「まずは首席合格おめでとう、ヨコシマ。私も師匠としてとっても鼻が高いわ♪」
これは私の本心。大方の予想通り?ヨコシマはGS試験を首席で合格した。
当然といえば当然の結果。アマチュアの大会にプロが潜り込んだ様な物だもの。
「はははルシオラの修行のおかげさ本当に感謝してる」
「本当?」
「本当さ」
目の前で正座しているヨコシマは汗びっしょり。
今日は疲れちゃったのかしら?言葉使いも丁寧だけどちょっと棒読みっぽいし。
「どうしたのヨコシマ?やっぱりちょっと疲れちゃった?」
「そうだな少し疲れたから今日は「なら一緒にお風呂に入りましょ。ご褒美に
背中流してあげる♪でもねヨコシマ、その前にどうしても教えて欲しい事があるの♪
いつからバンダナに目が生えたのかしら?」
リスタート
第二十話
我が目を醒ました時、目の前には魔族の女性がいた。
だが少し様子がおかしい。
まず口は笑っているのに目が笑っていない。
敵意は感じないのに殺意は感じる。
敵意と殺意が等しく存在するならば大体の察しは付く。
しかし目の前の女性からは敵意が感じられない。
さりとてこの女から放たれるプレッシャーは明確な殺意がある。
しかしその殺意も本気の殺意かと問われれば否と言わざるを得ず、
我に向けられているというよりも我を通り越して
他の人物に向けられている節がある。
どうにも判断が付きかねた我は仕方なしに眼下の主に話しかけた。
「横島よ。この女性は何を怒っているのだ?」
返事が、無い?
正座したまま寝て・・・・・・いや、気絶しているのか。
◇
「ふむ、ルシオラ殿と言ったか?其方と横島の関係は凡そ理解できた」
「私と横島の関係を理解したならどうして私が怒っているのか理解して頂けたかしら?」
バンダナに生えたバックベアー・・・・・・じゃない、心眼と名乗った目玉を実は私は知っている。
ヨコシマの最初の師匠とも言うべき存在。そして私と同じく身を挺してヨコシマを
護ってくれた恩人。筋目から言えば私は心眼さんに感謝の言葉を言わなきゃいけない。
それは理性では解ってる。理性では解っているのだけど・・・・・・
心眼さんが何時、誰が、どうやって、ヨコシマのバンダナに生まれたのかが問題なのよね。
誰が、どうやっての部分は考える間でもないけど、ね。
「つまり我が何故再び横島のバンダナに宿ったのか、
その理由が其方の怒りの原因という訳か?」
「理由というより手段の方が主な原因よ」
理由に関しては正直余り怒ってはいない。
小竜姫さんが行動を起こすのは時間の問題だと解っていたから。
でも頭で解っていても実際に行動に移されるとやっぱり腹が立つわ!
事実上今まで横島の全部を私は独占していた。
そこに小竜姫さんは堂々と入り込んできた。
その潔さは好感が持てる。好感は持てるけど感情が肯定してくれない。
ついでに言えばヨコシマに対しての怒りははっきり言って、無い。
さっきにしたってちょっと意地悪してみただけで本気でヨコシマに怒りを
覚えた訳じゃない。
じゃあ小竜姫さんにはどうか?
彼女に本気で怒りを感じているのかといわれると答えはノー。
本気で怒っているなら私は今自宅にいない。とっくに妙神山に怒鳴り込んでいる。
じゃあ私は何に対して腹を立てているのか?
それもイマイチハッキリしない。
「ルシオラ殿」
「・・・・・・・?何かしら?」
怒りの矛先が定まらず思考のループに陥りかけていた私に心眼さんが
口を挟んできた。
「貴殿はいい女だ」
「・・・・・・はい?」
・・・・・・えっと、もしかして私は心眼さんに口説かれているのかしら?
まさか心眼さんの性格ってヨコシマ譲り?
「・・・・・・今、貴殿は我の尊厳に対し著しく無礼な事を考えたのではあるまいな?」
「な、何の事かしら?」
さ、流石に心眼と名乗るだけの事はあるわ・・・・・・
「・・・・・・まあ良い。もう一度言おう。ルシオラ殿、貴殿は横島には
勿体無い良い女だ」
「褒めてくれるのは嬉しいけど出来れば理由も教えて欲しいわね」
「貴殿の怒りの原因、いや、矛先は他ならぬルシオラ殿自身に向いている」
――っ!
