――――朝、それは一日の始まり。植物はその広げた葉で日の光を浴び、動物たちはねぐらから現れ出でる。それは霊長類である人間もその例外ではない。
ある者は目覚まし時計に叩き起こされ、ある者はお母さんに叩き起こされ、ある者は恋人にやさしく起こされ、ある者は近所に住む幼馴染に起こされ、ある者は土蔵でチェリーに起こされる。
横島忠夫は妹に叩き起こされる人間だった。彼の妹は早寝早起きを実践しており午後十一時には床につき午前五時には目覚める。よって七時半に兄を起こすくらいはわけなかった。起こす方法はもっぱらフライパンとお玉を使った対ねぼすけ用必殺技『死者の目覚め』である。だらしがない兄を規則正しい妹が起こすことはいつの間にか習慣となっていた。最初は普通に起こしていたのだがだんだんと忠夫が慣れ始めて起きなくなったので、そのうち桃は拳で起こすようになった。しかしこの方法は眠ったまま気絶することが多々あったため母親が禁止令を出した。そこで編み出したのが『肉体的ダメージは少なく、精神的ダメージは多く』をモットーとした『死者の目覚め』である。
……ちなみにそのために両親は防音機能付きマンションを買ったことをここに記しておく。
〜兄妹遊戯〜
第二話前編『横島兄妹の友人関係』
横島兄妹は朝の通学路を走っている。周りを見れば二人と同じように走っている制服姿の人影がちらほらといる。彼らは数々の朝という激戦の時間を勝ち抜いてきた歴戦の戦士であり、本日最後の任務を終えるべく走っているのだ。この過酷な任務を終えた後に待っているのは友と語り、共に学び、食事を共にし、そして家に帰るという退屈な、されど平穏な一日。しかし任務に失敗すれば待っているのは閉まった校門と生活指導の教師。始まるのは任務失敗の罰則(ペナルティー)の宣告。放課後にはトイレ掃除や中庭・裏庭の草むしりなどが待っており、その日は一日鬱屈した気分で過ごすことになるだろう。さらに任務失敗が重なれば職員会議という名の軍法会議が待っており、兵士は上の命令には逆らえない。なのでそんなことにはなるまいと皆必死で任務の成功を目指す。
ちなみに桃は高校入学以来任務失敗なし任務放棄(さぼり)なしの優秀な兵士である。が、現在その記録も風前のともしびであった。
「ほら、忠兄早く早く! 遅刻しちゃうじゃない」
「へ〜い」
桃が必死に声をかけるが忠夫の返事は覇気がない。いや、いつも朝は元気がないのだが。そりゃあ朝っぱらから精神に大ダメージを食らえば元気もなくなろう。ただ最近は復活が早くなってきているような気がしないでもないが。しかし今朝はテレビのニワトリに起こされたはずだ。なぜ元気がないのだろうか?
