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「光と影のカプリス 第105話(GS)」

クロト (2007-09-25 19:09/2007-09-27 18:28)
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 その数日後の昼休み。キヌや愛子が進めていた霊能部設立計画がついに実を結び、手に入れた部室にて開部式が行われていた。
 体を動かす事はあっても体操服やユニフォームに着替えるわけではないので文化系扱いということになったが、その辺りは特に誰も気にしていない。

「では、霊能部の発足を記念致しまして。かんぱーい!」

 と(もちろんジュースで)乾杯の音頭を取ったのは、協議のすえ部長を拝命した愛子である。能力や立ち位置では横島とカリンが順当なのだが、部長ともなると色々面倒なことが多いので、バイトで忙しい横島が辞退したのだ。
 部員は元除霊委員のメンバーそのままである。今のところ規模を拡大したいわけでもないので、宣伝や勧誘をまったくしなかったからだ。

「思えば長い道のりだったわ……やっぱり青春は委員会より部活よね!」
「やることは別に変わらんけどな」
「そこ、余計なこと言わない!」

 横島の無粋なツッコミを愛子は一喝して黙らせた。まったく、これだから素人は困る。

「いいじゃない、部室と部費ももらえたんだし」

 と机娘は意外に実利主義的なところもあったようだが、煩悩少年は逆にあまり興味なさげな顔つきで、

「部費か……確か8万円だったっけ。何に使うんだ?」

 かっての彼の月収を上回る大金だが、今はその十倍以上の稼ぎがある。ゆえに部費をちょろまかそうなんてセコい考えは浮かばないのだ。
 ちなみに8万円というのは、生徒会から部費をもらっている文化系のクラブの予算額の平均である。いくらぐらいが妥当なのかよく分からないので、とりあえずそういう査定法になったのだ。もう12月に入っているが、初年度は何かと物入りだろうということで年間分をくれたらしい。
 部費というのは各部活間でかなりの争奪戦になるとも聞くが、細かい事情は横島は聞きたいとは思わなかった。

「そうねぇ、やっぱり霊能関係の本とかかしら。横島君たちには要らないだろうけど、新しく来る子たちには役に立つと思うし。
 あとは霊波計とか水晶玉とか買っとくと霊能部っぽくなるかしらね」
「お揚げはダメ?」
「さすがにそれはピンポイント過ぎると思うぞ。確かあとで決算を報告するのだろう?」

 お揚げを提案したのはもちろんタマモで、それを却下したのはカリンである。学校内でカリンが呼ばれるのは基本的に除霊委員、いや霊能部の集まりの時だけなのだが、お色直しができるようになってからは目立たないよう、タマモやキヌたちと同じ学校指定のセーラー服を着用していた。

「ええ、だから部費で何か買うときはちゃんと領収書もらってね。でないと出してあげられないから。
 横島君もHな本なんか買って来ちゃダメよ?」
「買うかっ!」

 と横島が心外そうに咆哮する。いくら何でもそこまで無節操だと思われたくない。

「うーん、相変わらず横島って信用ないわねぇ」
「相変わらずなのはおまえの減らず口じゃ!」
「あははは、今の言い回しはなかなか面白かったぞ」

 などと横島家の3人がお笑いを披露している間に、キヌが手を挙げて真面目な意見を出していた。

「でもせっかく部活動になれたんですから、何かそれらしいことでもしませんか?
 ……たとえば演劇部とか美術部みたいに何か発表するとか。今年の学校祭はもう終わっちゃいましたけど」

 合宿はこの前やったし、対外試合はキヌ自身が役に立てないので没だった。ネクロマンサーの笛は生身の人間には効かないから、普通に神通棍や霊波砲で戦うタイプには手も足も出ないのである。式神やキョンシーを使役するタイプの術者に対しては非常に有利なのだが……。

「発表ですか……じゃあ今までの経験を生かして、学校に出現する霊の傾向と対策、なんてのをつくったらみんなの役に立てそうですね」

 さすがピートはオカルトGメン志望だけあって、実に立派な志である。しかし問題がないわけでもなかった。
 カリンがちょっと渋い顔でその問題点を指摘する。

「ふうむ……いい考えだと思うが、私たちでは荷が重くないかな? 間違った認識や対処法を残してしまうことにならないといいが。
 横島やピート殿の場合責任問題になりかねないからな」

