「ヨコシマ。忘れ物は無い?」
「弁当と財布は持ったし受験票もOKだし……道具は使わないからこんなもんか?」
ヨコシマは高校受験に合格した。ついでにピートさんもギリギリで
今日はもう一つの試験の2日目。ある意味高校の試験よりも大事な。
ヨコシマにしてみればこの日が目的の第一歩。
「ん、じゃあ私は後から会場に行くわね。観客席から応援してるから♪」
大丈夫、ヨコシマはいつもの調子。
「ああ、じゃ会場でな」
「うん♪ヘマしちゃだめよ?」
…………………
……………
………
今日は、ヨコシマにとって待ちに待った日。
確実に来る戦いの場に立つ為の資格を得る為の大事な日。
頑張ってね。ヨコシマ
――リスタート――
第十九話
――平成××年度GS資格試験会場
間も無く試合が始まる試験会場内の観客席にルシオラはいた。
――正確にはルシオラ一行が
「もうすぐだね」
「ふ〜ん。で、横島クンの最初の相手になる不幸な奴は誰になるのかしら?」
運が無かったわねと言いたげな令子に唐巣は苦笑する。
「美神君、ここから先は昨日までとは違うのだからそうとも言いきれない
……んじゃないかなぁ」
「そ、そうですよ美神さん。油断は禁物です」
語尾が萎んでしまった師匠をフォローするかのようにピートが後を繋ぐ。
「……だ、そうだけど?ルシオラさん」
六道学園のスカートに包まれた脚を組み替えつつその師匠の意見を聞いてみる
だが令子の隣に座っている横島忠夫の師匠はコーヒー缶を傾けつつもリングから視線を離す事はしなかった。
「……油断大敵。神父とピートさんの言う通りよ、美神さん」
解っている事を何を今更
「美神さんも解っていて先生をからかうのは感心しないわ」
「あら、半分だけよ?」
半分。つまり令子は試合が始まるまでの暇つぶしに自分の師匠で遊んでいたという事。
――そう、半分は
「じゃあ残りの半分はどうなワケ?」
令子とルシオラの反対側、ピートの隣でしきりに最近とみに発育の著しいバストをピートの腕に押し付けているエミが令子を突付く。「あっエミさんそんなに……おお主よ……」
幻聴はスルー
「半分は……本気よ」
「へえ……随分と弱気なワケ。とても前回の首席合格者とは思えない発言なワケ」
「心外ねエミ。冷静に分析した結果と行って欲しいわ。……正直私は横島クンが
前回の試験に出ずにいてくれた事を感謝したい位よ」
「……」
口元に薄く笑みすら乗せて令子はなんでもない様にそう言ってのけた。
「ほう……」
自分は横島忠夫と戦いたくない、そう白状したも同然なのにそれを
屈辱と思っていない。それほどまでに素直に相手の実力を認める。しかも
相手は年下の、まだこれからGSになる予定の少年をこれ程に評価する。
(それこそ成長の証だよ、美神君……)
弟子の成長を祝福する一方で、唐巣はこの半年間令子をここまで導いてくれた
ルシオラに心からの感謝の祈りを捧げた
(ルシオラ君、これで私も美智恵君に顔向けができる……本当にありがとう)
「少なくとも私は試合では絶対に横島クンと戦いたくないわね」
「「「試合では?」」」
「ええ、試合では絶対に」
確実に負ける、と心の中で付け足す。
「じゃあ……実戦なら?」
「え?」
令子を真っ直ぐに見つめるルシオラの瞳がそこにあった。
「実戦なら……貴女はヨコシマに勝てそう?」
「……ナンセンスな質問ね。私たちの敵は妖怪や悪霊よ、人間じゃないわ」
そう、横島クンは私の敵じゃない。横島クンは……
「あら、ちゃんと解ってるじゃない♪」
明らかに答えをはぐらかした令子をルシオラは咎めない。
ルシオラの望んだ回答に限りなく近かったから。
(ヨコシマは貴女の味方よ。美神さん……)
これだけは、これだけは美神に解って欲しかった。
横島忠夫が今日この場所で戦う理由の一つに間違いなく美神令子という存在
が有るのだから。
(妬けるけどね)
「まあもし仮に実戦で横島クンと戦うってんなら負けないけどね♪」
――ピシリ
「……あら……随分と私のヨコシマを高く評価して頂いてるみたいね?