桃は普段ゆっくり歩いても間に合う時間に一人で、もしくは忠夫と家を出るがこの日は違った。今朝ようやく忠夫が復活すると時間はもう遅刻寸前。桃としても記録更新はし続けたいし、なにより忠夫を遅刻させるわけにはいかないと急いでいるというわけである。ただでさえ欠席の多い男だ。遅刻などしたらもし軍法会議が開かれたときに不利に働くというわけだ。
そんな妹の気持ちを知ってか知らずか忠夫の足は遅い。いや、走ってはいるのだがもっと速く走れることを知っている桃にとっては走ってないのと同じ。ただでさえ急いでいるというのにイライラするのも当然である。
「いい加減に急いでよ! なにちんたら走ってんの!!」
「だがな〜……うおっ!」
それでもスピードを上げない忠夫に業を煮やしたのか、桃は忠夫の手を掴んで走り出す。そのおかげでスピードは上がったし、引っ張られる忠夫は転びそうになりながらもついて行く。これなら遅刻の心配はなさそうだ。
「……ところでなんでさっきから変な顔してるの?」
「いや、少し考え事をな」
交差点の信号待ちで立ち止まったところでさっきから気になっていたことを聞く。忠夫は家を出る前からずっと変な顔をしているのだ。本人は考え事と言っているが桃からしたら変な顔にしか見えない。しかも生まれた時からそばにいる桃だからこそ変な顔で済んでいるのであって、他の通行人から見たら変質者そのもの。そのことが分かっている桃は周りの視線が気になっててっとり早く本人に聞いてみたのだ。
「考え事?」
「ああ……見たんだよな?」
「?」
桃は最初忠夫が言っていることが分からずに首を傾ける。しかしそれが昨夜のことを言っていることを理解するにつれ、顔が真っ赤になっていく。
「いや! あの、その、えっと…………はい、見ました」
思わず否定しようとするが一度は認めたことなので肯定する。顔は忠夫の方を向いていない。そんな妹を見つつ、忠夫は再び考え込む。
(見たんだよなぁ。見られたんだよなぁ……ここは悲しむべきところか? だが我が妹の勉強の糧となったことを考えればむしろ喜ぶべきところ? こいつもいつかは誰かのを見ることになるんだし……いかん、自分で言っててムカついてきた。ちくしょー! 桃はだれにも渡さん、こいつは俺んだ!!」
考え込む……が、いつもの癖で途中から声に出していることに気づいていない。そしてそんな大声は通行人はもちろん隣にいる桃にも聞こえてないわけがないので。
「誰が、誰のものだ―!!」
ハートブレイクショット。心臓に与えられた衝撃はたやすく忠夫の意識を刈り取った。道路に倒れる忠夫。桃はそんな兄の姿を横目で見やる。
(まったく、誰が誰のものよ! それにナニを見ることになるって? ……最初は小さい頃見たお父さんのと大きさは変わらなかったから平気だったけど、拭いてるうちに大きくなっていって……びっくりしたなぁ。あんなに大きくなるなんて、あんなのが入るのかしら? 無理よ絶対に!!」
最後は思わず叫んでしまう、似たもの兄妹である。
さてここは通学路、しかも交通量の多い交差点である。こんなところで叫べばどうなるか。
「こいつは俺のだって……」
「あれって横島兄妹でしょ? きゃー、もしかして禁断の愛?」
「マジかよ……桃ちゃん、狙ってたのにな……」
「ちょっとそこの君。私たちはMMMの者だけどついてきてもらえるかな?」
「もしもし、リーダー? こちら会員番号00128。ただ今交差点にてT001が不穏な発言をしました。至急主要メンバーの召集と査問会の用意を、OVER」
『了解。報告ご苦労、OVER』
二人の会話を聞いていた同じ学校の生徒たちは騒ぎ出す。横島兄妹はいろんな意味で有名なのでみんな顔くらい知っているのだ。中には男子生徒をグレイよろしく連れ去っていっている者たちもいれば、無線でどこかに連絡を取っている生徒もいる。
「聞いた? 禁断の愛ですって……」
「ナニを拭いたとか言ってたしそこまで仲が進んでいるのか……」