 免許持ちのGSが残していった対処法を実践して何らかの被害が出たら、その責任を問われる可能性は否定できない。そこが書道部や軽音楽部の発表と違う点であった。

「それもそうですね……僕が失敗したら先生にも迷惑かけてしまいますし」

 ピートもそこまで自分に自信を持っているわけではない。あっさりアイデアを引っ込めた。

「うーん、確かに責任がからむとつらいわねぇ。じゃあもっと無難なところで……って横島君、お弁当に夢中になってないであなたも何か考えなさいよ」
「え? あ、悪い。この厚揚げと野菜の煮物がこう『しみるぅ』って感じにうまくてな」

 横島はタマモの新メニューが気に入ったらしい。するとキヌがちょっと興味ありげな顔で上体を乗り出してきた。

「え、そんなに美味しいんですか?」
「ああ、うまいよ。でもこれはタマモがつくったやつだから、試食したかったらタマモに言ってくれ」

 横島がここで自分の分から渡さなかったのは、彼の分はタマモが「横島のために」つくってくれたものだからである。彼も煩悩が働かない状況なら、少しは配慮ができるようになってきたようだ。
 キヌの視線を受けたタマモは少し悩んだようだったが、彼女には恩義があるからか妥協案を提示した。

「じゃあその卵焼きと交換ならいいわよ」
「はい、いいですよ。……うわ、ほんとに美味しい。どうやってつくったんですか?」
「ふふっ、それはおキヌちゃんといえども秘密よ。お揚げの道は門外不出なんだから」
「そ、そーなんですか。厳しいんですね」

 大真面目でそんなことを言うタマモにキヌはふた筋ほど冷たい汗を流したが、深く追及するのは避けた。

「でもこの卵焼きも美味しいわよ。そーだ、発表会はいろんな創作料理を出し合うってのはどーかしら。できればお揚げメインで」
「それって霊能関係ないんじゃ……」

 差し迫った期限がないせいか、結局霊能部の新しい活動方針は決まらなかった。


 そのさらに翌日の放課後。横島たちがいつものように小山事務所を訪れると、タダスケがいつか横島のアパートに来た時の服装で執務室の応接セットに座っていた。今日は彼が元の世界に帰る日なので、横島たちもその見送りをすることになっていたのだ。
 タダスケは今朝ようやく文珠が4個たまったので、小竜姫に霊力を提供してもらって《吸収》と《変換》で15個の文珠をつくり、《元世界帰還二〇〇七年五月十三日》を完成させたのである。そして慎重を期して、横島たちが来るのを待つのを兼ねてしばらく休息を取っていたのだった。
 他にはヒャクメが来ている。見送りの人数はこれだけだった。

「小竜姫さま……とヒャクメ。本当にお世話になりました、このご恩は向こうに帰っても忘れません」

 とタダスケがていねいに頭を下げる。小竜姫は名残惜しげながらも微笑んで、

「いえ、こちらこそお世話になりました。無事元の世界に帰れることを祈っています」
「お元気でなのねー」

 ヒャクメは微妙に自分が軽く扱われたことに気づいてはいたが、見送りの席なので事を荒立てるのは止めておいた。

「忠夫、カリンさん、タマモ。おまえたちにも世話になったな。
 楽しかっ……たとは言いづらいような気もするが、とにかくおまえたちのおかげで助かった。本当にありがとう」
「あー、いや、何と言うか。血清は手に入ったんだし、終わりよければ全てよしってことでいーんじゃねーか?
 ……そうだ、血清はちゃんと持ってるよな?」

 タダスケはこの世界に来てから碌でもない事ばかりに見舞われていたので、楽しかったと言い切れなくても仕方がない、と横島でさえ思った。
 だからそれには深く触れずにおいたが、それより肝心の血清をホテルに忘れてたりしないかの方が気にかかる。