この私が手塩に掛けて鍛え上げたヨコシマが実戦で貴女に勝てない、とでも
言いたいのかしら?――美神さん?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「「ひいっ!」」
綺麗な、とても綺麗な笑顔だった
――背筋が凍るほどに
後に唐巣とピートは述懐した
「あらあら……ルシオラさん程のGSが実戦で常にガチンコで勝負する、
だなんてまさかそんな考えを持っていらっしゃるなんて……
ロマンチストなんですね?以外と」
「まあまあ……もしかして美神家の戦い方に引きずり込めばヨコシマ
に勝てる、だなんて……まさかそんな事で私のヨコシマに勝てるつもり
じゃありませんよね?」
「あら?そのつもりですけれど?」
「まあ美神さんたら……ホホホホホ……」
「フフフフ……」
局所的な低気圧の発生に男性二人は怯え、残りの女性は呆れた表情で
低気圧の行方を見守る中、場内にアナウンスが響き渡る。
――平成××年度GS資格試験2日目。間も無く試合開始です――
――10分前
「横島さんっ!」
横島はお花摘み(登山用語)から控え室に戻る途中、いきなり声を掛けられた。
その声の主を横島は良く知っている。よく知っているが……
「小竜姫様っ!?」
タイトなミニスカートから覗く健康的な脚を黒のストッキングできめた
妙神山管理人・小竜姫が其処にいた。綻ぶ様な笑顔を湛えて。
「ど、どうしてこんな所にっ!?」
「勿論、横島さんの応援……と言いたい所なんですがそれは少しマズいので
ここまで来ちゃいました。……忘れ物を届けに」
「忘れ物?俺なんか忘れ物したんですか?」
「はい♪とっても大事な物を」
小竜姫にとって横島のGS試験というのは大事な分岐点。
あちらの自分は試験の際に横島に大事な物を渡した。なら自分もそれに少し
色を付けて渡しても何の問題も無い筈……
少し俯く小竜姫の頬が赤く染まっていく
「よっ、横島さん……ちょっと目を瞑っててもらえますか?
渡したいものがあるので……」
「はい、これでいいっすか?」
よく解らないが言われるままに目を瞑る
次の瞬間
唇にマシュマロの様に柔らかいナニかが覆い被さってきた
「……!!!!!!」
「んっ……」
文字通り鼻梁が触れる距離に小竜姫の怜貌が其処にある
1秒、2秒、3秒…………
30秒数えた所で小竜姫の顔が離れる
「…………」
何処か冷静な所が数を数えていたが唇に残る柔らかな感触の残滓が
思考能力をショートさせていた
「貴方に僅かですが私の竜気を授けました。後は貴方次第です」
冷静に話す小竜姫も耳まで顔が紅い。
但しとても幸せそうな笑顔だが……
「それと……勝利のおまじないですっ!!じゃ、じゃあ頑張ってくださいねっ!!」
急き立てられる様にそう言い残して小竜姫はテレポートで退場。
思考の定まらない頭に消える瞬間の小竜姫の笑顔が深く焼き付けられた。
「……は、ははは……マジ?」
続く
皆様こんにちわ
(´ω`)でございます
大変長らくお待たせ致しました
リスタート第十九話をお送りいたします
色々あって話を練り直し、
このタイミングで小竜姫様のふぁーすときす
とさせて頂きました。
次回は久々にあの人が登場の予定です
横島のGS試験が終わって外伝?を1話挟んでから
リスタートは第一部完とさせて頂きます。
無論第二部はちゃんとあります
ジャ○プ流の第一部完とは違いますのでご安心?下さいませ
第二部は遂に原作GS美神極楽大作戦の時間軸です
ここからは原作をお手本に出来るので幾分マシなストーリー
になると思います。
何時もご感想をお寄せ頂いている皆様
本当にありがとうございます。
皆様の暖かい声援のお陰で何とか原作の所まで
漕ぎ着けられそうです。
この場を借りて厚く御礼申し上げます
ありがとうございました
ではまた次回のあとがきでお会い致しましょう
では(´ω`)ノシ