「日本はどこまで腐っていくんでしょうねぇ」
生徒たちが騒ぎ出すにつれて周りにいた通行人たちも騒ぎ出す。話している内容は兄妹の禁断の愛について。そしてだんだんと過激になっていく内容。曰く『兄は毎朝妹のキスで目覚める』『食事は手作り料理を口移しで食べている』『寝るときは二人で一つの枕』などといった具合だ。一つは実現不可能だが、通行人たちはそんなこと知らない。
そんな周りの空気に気づいたのか、桃は倒れている忠夫を担ぎあげてその場を去っていく。その顔はまだ赤い。
桃は昇降口で目が覚めた忠夫と別れてから自分の教室に向かう。途中ですれ違う知り合いと挨拶しながら教室に着くと、何やら見知った顔が窓際にある桃の席に座っていた。まあ、彼女がおかしな行動をするのは慣れっこなのでとりあえず朝の挨拶をする。
「おはよう」
「おはよー、桃太郎」
外を見ていた顔を桃の方に向け挨拶をしてくる。ついでに中学校以来の、桃にとっては非常に心外なあだ名を口にする。
「その名で呼ぶなって何回言ったらわかるのよ」
「ん〜、でも私にとって桃太郎は桃太郎だから」
このやり取りももはや数え切れないほどしている。言われるたびに訂正を求めるのだが彼女は全く聞いちゃくれない。いい加減桃も諦めかけている。
「桃太郎がダメなら番長って呼ぼうか?」
「お願いだからやめて」
桃が諦めかけているのは桃太郎というあだ名よりはるかに心外なあだ名が付けられかけようとしているからだ。番長などいうあだ名は女として看過できるものではない。いや、桃太郎も十分許せないのだが。
桃はこの話題を続けてもしょうがないのでさっきから気になっていたことを聞く。
「で、なんであたしの席に座ってんのよ、飛燕」
「いやぁ、桃太郎に報告したいことがあってさ―。いくら待っても来ないんだもん、待ちくたびれちゃった。珍しいね、こんな時間に登校なんて」
そんな返事を返してくる中一以来の友人。彼女は親友だと言うが桃は決して認めていない。悪友というなら認めてもいいが。
「報告?」
「そっ」
飛燕は笑顔を向けるが桃は一歩下がって距離をとる。彼女が笑顔で“報告”をする時は大抵の場合、桃が酷い目に遭うのだ。
桃の友人である柊飛燕(ひいらぎひえん)はいわゆるマッドである。小さい頃からいろいろ作ったり分解したりするのが好きであったらしく、今ではオリジナルの発明品を作っては桃で試そうとする。しかもそのほとんどが失敗作であるため桃はいろんな目に遭ってきた。桃は忘れていない、中二のときの飛燕の発明品『飛燕特製豊胸吸引機〜これであなたもボインボイン〜』によって受けた被害を。いくら当時大きさにコンプレックスを感じていたからって信じるんじゃなかったと、今では反省している。最近では胸も自然と大きくなってきているので安心だ。
そんな桃の感情を読み取ったのか、飛燕は手をパタパタと振って否定する。
「ああ、違う違う今日は発明品のことじゃないよ。それはまた今度」
「また今度、じゃない! 二度とあたしで試すな!」
飛燕の不穏な発言に怒る桃。しばらく胸が痛くて眠れなかった日々を思い出しているのだろう、その顔は本気だ。だが飛燕とて伊達に桃の親友を自称しているわけではない。桃が本気なのはわかっているだろうが平気な顔をしている。
「昨日久しぶりにおばあちゃんの家に行ったんだけどね」
「ぐ……さらりと流しやがって。……まあいいか。おばあちゃんってあんたのお師匠さんだったっけ?」
いつか徹底的に話し合うことを心の中で誓い、話に乗ってやる。
「うん、私の薙刀のお師匠さん」
飛燕は桃の言葉を肯定する。
実は彼女、この高校の薙刀部のエースだ。薙刀部はこの学校でも伝統がある方で全国でも強豪の部類に入る。そんな中で一年生にしてエースの称号を持っているのだからその強さは推して知るべし。すでに柊飛燕といえばその道で知らぬ者はいないらしい。桃は思う、マッドのくせにと。