「そうだな、念のため確かめとくか。……ああ、ちゃんと持ってる」

 タダスケもここで忘れて行ったら文字通り取り返しがつかないということで、改めてポケットからアンプルを入れたケースを取り出し、その中身を確かめた。血清と予備の唾液が2本ずつ、計4本のアンプルが確かに入っている。
 タダスケがそれをポケットに戻し終えたところでカリンが声をかけた。

「名残惜しいが、もともとあなたは他の世界の住人だからな。
 ……向こうの美神殿とお幸せにな」
「元気でね」

 と最後にタマモが別れの言葉を述べると、タダスケも少し寂しそうに、しかし莞爾と微笑んだ。

「それじゃみんな……元気でな!」

 そのひと言を最後に、タダスケの姿は15個の文珠が発した眩い光の中に消えていった。


「ふう……行っちゃいましたね」

 タダスケの気配が完全に消えた後、小竜姫は詰めていた息を一気に吐き出した。文珠がうまく発動するかどうか心配だったのだろう。

「タダスケさんが無事元の世界に帰れたかどうかは分かりませんけど、私たちにはそうだと信じることしかできませんからね。
 ……いえ。あの人も横島さんなんですから、帰るのに失敗するなんてことはないと思います。きっと今ごろ向こうの美神さんに血清を届けてることでしょう」

 彼がこの世界に来たのは確かに失敗だったかも知れないが、それでも血清を手に入れて、帰還用の文珠を発動するところまでたどり着いて見せたのだ。この期に及んでまた別の世界に行ってしまうなんて事があるはずがない。

「そうっスね。何かまだ実感わきませんけど」

 と横島はまだタダスケがいなくなったことを実感しきれてないようだ。何だかんだ言って彼は1ヶ月以上こちらにいたから無理もないが、小竜姫は少しだけ厳しい表情を見せた。

「そうですね。でももうタダスケさんにも文珠にも頼れないんですから、横島さんも早いうちに気持ちを切り替えて下さいね」
「……はい」

 と横島が神妙に頷くと、ヒャクメが別れの余韻も冷めないうちに早くも帰宅の旨を口にしてきた。

「ガルーダの雛の世話、っていうか様子を見てないといけないのね。培養槽から出されたばかりで不安定になってるから」
「そうなんですか、手間をかけます。
 でも魔界の窓口には連絡を入れてありますから、遅くても明後日には引き取りにくると思いますから」
「わかったわ、それじゃまたね」

 とヒャクメはあっさり瞬間移動で妙神山に帰っていった。
 それを見送ったカリンがふと思い出したかのように、

「それで小山殿、仕事は今日から再開するのか?」

 メドーサの追跡は頓挫したのだから、いつまでも臨時休業のままでいる理由はあるまい。当然再開は早い方がいいのだが、それはもう少しだけ先になるらしかった。

「いえ、実は雪之丞さんが妙神山の修業を受けたいそうなので、今日詳しい話を聞くことになってるんです。
 そちらのケリがついたらもう1度老師に私の力を封印してもらって、仕事はその後になりますね」
「雪之丞が!?」

 知っている名前が出てきたことに驚いた横島が素っ頓狂な声をあげると、小竜姫は急にいたずらっぽい笑顔を少年に向けてきた。

「ええ、横島さんに負けたから自分を鍛え直したいんだそうですよ」

 結果としては引き分けだったが、横島とカリンのペアに対しては完全に負けていた。邪道だけでの修業に限界を感じ始めてきたところでもあり、これを機に正道で力をつけようと思ったらしい。
 ちなみに雪之丞は一応唐巣の弟子という事になっているのだが、これはあくまでGS資格を取るための便宜的なものであって、実際に除霊技術や霊的格闘を教わっているわけではないのだ。
 もっともモラル面や関連法規などについては指導を受けているし、紹介状も彼にもらったのだが。

