに逃げ走る横島。すると後ろから細身のブーメランのようなものが飛んできた。
「のわあっ!?」
術も避けるのも間に合わない。横島は反射的に腕で打ち払ったが、ブーメランは地面に落ちて1度だけはね返ると突然煙のように消えてしまった。
「……!? タマモ、幻術使ったのか?」
それは反則だったはずだ。横島が咎めるような視線をタマモに送ると、いつの間にか鞭の変化も解いていた狐娘はあっけらかんとした顔で容疑を否定した。
「違うわよ。ほらよく見て、私の髪の毛が落ちてるでしょ?」
「へ? ……いや、風で飛んでっちゃったみたいだけど」
「そう? じゃ、もう1度見せたげるわ」
とタマモは髪の毛を1本引き抜くと、その端を指でつまんで顔の前にぶらさげる。軽く見つめて妖気をこめてやると、ぽんっと煙を上げてさっきと同じブーメランに変化した。
「昔話でよくあるでしょ、狐が木の葉をお金に変えて化かすってお話。あれと同じ術よ」
もっともかの狐たちは木の葉の原子を作り変えていたわけではないし、単なる立体映像をつくっていたわけでもない。前者は技術的に難しすぎるし、後者は手触りや重みですぐバレてしまう。
つまり彼らは木の葉を媒体にして、物理的な干渉力を持ったエネルギー場をつくっていたというわけだ。変化の術に分類されるが、術のありようとしてはむしろ狐火や霊波刀に近いものである。
今回タマモは髪の毛を媒体にしてブーメランの幻像をつくったわけだが、直接体を変化させるのと違って、術をかけた髪の毛が破壊されても本人にダメージはないのが利点だった。
ちなみに媒体が髪の毛なら形状的に投げ槍の類の方が作りやすいのだが、これは当たったらシャレにならないので自粛していたりする。
「とゆーわけで、もう1発行くわよ!」
とタマモは言ったが、ブーメランは飛んで来なかった。代わりに今度はうねる高波のような形の狐火が地を這ってくる。
「ちくしょー、タマモの妖力は底なしか!?」
「これが九尾の狐の潜在能力ということか……」
横島もカリンもタマモがこれだけの攻撃を矢継ぎ早に繰り出して来られる事に驚いていたが、そろそろ彼女の動きのパターンが見えて来ていた。何だかんだ言って横島は自分より格上の相手と戦った経験は豊富なのだ。
タマモは体術の方は素人に毛の生えたようなもので、雪之丞や鬼道、あるいは犬飼ポチなどに比べればくみし易い相手と言ってもいいくらいなのである。
「だああっ!」
まずは竜気走法で狐火をかわし、そのまま大きく迂回してタマモの横に回りこむ。もっともタマモも黙って回り込まれてやるほどお人好しではなくすぐに向き直ってきたのだが、横島はさらに跳んで狐娘の横側を取ることにこだわった。
「何考えてるのかよくわかんないけど……とりあえずこれでどう!?」
タマモは異様な速さで走り回る横島の動きに少しとまどいを感じていたが、それは顔には出さない。そして頭上にかざした手の上に、ソフトボール大の火の玉をつくり出す。横島が突撃してきたらこれで迎え撃つつもりだった。
一方横島はそれを見て側面攻撃をあきらめたのか、タマモの真正面で足を止めて軽く腰を落とす。どうやらまたブレスを吐くつもりのようだ。
タマモにとっては逆に先制攻撃のチャンスである。
「えっと……くらいやがれー!だっけ?」
「それはもういいっちゅーんじゃ!」
タマモが横島の叫びを完璧に無視して火球を前方に放り投げると、それはいきなり横島の全身を軽く包み込めるほどに膨張した。しかし横島は避けようとはせず、両腕で顔だけかばうとあえて自分からその中に突っ込む。
「くっ!」
そこで表情をゆがめたのはタマモの方だった。タマモは狐火を扱えるからといって自身が熱に強いわけではないので、今横島の体に触れたら火傷してしまうのだ。しかしブーメランを投げるには間合いが近すぎる。
タマモがあわてて後ろに跳ぶ、そこに炎の幕を突破した横島が金縛りの術をかけた。
「きゃっ!」
霊圧はタマモの方がかなり強いから術自体はすぐ破れたが、体勢が崩れるのは避けられない。タマモは着地しそこねて思い切り尻餅をついてしまった。
今麻痺ガスを吹きつけられたらかわしようがない。負けたかな、と狐娘は思ったが、なぜかとどめの一撃はやって来なかった。
不思議に思って前を見てみると、横島が地面にかがみこんでM字開脚状態になった自分の股間を覗きこんでいるではないか。
「きゃーーーっ!!」
「何をやってるバカ者!」
「ちがう、俺はロリじゃない! つい体が勝手に」