そんな飛燕を鍛えたのが彼女の祖母である。中学校では薙刀部がなかったため、飛燕はほぼ毎日のように祖母のもとに通って教えを受けていた。彼女が高校に入って薙刀部に所属してからはたまにコーチとして来てくれるらしい。なのであまり自分から祖母の家へは行かなくなっていた。
「んで、そのおばあちゃんがどうしたの?」
「うん、おばあちゃんは昔からアパートの大家さんをして生計を立ててるんだ。幸福荘って言うんだけど」
「へー」
なるほど。たしか彼女の祖父はかなり昔に亡くなり、祖母が女手一つで彼女の母親を育てたと聞いたがそうやって生計を立てていたのか。しかしなぜそんな話をするのかと桃が不思議に思っていると飛燕が続きを話し出す。
「そのアパートに新しい住人が入ってたんだけど、これがもう超有名な人でね! 私びっくりしちゃった!」
珍しいこともあるものだと桃は思う。普段マイペースを貫いている飛燕が興奮している。そんなに有名人なのだろうか。
「私も〜感動して! 思わずサイン貰ってきちゃった。ちょっと待ってね」
そう言いつつ色紙を出そうとしているのだろう、桃の机の上に置いてある彼女の鞄をあさりだす。だが目当ての物を出す前に朝のHR開始のチャイムが鳴った。同時に彼女たちの担任が教室に入ってくる。
「あ〜あ、もう時間かぁ。この話はまた今度ね」
飛燕はそう言って彼女の席に向かっていき、席が空いたので桃はようやく座ることができた。朝からいろいろと疲れたので机に突っ伏す。
担任が出席をとっていると教室の扉がガラリと開く。教室にいるみんながそちらに目を向けるとそこには一人の教師の姿が。たしか忠夫のクラスの担任ではなかったかと桃は思い出す。その教師は桃たちの担任と二三言話すと桃を呼ぶ。
「おーい、横島。すまんが来てくれ」
桃は自分が呼ばれる理由について思い当たり、多少うんざりしながら聞く。
「また……ですか?」
「また、だ」
返ってきたのは想像通りの言葉。さらにうんざりしながら席を立つ。教室から出る時に飛燕と目があった。
『人気者は大変だねぇ〜。がんばってね、番長』
『うっさい』
――――話は少しさかのぼる。
昇降口で復活した忠夫は桃と別れ教室へと向かう。途中ですれ違う生徒たちの中には何とも言いようのない視線をかけてくる者もいたが特に気にしなかった。教室に着くと見知った顔たちが忠夫の机の周りに集まっていた。まあ、彼らがおかしな行動をするのは慣れっこなのでとりあえず朝の挨拶をする。
「おーす、みんな久しぶり……?」
いつもなら挨拶を返すくらいはしてくれるクラスメートたちは何も言わずにただ忠夫をにらめつける。何事かと腰が引けている忠夫に一人だけ声をかける者がいた。
「久しぶりだな、T001。また会えてうれしいよ」
彼に声をかけたのはメガネをかけたクラスメート。忠夫は一年生の時よく彼の家に行ってご飯を奢ってもらったりしたものだ。比較的仲の良かったクラスメートと言えるだろう。そんな彼の言葉に、しかし忠夫は腰がさらに引ける。
「……てめぇ」
「ああ、うれしいともさ。たとえそれが許しがたい敵だとしても、会えるからこそ、目の前にいるからこそ、この手で手を下すことができるんだからな」
彼が忠夫をT001と呼ぶ時、彼は『比較的仲の良かったクラスメート』ではなく『MMMのリーダー』となっている。そのことをよく知る忠夫は一瞬で避難経路の把握をし、逃走を謀る。人の密度が薄い所を地面に這いつくばりながらゴキブリのように抜け、あっという間に扉に手をかける。だが扉を開けたところで目にしたものは、さながら朝の通勤ラッシュのごとく廊下を埋め尽くす人人人。とてもではないが通れる隙間などない。
「逃げようとしても無駄だ。すでにこの教室は包囲してある」
「ぐ……」
必死で他の逃げ道を探す。だが廊下の退路は塞がれているし、ここは4階なので窓から飛び降りるわけにもいかない。それでも何とか逃げ道はないかと周りを見る忠夫。するとメガネが腕を上げながら言った。
「出口など無い。ここが貴様の終焉だ」
パチンと指を鳴らした。