「……げ。するとあいつ、修業したらまたリターンマッチとか挑んでくるのかなあ」
「そうだろうな。励みになっていいじゃないか」

 とカリンがチャチャを入れると、横島は真顔で泣きを入れた。

「よかねぇ! まったく、これだからバトルマニアってやつは」
「横島も大変ねえ」

 とタマモが完全にひとごとの顔でお茶を飲んでいると、ドンピシャのタイミングで呼び鈴が鳴った。くだんの戦闘狂が訪ねて来たようだ。
 カリンが執務室に案内してやると、雪之丞は特に遠慮する様子もなく応接セットに腰を下ろした。

「修業を受けたい理由は電話で話した通りだ。断る理由はねえだろ?」
「ええ、あまり長期にわたるものでなければ」

 小竜姫自身が再修業中の身なのだ。日帰りや3日間くらいのコースならともかく、1ヶ月も2ヶ月も拘束されるのは困る。
 もっとも雪之丞の方もそんなことは望んでいなかった。

「いや、そこまで手間はかけさせねーよ。もともと妙神山の修業ってのは、試練を乗り越えて成長するかあの世に行くかの一発勝負なんだろ?」
「誰ですかそんな物騒な噂を広めてるのは……あくまでそういうコースもあるっていうだけです」

 そう言えば横島さんにも同じこと言われましたねぇ、と憮然と呟く小竜姫。確かにどのコースも危険で厳しいものだが、失敗したら即あの世行きなんてのは上級のごく一部なのに。
 とはいえ未熟者に軽い気持ちでほいほい訪ねて来られては困るので、レベルを下げるわけにはいかないのだけれど……。

「……まあ、雪之丞さんに言っても仕方のないことですね。
 いくつかコースを用意してますけど、どういう修業をしたいんですか?」
「そりゃ決まってるぜ。1番レベルが高ぇ……少なくとも、唐巣の旦那や横島が受けたのよりは上のやつだな」

 雪之丞にとってはそうでなければ意味がない。最初は簡単なものにして段々レベルを上げていく、という堅実な方法もあったが、そんなまだるっこしいやり方で横島に追いつけるとは思えないし、第一彼自身の性分に合わなかった。
 しかしそれを聞いた小竜姫は少し眉をしかめた。

「それだと最上級の『ウルトラスペシャルデンジャラス&ハード修業コース』になりますけど……正直言って危険ですよ。『潜在能力を引き出す』というものですから雪之丞さんには向いてると思いますけど、さっきのあなたの言葉通り成長するか死ぬかのどちらかですし、それに指導するのは私じゃなくて私の上司ですから、危険になっても私が止めることはできませんから」
「へえ……そいつは面白そうじゃねえか」

 ところが小竜姫の期待に反して、雪之丞はますますやる気が上がったようだ。小竜姫の上司だとか危険だとかいう単語が、逆に戦闘狂の血を騒がせてしまったのだろう。
 しかしこうなれば小竜姫に断る理由はない。

「わかりました。それでいつ修業場に来られるんですか?」
「いつでもいいぜ。さすがに今日これからってのは無理だが、明日でも明後日でもOKだ」
「では明日来て下さい。山道は険しいですけど、所々で空を飛ぶようにすればそんなに苦労しないと思います」

「……うーん、やっぱりジャンキーの考えることはわからん」

 2人の話を傍らで聞いていた横島だが、雪之丞の心事はまったく理解できないようだ。しかしその直後、彼の隣にいたタマモが口にした台詞は理解不能を越えて空耳だとしか思えないものだった。

「ねえ小山さん、その修業って私でも受けられるの?」
「「「はあ!?」」」

 横島に加えてカリンと小竜姫も数秒ほど固まってしまった。まさかこのぐーたらお揚げ娘が妙神山修業場の最上級コースに関心を示すとは、もしかして聖書級崩壊の前触れか!?

「何かすごく失礼な感想持たれたよーな気がしたけど……まあいいわ。さっき小山さんが『潜在能力を引き出す』って言ったから、もしかしたら私にも向いてるんじゃないかと思って」

 何しろタマモは九尾の狐の幼生である。潜在能力という点では横島や雪之丞よりずっと上だろう。
 基本的にものぐさな彼女だが、この話はけっこうおいしいと思ったのだ。

「……ま、待て待て待て待てタマモ! おまえ所長の話聞いてなかったのか!? 成長するか死ぬかのどっちかなんだぞ。ヤバすぎるだろ」

 と横島が血相を変えて詰め寄ってきたが、タマモは涼しい顔で、

「聞いてたわよ。だから横島、いっしょに来て守って」
「……はあ!?」

 ぽかーんとあごを開けたままさらに硬直する横島。いったいこの狐娘は何を考えているのか?