何気無しに心眼さんは核心を言い当てた、いえ、言い当てられた。
「貴殿は小竜姫様に怒っている振りをしているその実、自分を狭量だと責めている。
だが何故自らを詰るのだ?貴殿の怒りは正当な物ではないか。遺憾ではあるが
小竜姫様の方が明らかな横恋慕なのだぞ?」
心眼さんの言葉は正しい。それは事実だから。
でも・・・・・・
「貴方の言葉は事実よ。でも真実には遠いわ」
「ほう?」
「小竜姫さんってさ、すっごい真面目な人じゃない」
「論ずる間でも無い事だな」
「そんな人が泣きながら私に謝ったの。
「自分は卑怯者だ。自分では何もしなかった癖にいつか横島さんが
自分を見てくれると都合のいい事ばかり考えていた」って。
確かにあの人は何もしなかった。いえ、出来なかった。
でもあの人は本当にヨコシマが好きだって言うのは私には痛い程解った。
ヨコシマが私に振り向いてくれたのは行動に移した私にヨコシマが
応えてくれたからだもの。
もしも小竜姫さんが先に行動していたら私達の立場は逆になっていたかも知れない」
「・・・・・・」
もし小竜姫さんが先に行動に移っていたら?
もし美神さんが素直になっていたら?
そんな少しのifがあったら私はヨコシマの傍にいられなかった。
そしてそんなifを想像するのが私は堪らなく怖い。
そんな怖いifが彼女たちには現実だった。
「結局ね、ほんの少しのifの結果で私がヨコシマの一番傍を
掴んだってだけなの。だから私はもう少しだけifを広げている。
もし私が小竜姫さんがヨコシマを好きなのを認めたら?
もし私が美神さんのヨコシマへの想いを認めてあげたら?
・・・・・・ってね。でもそれだけじゃ癪だからチョットだけ
意地悪してるってだけの話なの。それが私にとっての真実よ」
自分で言ってて随分傲慢な話だと思う。
でも私の傲慢で皆が少しずつ幸せならそれでいい。
私は一度自らこの幸せを手放した。
そしてヨコシマを致命的なまでに傷つけた。
罪滅ぼしなんて心算はさらさら無い。
私の行動はどこまでも自分とヨコシマの幸せの為。
ヨコシマがいて、私が傍で寄り添って・・・・・・
その反対側に少しくらい他の女の人がいてもいいじゃない。
それで私達が幸せなら。
「ルシオラ殿」
「なにかしら?」
「我は貴殿が魔族であるという事実を認め難い。
その心根の何処に邪心があるというのだ?」
「あら、私は飛びっきりの魔族の女よ?
ヨコシマと私の幸せの為なら人間の道徳やルールなんて
知った事じゃないわ。堂々と無視するもの♪」
そんなものは私達の幸福な未来の為ならホワイトアウトして然るべきじゃない♪
「ふむ、その物言いは確かに魔族の女に相応しい。いや、失礼した。
貴殿は立派な魔族の女だ。それも極上の、な」
「褒め言葉として受け取ってくわ♪」
魔族は魔族らしく堂々と幸せになって見せる。
それでヨコシマが幸せになるなら何も問題は無い。
「さて、そろそろ我の主も目を醒ます頃合だな。
馬に蹴られる趣味は無いので我はそろそろ休ませて貰おう。
この依り代は実に居心地が宜しい。これから世話になるがよしなに」
「気に入って貰えて光栄だわ。これからヨロシクね」
「横島共々よろしく頼む」
それだけ言って心眼さんは眠った。
結構粋な計らいができる人?みたいね。
上手くやっていけそうだわ♪
さてと
ヨコシマが起きたら本当の合格祝いをしてあげなくちゃね♪
続く
皆様こんばんわ
(´ω`)でございます
大変お待たせしました
リスタート第20話をお送りいたします。
いろいろ言いたい事はあるのですが言い訳がましい事を言うのは
宜しく無いので作品を以って語らせて頂きます。
所詮どこまでいっても自分は自分の書き方しか出来ませんので(´ω`)
これにてリスタートは第一部完とさせて頂きます。
第二部はとうとう原作タイムです。
気合入れて書き上げますのでもう暫くお時間を頂ければ幸いです。
隣の板の作品も書きたいのでぼちぼちになると思いますが平にご容赦願います。
ではまた次回のあとがきでお会い致しましょう
お休みなさいませ