教室の中にいたクラスメートたちに一斉に飛びかかられた忠夫は現在、荒縄で簀巻きにされ教室の中央に転がされている。いつの間にか周りには机が並べられ、さながら裁判所のごとき様相を見せている。現在メガネはその中でも高く積まれた机の上に座り忠夫を見下ろしている。
「……どういうつもりだ?」
「どういうつもり? どういうつもりと言ったか? シラを切っても無駄だ。報告はすでに受けている。貴様が我らの桃ちゃんに不埒な真似をしたとな」
にらみつける忠夫を冷たい眼でにらみ返すメガネ。その視線には敵意しかない。
「不埒な真似って……俺は桃になんもしとらんぞ?」
「なるほど、自覚がまるで足りんようだな。まあいい、そろそろ始めようか。これより第32回MMM査問会を開廷する」
どこからともなく取り出した木槌で机をコーンコーンと叩く。すると教室内は水を打ったように静かになる。
「会員番号00003、報告書を読みあげたまえ」
「はい」
返事をして一歩前に出てきたのは眼鏡をかけたクラスメートの女生徒。彼女は手に持った書類を見ながら報告する。
「本日マルハチニハチ、T001・横島桃の両名の登校を今朝の監視当番だった会員番号00128が確認。そのまま監視を続けていたところT001が急に叫び出し、その内容は『横島桃は自分のもの』というものだったそうです。すぐに横島桃によって沈められていますが、その後横島桃も急に叫び出したそうです。その内容は『ナニが拭いているうちに大きくなってびっくりした』というものだったそうです。これらの発言はその場にいた数名の会員も聞いていることからみて間違いないでしょう。ちなみにこの報告書を提出する際の会員番号00128の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃでした」
周りからは生徒たちのすすり泣く声が聞こえる。メガネはうんうんと頷き、周りの者たちに話しかける。
「君たちの泣きたい気持ちはよくわかる。しかし我々には悲しみにくれるよりもっと大事な使命があるのではないかね?」
その言葉が効いたのか皆泣くのを止め、忠夫をにらめつけ始める。忠夫が視線による圧迫感で何も話せないでいると上の方から声がする。
「わかったか? この報告だけでも貴様を裁く理由には十分だ…………弁解があるなら聞こうか」
「俺は何もしとらんっちゅーねん!!」
忠夫は大声で否定する。たしかに報告書の内容は事実だが彼らが想像しているようなことは何一つしていないと断言する。しかしメガネはその発言を聞いて眼鏡をキュピーンと光らせる。
「ほう……では報告書の内容は偽りだというのかね?」
「いや、それは……」
メガネの質問に思わず言い淀んでしまう。メガネはますます眼鏡を光らせながら詰問していく。
「その反応を見るに報告書の内容は真実のようだな。ならば貴様の『横島桃は自分のもの』や桃ちゃんの『ナニが拭いているうちに大きくなってびっくりした』発言はどう説明をつけるのかな?」
「その……えっと」
ますます言い淀む忠夫。片方は自分が勢いで言った発言であり、もう片方は事実を基にした発言なので説明しづらい。というか後者はありのままに説明したらますますヤバいことになる気がする。気のせいか周りの視線もどんどん厳しくなっていき、メガネの眼鏡はいまやピカピカに光っている。
「ふむ……説明できないのか? ならば貴様は我々に説明できないことをしたと、そういうわけでいいな。ならば仕方あるまい。ここに判決を下す」
「ちょ、ちょっと待っ」
止めようとする忠夫を無視し、木槌は振り下ろされる。
「旦那、やっちまってください!」
「ああ」
コーンという音とともに現れたのは筋骨隆々の大男。制服の上からでも鍛え上げられた肉体はよくわかり、その顔には傷跡がある。眼光は鋭く、正直ヤ○ザの用心棒と言われても信じられる外見だ。
「げ、番長じゃねーか! なんでこんなとこにいんだよ!!」