「んー、つまりね。私はあんたの保護妖怪だけど、保護してもらってるだけじゃ悪いじゃない。それに24時間あんたと一緒にいるわけじゃないから、自分で自分を守れる力もほしいかなって思ったのよ」

 横島たちが幽霊屋敷に行った時に自分を連れて行かなかったのは、南武グループが以前自分を追っていたことを考えれば当然だからそれはいい。しかし思い返してみれば香港の時も辻斬り事件の時も、自分は確かに役には立てたが、どうも力不足で詰めが甘かったような気がする。
 それに南武がつぶれたからといって100%安全が確保されたわけではないし、こういう機会に強くなっておくのは今後のためにも望ましいことだろう。

「でもほら、私1人じゃ不安だし今いち気合いも入らないし。あんたも私と一緒だったらやる気出るでしょ?」
「んんん!? それはまあそうだが……」

 要するに横島もタマモも単独では精神力に難があるが、恋人といっしょなら相手のためにも生き残ろうという意欲が湧いて来るだろうというのだ。
 横島にもそれは理解できたが、しかしそれに命を賭けるほどの意義があるとは思えなかった。そこまでしなくても今ちゃんと成長しているのだから。
 もっともタマモも本気で命を賭けようとしているのではない。

「大丈夫よ、私もあんたも死なないから。
 何ていうか、妖狐のカンってやつ? 私もあんたも、命の炎はまだずっと続いてるわ。こんなことで消えたりしない。
 だいたいそーでもなかったら、私が自分からこんな危ない橋渡ろうなんて考えるわけないじゃない」

 一般に動物には人間が文明化とともに失ってしまった不思議な霊感が備わっているという。少女はそれを信じたからこそ、こうして自分だけでなく恋人まで巻き込むような提案をしたのだ。
 横島もここまで言われたら男として逃げるわけにはいかない。

「わかったよチクショー、やればいーんだろやれば。でもその代わり、俺が死なんよー責任持ってフォローしろよ。死んだら化けて出るからな?」
「んー、了解」

 とタマモは簡単に頷いた。少なくとも自分だけ生き残るという気はないから、化けて来られる心配などないし。
 ただ横島はこの修業を受けるに当たって、もう1人了承を取らねばならない相手がいた。

「カリン、こーゆーわけだからやってもいいか?」

 何しろ横島が死んだら彼女も死ぬのだ。無断で決めていい事ではないだろう。
 しかし影法師娘はこういう点ではあっさりしていた。

「ああ、おまえが自分の意志で決めたのならそれでいい。
 ただし甘い気持ちは持つなよ。伊達殿と同じくらい気合いを入れて、美神殿と同じくらい注意深くやるんだぞ」
「……努力はする」

 カリンの要求は横島にとって非常に過大で、こうとしか答えようがなかった。しかし一応了承は得られたので、改めて小竜姫に顔を向けて参加の意志を伝える。

「……つーわけなんで所長、俺とタマモもそのウルトラ何とかっていう修業やらせてもらっていいっスか?」
「………………」

 むろん小竜姫はせっかく手に入れた新しい家族に危険な修業はさせたくないのだが、立場上拒否することはできない。肩を落として、ため息をつきながら承諾の意を告げた。

「……わかりました、ウルトラスペシャルデンジャラス&ハード修業コース3人前ですね。それじゃ明日、3人……いえ4人いっしょに修業場に来て下さい」

 これで4人が妙神山修業場最難関の修業を受けることが決定したわけだが、

「なるほど、俺に出し抜かれたくねえってわけか。しかも女をダシに使ってやる気がないように見せかけるとはな。
 さすが俺がライバルと見込んだヤツだ。ますます燃えてきたぜ」
「違うわっ! だから燃えんでいい!!」