恋人2人の悲鳴と叱責を浴びてあわてて飛び退く横島。いろんな意味でアホである。
玉竜もさすがに眉をしかめて、
「うーん、気持ちは分からなくもないけど、母君の前でやることじゃないような気がするねえ」
「何しろ煩悩魔人とまで呼ばれてる人ですからねー……」
ヒャクメもフォローする気はないようだ。フォローのしようがなかったという説もあるが。
「よ、横島ぁ……あ、あんたってやつは」
立ち上がったタマモが顔を真っ赤にして横島を睨みつける。
彼にパンツを見られること自体は別に嫌ではないのだが、それも状況次第だった。少なくとも、百合子が見ている試合の最中に覗き込むというのはNG中のNGだろう。
カリンがあわてて本体の中に引っ込み、竜気の鎧が消える。横島も動顛して結界を張ろうとしたが、それより早くタマモの極大狐火が投げつけられた。
「ぎゃーーーーっ!!」
横島は消し炭になった……。
―――つづく。
横島君がバカをやるせいで試合だけで終わってしまいました(ぉ
原作でタマモもやってた木の葉をお金に変える術の考察については独自解釈なのですが、こう考えるのが1番辻褄が合うと思うのですよー。幻覚を見せるのであれば、後で物的証拠になる木の葉を渡す理由はないわけですし。
タマモが熱に強いわけではないというのは、原作でひのめの発火能力で火傷してた所から設定しました。
ではレス返しを。
○cpyさん
ありがとうございますー。はい、小竜姫さまは横島君の影響でいろいろと変わりました!
横島君はやっぱり邪でした。
○風来人さん
小竜姫さまはもはや昔の小隆起さまではないのであります!
いや小隆起なのは事実なんですが(酷)。
はい、玉竜とヒャクメはわりと仲良しさんですw
竜狐一体もいずれは描きたいですねぃ。
○KOS-MOSさん
毎度お褒めいただきありがとうございますー。
はい、小竜姫さまにとってはものすごい収穫でありました。横島君はいつも通りおバカですが(ぉ
玉竜とヒャクメは普段はちゃんと仕事してますけど、こういう面白そうなイベントがあると好奇心に負けてしまうのですw
○ヴォイドさん
はじめまして、今後ともよろしくお願いします。
魔展開ばかりのSSですが、楽しんでいただけてるようで幸甚であります。
>御前試合
しょせんは横島君でした(ぉ
>カリン
彼女が横島君の霊気を直接サポートしてるのは、今回使った竜気全身装着の時など特別な状況だけで、普段はそういうことはしておりませんですー。なので万が一本体からひっぺがされても特に暴走とかはしない……というか霊体がなくなったら暴走のしようがありません(笑)。
>ドジッ娘くのいち
彼女の技量でカリンをひっぺがすのは非常に難しいと思われますが、やったらやったで小竜姫さまが(以下略)。
○紅さん
>小竜姫
愛の力をもってすればGMにすら打ち勝てるのです!
再修業の成果をみなさん読み取っていただけてるようで嬉しいです。
>横島
やっぱりヘタレでした。
○シエンさん
>玉竜殿下
みなさまのご期待に沿うたといいますかw
カリンはいくら強くなっても身内なので、彼の立場はむしろ良くなるのですよー。他の武神の方々は知りませんが(ぉ
>「か〜み〜か〜ぜ〜の〜術〜!」
さすがに母親の前では使いませんでしたが、素で見えてしまうとつい覗きこんでしまうのが横島君のサガなのでありました。
○通りすがりのヘタレさん
>女同士の戦い
真面目なバトルでしたからねぇ。今度はもっとサービス旺盛なバトルを書きたいものですな(ぉ
>GMの横島君に対する株の低さがうかがえます
一般人で横島君を高く評価する人は少ないですからねぇ。
今回は株を上げるチャンスでしたが、むしろ下がったかも知れませぬ。
でも一応は息子を愛していると思うのですよー(ぉ
>ダ女神&昼行灯
玉竜はともかくヒャクメはヤバげですなw
○ばーばろさん
GMとDFが邂逅したら何が起こるか、筆者にも想像がつきません<マテ
>父親に似た人を結婚相手に選ぶ娘なのか、小竜姫さま
な、何だってー(ぉ
>ヨコシマはフィードバックをいい事に昼寝
いあ、彼はわざとやってたわけじゃないんですよ、決して。
まあこんな戦いぶりでは評価が上がるはずもないのですがー。
奥さんズの評価は順調に上がってますけどw
>「そうだのぅ。他のSSでは瞬殺されるシーンだけだからのぅ」
哀れな(涙)。
○whiteangelさん
カリンと小竜姫さまは横島家のマジメ担当ですから!