その姿を見た忠夫が思わず叫ぶ。そう、彼こそがこの高校、いやこの辺り周辺の学校のトップを務めていた“元”番長である。顔色を変え戦慄する横島を見て元番長はニヤリと口元を歪める。
「MMMのリーダー、感謝するぞ。この男は一度殴りたかったんだ」
「ワイがなにをしたー!!」
「……ふむ、自分の普段の言動を呪え」
必死で逃げようとする忠夫。しかし簀巻きにされているため芋虫のように逃げることしかできない。元番長はそんな彼を片手で持ち上げて、そのままポイっと上に投げる。落ちてくる忠夫に合わせて構え、叫ぶ。
「そして今回ばかりは堪忍袋の緒が切れた……
吹き飛べ!!」
「ぎゃーーー!」
岩のような拳が忠夫の顔面に迫っていった。
――――後編へ続く
あとがき
皆様こんばんは、Kです。『兄妹遊戯』第二話前編をお送りします。
今回は少々長くなったので前・後編に分けました。後編はしばらくお待ちください。
さて、今回出てきたオリキャラ『柊飛燕』ですが彼女は今後も出てくる予定です。レギュラーになれるかは別ですが。
メガネと眼鏡の女生徒はGS本編から登場してもらいました。両方ともセリフがあったクラスメートです。多少の性格の違いは彼らは今『クラスメート』ではなく『MMMの一員』であるからです。
私信ですが『エヴァ新劇場版・序』を観てきました。終わった後に観客からは拍手がっ! 私もしましたけどね。ええい、CGでできたラミエルは化け物か!! 技術の進歩ってすごいと思いました。
では後編でお会いしましょう。
レス返しです
○スカサハさん
>とても納得できる理由付けでツッコミ所を完封されてしまいました。
どうもありがとうございます。これからも精進いたしますので。
>氏家○全め!! 作品の方向性まで歪めてしまうとはなんてGJ
ええ、まったくです(笑)。
○DOMさん
>ここはGS(ゴーストスイーパー)では無くGS(グレートシスター)だったのか!?
なるほど!! うまいこと言いますね、気づきませんでした。いつかネタに使わせていただくときがくるかもしれません。
>その一部以外とは…ら●☆すたの面々と同じように貧ny…
いえいえ、将来性がないのは料理の腕だけです。桃の胸は現在成長中ですよ〜。今はおキヌちゃんくらい。あれ? どちらにしても今現在貧○ってことに変わりはないか……。
>そうだったら桃ちゃんのイメージはかがみんかねぇ〜。
そうですね。性格やツッコミ体質は似ているかもしれません。ただあそこまでツンデレではありません。
○偽・螺旋丸さん
>キャラもキチンとできてるしもはや脱帽するしかありません……
はじめまして、どうもありがとうございます。キャラの名前は植物から採ってくることが多くなりそうです。
○kamui08さん
>流石に妹相手では煩悩は動かないみたいで、同じ兄者として一安心でした!
本編と変わらぬ煩悩を持つ横島君ですが一線は守ってます。
○怒羅さん
はじめまして。
>可愛い妹など幻想さ…。
い、いったい何があったんですか?
>この作品の主人公って横島? 桃?
話によって変える予定です。第二話は桃が主人公です。
○ZEROS
>桃ちゃんがどんな勉強をしたのか気になる所ですが、横島君のために追及はしないでおきましょう。
今回桃の勉強の内容の一部が出てきました。作者が追及しちゃってどうするんでしょう(笑)。
>恐怖の味噌汁。
ちなみに私は小学校の調理実習で味噌汁を口に含んだ瞬間におもわず噴き出した経験があります。不味さで噴き出すなんてマンガの中だけだと思ってました。隣の班のやつら、どうやったらあんなモノが出来上がるんだろう?
○wataさん
>桃ちゃんの味噌汁…チーズあんシメサババーガーとどっちがましなんだろう。
うーん、難しいところですね。桃の料理は生命の危機になるのに対し、チーズあんシメサババーガーは幽体離脱するだけで命に別状ない?ですから……桃の方が上?
○レンジさん
>大変面白かったです。こんな作品を待っていました。
はじめまして。そう言ってもらえるのが一番うれしいです。
9月4日修正しました