 やはり雪之丞には、横島忠夫という男に関する認識についていくらかの誤りがあるようだった。


 ―――つづく。

 ネタバレになりますが、横島君は文珠は習得しませんですー。
 タダスケさんが無事に元の世界に帰れたかどうかは、みなさまのご想像にお任せするということで(ぉ
 ではレス返しを。

○TenPuLaさん
 たまには横島君が過度に幸せなSSがあってもいいと思うのですよー。
 タダスケさんは本日帰還致しましたが、無事妻に会えたかどうかは知りません(ぇ
>凛明とHした時って、パワーアップしなかったんでしょうか?
 いあ、彼女の腰が充実してたのは気のせいという事になってますから(^^;

○遊鬼さん
>ほのぼの
 戦いが終わった後はゆっくり休む時間が必要ですからねー。
 横島家の仲良し団欒とライトなお色気は書いてて気持ちがよろしいです。
 エロはまたエロ話として書きたいものですな。
>タマモ
 今回は意欲的になっております。
>タダスケ
 やっと彼にも平安の時が訪れました……たぶん。
>妄想の罰
 さすがにアレを無罪放免では甘すぎますからねぇ(^^;

○Februaryさん
 筆者も羨ましいのでご心配なく(何)。
 タダスケさんはちゃんと帰りましたですよー。これ以上不幸にするのは忍びなくて(ぉ
>め、珍しく正論だ!?
 人間誰でも自分に都合がいい正論は大声で言うものなのです!

○シエンさん
>アメとムチの比率が偏りすぎなんじゃござーませんこと!?
 まったくですな。もっと厳しいしつけをしても良いと思うのですがー。
>タダスケ
 どうなんでしょうねぇ。また知らない世界に行っちゃったとか……は多分ないと思いますですよ?
>思い出して姫様、上司の頭についてるモノを!
 おお、確かにあれを付ければいかな横島君とてムチャはできなくなりますなぁ。
 果たして横島君の運命やいかに!?
>このまま成長すると、横島さんの将来像はヤマタノオロチみたいになりそうなのね〜
 ああ、そう言えばあの大蛇は若い娘をイケニエに出させてましたねぇ。まさにオロチ2世になりそうな(ぇ

○鈴木さん
 横島家の実情がクラスの連中にバレたら大変なことになりそうですのぅ。
 法的には問題なかったりするのがタチ悪いです。

○KOS-MOSさん
 ついに身代わりがいなくなった横島君の明日はどっちだ!?
 甘々の幸せは筆者も好きであります。

○whiteangelさん
 このSSでは敵役以外の不幸キャラがあんまりいませんからねぇ。
 横島君自身に降りかかるようになる……のかな?

○読石さん
 ここの横島君は神さますら味方につけてますから、地獄に落とすのも難しそうでありますorz
>カリン
 恋人同士になっちゃいましたからねぇ。甘くなるのはやむを得ませぬ。
 それでも結構ひんぱんに殴ってはおりますが(笑)。

○Tシローさん
 お褒めいただきありがとうございますー。
 ここの横島君はあまり痛い目みずにいい思いしてますからねぇ。
 困ったものであります(何)。
>後始末は全てヒト任せ。自分達はいちゃいちゃ
 言われてみればそうですねぇ。小竜姫さまもずるくなりました(ぇ
>GM
 いずれは出そうと思ってますー。

○ばーばろさん
 前回はあくまでいちゃラヴ話だったので、エロまでは行かなかったのですよー。
 ヒャクメがダ女神なのは宇宙の法則ですから(酷)。ガルーダはすぐ引き取られるので、ヒャクメの影響でおジャ魔鳥とか言われたりするようなことはないでしょう。
>タダスケ
 こちらにいてもいい事なんて絶対ありませんからねぇ(酷!)。
 まあ愛する妻と一緒なのが1番幸せなのではないでしょうか。
>幸福度バリバリのヨコシマ
 この先どこまで幸せになるのか予想もつきませんorz
>ピンクでヨコシマ総受け
 いあ、横島は本気になったらどんな呪縛でも破りかねませんしw