玉竜さまの部下はいつものことなので慣れてると思います、きっと。
○読石さん
小竜姫さまが勝ったのは、むしろ正論だからこそだと思われます。やっぱり親御さんに認めてもらうにはストレートな愛が1番なのですよー(ぇ
>横タマ
ここで台なしにしてこそ横島君なのです!(酷)
○Tシローさん
試合が長引いたので、二親邂逅は次になってしまいました。
いあ、玉竜はGMと会う気はないので、ヒャクメ辺りがうっかりしてくれればの話なんですが(ぉ
○遊鬼さん
小竜姫さまの成長ぶりはみなさまの予想を大きく上回ってくれたようで嬉しい限りです(何故
GMが息子に容赦ないのはデフォであります。こんなヤツですからw
>カリン
横島君の情けなさと比較すると、彼女の立派さが際立ちますねえ(酷)。
>ヒャクメ
覗きをしないヒャクメなんてヒャクメじゃありませんから!
玉竜様も当たり前のように乗っかってる辺りどうかと思いますがw
○EFFさん
相手をちゃんと想ってるということを言わないで、その親御さんに認めてもらうのは難しいですからねぇ。
横島君の奥さんズはその辺実にストレートだったのが勝因でした。
人間辞めたのを隠し切れるかどうかはまだ分かりませぬ。ヒャクメもいますし(ぇー
>ママ対決
うーん、このSSでは美智恵さんは横島君に負い目はないんですよねぇ。1人だけ危険なことをやらせたというわけでもないし、イカサマな勧誘したわけでもないので。娘のことは当人がもう大人ですし。
令子さんは……時給255円がバレたら厳しいかも知れませんねぇ(^^;
○ぞらさん
は、小竜姫さまはあらゆる意味で大人になりました(ぉ
横島君もちょっとは成長してるんですが、普段はなかなか表に出て来ない部分なんですよねぇ。
○アラヤさん
横島君の戦術は「ゴキブリ(以下略)」ですからねぇ。相手が強いとホントにまともに戦ってくれません(笑)。
最後の秘密を隠しきれるかどうかは次をお待ち下さいませー。
○Februaryさん
は、成長した姫様はもう向かうところ敵なしっぽいです。体の一部を除いては(ぉ
横島君には自業自得という名の制裁が下りましたので溜飲も下がることかと。
>竜パパ
彼はヒャクメと違って役立たず属性は持ってないので、うまいこと逃れそうな気がしますw
>横島の煩悩を沈める(笑)ために使用されるような気がひしひしと
こんなので沈められたらさすがの横島君も泣きそうですがw
○鋼鉄の騎士さん
小竜姫様は大人になって「どじっ娘」を返上したのですよー。
でもまたきっとかわいいドジをやってくれると信じてます(ぇ
○山瀬竜さん
やー、小竜姫さまがここまで成長するとは筆者自身でさえ想像していませんでした。まあ小隆起であることだけは変わらなかったのですがー(酷!)。
しかしこれがほんの数ヶ月でなされたことを考えると、仰る通り横島神社は神魔族の研修所にされそうですな。横島君は美女以外は放置しそうですが(笑)。
>やばい、何とかに刃物だ(笑)
どっちが何とかでどっちが刃物なんですか?(笑)
>なにげに同種族婚なのはいつばれるのやら
横島君かヒャクメ辺りがドジ踏んでくれるといいのですがー。
>横島君のガスブレスが可燃性なんて事が無いように祈りつつ
なかなか面白いアイデアだなあと思いましたが、横島君はともかくタマモがやばいので涙を飲んで見送りました(o_ _)o
○HALさん
小竜姫さまはアレですね、天は二物を与えずという……今すでにたくさん持ってますから、そこまで完璧にはなれないという事ではないでしょうか。宇宙意志的に(ぉ
横タマ戦はあえてお揚げ技は外してみました。最後に横島君がバカやって燃やされるのはデフォでしたがw
>ダ女神&すちゃらか父さん
ここまで登場を期待されてしまっては、彼らも出ないわけにはいかなかったのでありましょう。果たしてヒャクメは生きて帰ることができるのか(ぉ
○内海一弘さん
小竜姫さまは後は大隆起になりさえすれば完璧なんですがねぇ。絶対にありえなさそうなのが哀愁を誘います。
横島君はさすがにGMの前で煩悩全開はやりませんでした。煩悩を抑えきるのは無理でしたけど(笑)。
○UEPONさん
>法律婚の枠
確かに空きましたけれど、ここに割り込めるほどの傑物といえば……うーむ(^^;;
>なぜわざわざ小竜気を?
誤字ですー。ご指摘ありがとうございます、修正しました。
>小竜姫さまもカリンちゃんも強くなりましたね〜
タマモも強くなって、横島ファミリーはどんどん成長してます。
横島君のおバカっぷりは変わりませんがw
○滑稽さん
今回は試合だけで終わってしまいましたorz
横島君は秘密を隠し切れるのか、それともバレてもう一騒動起こるのかについては次回をお待ち下さいませー。
ではまた。