○紅さん
 ほんとに何であんな展開になったんでしょう<マテれ
 タダスケさんはこれからは妻と仲良く幸せに……過ごせるのかなぁ、相手が美神さんで(ぉ

○ルーエンハイムさん
>てめえ、しあわせすぎるぞ!
 同感です(ぉ
 まあいずれは小竜姫さまが対外的に恋人宣言するはずなので、それをお待ち下さい(何)。

○通りすがりのヘタレさん
>さすがに九尾の名は大きすぎるので〜〜〜
 タマモもその辺りの認識はあるようで、今回のような流れになりました。
>メド姐さん
 もともと原作のサバイバルの館編でも名前だけの登場でしたし(ぉ
>タダスケ
 クラッカー鳴らしてあげて下さいませーヽ(^o^)ノ

○ncroさん
>横島君
 筆者もこんな生活してみたいです(ぉ
>また誰か毒牙にかかってしまうのではないかと〜〜〜
 その時こそ小竜姫さまのフラグクラッシュが炸裂するでありましょう。

○チョーやんさん
>殺意の波動
 闇に飲まれちゃ駄目ですよぅ(^^;
 筆者的にはたまには幸せな横島君もいいんじゃないかと思うのですー。
 教育的指導が足りないんじゃないかというのは同感ですがw
>タダスケさん
 この人が先輩としての助言……何について助言するのでせう(ぉ
 原作では「いっそ違う道を選んだ方が幸せかも」とか言ってましたが……。
>メドさんの件
 確かに早く退治したいところではありますが、小竜姫さまはあくまで「妙神山修業場管理人」で「再修業中の身」ですから、居場所が分からない相手を追いかける義務まではないんですよねぇ。逆に言えば必ずしもメドさん倒さなくても卒業できる……というか今すぐ卒業してもいいくらいなんですが、本人にその気がないのが困ったものです(ぉ

○風来人さん
 うーむ、横島君が幸せというのはそれほどに不自然なことなのでしょうか(^^;
 確かに三股でみんな仲良しというのはすごいことなのですがー。
>不幸
 今後は誰に降りかかるのやら(^^;
>鬼門がガル雛に翻弄される様が脳裏をよぎりますなぁ
 それでも別れる時は情が移って寂しがりそうな気も致します(^^
>ガルーダとハヌマン
 直接の縁故はなさそうですが、お互い存在は知ってても不思議はありませんなぁ。顔を合わせたら拳で語り合ったりするのかもw

○須々木さん
 不幸の避雷針がなくなってしまった横島君、果たして今後はどうなることやら!?

○鋼鉄の騎士さん
 むしろここの横島君は幸せなのが売り……というわけではないのですが(ぉ
>くっ・・・それでは横島が不幸になるなどありえんではないか!
 ひどい(笑)。
 しかし幸不幸のバランスが世界を越えて成立するとしたら有り得るかも知れませんねぇ。

○ロイさん
 横島君はたぶんマルクス主義は嫌いなのではないかとw
 まさに書いてる筆者自身が羨ましいくらいの幸せっぷりであります。
>グレートマザー
 もはや希望は彼女だけって感じですな。

○山瀬竜さん
 タダスケさんはようやく妻の元へ帰れました。数少ない不幸キャラとして重宝していたのですが(酷!)。
 ヒャクメは役に立ってもダ女神扱い、それがヒャクメクオリティ! だって小竜姫さまみたいな成長予想図が描けませんしw
>とにかく先が読めないというのは非常に楽しみです
 ありがとうございますー。今回は猿神の修業になりました。

○HALさん
 三股を素直に祝福していただいてありがとうございますw
>次は何がやってくるのでしょうか
 GSはキャラが多いですからねぇ。どうしても出番が少なくなる人が出てきてしまいますorz
 とりあえず美智恵さんと魔鈴さんとレズっ娘忍者はまた出したいですな。もちろんGMもいずれは登場しますですよー。
 小鳩はここの横島君だと貧乏神を倒せてしまうのがつらいところであります。シロはフェードアウト……かなぁ(^^;

   ではまた。

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